空往き者

デルカ

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邂逅

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 「…むにゃ…むにゃ…ああ、そこそこ、そこが気持ちい―――ギャッ!?」

 ここは宿屋。ある男が一人、ベッドの上で夢を見ながら身を捩らせていた。その勢い余り、ベッドから華麗に落ちてしまった衝撃で一瞬で目が覚める。

 「…ああ、クソ、夢か…頭を痛めてしまった…。」

 若干ズキズキした痛みの残る頭を擦りながら荷物を手に取り、宿屋の外へと向かう。


 「…あ、御目覚めですか?」
 「ああ…。」

 今彼に声をかけてきたのは宿屋の主人。アダマル。少し童顔の小柄な女将で、いちいち動きが何とも可愛らしい。
 どうやら頭痛を察されたのか、心配して彼に近づいてきた。

 「大丈夫ですか?なんか、痛そうですけど…。」

 眉を顰めて心配する女将に向かってその男―――キルトは精一杯大丈夫な振りをしながら返事をする。

 「ああ、心配ないよ。」

 その返事を聞いて、女将はホッとしたようで、そっと胸をなでおろした。

 「ならいいですけど…。そうだ、今日は主に何をしますか?」
 「今日は…まあ、適当に魔物でも倒してるから。一応駆逐隊だからな。」
 「"元"駆逐隊ですよね?昨日ハグレの駆逐隊って自分から言ってたじゃないですか。」
 「うっ…まあ、いいさそのことは。今は少しずつ名声を取り戻すのが先だからな…。」

 そう、この男は、元駆逐隊だったのだ。駆逐隊は、街に危険を脅かす可能性のある魔物を退治する職業である。要するに、雑魚掃除隊。そこにもともとキルトも加入していたのだが、トラブルを引き起こしてしまい今は辺鄙なところに追いやられている。だが本人は、別にこのままでも悪くないと思っているようだが…。それじゃあ駄目だろ。
 キルトは女将に適当に挨拶をして、宿屋の外へと出た。外に出ると、そこには広大かつ平らなは草原が広がっていた。そこにポツンと建っている宿屋は、キルト以外知るものは少ない。

 「…さてと、そこら辺に居る魔物を退治しないとな。」

 とキルトは独り言を呟きながら、そっと剣を抜刀した。



 「…これくらいで、大丈夫だろう。さてと、あの宿屋へと帰r―――」
 「わーーーーーーッッ!!どいてーーーーーーーーーッッ!!?」
 「え?」

 キルトが帰ろうとした途端、背後から叫び声が聞こえた。
 その方向へ振り向くと、誰かが…女性がこっちに突っ走ってきていた。それも、かなりのスピードで。そして、その走っている軌道上にキルトが乗っかっていた、キルトは慌てて回避しようとするが、

 「ギャアアアアーーーッ!?」
 「うわあああぁぁーーッ!?」

 間一髪…という訳でもなく、見事に頭同士を強打した。キルトは衝撃で軽く2メートルは吹っ飛び、そしてその女性は頭を強く強打しながらもスピードが消えた。

 「…ああっもう!今日は頭を痛める日だなぁ!!何だよ厄日か!?」
 「えっと…なんか…ごめん。」
 「ク、クソッ、…誰だよお前は。」
 「あ、え、私?」
 「…お前以外居るかっての…。」

 当たり前のことだが、キルトと女性以外誰もいない。
 キルトはその女性の容姿を確認してみると、その女性は黒いローブに水色の長い髪をしていた。

 「あ、私はね。コキュートって言うよ。」
 「へぇ…。コキュートって何とも禍々しい…。じゃあなんかの種族か?」
 「んー…まあ、種族かどうかわからないけど、魔王の息子だよ。」
 「は?」

 …サラッと重大な発言をしたコキュートに、キルトは腰を抜かす。

 「…え、魔王の息子?」
 「うんうん。」
 「……。」
 「……何?」
 「討伐用意ーーーーーーーーーーーーーーーーッッ!!!」
 「え!?いやいやちょっと待てぃ!?」
 「待ても何もあるかぁッ!!さては魔王の子孫め、俺を倒しに来たのか!?」
 「ハァッ!?ちょっとマジで待ってって完全にそれ濡れ衣だから!!私そんな用でここに来たんじゃないから!」

 怒りの形相で抜刀するキルトに向かって、魔王の子孫だというコキュートは首を横に勢い良く降って否定する。

 「…じゃあ、何の用なんだよ。何でここに来たんだよ。」
 「いやーハハハ…ちょっと坂道を走って遊んでたら勢いが止まらなくなっちゃって、てへっ♪」
 「やっぱりぶっ殺ーーーす!!」
 「うぎゃああああああああああああああ!!」

 割愛。

 「という訳で、私は君を倒しに来たんじゃない、いいね?」
 「本当にそうなんだろうな?」
 「うん。」

 割愛された間では、コキュートスはキルトに向かって一生懸命説得していた。だが、ハグレの元駆除隊のキルトには魔王の子孫を倒したという称号を掲げればまた駆除隊へと戻ることが出来る。
 …そもそも、本当に魔王の子孫なのかどうかがまず不明だが。

 「…ふう、じゃあ帰れ。とりあえずまた会ったら殺す。」
 「何で!?と言うか帰る家もないし!」
 「…何で?」
 「だって私天界から追い出された身だもん。」
 「…え!?お前"空往き者"かよ!?」
 「そうなのかはどうか知らないけど、まあ一応…。」

 熱い掌返しとでもいうべきか、キルトはコキュートの事を敵対する目で見ていたが"空往き者"と知った瞬間、一瞬で彼女の事を羨望の目で見るようになった。キルトにとって、空往き者は憧れの存在なのである。

 「天界ってどんなところなんだ!?」
 「…うーんとね。雲しかない…。」
 「それは知っている!!それ以外で!!」
 「…いや、後は建物ぐらいしか…。」
 「どんな建物!?」

 マシンガントークとはまさにこのことである。
 再び割愛。

 「…あの、もしよければ、しばらく匿ってもらえませんでしょうか…?」

 コキュートが指をもじもじさせながら遠慮がちに聞いてくる。それを見たキルトは…。

 「やだ。」
 「うえぇっ!?」

 断 固 拒 否 。

 「何で!?ねえ何で!?おねがーい!!」
 「断る!!」

 コキュートは涙声でキルトの腕を掴んでぶんぶん振り回すが、キルトはさっきまでの羨望の目から一変、今度は鬱陶しい目でコキュートを見た。

 「理由は二つある!」

 キルトは無理矢理コキュートを離し、右手の人差し指と中指を立ててコキュートに向ける。

 「一つ目!!俺も家が無い!!」
 「ホームレス!?」
 「二つ目!!俺の泊まっている(正確には住んでいる)宿屋は先着一人のみしか泊まれないッ!!」
 「滅茶苦茶な宿屋だな!?」
 「安心しろ、女将は美人だ。」
 「安心できる要素が何処に!?」

 もう、ツッコミが追い付かない。コキュートはそう思っていた。突っ込んだことにより軽く息を切らしながら、他に行く場所がない為、仕方なくその宿屋へと行くことになった。

 「…何故、来た。」
 「他に行く場所が無いから。」
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