541 / 542
第540話 ぽちぽちぽち! 唸る肉球
しおりを挟む
クマちゃんは、ハッとリオちゃんを見た。
もしや、と不安になって尋ねた。
「クマちゃ……」
◇
きゃあきゃあと盛り上がる美女達の背後、数メートル離れた美男達は、
地面に転がってジタバタしていた。
「ちくしょう……! 魔法使いめ……!」
「ひらひらしやがって……!」
「クソッ、俺が先に出てたら……!」
「いや俺が……!」
「いやオレだろ!」
「いやいや」
「いやいやいや」
「…………」と顔を見合わせ、すっと表情を消した。
砂地に転がっていた美男集団はむくりと起き上がると、乱れた髪もそのままに服についた砂だけ払い、静かに遊戯盤へ戻ろうとした。
が、どんと肩がぶつかる。足を踏まれる。服を引っ張られる。髪を引っ張られる。羽交い絞めにされる。
そして揉める。
「俺が先だろ!」
「誰が決めたんだよ!」
「俺に決まってんだろ!」
「何様なんだよ!」
「冒険者様だよ!」
「俺だってそうだよ!」
「ああそうだろうよ!」
「みんなそうだろ!」
「だからなんなんだよ!」
「…………」と、美男集団は互いに頷き――ダッ! と台を目指した。
が、激しくぶつかり転倒した。
そんな彼らの様子を見ていたリオは、カランとグラスを揺らしてcoolに言った。
「馬鹿すぎる」
「元気がいいね」と、隣の男がこたえた。
リオは大雑把な男へ「…………」と視線をやった。
その心を透かし見ようとしたが、穏やかな表情からは何もはかれなかった。
仕事いかせようと思ってるんじゃないの……という疑いは、夜の風にさぁっと流された。
女性冒険者達は、一人が九十五点を達成したことでひとまず満足したようだった。
きゃあきゃあと楽しげに、もっと得点を上げる方法を話し合っている。
アホな精鋭達はどうするのか、そのうちぶっ飛ばされるのでは。
というリオの予想は、静かに近づいたマスターがやつらの肩に手を置いたことで現実となった。
どうみても肩に手が置かれているだけだというのに、やつらは体をねじって妙な声を出している。
順番を決めて遊べ、と注意された精鋭達は、「はい」と頷き――有無を言わさず横一列に並ばされた。喧嘩防止のためか、両手で膝を抱えるよう指示されている。
そのまま監視を続けるのかと思ったが、意外にも、マスターはすぐにその場を離れた。
自分達の近くを通りかかったマスターに、リオが声をかける。
「マスター、あれやってみて」
あれ、と遊戯盤を指す。
対してマスターは、椅子に座るリオを見おろし、ふっと笑った。
そのまま何も言わず、大円卓のあるほうへ戻っていった。
「いや意味わかんないんだけど」
リオが言うと、ウィルがシャラと首を傾けた。
「うーん。……一度で達成できてしまうからではない?」
「うわ、めっちゃありそう」
やば、と同意するリオの声に、クマちゃんがハッと反応する。
ミィと鳴く子猫のように、
「クマちゃ……」
簡単ちゃんでちゅか……?
というそれは、この超絶難易度の遊戯が――
『簡単すぎまちゅか? もっと難しくしまちゅか?』
という赤ちゃんからの挑戦状に違いなかった。
リオは、優しく我が子に伝えた。
「いやまったく簡単じゃないから。つかこれ遊びじゃなくね? 訓練じゃね? って感じ」
余計なことしなくていー……と危うく余計なことを言いそうになったが、ルーク様の視線を感じてすっと口を閉じた。
そうこうしているうちに、音声が鳴り響いた。
『クマちゃーん!』
九十五点ちゃーん!
おめちゃーん
ニャー! と妖精達の声まで響いたが、精鋭達が『うおぉぉぉ!!』と騒いでいるせいでほとんど聞こえない。
「うるさいんだけど」
というリオの率直な意見も、お祭り騒ぎの精鋭には届いていないだろう。
ウィルが隣で「そうだね」と頷いた。
そして神妙な顔で、
「でも今のうちに喜んでおくのが正解なのかもしれないね」
まだ最初の試練が終わっただけ……と不吉なことを言った。
「えぇ……」
というリオの声に反応し、クマちゃんがハッとした。
「クマちゃ……」
もっとでちゅか……?
「いやいやいやもっととかないから」
護衛クン達大変なことになっちゃうから、とリオが我が子に常識を教えたあと、しばらくして――
屋外宴会場すべての映像球から、音声が響いた。
『クマちゃーん!』
九十五点ちゃーん!
おめちゃーん
◇
?! と、ほぼ全員が映像球を確認した。
離れた場所にいた者も、近くのテーブルにささっと駆け寄った。
見守る者の半数以上が、護衛騎士達が大喜びするのではないかと、にこにこ、あるいはわくわくしながら反応を待っていた。
映像のなか、おそらく今まさに目標を達成したばかりであろう護衛が遊戯盤から降り、上体の紐を緩めた。
括っていた妖精を仲間に預け、騎士服を羽織り、さっと留め具をかけ、剣帯を装着し、また妖精を引き取る。
緩んだ妖精のおくるみをすっと正すと、たすき掛けした胸元に、きっちりと妖精を戻した。
四人の護衛はそのままカツカツとブーツを響かせ、『次のお部屋ちゃん』と書かれた扉を進んでいった。
映像球には、数時間前と同様、燭台の並んだ洞窟を歩く護衛達の背中が映っている。
そこから聞こえる足音が、映像光に照らされる晩餐の上を、カツカツと通り過ぎてゆく。
妙に静かになった宴席で、リオは言った。
「変態すぎる」
間違いない、とほとんどの者が頷いていた。
◇
クマちゃんと仲間達が、〈超、だいいちの試練ちゃん〉を乗り越えた護衛騎士達を映像球で見守っていると、護衛達はすぐに新たな扉を発見した。
映像球に映る、洞窟内、青みがかった岩壁、左右に置かれた燭台、重厚そうな扉に貼られた、手書きの紙。
非常に見覚えのある光景だった。
リオは数時間前と同じように、よれた紙に書かれた文字を読んだ。
「超、だいにの試練ちゃん……」
だよね。と頷いているあいだに、先頭の護衛が扉を開いた。
カッ! とまばゆい光が彼らを照らし、結界がシャララと崩され、同じ流れをたどっている彼らの前には、なんと――
二つの遊戯盤。
左右に並ぶ遊戯盤の前で微動だにしない護衛達に叩きつけるように、音声が響いた。
『クマちゃーん』
遊び方の説明ちゃんをいたしまちゅ……
という言葉のあと、もう一度『クマちゃーん』が響いた。
お二人ちゃんで、なかよく同時に九十五点ちゃーん
?! と一瞬驚愕の表情をみせたのは、護衛だけではなかった。
動揺が広がる宴席で、正直者は言った。
「ひどすぎる」
この試練をつくった犯人は、心に大型モンスターを飼っているに違いない。
と、リオは隣にいるはずの白い犯人を見た。
もこもこした犯人は、ルークの腕の中で白い本を開いていた。
先の丸い猫手でぽちぽちぽち! とボタンを連打している。
リオは率直に尋ねた。
「クマちゃん何やってんの?」
だが答えを得る前に、怪しいもこもこはルークに運ばれるようにスタスタと去っていった。
遊戯盤のある方へ――
そして遊戯盤は、心優しい犯人によって、男女それぞれ二つずつ用意された。
聞きなれた『ニャーニャークマちゃ』が流れ、光る肉球が盤を目掛けて飛来する。
その様子を見ていたリオはカッ! と目を見開いた。
なんと、微かにスピードが上がっているではないか! まさに獣の所業!
と、思っているあいだに、盤上の精鋭達が足をもつれさせ、
『ギャー』と『キャー』が同時に響いた。
◇
宴会場の端、男女それぞれの精鋭達が、膝をがくがくさせながら、地面に倒れ込んでいる。
『なかなかやるな……』『あなたたちも……』といった表情で、彼らは互いをたたえ合っていた。
しばらくして映像球から達成を告げる音声が響いた。
いつの間にか、護衛騎士達はボロボロになりながら、〈超・だいさんの試練ちゃん〉へとたどり着いていた。
そして、なんと恐るべきことに、映像球のなかには――
護衛の前の遊戯盤、四つ。
宴会場の端、精鋭用の遊戯盤、八つ。
映像球の中と外で、『クマちゃーん』と音声が響いた。
四人ちゃんで、なかよく同時に九十五点ちゃーん
シン
と静まり返る宴席で、リオは言った。
「殺す気なんじゃないの」
スパーン! と後頭部を叩かれた男の「ごめんて」は、まるで心が籠もっていなかった。
そして無情にも、『ニャーニャークマちゃ』は鳴り響き、精鋭達がよろよろと台に這い上がる。
盤面に立つ彼らの視線は真っ直ぐに、わずかにスピードを上げた肉球を見つめていた。
◇
宴会場の端で、美男と美女の集団は、がくがくしている脚を投げ出し、ヒュー……と息を漏らしていた。
酒を飲んでいるせいか、あちこちから輝く星が降ってくるせいか、おめちゃーんはまだ聞こえていなかった。
リオは、産まれたての小鹿をさらに弱体化させたような生き物を量産しているクマちゃんを見た。
「…………」
無言の眼差しには『ヤバすぎる』と『――す気でしょ』が多分に含まれていた。
つい先ほど聞こえたゼノの『完全にイカレてやがる……』には、同意しかなかった。
視線の先、着飾った子猫のようなクマちゃんが、懸命に肉球をペロペロしている。
トドメを刺す準備に違いない。
リオは確信を持って頷いた。
◇
宴会場の端、何度目かのおめちゃーんが響いたあと――
達成はしたが、もっと弱った精鋭達は、ボロボロの背負い袋のように転がっていた。
もはや、ボロ布以下なのかもしれない。
と、失礼の化身リオは思った。
そして、時は流れ――
映像のなか、異様に動きの鈍い護衛騎士達がついに、〈超・さいごの試練ちゃん〉の間に立った。
明かりに照らされた部屋の中央、四つの遊戯盤の向こうに、ブシャー! とピンク色の煙が広がってゆく。
護衛が警戒に腰を落とし、鞘入りの短刀を構えたそのとき、
ピンク色の中に、微かに人影が見えた。
もしや、と不安になって尋ねた。
「クマちゃ……」
◇
きゃあきゃあと盛り上がる美女達の背後、数メートル離れた美男達は、
地面に転がってジタバタしていた。
「ちくしょう……! 魔法使いめ……!」
「ひらひらしやがって……!」
「クソッ、俺が先に出てたら……!」
「いや俺が……!」
「いやオレだろ!」
「いやいや」
「いやいやいや」
「…………」と顔を見合わせ、すっと表情を消した。
砂地に転がっていた美男集団はむくりと起き上がると、乱れた髪もそのままに服についた砂だけ払い、静かに遊戯盤へ戻ろうとした。
が、どんと肩がぶつかる。足を踏まれる。服を引っ張られる。髪を引っ張られる。羽交い絞めにされる。
そして揉める。
「俺が先だろ!」
「誰が決めたんだよ!」
「俺に決まってんだろ!」
「何様なんだよ!」
「冒険者様だよ!」
「俺だってそうだよ!」
「ああそうだろうよ!」
「みんなそうだろ!」
「だからなんなんだよ!」
「…………」と、美男集団は互いに頷き――ダッ! と台を目指した。
が、激しくぶつかり転倒した。
そんな彼らの様子を見ていたリオは、カランとグラスを揺らしてcoolに言った。
「馬鹿すぎる」
「元気がいいね」と、隣の男がこたえた。
リオは大雑把な男へ「…………」と視線をやった。
その心を透かし見ようとしたが、穏やかな表情からは何もはかれなかった。
仕事いかせようと思ってるんじゃないの……という疑いは、夜の風にさぁっと流された。
女性冒険者達は、一人が九十五点を達成したことでひとまず満足したようだった。
きゃあきゃあと楽しげに、もっと得点を上げる方法を話し合っている。
アホな精鋭達はどうするのか、そのうちぶっ飛ばされるのでは。
というリオの予想は、静かに近づいたマスターがやつらの肩に手を置いたことで現実となった。
どうみても肩に手が置かれているだけだというのに、やつらは体をねじって妙な声を出している。
順番を決めて遊べ、と注意された精鋭達は、「はい」と頷き――有無を言わさず横一列に並ばされた。喧嘩防止のためか、両手で膝を抱えるよう指示されている。
そのまま監視を続けるのかと思ったが、意外にも、マスターはすぐにその場を離れた。
自分達の近くを通りかかったマスターに、リオが声をかける。
「マスター、あれやってみて」
あれ、と遊戯盤を指す。
対してマスターは、椅子に座るリオを見おろし、ふっと笑った。
そのまま何も言わず、大円卓のあるほうへ戻っていった。
「いや意味わかんないんだけど」
リオが言うと、ウィルがシャラと首を傾けた。
「うーん。……一度で達成できてしまうからではない?」
「うわ、めっちゃありそう」
やば、と同意するリオの声に、クマちゃんがハッと反応する。
ミィと鳴く子猫のように、
「クマちゃ……」
簡単ちゃんでちゅか……?
というそれは、この超絶難易度の遊戯が――
『簡単すぎまちゅか? もっと難しくしまちゅか?』
という赤ちゃんからの挑戦状に違いなかった。
リオは、優しく我が子に伝えた。
「いやまったく簡単じゃないから。つかこれ遊びじゃなくね? 訓練じゃね? って感じ」
余計なことしなくていー……と危うく余計なことを言いそうになったが、ルーク様の視線を感じてすっと口を閉じた。
そうこうしているうちに、音声が鳴り響いた。
『クマちゃーん!』
九十五点ちゃーん!
おめちゃーん
ニャー! と妖精達の声まで響いたが、精鋭達が『うおぉぉぉ!!』と騒いでいるせいでほとんど聞こえない。
「うるさいんだけど」
というリオの率直な意見も、お祭り騒ぎの精鋭には届いていないだろう。
ウィルが隣で「そうだね」と頷いた。
そして神妙な顔で、
「でも今のうちに喜んでおくのが正解なのかもしれないね」
まだ最初の試練が終わっただけ……と不吉なことを言った。
「えぇ……」
というリオの声に反応し、クマちゃんがハッとした。
「クマちゃ……」
もっとでちゅか……?
「いやいやいやもっととかないから」
護衛クン達大変なことになっちゃうから、とリオが我が子に常識を教えたあと、しばらくして――
屋外宴会場すべての映像球から、音声が響いた。
『クマちゃーん!』
九十五点ちゃーん!
おめちゃーん
◇
?! と、ほぼ全員が映像球を確認した。
離れた場所にいた者も、近くのテーブルにささっと駆け寄った。
見守る者の半数以上が、護衛騎士達が大喜びするのではないかと、にこにこ、あるいはわくわくしながら反応を待っていた。
映像のなか、おそらく今まさに目標を達成したばかりであろう護衛が遊戯盤から降り、上体の紐を緩めた。
括っていた妖精を仲間に預け、騎士服を羽織り、さっと留め具をかけ、剣帯を装着し、また妖精を引き取る。
緩んだ妖精のおくるみをすっと正すと、たすき掛けした胸元に、きっちりと妖精を戻した。
四人の護衛はそのままカツカツとブーツを響かせ、『次のお部屋ちゃん』と書かれた扉を進んでいった。
映像球には、数時間前と同様、燭台の並んだ洞窟を歩く護衛達の背中が映っている。
そこから聞こえる足音が、映像光に照らされる晩餐の上を、カツカツと通り過ぎてゆく。
妙に静かになった宴席で、リオは言った。
「変態すぎる」
間違いない、とほとんどの者が頷いていた。
◇
クマちゃんと仲間達が、〈超、だいいちの試練ちゃん〉を乗り越えた護衛騎士達を映像球で見守っていると、護衛達はすぐに新たな扉を発見した。
映像球に映る、洞窟内、青みがかった岩壁、左右に置かれた燭台、重厚そうな扉に貼られた、手書きの紙。
非常に見覚えのある光景だった。
リオは数時間前と同じように、よれた紙に書かれた文字を読んだ。
「超、だいにの試練ちゃん……」
だよね。と頷いているあいだに、先頭の護衛が扉を開いた。
カッ! とまばゆい光が彼らを照らし、結界がシャララと崩され、同じ流れをたどっている彼らの前には、なんと――
二つの遊戯盤。
左右に並ぶ遊戯盤の前で微動だにしない護衛達に叩きつけるように、音声が響いた。
『クマちゃーん』
遊び方の説明ちゃんをいたしまちゅ……
という言葉のあと、もう一度『クマちゃーん』が響いた。
お二人ちゃんで、なかよく同時に九十五点ちゃーん
?! と一瞬驚愕の表情をみせたのは、護衛だけではなかった。
動揺が広がる宴席で、正直者は言った。
「ひどすぎる」
この試練をつくった犯人は、心に大型モンスターを飼っているに違いない。
と、リオは隣にいるはずの白い犯人を見た。
もこもこした犯人は、ルークの腕の中で白い本を開いていた。
先の丸い猫手でぽちぽちぽち! とボタンを連打している。
リオは率直に尋ねた。
「クマちゃん何やってんの?」
だが答えを得る前に、怪しいもこもこはルークに運ばれるようにスタスタと去っていった。
遊戯盤のある方へ――
そして遊戯盤は、心優しい犯人によって、男女それぞれ二つずつ用意された。
聞きなれた『ニャーニャークマちゃ』が流れ、光る肉球が盤を目掛けて飛来する。
その様子を見ていたリオはカッ! と目を見開いた。
なんと、微かにスピードが上がっているではないか! まさに獣の所業!
と、思っているあいだに、盤上の精鋭達が足をもつれさせ、
『ギャー』と『キャー』が同時に響いた。
◇
宴会場の端、男女それぞれの精鋭達が、膝をがくがくさせながら、地面に倒れ込んでいる。
『なかなかやるな……』『あなたたちも……』といった表情で、彼らは互いをたたえ合っていた。
しばらくして映像球から達成を告げる音声が響いた。
いつの間にか、護衛騎士達はボロボロになりながら、〈超・だいさんの試練ちゃん〉へとたどり着いていた。
そして、なんと恐るべきことに、映像球のなかには――
護衛の前の遊戯盤、四つ。
宴会場の端、精鋭用の遊戯盤、八つ。
映像球の中と外で、『クマちゃーん』と音声が響いた。
四人ちゃんで、なかよく同時に九十五点ちゃーん
シン
と静まり返る宴席で、リオは言った。
「殺す気なんじゃないの」
スパーン! と後頭部を叩かれた男の「ごめんて」は、まるで心が籠もっていなかった。
そして無情にも、『ニャーニャークマちゃ』は鳴り響き、精鋭達がよろよろと台に這い上がる。
盤面に立つ彼らの視線は真っ直ぐに、わずかにスピードを上げた肉球を見つめていた。
◇
宴会場の端で、美男と美女の集団は、がくがくしている脚を投げ出し、ヒュー……と息を漏らしていた。
酒を飲んでいるせいか、あちこちから輝く星が降ってくるせいか、おめちゃーんはまだ聞こえていなかった。
リオは、産まれたての小鹿をさらに弱体化させたような生き物を量産しているクマちゃんを見た。
「…………」
無言の眼差しには『ヤバすぎる』と『――す気でしょ』が多分に含まれていた。
つい先ほど聞こえたゼノの『完全にイカレてやがる……』には、同意しかなかった。
視線の先、着飾った子猫のようなクマちゃんが、懸命に肉球をペロペロしている。
トドメを刺す準備に違いない。
リオは確信を持って頷いた。
◇
宴会場の端、何度目かのおめちゃーんが響いたあと――
達成はしたが、もっと弱った精鋭達は、ボロボロの背負い袋のように転がっていた。
もはや、ボロ布以下なのかもしれない。
と、失礼の化身リオは思った。
そして、時は流れ――
映像のなか、異様に動きの鈍い護衛騎士達がついに、〈超・さいごの試練ちゃん〉の間に立った。
明かりに照らされた部屋の中央、四つの遊戯盤の向こうに、ブシャー! とピンク色の煙が広がってゆく。
護衛が警戒に腰を落とし、鞘入りの短刀を構えたそのとき、
ピンク色の中に、微かに人影が見えた。
31
あなたにおすすめの小説
喪女なのに狼さんたちに溺愛されています
和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です!
聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。
ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。
森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ?
ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。
最強魔導師は不毛の大地でスローライフを送る ~凶悪な魔物が跋扈し瘴気漂う腐界でも、魔法があれば快適です~
えぞぎんぎつね
ファンタジー
平民出身の最強の宮廷魔導師ティル・リッシュは貴族主義の宮廷魔導師長に疎まれ、凶悪な魔物がはびこり、瘴気漂う腐界の地の領主として左遷されることになった。
元々腐界の研究がしたかったティルはこれ幸いと辞令を受けて任地に向かう。
途中で仲間になった聖獣の子牛のモラクスと共に腐界で快適なスローライフを始めたのだった。
瘴気は自作の結界で完全に防ぎ、人族の脅威たる魔物はあっさり倒す。
「魔物の肉がうますぎる! 腐界で採れる野菜もうまい!」
「もっも~」
「建築も魔法を使えば簡単だし、水も魔法で出し放題だ」
病気になった聖獣の子狼がやってきたり、腐界で人知れず過ごしてきたエルフ族が仲間になったり。
これは後に至高神の使徒の弟子にして、聖獣の友、エルフの守護者、人族の救世主と呼ばれることになる偉大なるティル・リッシュの腐界開拓の物語である。
※ネオページ、小説家になろう、カクヨムでも公開しています
婚約破棄をしておけば
あんど もあ
ファンタジー
王太子アントワーヌの婚約者のレアリゼは、アントワーヌに嫌われていた。男を立てぬ女らしくないレアリゼが悪い、と皆に思われて孤立無援なレアリゼ。彼女は報われぬままひたすら国のために働いた……と思われていたが実は……。
追放されたけど実は世界最強でした ~元下僕の俺、気ままに旅していたら神々に愛されてた件~
fuwamofu
ファンタジー
「お前なんか要らない」と勇者パーティから追放された青年リオ。
しかし彼は知らなかった。自分が古代最強の血筋であり、封印級スキル「創世の権能」を無意識に使いこなしていたことを。
気ままな旅の途中で救ったのは、王女、竜族、聖女、そして神。彼女たちは次々とリオに惹かれていく。
裏切った勇者たちは没落し、リオの存在はやがて全大陸を巻き込む伝説となる――。
無自覚にチートでハーレムな最強冒険譚、ここに開幕!
転生美女は元おばあちゃん!同じ世界の愛し子に転生した孫を守る為、エルフ姉妹ともふもふたちと冒険者になります!《『転生初日に~』スピンオフ》
ひより のどか
ファンタジー
目が覚めたら知らない世界に。しかもここはこの世界の神様達がいる天界らしい。そこで驚くべき話を聞かされる。
私は前の世界で孫を守って死に、この世界に転生したが、ある事情で長いこと眠っていたこと。
そして、可愛い孫も、なんと隣人までもがこの世界に転生し、今は地上で暮らしていること。
早く孫たちの元へ行きたいが、そうもいかない事情が⋯
私は孫を守るため、孫に会うまでに強くなることを決意する。
『待っていて私のかわいい子⋯必ず、強くなって会いに行くから』
そのために私は⋯
『地上に降りて冒険者になる!』
これは転生して若返ったおばあちゃんが、可愛い孫を今度こそ守るため、冒険者になって活躍するお話⋯
☆。.:*・゜☆。.:*・゜
こちらは『転生初日に妖精さんと双子のドラゴンと家族になりました。もふもふとも家族になります!』の可愛いくまの編みぐるみ、おばあちゃんこと凛さんの、天界にいる本体が主人公!
が、こちらだけでも楽しんでいただけるように頑張ります。『転生初日に~』共々、よろしくお願いいたします。
また、全くの別のお話『小さな小さな花うさぎさん達に誘われて』というお話も始めました。
こちらも、よろしくお願いします。
*8/11より、なろう様、カクヨム様、ノベルアップ、ツギクルさんでも投稿始めました。アルファポリスさんが先行です。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
異世界人生を楽しみたい そのためにも赤ん坊から努力する
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は朝霧 雷斗(アサギリ ライト)
前世の記憶を持ったまま僕は別の世界に転生した
生まれてからすぐに両親の持っていた本を読み魔法があることを学ぶ
魔力は筋力と同じ、訓練をすれば上達する
ということで努力していくことにしました
王太子に愛されないので、隣国王子に拾われました
鍛高譚
恋愛
「王太子妃として、私はただの飾り――それなら、いっそ逃げるわ」
オデット・ド・ブランシュフォール侯爵令嬢は、王太子アルベールの婚約者として育てられた。誰もが羨む立場のはずだったが、彼の心は愛人ミレイユに奪われ、オデットはただの“形式だけの妻”として冷遇される。
「君との結婚はただの義務だ。愛するのはミレイユだけ」
そう嘲笑う王太子と、勝ち誇る愛人。耐え忍ぶことを強いられた日々に、オデットの心は次第に冷え切っていった。だが、ある日――隣国アルヴェールの王子・レオポルドから届いた一通の書簡が、彼女の運命を大きく変える。
「もし君が望むなら、私は君を迎え入れよう」
このまま王太子妃として屈辱に耐え続けるのか。それとも、自らの人生を取り戻すのか。
オデットは決断する。――もう、アルベールの傀儡にはならない。
愛人に嘲笑われた王妃の座などまっぴらごめん!
王宮を飛び出し、隣国で新たな人生を掴み取ったオデットを待っていたのは、誠実な王子の深い愛。
冷遇された令嬢が、理不尽な白い結婚を捨てて“本当の幸せ”を手にする
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる