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第20話 探検家クマちゃん
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クマちゃんは考えた。
お家が無い。
お家が無くなってしまった時はどうすればいいのだろう。
中に居なくても杖を振って元の場所へ戻ることは可能だろうか。
もしもギルドに帰れたとしても、この場所へもう一度来れるのか。
今は家の周り、いや、元家の周りを調べて良いかんじの石を手に入れるべきなのでは。
勇敢なクマちゃんは探索続行を決意する。
とにかく、それらしい石を見つけて早く帰らねば。
近くを見回し、地面に目を凝らす。
しかしこの辺りにあるのは普通の石にしか見えなかった。
クマちゃんはあまり重いものは持てないのだ。
ただの石まで持って帰ることは出来ない。
目に付く花や木の実を少しずつ採集し、リュックにしまいながら先を進む。
少しだけ開けた場所に出ると、小さな泉があった。
周りには様々な石が散りばめられるように落ちている。
石はキラキラと光り、水面が反射し鮮やかに煌めく。
深い森の中で見つけた不思議な水辺。
そこは誰もが息を呑む、幻想的で美しい場所だった。
しかし、物欲に支配されているクマちゃんは景色を楽しむことなく、持てる分だけ綺麗な石を拾いリュックに詰め込んだ。
欲望にまみれたクマちゃんは、もっと凄い石を探すため、もう少しだけ先へ進むことにした。
おそらく幻想的だった泉を抜け奥へ進んでいくと、何か、ガサガサと葉が擦れるような音がする。
「お前……、何故こんな所に居る? ルークはどうした」
音の方から、右手に細長い剣を持った男が草を掻き分けながら現れ、クマちゃんに凍えるような冷たい声を掛けた。
冷たく整った顔立ちの砂色の髪の男は、眉間に皺を寄せ、黒い革の手袋をはめた手で剣をしまい、話を続ける。
「どうやって此処まで来たのか知らないが、今の森はお前のような、戦えない者が居て良い場所ではない」
男はふわふわの可愛いクマちゃんに冷たすぎる言葉を掛け、――そっともこもこを抱き上げると、そのまま歩き出した。
顔も声も美しいが、とにかく冷たい男性は、その外見とは裏腹に行動は優しい。
時々黒い革の手袋をはめた手でクマちゃんの顎の下を撫でながら、迷子らしいもこもこをギルドへ届けるため、男は森を後にした。
◇
「なんだあれは……」
ギルドに戻った美しく冷たい声の男は、彼が森に向かう前には無かったはずの〈クマちゃんのお店〉を凍えるような目つきで睨みつけている。
だが目的を達成する方が重要らしい彼は、怪しいそれからスッと視線を外し、もこもこを抱えたまま立入禁止区画の奥へ進んでいった。
「まさか、森で何かあったのか?」
通常より大分早い時間に森から戻ってきた男を見たマスターが、真剣な表情で彼に尋ねる。
「いや。大型の数は多いがそれ以外の異変は無い。それより、こいつが森の中にひとりで居たが、何故誰も付いていない。今の森が危険な事はマスターにも解っているはずだ」
男は抱えていたもこもこをそっと目の前の机に降ろし、凍えるような美声でマスターを批難した。
声は冷たいが、机の上からつぶらな黒い瞳で男を見つめているクマちゃんを柔らかく撫でる手付きは、優しく温かい。
「森だと? さっきまでその白いのは、酒場の変な建物の中にいたはずだ。俺も、数時間前までこいつと一緒だった。職員には、こいつが外に出ようとしたら止めるように言ってある。森なんぞ、この白いのひとりで……」
眉間に皺を寄せ、目の前の男と話していたマスターは途中でふと考え込むと、
「いや、そうか。……こいつが他にどんな力を持っているのか、俺には判らねぇ。移動くらいなら、出来てもおかしくはねぇか……」
顎髭をさわりながらクマちゃんを見つめ、呟くように続けた。
「すまなかったな、クライヴ。この件は、俺がルークに確認を取っておく。他に問題がねぇなら、お前は仕事に戻ってくれ。お前みたいな強いのが途中で居なくなると、困る奴らも出てくる」
「了解した」
クライヴと呼ばれた男は納得のいかない顔のまま、冷たく美しい声を響かせた。
黒革の手袋と冷たそうな雰囲気が印象的な彼は、クマちゃんの顎の下をもう一度優しく撫でてから、踵を返し部屋を出ていった。
「お前、瞬間移動まで出来るのか」
クライヴが出ていくのを見届けたマスターが、疲れたように椅子に座る。
そうして額を押さえ、誰に言うともなく呟いた。
「……まぁ、お前みたいな生き物自体、目にしたのは初めてだ。……今更、おかしな点がひとつやふたつ増えたからといって、いちいち驚いてたら身がもたねぇか……」
クマちゃんは、また元気が無くなってしまったマスターを見て思った。
大変だ。早く牛乳を飲ませないと。
マスターの受難は続く。
お家が無い。
お家が無くなってしまった時はどうすればいいのだろう。
中に居なくても杖を振って元の場所へ戻ることは可能だろうか。
もしもギルドに帰れたとしても、この場所へもう一度来れるのか。
今は家の周り、いや、元家の周りを調べて良いかんじの石を手に入れるべきなのでは。
勇敢なクマちゃんは探索続行を決意する。
とにかく、それらしい石を見つけて早く帰らねば。
近くを見回し、地面に目を凝らす。
しかしこの辺りにあるのは普通の石にしか見えなかった。
クマちゃんはあまり重いものは持てないのだ。
ただの石まで持って帰ることは出来ない。
目に付く花や木の実を少しずつ採集し、リュックにしまいながら先を進む。
少しだけ開けた場所に出ると、小さな泉があった。
周りには様々な石が散りばめられるように落ちている。
石はキラキラと光り、水面が反射し鮮やかに煌めく。
深い森の中で見つけた不思議な水辺。
そこは誰もが息を呑む、幻想的で美しい場所だった。
しかし、物欲に支配されているクマちゃんは景色を楽しむことなく、持てる分だけ綺麗な石を拾いリュックに詰め込んだ。
欲望にまみれたクマちゃんは、もっと凄い石を探すため、もう少しだけ先へ進むことにした。
おそらく幻想的だった泉を抜け奥へ進んでいくと、何か、ガサガサと葉が擦れるような音がする。
「お前……、何故こんな所に居る? ルークはどうした」
音の方から、右手に細長い剣を持った男が草を掻き分けながら現れ、クマちゃんに凍えるような冷たい声を掛けた。
冷たく整った顔立ちの砂色の髪の男は、眉間に皺を寄せ、黒い革の手袋をはめた手で剣をしまい、話を続ける。
「どうやって此処まで来たのか知らないが、今の森はお前のような、戦えない者が居て良い場所ではない」
男はふわふわの可愛いクマちゃんに冷たすぎる言葉を掛け、――そっともこもこを抱き上げると、そのまま歩き出した。
顔も声も美しいが、とにかく冷たい男性は、その外見とは裏腹に行動は優しい。
時々黒い革の手袋をはめた手でクマちゃんの顎の下を撫でながら、迷子らしいもこもこをギルドへ届けるため、男は森を後にした。
◇
「なんだあれは……」
ギルドに戻った美しく冷たい声の男は、彼が森に向かう前には無かったはずの〈クマちゃんのお店〉を凍えるような目つきで睨みつけている。
だが目的を達成する方が重要らしい彼は、怪しいそれからスッと視線を外し、もこもこを抱えたまま立入禁止区画の奥へ進んでいった。
「まさか、森で何かあったのか?」
通常より大分早い時間に森から戻ってきた男を見たマスターが、真剣な表情で彼に尋ねる。
「いや。大型の数は多いがそれ以外の異変は無い。それより、こいつが森の中にひとりで居たが、何故誰も付いていない。今の森が危険な事はマスターにも解っているはずだ」
男は抱えていたもこもこをそっと目の前の机に降ろし、凍えるような美声でマスターを批難した。
声は冷たいが、机の上からつぶらな黒い瞳で男を見つめているクマちゃんを柔らかく撫でる手付きは、優しく温かい。
「森だと? さっきまでその白いのは、酒場の変な建物の中にいたはずだ。俺も、数時間前までこいつと一緒だった。職員には、こいつが外に出ようとしたら止めるように言ってある。森なんぞ、この白いのひとりで……」
眉間に皺を寄せ、目の前の男と話していたマスターは途中でふと考え込むと、
「いや、そうか。……こいつが他にどんな力を持っているのか、俺には判らねぇ。移動くらいなら、出来てもおかしくはねぇか……」
顎髭をさわりながらクマちゃんを見つめ、呟くように続けた。
「すまなかったな、クライヴ。この件は、俺がルークに確認を取っておく。他に問題がねぇなら、お前は仕事に戻ってくれ。お前みたいな強いのが途中で居なくなると、困る奴らも出てくる」
「了解した」
クライヴと呼ばれた男は納得のいかない顔のまま、冷たく美しい声を響かせた。
黒革の手袋と冷たそうな雰囲気が印象的な彼は、クマちゃんの顎の下をもう一度優しく撫でてから、踵を返し部屋を出ていった。
「お前、瞬間移動まで出来るのか」
クライヴが出ていくのを見届けたマスターが、疲れたように椅子に座る。
そうして額を押さえ、誰に言うともなく呟いた。
「……まぁ、お前みたいな生き物自体、目にしたのは初めてだ。……今更、おかしな点がひとつやふたつ増えたからといって、いちいち驚いてたら身がもたねぇか……」
クマちゃんは、また元気が無くなってしまったマスターを見て思った。
大変だ。早く牛乳を飲ませないと。
マスターの受難は続く。
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