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第356話 魔王様の趣深い『ああ』の意味。まったりと休憩中なクマちゃん達。
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『高級素材ちゃん』をたくちゃん手に入れ、富豪になったクマちゃん達は、現在まったりと過ごしている。
◇
ウィルの花畑だけでなく、他の仲間達のそれにも、たくさんの妖精達が集まってきていた。『クマちゃ……!』と。
テチテチテチ! テチテチテチ! 素晴らしい高速猫パンチをくらった飴細工の花たちから、光の玉がふわりと浮かび上がる。
次々と送られる『クマちゃんはちみつちゃん』
彼らのもと――つまり、彼らがテーブルに置いている『何でもかんでも高速で仕舞ってくれるクマちゃんカードケース』へと。
テチテチテチ! テチテチテチ!
はちみつちゃんが妖精ちゃんの肉球によって作られてゆく。
まるで何かの職人のように、小さなお手々を休めることなく。
クマちゃん曰く、みつばち妖精クマちゃん達は慎重な性格で、めったに姿を現さないが、一度職場(素晴らしい花畑のことだろう)を決めると猛烈な勢いで働くらしい。
実に頑張り屋さんな、働きバチクマちゃんである。
リオは自身の選んだお菓子の椅子『背凭れの横にぶら下がっている可愛いクマちゃん像付き』に座り、その様子をまったりと眺めていた。
彼の手が、目の前のテーブルに置かれた、冷えたグラスへ伸びる。
それとほぼ同時に、『マスターの花畑から出張中のカフェ店員妖精クマちゃん』が、テーブルの上をヨチヨチヨチヨチ! と素早く駆けだす。
小さなお手々には、注文伝票。きゅ、と握ったまま、彼を見上げる。
『ご注文ちゃんですね……』と。どういうわけか、注文の気配を感じ取ってしまったらしい。
「…………」
リオはゆっくりと頷いた。断れぬ――。幻影だとしても、見た目はどうみてもクマちゃん。つぶらな瞳が彼の心を責める。
『ご注文ちゃんですね……』と。さすが、諦めの悪い猫ちゃんのようなクマちゃんが作った幻影である。諦める気がない猫の瞳だ。
『ココアクッキーテーブル。小さなカゴの中でおねんねする赤ちゃんクマちゃん像付き』の上にある冷えっ冷えのグラスは見えていないのか。
それともテーブルにまで『妖精クマちゃん用のドア』を置いてしまった己が悪いのか。
とにかく『二杯目ちゃんもどうぞ……』ということだろう。
「じゃあ……水……」と言った瞬間に隣のテーブルから飛ぶ、衝撃的なことを聞いてしまった死神のような男が無意識に放つ吹雪。
「……は止めて、アイスティーで」
日に日に摂取する水分の量が増えているような――。そして癒しの力を多分に含んだ水分のおかげで、魔力が増えているような。
そんなことを彼が思う前に、死神のいるテーブルから、渋い声が聞こえた。「……うちの妖精が、すまんな」と。
「あのドアは可愛らしいだけでなく、機能性にも非常に優れているね」
おそらく全員にオススメして回ったであろう犯人が、涼やかな声で『妖精ちゃんが自由にヨチヨチできるドア』を称賛する。
実に、南国の鳥のように自由に生きる男らしい意見である。お前のせいだろう。彼はそう言われたことがないのだろうか。
「ああ」
色気のある低い声が、『もこもこした妖精ちゃんが出入りできるドア』あるいは『菓子の国のカタログから購入した商品』、を通じて『そのカタログを作ったもこもこ』――帰結として『もこもこと菓子界すべてを統べる素晴らしきクマの赤ちゃん』、端的に言うと『クマちゃん』を称賛する。
「クマちゃ、クマちゃ」
大好きな彼に褒められた赤ちゃんが『クマちゃ』と喜ぶ。
彼のお手々に優しく撫でられ、口元にリンゴジュースを運んでもらっている。
「なんだろ、今なんかめっちゃもやっとした気がする」
なんでも疑う男リオはルークの『ああ』から何かを感じ取ったが、詳細は分からなかった。
『詳細』
それは、麗しき魔王様なルーク様の崇高なお考えがもとになっている趣深いアレ。
『つまり、この世で起こる素晴らしき出来事のすべてはクマちゃんのおかげ計画』は常時進行していて、怠そうで風雅な『ああ』にはすべてが詰まっている、ということなのだ。
一人用の席でゆったりとワインを飲んでいた高位で高貴なお兄さんは、魔王の『ああ』に相槌を打つかのように、ゆるりと瞬きをした。
◇
ウィルの花畑だけでなく、他の仲間達のそれにも、たくさんの妖精達が集まってきていた。『クマちゃ……!』と。
テチテチテチ! テチテチテチ! 素晴らしい高速猫パンチをくらった飴細工の花たちから、光の玉がふわりと浮かび上がる。
次々と送られる『クマちゃんはちみつちゃん』
彼らのもと――つまり、彼らがテーブルに置いている『何でもかんでも高速で仕舞ってくれるクマちゃんカードケース』へと。
テチテチテチ! テチテチテチ!
はちみつちゃんが妖精ちゃんの肉球によって作られてゆく。
まるで何かの職人のように、小さなお手々を休めることなく。
クマちゃん曰く、みつばち妖精クマちゃん達は慎重な性格で、めったに姿を現さないが、一度職場(素晴らしい花畑のことだろう)を決めると猛烈な勢いで働くらしい。
実に頑張り屋さんな、働きバチクマちゃんである。
リオは自身の選んだお菓子の椅子『背凭れの横にぶら下がっている可愛いクマちゃん像付き』に座り、その様子をまったりと眺めていた。
彼の手が、目の前のテーブルに置かれた、冷えたグラスへ伸びる。
それとほぼ同時に、『マスターの花畑から出張中のカフェ店員妖精クマちゃん』が、テーブルの上をヨチヨチヨチヨチ! と素早く駆けだす。
小さなお手々には、注文伝票。きゅ、と握ったまま、彼を見上げる。
『ご注文ちゃんですね……』と。どういうわけか、注文の気配を感じ取ってしまったらしい。
「…………」
リオはゆっくりと頷いた。断れぬ――。幻影だとしても、見た目はどうみてもクマちゃん。つぶらな瞳が彼の心を責める。
『ご注文ちゃんですね……』と。さすが、諦めの悪い猫ちゃんのようなクマちゃんが作った幻影である。諦める気がない猫の瞳だ。
『ココアクッキーテーブル。小さなカゴの中でおねんねする赤ちゃんクマちゃん像付き』の上にある冷えっ冷えのグラスは見えていないのか。
それともテーブルにまで『妖精クマちゃん用のドア』を置いてしまった己が悪いのか。
とにかく『二杯目ちゃんもどうぞ……』ということだろう。
「じゃあ……水……」と言った瞬間に隣のテーブルから飛ぶ、衝撃的なことを聞いてしまった死神のような男が無意識に放つ吹雪。
「……は止めて、アイスティーで」
日に日に摂取する水分の量が増えているような――。そして癒しの力を多分に含んだ水分のおかげで、魔力が増えているような。
そんなことを彼が思う前に、死神のいるテーブルから、渋い声が聞こえた。「……うちの妖精が、すまんな」と。
「あのドアは可愛らしいだけでなく、機能性にも非常に優れているね」
おそらく全員にオススメして回ったであろう犯人が、涼やかな声で『妖精ちゃんが自由にヨチヨチできるドア』を称賛する。
実に、南国の鳥のように自由に生きる男らしい意見である。お前のせいだろう。彼はそう言われたことがないのだろうか。
「ああ」
色気のある低い声が、『もこもこした妖精ちゃんが出入りできるドア』あるいは『菓子の国のカタログから購入した商品』、を通じて『そのカタログを作ったもこもこ』――帰結として『もこもこと菓子界すべてを統べる素晴らしきクマの赤ちゃん』、端的に言うと『クマちゃん』を称賛する。
「クマちゃ、クマちゃ」
大好きな彼に褒められた赤ちゃんが『クマちゃ』と喜ぶ。
彼のお手々に優しく撫でられ、口元にリンゴジュースを運んでもらっている。
「なんだろ、今なんかめっちゃもやっとした気がする」
なんでも疑う男リオはルークの『ああ』から何かを感じ取ったが、詳細は分からなかった。
『詳細』
それは、麗しき魔王様なルーク様の崇高なお考えがもとになっている趣深いアレ。
『つまり、この世で起こる素晴らしき出来事のすべてはクマちゃんのおかげ計画』は常時進行していて、怠そうで風雅な『ああ』にはすべてが詰まっている、ということなのだ。
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