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第359話 なんでもできる肉球。まったりとした空間。仲良しな彼ら。
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現在クマちゃんは、天才インテリアコーディネーターとして皆ちゃんのお話を聞いている。
「クマちゃ……」と。
◇
彼らは愛らしいもこもこの『クマちゃ』にじっと耳を傾けた。
『サンルームちゃん』から室内へ入ってきた死神が、危うい目つきでもこもこの口元を見ている。
「クマちゃ、クマちゃ、クマちゃ、クマちゃ……」
『妖精ちゃ、幻影ちゃ、いろいろちゃ、お仕事ちゃ……』
幻影ちゃんな妖精ちゃんは、みなちゃんクマちゃんと同じように優秀ちゃんです……。
いろいろなお仕事ちゃんができます……。
お菓子の国の可愛い住人、妖精クマちゃんは、幻影ちゃんという枠を超え、クマちゃん並みに優秀らしい。
「なるほどぉ」
うさんくさい男リオが頷く。「クマちゃん可愛いねー」と。
「では、このドアはクマちゃんのオススメの場所に設置させてもらおうかな」
『いろいろなお仕事ちゃん』をしやすい場所がいいだろう。
ウィルは優しい笑みを浮かべた。
「クマウニーちゃんもそのほうが過ごしやすいだろうからね」
彼の言葉を聞いていた『ボロを纏いしクマウニーちゃん』が、ハッと、感激したようにもこもこのお口を押さえる。
同じようにクマちゃんもハッとお口を押さえていた。
◇
幻影妖精はもこもこの分身のような存在なのだろうか。
どの子ももこもこと瓜二つである。僅かな大きさの違い、服装の違いくらいでしか見分けはつかない。
そのため全妖精、甲乙つけがたいほど愛くるしい。死神の健康を損ねる仕様だ。
頑固野郎がサンルームで何かを言っている。
「すまんな……。お前のアイスはあとで買ってやる……。む、こちらの妖精から本体に栄養は届くのか……?」
ヤツの頭の中では『もこもこ』と『もこもこ妖精』は繋がっているらしい。
そんな馬鹿な。だが絶対に違うと決めつけるほど『妖精クマちゃん』のすべてを知っているわけではない。
栄養というより、『妖精』から『本体』に癒しの力が届いている可能性はある。
もしかすると『しあわせちゃん』な感情も共有しているかもしれない。さすがはふわふわしたもこもこである。
新米ママリオはそんなことを考えながら、我が子とカタログショッピングを楽しんでいた。
現在座っているソファ『ふわふわ半円おくつろぎソファ。おくつろぎ妖精クマちゃん付き』もカタログで購入した商品だ。
どこらへんが『おくつろぎ』なのかというと、『子猫のお昼寝ポーズ』で寝ている妖精が、ふわふわの背凭れで寝ているのである。
リオは背凭れの妖精へチラ、と視線を向け、つぎにクマちゃんを見た。
ソファでくつろぐルークの腕で仰向けになり、お目目をつぶっている。
そして時々、寝ぼけている子猫のようにピピピッ! とお手々の先を振るのだ。
「最高すぎる……」
しみじみと呟き、魔王様に願い出る。
「俺もクマちゃん抱っこしたい」と。
ルークは答えない。『後ろにいるだろ』とも言わない。
なんて憎らしい男なのか。分かっていて黙っているのだ。
もこもこで、ふわふわで、生温かくて、お鼻が湿っていて、愛らしい声で「クマちゃ」とお話しする、唯一無二のもこもこを独り占めするために。
しかし彼らには仕事がある。
あと二時間もすれば、危険な場所へ連れて行けない『リオの大事な赤ちゃん』は手元に戻ってくるだろう。
◇
ふわふわソファの寝心地を確かめていたクマちゃんはパチ、とお目目を開けた。
「起きた? おはよークマちゃん」
「クマちゃ」
仲良しのリオちゃんに挨拶を返し、ルークの手に湿ったお鼻をぴと、とくっつける。
おはようございます、という意味だ。
「クマちゃ……」
いま何個ちゃんくらいでしょうか……。
「え、数えてないけど」
リオは部屋を見渡した。家具のことだろうかと。
もこもこがお昼寝をはじめてからそんなに時間が経っていない。二十分くらいか。
「誰か分かる?」
「ん? ソファが二つと、作業台、敷物、……あの窓の下のはなんだ?」
ソファでカタログを眺めていたマスターは顔を上げ、顎鬚をさわりながら渋い顔をした。
「丸い……カゴか?」
「あれはクマウニーちゃんの休憩所のつもりで置いたのだけれど、名前は……『クマウニーオフィスちゃん』だったかな?」
「名前が休憩してないよね。ドアって何個置いたっけ」
「七つだ――」
クライヴが冷たい美声を響かせる。リオは頷いた。「置きすぎでしょ」
「クマちゃ、クマちゃ……」
『そふぁちゃ、そふぁちゃ……』
クマちゃんは両手の肉球を見ながら一生懸命数を数えている。
「やばいクソ可愛い……」
なんて可愛らしい生き物なのか。
数え終わるまで待つべきか。答えるべきか。
いや成長のさまたげに……。
「クマちゃ、クマちゃ……」
『作業ちゃ、しきものちゃ……』
新米ママが赤子の教育について悩んでいたとき。
美しいギルド職員が申し訳なさそうに視線を落とす。そしてサラ――と零れ落ちた髪を耳にかけつつ白状した。
「すいません……。美しい俺が『アンメちゃーク・マ・ランプちゃん』を五つ買ったという報告が遅れたばっかりに……」
「クマちゃ……!」
「報告が遅いかどうかより名前が気になるんだけど」
両手の肉球を激しく震わせ「クマちゃ……!」『足りないちゃ……!』と動揺していたクマちゃんを「よしよし、大丈夫だよー。クマちゃん可愛いねー」となだめる。
落ち着いたところで聞き出すと、とにかく二十個の家具が必要であるという。
「ではあと三つだね。食事用のテーブルと……。うーん、ベッドを置くには場所が足りないかな」
「クマちゃ……」
「いやお風呂ちゃんはもっと足りないからね。外のほうがいいんじゃね?」
「クマちゃ……」
「あ~、この『食器セットちゃん、給仕妖精クマちゃん付き』はどうだ?」
「クマちゃ……」
「えぇ……それ絶対給仕できないやつじゃん。可愛くこぼしちゃう感じの」
「クマちゃ!」
「まぁ買うけど」
「貴様――」
「クマちゃ……」と。
◇
彼らは愛らしいもこもこの『クマちゃ』にじっと耳を傾けた。
『サンルームちゃん』から室内へ入ってきた死神が、危うい目つきでもこもこの口元を見ている。
「クマちゃ、クマちゃ、クマちゃ、クマちゃ……」
『妖精ちゃ、幻影ちゃ、いろいろちゃ、お仕事ちゃ……』
幻影ちゃんな妖精ちゃんは、みなちゃんクマちゃんと同じように優秀ちゃんです……。
いろいろなお仕事ちゃんができます……。
お菓子の国の可愛い住人、妖精クマちゃんは、幻影ちゃんという枠を超え、クマちゃん並みに優秀らしい。
「なるほどぉ」
うさんくさい男リオが頷く。「クマちゃん可愛いねー」と。
「では、このドアはクマちゃんのオススメの場所に設置させてもらおうかな」
『いろいろなお仕事ちゃん』をしやすい場所がいいだろう。
ウィルは優しい笑みを浮かべた。
「クマウニーちゃんもそのほうが過ごしやすいだろうからね」
彼の言葉を聞いていた『ボロを纏いしクマウニーちゃん』が、ハッと、感激したようにもこもこのお口を押さえる。
同じようにクマちゃんもハッとお口を押さえていた。
◇
幻影妖精はもこもこの分身のような存在なのだろうか。
どの子ももこもこと瓜二つである。僅かな大きさの違い、服装の違いくらいでしか見分けはつかない。
そのため全妖精、甲乙つけがたいほど愛くるしい。死神の健康を損ねる仕様だ。
頑固野郎がサンルームで何かを言っている。
「すまんな……。お前のアイスはあとで買ってやる……。む、こちらの妖精から本体に栄養は届くのか……?」
ヤツの頭の中では『もこもこ』と『もこもこ妖精』は繋がっているらしい。
そんな馬鹿な。だが絶対に違うと決めつけるほど『妖精クマちゃん』のすべてを知っているわけではない。
栄養というより、『妖精』から『本体』に癒しの力が届いている可能性はある。
もしかすると『しあわせちゃん』な感情も共有しているかもしれない。さすがはふわふわしたもこもこである。
新米ママリオはそんなことを考えながら、我が子とカタログショッピングを楽しんでいた。
現在座っているソファ『ふわふわ半円おくつろぎソファ。おくつろぎ妖精クマちゃん付き』もカタログで購入した商品だ。
どこらへんが『おくつろぎ』なのかというと、『子猫のお昼寝ポーズ』で寝ている妖精が、ふわふわの背凭れで寝ているのである。
リオは背凭れの妖精へチラ、と視線を向け、つぎにクマちゃんを見た。
ソファでくつろぐルークの腕で仰向けになり、お目目をつぶっている。
そして時々、寝ぼけている子猫のようにピピピッ! とお手々の先を振るのだ。
「最高すぎる……」
しみじみと呟き、魔王様に願い出る。
「俺もクマちゃん抱っこしたい」と。
ルークは答えない。『後ろにいるだろ』とも言わない。
なんて憎らしい男なのか。分かっていて黙っているのだ。
もこもこで、ふわふわで、生温かくて、お鼻が湿っていて、愛らしい声で「クマちゃ」とお話しする、唯一無二のもこもこを独り占めするために。
しかし彼らには仕事がある。
あと二時間もすれば、危険な場所へ連れて行けない『リオの大事な赤ちゃん』は手元に戻ってくるだろう。
◇
ふわふわソファの寝心地を確かめていたクマちゃんはパチ、とお目目を開けた。
「起きた? おはよークマちゃん」
「クマちゃ」
仲良しのリオちゃんに挨拶を返し、ルークの手に湿ったお鼻をぴと、とくっつける。
おはようございます、という意味だ。
「クマちゃ……」
いま何個ちゃんくらいでしょうか……。
「え、数えてないけど」
リオは部屋を見渡した。家具のことだろうかと。
もこもこがお昼寝をはじめてからそんなに時間が経っていない。二十分くらいか。
「誰か分かる?」
「ん? ソファが二つと、作業台、敷物、……あの窓の下のはなんだ?」
ソファでカタログを眺めていたマスターは顔を上げ、顎鬚をさわりながら渋い顔をした。
「丸い……カゴか?」
「あれはクマウニーちゃんの休憩所のつもりで置いたのだけれど、名前は……『クマウニーオフィスちゃん』だったかな?」
「名前が休憩してないよね。ドアって何個置いたっけ」
「七つだ――」
クライヴが冷たい美声を響かせる。リオは頷いた。「置きすぎでしょ」
「クマちゃ、クマちゃ……」
『そふぁちゃ、そふぁちゃ……』
クマちゃんは両手の肉球を見ながら一生懸命数を数えている。
「やばいクソ可愛い……」
なんて可愛らしい生き物なのか。
数え終わるまで待つべきか。答えるべきか。
いや成長のさまたげに……。
「クマちゃ、クマちゃ……」
『作業ちゃ、しきものちゃ……』
新米ママが赤子の教育について悩んでいたとき。
美しいギルド職員が申し訳なさそうに視線を落とす。そしてサラ――と零れ落ちた髪を耳にかけつつ白状した。
「すいません……。美しい俺が『アンメちゃーク・マ・ランプちゃん』を五つ買ったという報告が遅れたばっかりに……」
「クマちゃ……!」
「報告が遅いかどうかより名前が気になるんだけど」
両手の肉球を激しく震わせ「クマちゃ……!」『足りないちゃ……!』と動揺していたクマちゃんを「よしよし、大丈夫だよー。クマちゃん可愛いねー」となだめる。
落ち着いたところで聞き出すと、とにかく二十個の家具が必要であるという。
「ではあと三つだね。食事用のテーブルと……。うーん、ベッドを置くには場所が足りないかな」
「クマちゃ……」
「いやお風呂ちゃんはもっと足りないからね。外のほうがいいんじゃね?」
「クマちゃ……」
「あ~、この『食器セットちゃん、給仕妖精クマちゃん付き』はどうだ?」
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