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第4話
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アリーフはまず最初にこちらから先に打って出るべきか否かを考えた。スポーツの世界では先手必勝は常套句だが、この場合あちらの出方を見てから対処する方が得策かもしれない。
アリーフは今日は本当に薄着だったので靴どころか靴下すら持って来ていない、裸足にレ・ミゼラブルの蔓を足袋のように足首に巻きつけて厳寒を耐えている始末。走ることは難しい。こんな砂利やガラス片だらけの地面の上を子どものように駆け抜けるなど拷問に等しい。いくら再生すると言ったって痛いものは痛いのだ。
それが自分に降りかかる痛みなら尚のこと。
「ま、ガキにあれこれ対策練るのも男が下がるか」
アリーフはエンフィールド狙撃銃で少年の頭部をあいも変わらず遠慮無く撃ち抜く。彼は相手の出方を伺うなどそれらの策をかなぐり捨て、自分のプライドの守護を優先したのだ。
少年の側頭部に着弾した弾丸は普通なら風穴が穿ち、頭皮ごと中身の頭蓋や脳漿を露わにさせるはずだが、少年は僅かによろけて尻もちをついただけで、スコープから見たら流血すらしていなかった。
「赤外線スコープを持ってくるべきだったかな?」
アリーフは中学生のようにカッコつけて、舌打ちをしながら態勢を整える為に立ち上がろうと膝を曲げた少年の両肩と、更に再び弾丸に頭部を抉らせた。今度は柔らかそうな口内を狙ったはずだが、顎が吹き飛ぶことは無かった。何だか人というより射撃場のマネキン人形を撃ってる気分だな。アリーフは静かにそう思った。
続け様に三発も喰らった少年は流石に効いたのか、真後ろの壊れた喫茶店の電光掲示板にまで吹っ飛ぶと、もぞもぞと虫ケラの如く苦労しながら身体を仰向けにして苦しそうに立ち上がった。
「やれやれ弾切れだ、予備の弾倉を持ってないのが無念でならないよ。人類史上徹甲弾を4発喰らって立ち上がる人間がいただろうか? いないね」
アリーフは弾が切れた狙撃銃を捨てたりはしない。銃剣が付いているこれは利用価値をまだ無くしていないからだ。屠殺した牛の身体に要らない箇所が一つも無いように。
アリーフはガバメントを少年に向ける。
「だがもう両腕は使えないし、そんな頭じゃまともに思考も働くまい、そもそも君は普通なら新品のランドセルを背負ってる歳だ。この僕に勝ち目は無い。次はガバメントの弾丸を一点集中で君の眉間に向ける。其れがダメなら銃剣で滅多刺しだ。鳥葬に来るカラスに配慮して細かな肉片にしてやるよ」
レ・ミゼラブルを使ってもいいが、これはあくまで不意打ちでのみ通用する代物。2回目以降のこれは射程も短いどころか速度も遅いことに気付くので、動きを見てからでも楽々回避されてしまう。
「確か兄貴から教わった言葉で満身創痍っていうんだよな。こういうのは」
アリーフが予告通り少年の眉間に照準を合わせた時、ただのお飾りだと思っていた少年の背中の6本の黒翼が空気を吹き込んだみたいに膨れ上がり、互いに癒着して巨大な円形の黒い塊を背後に作った。
「......ん?」
アリーフがそれに視線を移したその瞬間、その塊はどろりと湯煎したチョコレートのように粘っこく溶けて、周囲の土を黒く這い、アリーフの両足首にどこか艶めかしく纏わり付いていた。
「ぶげぇぇぇぇぇぇっ!!!」
刹那、アリーフの身体は瞬間移動と言うべき神速で少年の方に引き寄せられたかと思うと少年に顔面を強かに蹴りつけられた。
とてもゴボウのような貧相な脚を持った少年の蹴りでは無い。不意を打たれた余りエンフィールドを離してしまった。
屈強な兵士すら遥かに上回る強靭な蹴りを、今までの返礼としてもろに顎に喰らったアリーフは一瞬意識がシャットダウンしたが、すぐさまガバメントを持つ腕を少年に向けた。
「がっ......」
しかしいつのまにか右手は自分の足元にあった。さっきの蹴りは片方の足で僕の顎を、もう片方で僕の右手を切断したのか。アリーフはそう考えながら切断した右手を見るが、変なことにシャツの袖は切断されておらず的確に右手のみを切断していた上に、断面には肌があった。レ・ミゼラブルの高速再生能力そのものだ。
「まさか...」
アリーフがか細く呻く最中、少年はアリーフの頭身より高く跳び上がると、そのままアリーフの頭頂部にプレス機のように重鈍なかかと落としを勢いよく両足で叩き込んだ。
「はばぁぁぁぉぉぁぁぁぁぁぁ!?」
錯乱状態の真っ只中にあったアリーフは自分が何をされた分からぬままただ一方的に蹂躙され、その愛らしい顔を泥濘と粉塵の中に擦り付け、前歯がへし折れ、眼球が潰れる感覚を味わうはめになった。
アリーフは何だかよく分からないがとりあえず混乱しながら思った。とりあえずこのガキは必ずぶっ殺す。
アリーフは今日は本当に薄着だったので靴どころか靴下すら持って来ていない、裸足にレ・ミゼラブルの蔓を足袋のように足首に巻きつけて厳寒を耐えている始末。走ることは難しい。こんな砂利やガラス片だらけの地面の上を子どものように駆け抜けるなど拷問に等しい。いくら再生すると言ったって痛いものは痛いのだ。
それが自分に降りかかる痛みなら尚のこと。
「ま、ガキにあれこれ対策練るのも男が下がるか」
アリーフはエンフィールド狙撃銃で少年の頭部をあいも変わらず遠慮無く撃ち抜く。彼は相手の出方を伺うなどそれらの策をかなぐり捨て、自分のプライドの守護を優先したのだ。
少年の側頭部に着弾した弾丸は普通なら風穴が穿ち、頭皮ごと中身の頭蓋や脳漿を露わにさせるはずだが、少年は僅かによろけて尻もちをついただけで、スコープから見たら流血すらしていなかった。
「赤外線スコープを持ってくるべきだったかな?」
アリーフは中学生のようにカッコつけて、舌打ちをしながら態勢を整える為に立ち上がろうと膝を曲げた少年の両肩と、更に再び弾丸に頭部を抉らせた。今度は柔らかそうな口内を狙ったはずだが、顎が吹き飛ぶことは無かった。何だか人というより射撃場のマネキン人形を撃ってる気分だな。アリーフは静かにそう思った。
続け様に三発も喰らった少年は流石に効いたのか、真後ろの壊れた喫茶店の電光掲示板にまで吹っ飛ぶと、もぞもぞと虫ケラの如く苦労しながら身体を仰向けにして苦しそうに立ち上がった。
「やれやれ弾切れだ、予備の弾倉を持ってないのが無念でならないよ。人類史上徹甲弾を4発喰らって立ち上がる人間がいただろうか? いないね」
アリーフは弾が切れた狙撃銃を捨てたりはしない。銃剣が付いているこれは利用価値をまだ無くしていないからだ。屠殺した牛の身体に要らない箇所が一つも無いように。
アリーフはガバメントを少年に向ける。
「だがもう両腕は使えないし、そんな頭じゃまともに思考も働くまい、そもそも君は普通なら新品のランドセルを背負ってる歳だ。この僕に勝ち目は無い。次はガバメントの弾丸を一点集中で君の眉間に向ける。其れがダメなら銃剣で滅多刺しだ。鳥葬に来るカラスに配慮して細かな肉片にしてやるよ」
レ・ミゼラブルを使ってもいいが、これはあくまで不意打ちでのみ通用する代物。2回目以降のこれは射程も短いどころか速度も遅いことに気付くので、動きを見てからでも楽々回避されてしまう。
「確か兄貴から教わった言葉で満身創痍っていうんだよな。こういうのは」
アリーフが予告通り少年の眉間に照準を合わせた時、ただのお飾りだと思っていた少年の背中の6本の黒翼が空気を吹き込んだみたいに膨れ上がり、互いに癒着して巨大な円形の黒い塊を背後に作った。
「......ん?」
アリーフがそれに視線を移したその瞬間、その塊はどろりと湯煎したチョコレートのように粘っこく溶けて、周囲の土を黒く這い、アリーフの両足首にどこか艶めかしく纏わり付いていた。
「ぶげぇぇぇぇぇぇっ!!!」
刹那、アリーフの身体は瞬間移動と言うべき神速で少年の方に引き寄せられたかと思うと少年に顔面を強かに蹴りつけられた。
とてもゴボウのような貧相な脚を持った少年の蹴りでは無い。不意を打たれた余りエンフィールドを離してしまった。
屈強な兵士すら遥かに上回る強靭な蹴りを、今までの返礼としてもろに顎に喰らったアリーフは一瞬意識がシャットダウンしたが、すぐさまガバメントを持つ腕を少年に向けた。
「がっ......」
しかしいつのまにか右手は自分の足元にあった。さっきの蹴りは片方の足で僕の顎を、もう片方で僕の右手を切断したのか。アリーフはそう考えながら切断した右手を見るが、変なことにシャツの袖は切断されておらず的確に右手のみを切断していた上に、断面には肌があった。レ・ミゼラブルの高速再生能力そのものだ。
「まさか...」
アリーフがか細く呻く最中、少年はアリーフの頭身より高く跳び上がると、そのままアリーフの頭頂部にプレス機のように重鈍なかかと落としを勢いよく両足で叩き込んだ。
「はばぁぁぁぉぉぁぁぁぁぁぁ!?」
錯乱状態の真っ只中にあったアリーフは自分が何をされた分からぬままただ一方的に蹂躙され、その愛らしい顔を泥濘と粉塵の中に擦り付け、前歯がへし折れ、眼球が潰れる感覚を味わうはめになった。
アリーフは何だかよく分からないがとりあえず混乱しながら思った。とりあえずこのガキは必ずぶっ殺す。
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