冥王さま、異世界に憧れる。~現地の神からいきなり貰った勇者スキルが全く使えない冥王とその妻は破壊神!?~

なまけものなのな

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異世界の人族の神

冥王、異世界にて魔物の脅威を知る。

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 コベソから渡された真白な布切れを口に当て馬車から降り、綺麗な緑の地に足を降ろしたが、目に入る光景が、緑と血のまだら模様で、血の匂いが風に乗って周囲に広がる。

「これは、激しさが段違いだな」
「埋めるか?」
「その方が良いのだろうけど。 この数はキツイぞ」

 コベソとトンド、腰に手をやってたり腕組みしながら面倒事に対処方法を探しているし、ユカリも倒れている兵士や騎士の間を通り、戦争跡の状況に心打たれているようだ。
 俺とペルセポネもコベソ達に近づき、仰向けやうつ伏せになった数多くの兵士や騎士の遺体を眺めていた。

「おかしくないか?」
「ハーデスさん?」
「この兵士、楔帷子の上に着ているやつ、見える所全部同じじゃないか?」
「あっ」

 驚くコベソとトンドは、数多くある死体を見渡して驚いている。すると、ユカリが戻ってきて「鎧とか着てる物全部同じ」と全く同じ事を言って状況に疑問を持っている。

「確かに、この兵士と騎士。 すれ違った奴らと同じだな」
「もしかしてだけど、この惨劇。 戦争では無い?」
「戦争なら回収するだろな。 一から作るよりか直した方が国の財政に関わるからなぁ。 トンド、死体から金目のもん奪うか……」
「そうするか。 置いていったんだ、要らないって事だろうからな」

 二人は御者をやっていた使用人も呼び三人で、死体を漁る。しかも慣れた手つきで鎧や服を剥ぎ取り、金銭的な物、武器も寝後削ぎ取り外している。
しかし、よく見るとコベソは、周囲を見渡して頷いた後、死体から武具を取り外していた。

「会頭これを」
「おお、ありがとうなアイテムバック。 トンドこれに」

 俺も回収を手伝おうかと声を掛けるが、断られコベソ達三人は、まるで落ちている物を軽々しく拾っている不思議な光景を俺は、まじまじと見ていた。
ただ、多数の死体がある草原等、冥界にいた時に幾度なく思い出せば鮮明に浮き出る光景。そんな場所にいるだけでもつまらないのに、眺めているのも久しぶりな光景だが、直ぐに飽きてしまっている。
 三人は、リュックサックの形したバックの口を広げ次々に死体から外した物を入れて、奥の方に向かうとトンドが、コベソを呼び出している。

「おいこれ! 死体の損傷が、進むにつれて酷くなるな」
「あぁ、俺もそれは感じた。 たしか、馬車の近くのヤツは凹んでたり砕けているだけだが、こっちに来ると体の部位が、千切れたのか無くなっている」

 遠くを見渡す俺は、いつの間にか、かなり先にいるユカリとペルセポネを発見する。
 ペルセポネは、何か探っているかのようでユカリに指図していて、そのユカリも目を青く発光し一つ一つ死体を凝視して、歩き出していのを見て俺は声を掛ける。

「二人とも、何してるんだ?」
「ほら、あの三人。 この死体の山からお宝探し始めたから私も」
「ペルセポネさんに頼まれて、魔法使えた奴いるか見てるんです」
「いたか?」
「それが、ユカリが『わかんない』って。 お手上げ」
「【鑑識眼】で確認しても全部『男性の死体』だけで魔法使ってたのかとか分からないですね」
「それじゃそれなりの服装とかでしか判別出来ないな」

 俺はこの周辺に、魔法使いっぽい格好の死体が無いか見回しをしながら話していたら、ペルセポネがトンドの方を指し死体を飛び越えて向かっていき、着いたらユカリを呼んで手招きをしていた。それに気づいたユカリも向かいペルセポネと共にトンドと会話をしている。

――――まるで死体の山だな。何かトラブルでもあったか?
――――もし、こんなに死亡した人間が沢山いたのが、俺らの世界だったなら、それこそ仕事が山積みで大変だ。これらの死んだ理由は撲殺やらか。でも、なんだこの死に方。もぎ取られた?傷害で一括りに処理か?

 首から上が無い兵士をここでは、複数見た。
 すると、ペルセポネとユカリと共にコベソが俺に近づきながら「これよく見るとあれだな。何かから逃げたけど突き飛ばされたり、踏み潰されたりとかだな」と身振り手振りしてくる。
 近づくコベソ達に俺は「これ、食ってるだろ。魔物か?」死体の損傷箇所を眺めるようにしていると、その後に来たトンドは、この地形や景色を見渡して喋る。

「この辺り魔物の活動多そうだな」
「多そうとしてもだ。 あれだけ兵がいたんだ。 こんなに被害出すか?」
「この辺りのなら、訓練された兵士やら問題無いと思うけどな。 仮にブラックサーペントやらブラックワイルドボアなど、人里には現れない魔物が現れたらどうだろうな」
「おいトンド。 それは無いだろ。 ブラックサーペントだぞ、ブラック!!滅多に目にかかる魔物じゃない」
「だけどな。 少し前にブラックサーペントいたと言うのも事実。しかも三匹」
「これの仕業。 もしかしてブラックサーペントか?」
「ブラックサーペントじゃ。 こんな食べ方しない。蛇なら丸呑みするだろうな」
「ねぇ、ハーデス。 貴方のその後ろにある黒い岩……」
「黒い岩?」

 振り返る俺は、見上げるほど高い、真っ黒に塗りつぶされた大きな岩があるがその岩肌は、違う少し毛の生え、そよ風に揺らめいている。

「だから、ブラックサーペントが人里に現れ、おや逃げてきたんだな」
「あれ、でけーな。 二階建てぐらいあるんじゃないか?」
「猪に追われた蛇が出てきているんだ、その猪ブラックサーペントより強い」
「あっちゃァ。 こりゃトンドの意見確実だな。 俺の【鑑識眼】でもその答え出てる。 そう言えば、セレヌの街で姉さんの受けた依頼って?」
「ん? ブラックワイルドボアの討伐」
「アレ倒せば姉さんの依頼達成だな」
「もしかして、この依頼書の魔物近くに居るってこと?」
「ああ、ハーデスさんの目の前に……」
「コベソ! 早く退散するぞ」
「ハーデスさん、姉さん。 お任せします」
「ええ、依頼受けて正解だわ」

 既に二本の剣を手に取って、口を結びながら笑顔になるペルセポネも、俺の目の前にいる黒い物体を見上げ、俺もハルバードを持ち少し間合いを取る。

『ブゥォォォオォォ』

 耳を澄ますと黒い物体より微かな音が鳴っていて、まるで呼吸をする否、いびきだ。

「ペルセポネ、コイツ寝てるぞ」
「起こしましょ。 暴れて何かやってくれると面白い」
「倒すなら今が好機!!」

 俺とペルセポネの間をユカリは、かなり速さで駆け抜け、黒い物体に両手で持つ剣を上から大きく仰け反りその反動の勢いで、振りかぶって斬りつける。

「斬った!!」

 黒い毛並みから滲み出る赤い液体が、すぅっと流れていると黒い物体から聴こえていた鼾の音が止まる。

『ブゥォォヨオッ』
「お嬢ちゃん、離れなっ!!」
「ユカリ危なっ」
「ウッギャア」

 黒い物体から何かが、飛び出しそれを両腕で防ごうするユカリだが、コベソとペルセポネの注意の合図に間に合わず、跳ね飛ばされ死体にぶつかりながら遠くまで転がる。
 その黒い物体、先程よりも高くなり地面から浮き四本の脚を地面に付かせ、『ブォン』と鳴きながら動き出し、大きな口を開け、脇には白く鋭利な牙が生え、真っ赤な眼光が俺たちを見下げている。

「猪……」
「コイツが」
「ペルセポネ。 これブラックワイルドボアなのか?」
「コベソが見てるのに教えてくれなし。 けど黒い猪って事だから」
「お嬢ちゃん大丈夫か? トンドあれを」
「ええ」
「そうだな。 待ってろ」

 俺とペルセポネは、武器を構え黒く大きい猪と対峙して、向こうも斬られて『ブォンブォン』威嚇しまくり俺たちに鋭い視線を突き刺してくる。
 その後ろではトンドが、小瓶の中身をユカリに飲ませている。

「コベソ!これあれか?」
「ハーデスさん。 あれだブラックワイルドボアだ」
「やった! あたり」
「向こうはものすごく怒っているが」
「さっきまで寝てたんですから、そりゃ怒るでしょ」
「だけどこの死体の山の近くで寝るなんて」
「だったら、もっと寝かせてやれば良いのよ」
「まさか?」

 コベソとトンドは、ユカリを介抱し少し遠ざかっていたが、跳ね飛ばさた痛みが回復したのか二人を置いてこちらに戻ってきて剣を構える。

「私も戦います」
「死なないでね」
「えっ? あ……は……はい……はい?」
「たぶん、あいつペルセポネは……」

 ペルセポネは二本の剣を巧みに振るい、ちまちまとブラックワイルドボアの斬りかかってはいるが、バタバタと飛び跳ねそれを避け、少し距離を取り離れて行くブラックワイルドボアの目が、ユカリの姿を捉える。

「猪がっ!!」
『ブォッ』
「あっ」

 ブラックワイルドボアは、瞬時に体の向きを変え額を正面にユカリに猛突進する。砂煙を舞散らして転がっている死体を跳ね除け、地鳴りを立たせユカリに迫る。
 猛追されるユカリは、少し足をずらし引き下がるも、そこから身動き取れず固まり顔から血の気が引いている。それを見て俺やコベソもユカリを呼ぶ。

「ユカリ!!」
「お嬢ちゃん」
「いっ……いいっ」

 ブラックワイルドボアの頭突きが、ユカリを捉え跳ね飛ばさ――――れてない。

「コイツぅ!」
『ブォョォォ』

 頭を左右上下振り回しまるで虫を払い除ける動きをするブラックワイルドボアの額に突き刺さるユカリの剣と片手で離さないようにしているユカリ「もう一押し!!」ブンブン振り回されているが、振り回されてたおかげで空いている手も剣を掴む。
 ユカリは、鋭く真剣な眼差しをし、ブラックワイルドボアの頭に足を着かせ腰を入れながら剣をグイッと押し込んでいる。
 それに苦しむブラックワイルドボアは、頭を大きく上げ、そのまま勢い付けてユカリを振り下ろそうと地面に鼻をぶつけ、少し目眩したのかフラフラと体を揺らしている。更に押し込むユカリの剣は鍔で止まると、フラフラしていたブラックワイルドボアの動きが止まり、そして赤い目が次第に白く変わる。
 ユカリは、埋まった刀身を抜くが、その穴から大量の血が噴き出して辺りを血の池に変えてしまった。

「まずいなこれ」
「血ぃくせーな」

 コベソとトンドは噴き出す血の雨と地面に貯まる血の池を呆然と眺めていたが、数多の死体も真っ赤に染められゆっくりと後退りし離れている。

「よし、私勝てた。 まさかですよ、レベル差がかけ離れているのに勝てるなんて!!」

 ただ武器であるハルバードを構えていただけの何もして無く状況観察だけしていた俺に、ユカリは嬉しい笑顔でブラックワイルドボアに向かって喜んでいるが、その近くにいたペルセポネが剣を鞘に収めるその音が、響く。

「「「「あっ!!」」」」

 ペルセポネは、目を閉じて静かな表情をし俺たち四人はただ、ブラックワイルドボアが積み木を崩した様にボロボロと崩れ地面に肉片が転がっていた。
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