冥王さま、異世界に憧れる。~現地の神からいきなり貰った勇者スキルが全く使えない冥王とその妻は破壊神!?~

なまけものなのな

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夢と野望の街アテルレナスへ

冥王、一人で魔物を狩りに行く。

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 揺れる馬車の中、俺達はゼレヌの街からローフェンを通りランドベルクの南に位置するクエンツの街に向かう。
 そこクエンツを抜け更に南下すると、ヒグマクスに入国しエビナの街が見えてくると言う。
 そう言うコベソだが、それ以降この馬車の中では沈黙が続く。
 連なって五台の馬車が、進むその真ん中には他の四台よりも一回り大きい幌馬車に俺達は乗っているが、沈黙に耐えた叫びが入る。

「うっあぁあぁっ!! なんなの? この沈黙っ」
「うっるさい奴だ」
「うるさいってなんなの? コベソ、貴方まで喋らないなんて……おっかしぃんじゃなぁい?」
「俺だって喋らん時もある。 お前さんだって本来なら喋らんだろ? エルフなんじゃから……」
「エルフだって喋るわよ。 めっちゃくちゃお喋り大好きだし!!」
「はぁ。 あんた達がいるから――――なんで居るの?」
「はっ? 私達ランクBの冒険者が居て心強いでしょ?」
「全く、むしろ邪魔っ!」
「じゃ……邪魔って?」
「本当にそうだな。 うるさすぎて耳が痛い」
「あんたねぇ……あんたの妻、ちょっと世間知らずでしょ」
「世間なんて気にしないのが、俺達。 でも君の方が世間知らずかもな」
「なっ。 なぬぅうぅううぅっ!!」

 沈黙を破る【青銀の戦乙女せいぎんのヴァルキリー】リフィーナの声にコベソとペルセポネが反論するが、それでも引き下がらない。だが、何故俺に降ってくるのか疑問。
 リフィーナを、宥めるように座らせる二又のとんがり帽子を被ったミミンと群青色の女戦士フェルトがリフィーナの腕と肩を引っ張って座らせる。

「ねぇ、なんであんた達がこの馬車に乗ってるの? あんた達のあるじゃない?」
「あぁっ? あるわよっ。 この馬車綺麗そうだし乗り心地よさそうだから……乗ってあげてるのよ」
「あげてる……。 遠慮するわ、とっとといつものお尻が痛くなる荷馬車に乗りなさい」
「ふんっ。 いやよ、この馬車気に入ったのだからここで許して上げるわ」

 ペルセポネとリフィーナの睨み合う視線が、火花を散らすほど強い。
 あれから数日【青銀の戦乙女】リフィーナは、仲間たちと勇者であるユカリには普通に会話する物のコベソやトンドには強く当たり、ペルセポネや俺には一切話しかけて来ない。だが、ミミンやフェルトはペルセポネにも気作に話しかけて、楽しく会話をしている。
 それが気に入らないのか、気になるのか、たまに尖った耳をピクピク動かしてチラチラと目を動かすリフィーナ。
 クエンツの街を通り過ぎ、俺達一行はヒグマクスに入国しそのままエビナへ進む。

「ここは、関所とか無いんだな」
「ヒグマクスは難民を受け入れたりとしているんだ」
「だから――――」
「ふっふーん。 田舎冒険者だからなぁーんにも知らないのよっ。 私が教えてっ……て?」

 俺とコベソの会話に割り込んで、上から目線のリフィーナの言葉を拒む俺は、そこままコベソと会話を続ける。

「――――そのまま通過できるのか……。 他に何かありそえだな」
「あぁ、それはだな――――」
「それは、このランクB冒険者の私っ……」
「――――この国に出てくる魔物がランドベルクやカツオフィレに比べ強いんだ」
「強いってかなり?」
「いや、少し上ってとこか。 だが群れで来られたらキツいとか」
「ちょっとっ!! 私を無視するなっ……」
「「……」」

 俺とコベソの会話に体ごと割り込んで遮るリフィーナが、しかめっ面しながら俺とコベソの顔を覗き込み、黙る俺達を見て意味不明な頷きと共に胸を張って偉そうな態度で説明してくる。

「このヒグマクスは、ランドベルクやカツオフィレの魔物より一つ上の魔物が多い。 コボルトで言うとブラウンっ……あっ、えっ何?」

 リフィーナが、話をしている最中急に馬車が止まりトンドが幌から乗り出し前方にいる馬車を見ている。

「おい、魔物だっ……って後方からもか?」
「マジか。トンドどんな魔物かわかるか?」
「いや、わからん。 だが前方からは……急ぎでと」

 徐々に焦りを見せるトンドの言葉で危機感を顕にするコベソの目が俺とペルセポネに合う。

「私が前行くから、ハーデスは後方ね」
「わかった。 無茶するなよ」
「しないわ。 あっユカリは行く?」
「はいっ、行きます。 より強くならないと」
「ちょっ……」
「お願いします、ハーデスさん。 ペルセポネさん」
「ユカリ、走るよ」


 何か言いかけたリフィーナの声に気にもせず、馬車を降りたペルセポネとユカリは、迫ってくる魔物へ向かう。
 ペルセポネ達に続くように俺も馬車を降り、後方から迫ってくる魔物に向かおうとすると、リフィーナの声がしたが、全く耳に入らず後ろの馬車に向かう。

――――あのエルフ、何か言ってたか?

 既にペルセポネ達の姿は見えず、後方の馬車に着くと御者と荷物を見ているヒロックアクツ商事の従業員が魔物の方を指してくる。

「速っ!……って兄さんアレだ!」
「あの砂煙か?」
「まだ遠いけど、群れだ。 頼むっ」
「わかった」

 砂煙を立ち込め迫ってくる魔物に、ハルバードを持ち俺は歩むが、馬車の方から小声で「ユカリちゃん来ないのかぁ、あの可憐さ良かったの~」やら「ペルセポネ姐さんの方がいいやろっ、あんな美人そうそう居ない」とか言い争っている。

――――自分の妻が褒められているのは嬉しいんだけどな、でも他の男に変な目で見られるのは癪だ。

 迫る魔物、駆ける脚で砂煙を立ち上げ、その重量で地鳴りが増す。
 目を凝らすと魔物の姿がイノシシの形。
 ブラックワイルドボアよりも低く、毛の色が茶色いに口元に鋭いキバの先端が赤く根元は薄い青い。
視界にその全貌がハッキリと見える。

――――イノシシ、名前分からないけど五匹か……

 止まる気配無し、このまま通り過ぎると確実に馬車に被害があるだろう。だけどこの俺は【冥王】だ。
 その茶色のイノシシが、牙を突き立て額傾け真っ赤な目を俺と後ろにある馬車に焦点を合わせる。

『ブッゥヒィッヒッヒッィイィ』

――――イノシシに俺が怯むとでも?

 少し飛ぶ俺は、宙返りをしイノシシの群れの上に舞うと、イノシシの首を狙いハルバードを一振りする。
 イノシシ五匹そのまま止まらず、馬車に目掛けて通り過ぎる。

「おっおいぃいぃっ!!」
「うっ、うそぉだぁろぉぉお」
「このままだぁっと来るぞぉぉ」
「何してるんだっ兄さんっ」

 迫ってくるイノシシ五匹が馬車に勢いよく迫る中、御者と従業員の悲鳴が妬ましく甲高く叫び出すが、次の瞬間イノシシ五匹が、馬車にぶつかる事無く二人の声が、驚愕に変わる。

「うっそぉだろぉお」
「なんじゃこりゃァっ」
「あっ頭ぁ?」
「兄さん、やってくれたなって思ったよぉ」

 俺の目の前に痙攣するイノシシ五匹の胴体に、そこから馬車に向かって噴き出す真っ赤な血の先に、目が真っ白になっているイノシシの頭が、馬車の車輪寸前に転がっている。

「これで良いか?」
「おっおぉ、このワイルドボア……ブラウン……。 あっ!!」
「どうし……ってブラウンワイルドボアでもアレだフューリーじゃねぇか、これ?」
「うわっ! 牙マジで」

 御者と従業員が、転がるイノシシの牙を持ち顔全体を見ている。ハルバードをしまいその御者に近づくと御者と従業員が声かける。

「兄さん、アレだ」
「アレ……とは?」
「イヤイヤ、倒しといて……知らん素振りだな。 このワイルドボア、ブラウンとフューリーだぞ」
「フューリー?」

――――ブラウンってのは冒険者パーティー【タリアーゼ】と出会った頃に知っているが、フューリーはわからん。

「フューリーっ。 この牙根元青白いがこの先っぽ真っ赤っだろ」
「これがフューリーなのか?」
「そうそう。 魔物で特徴が違うって聞いたけどな。ワイルドボアはわかり易くてさ」

 ズリズリと地面を擦る音に俺と話をしていた御者が、その音に目を向けると従業員の一人が、イノシシの肉体を運んで、腸を取り出したりし、付近にある木に吊し上げていると、従業員が俺らに気付き。

「フューリーは、あれだ魔物が上位になる特徴だろうって言う噂だな」
「今、血抜きしてんのか?」
「手伝ってくれ。 これ会頭に今日の飯これにして貰おうって思ってな」
「おっ、手伝うぞ。 ブラウンもだけど、フューリーなんて更に割高な肉だからな」

 笑顔で作業を取り掛かかっていると、従業員が馬車で何か探しているようだ。

「悪い、兄さん。 会頭にフューリーとブラウンのワイルドボア血抜きしていくから遅れると言っといてくれ」
「遅れたらって、この馬車だけ残したらダメだろ?」
「実際五時間程かかるかも知れないけどな。 直ぐに出発出来るさ」
「兄さん、ヒロックアクツ商事は秘密道具があるんだよ」
「秘密道具?」
「兄さん、ここは企業秘密。 さぁ会頭に言っといてくれ」

 御者と従業員は、その言葉を良いながら息を合わせイノシシ、ブラウンとフューリーのワイルドボアを吊るして首の切り口から血を垂れ流しながら、腸を取り出したりし、処理をしていた。
 強烈な血の臭い、その現場を残し俺は乗っていた馬車に戻る。

――――あの超絶クセ~女の神エウラロノースよりかは、この血の臭いは、まだマシだ。
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