冥王さま、異世界に憧れる。~現地の神からいきなり貰った勇者スキルが全く使えない冥王とその妻は破壊神!?~

なまけものなのな

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カツオフィレの猛威

冥王、うろ覚えの存在を目視、だが失念。

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 歩哨の兵士が、数名顔を見合わせながら頷くと一人の兵が、見えなくなり何やら大声を上げている。
すると、閉まっていた門が開き始める。
 馬車から降りていた俺達が乗り終わるのを確認すると御者は、手網を持って開くのを待っている。
 馬車三台が、ローフェンの中に入り終わると、大きな音を立て門が閉まる。
 先程、門で大声を出していた兵士とは違い、少しだけ装飾された武具を身につけた兵士が、コベソと会話をしている。

 話終わった様子のコベソは、無言のまま素早く馬車に乗り込み、御者に指示すると支店に向け馬車が動き始める。
 そして、支店に着いた俺たちは直ぐに馬車から外にでると、従業員一同が、コベソやトンドの回りに集まって笑顔で話始めるが、ざわつき過ぎて俺には聞き取れなかった。
 そのざわつきの中、多くの足音が忍び寄る。

『ゴホッン』

 その咳払いは、大きくコベソやトンドとその周りにいる従業員達を黙らせ、その咳をした人に視線が集まる。

「貴殿が、ヒロックアクツ商事の会頭……コベソさんですか?」
「ええ、如何にも」

 咳をしコベソを呼ぶ小柄で貴族の装いに頭髪が虚しい中年男性と、その取り巻きなのか貴族中年男の後ろには、十人程の鎧に帯剣した兵士を連れてきている。
 兵士達は、微動だにせず待機している。
 貴族中年男は、口角を上げ不敵な笑みを零す。

「貴殿とトンド……それに勇者ユカリ。 王が相談があると仰せだ」
「っん? あぁ、分かりました――――が、何処に行けば?」
「私達に着いてくるんだ」

 ムスッとした貴族中年男とその後ろにいた兵士は、踵を返す。従業員達は、その貴族中年男に愚痴を言っている中、それを黙らせたコベソにユカリを呼んだトンドは、中年貴族男の後を追う。
 中年貴族男と兵士達が、一・二歩進んだ所で振り返り俺とペルセポネの姿を睨む。

「そこの、黒い服着た男。 白い服着た女。 確かあの魔王と共に、勇者といた冒険者だな」
「……」
「そ、そうですね」
「お前には聞いてない。 そうなのかなら、お前らも――――来いっ」

 ユカリの返答に中年貴族男は、苦い顔を見せる。
 その顔を見てざわつく従業員だが、俺とペルセポネは、それに着いていくコベソ達の後を追う。

「アイツ、なんなの」
「ユカリを毛嫌いしてそうだな」
「あの顔ったら」

 嫌悪感を抱くペルセポネと共に歩く俺の後ろに、先程の兵士三人が、いつの間にかいて俺達を挟むようにして先に進んでいた。


 ローフェンの中心より離れた所に一件豪邸が、ありその中を通される。
 そして、広い所に背もたれの高い椅子に座るランドベルク王と聖女。そしてその脇に若い男が二人に壁には中年貴族男のような服装をした者と兵士が数名立っている。
 背にもたれ頬杖をつき顎を上げて俺達を迎えるランドベルクにユカリやコベソ、トンドは片膝を床に着く。
 挨拶を済ませたコベソに、無言のままただ見下すように睨んでいるランドベルク王は、ため息つくと頬杖をやめ静かなこの部屋に王の一言が、響く。

「良く来れたな。 勇者よ――――そして、ヒロックアクツの二人」

 周囲を囲む王の側近や兵士の視線が、俺達に突き刺さる。そのままランドベルク王の言葉が続く。

「何故呼んだか、わかるか?」
「この周囲にいるアンデッド討伐の作戦かと……」
「作戦……」

 ランドベルク王の横に立つ騎士風の装備をした若い男が、ボソッと呟くとランドベルク王は眉をひそめ、その者を黙らせた。

「分からんか……なら、何故カツオフィレは我が国を攻めた?」
「それは……」
「それと合わせたように魔王バスダトと魔族軍の侵攻――――まるで挟撃を仕掛けられた様に思えるが」
「ですが、王。 カツオフィレは……」
「カツオフィレ軍は、何らかのトラブル。 魔物の襲撃で撤退。 その魔物を倒したのはユカリだな」

 黙ったままのユカリ。魔物ブラックワイルドボアを倒したのは、俺の横にいるペルセポネだからなのはここに居る俺達全員知っているが、それ以外は勇者であるユカリが倒した物だと認識しているようだ。

「アテルレナスに向かった勇者が、何故そこで魔物を倒す事が出来るのだ?」
「王よ。 それは……」

 コベソが、言葉を挟む。だが、ランドベルク王の声が、それを遮る。

「カツオフィレ軍と同行もしくは追行していたのでは。 そして、ランドベルクを落とす事出来なくなったお前は、そのまま魔王バスダト討伐へと切り替えた――――これが事実」

 鬼の形相をしたランドベルク王は、片膝をついたコベソとユカリにトンドに告げる。

「魔族と繋がっているカツオフィレ王。 今度は死者を扱う魔王と共謀し、アンデッドを使って再びこのランドベルクを攻めてきた」
「ですが王よ、ランドベルクを落として勇者ユカリに何の得が有るんです?」

 トンドが顔を上げランドベルク王に言葉を向けると背もたれにどっしりとよっかかりながら口を開く。

「我が国が、召喚したから……だろ。 元の世界に帰りたいなぞ、過去の勇者からそんな言葉は出なかったと聞く。 なぁ聖女よ」
「そうね。 エウラロノース様からもそんな話伝わって無いわ」
「でも私はっ……」
「王よ。 魔王バスダトを倒した後、神託で聖女様が言っていたでは無いか! 後二体魔王倒したら帰れると。 ユカリ嬢ちゃんは、それまで帰れないと言うことを知らなかったんでは?」

 ユカリの反論をかき消すかのようにコベソは、少し声を荒げて王に対抗する。

「でもな、証言者がいるのだよ。 入らせよ」

 俺達の後ろにある扉が開かれる。すると、見覚えのある男性が、堂々とした振る舞いで入ってくるとその姿を見たユカリの口から零れる。

「神官……」
「そう、このランドベルクで仲間となった神官のクラフだ」
「生きて……い……」
「ええ、生きていますよ。 勇者様……いえ、魔族に味方した逆賊ユカリ殿」

――――クラフ……。クラフ……。あぁ、あの時魔王バスダト討伐した時、城で聴いた名だったような気がする。

 クラフは、落ち着いた口調だが怒りがこもる声で、膝まづいているユカリを見下すよう見つめながら王の元に近づく。

「持ってきたか?」
「ええ」

 神官クラフが、王に何か渡すとゆっくり離れ若い男の横に立つ。

「勇者ユカリ……いや、逆賊ユカリよ。 カツオフィレから帰還したクラフが証言してくれたぞ」
「ち違うっ。 私はそんな事やらない」
「そうですよ。 王よ、その男と勇者であるユカリの言葉どっちを信用するのです!!」

 再び、頬杖をつきコベソの言葉を聞いているランドベルクは、当たり前かのような顔つきで答え神官クラフを指さす。

「それは、コイツだ」
「ですが、勇者はエウラロノース様が認めた人族を守る存在ですぞ」
「コベソよ。 かつて帝国で人族に害をなす勇者が居たの知っているか?」

 静かに話し出す聖女の言葉を聞いたコベソは、その問いに首を振る。

「聖女で伝わる話がある。 エウラロノース様は、勇者の素質がある者を選び、この地に送還しているが、素性までは分からない。 だから素行が少しでも分かれば排除しろと言われてる」

 ランドベルク王と同じく冷たい目でユカリを見つめながら話す聖女。

――――あの女の神は、この世界に連れてきて現地に送る。勇者召喚のパイプ役なのか。

「だから、勇者ユカリよ。 外にいるアンデッド討伐には魔法部隊だけでは倒せん。 外にいるアンデッド共を倒す為にお前を外に出すには、我々、不安なのだよ」

 ランドベルク王は、席から立ち上がり神官クラフから受け取った大きくもない輪を右手に持ちユカリに向かって歩み始める。

「勇者ユカリよ、今までの素行を嘘だと態度で信じさせてくれ」

 ランドベルク王は、ユカリの前に立ち手に持っている赤みがかった黒に近い紫色に禍々しい装飾された輪っかを見せると、その物の説明をし出す。

「これは、隷従の首輪。 これを付ければ私に付き従うと言うことになる」
「……」
「案ずるな。 この国、私やこの場にいる者そして、この世界の人族に仇なす事さえせず魔族、魔王を倒せ。 これが、私が勇者であるユカリに命令する内容だ。 それを守って貰う為のコレだ」
「そんな物付けなくてもユカリ嬢ちゃんは!!」
「コベソよ。 勇者は異世界からきた人族なのだ。 この世界の人族の命を軽視しているかもしれんし、もしかしたら……」
「ですが、王よ。 ユカリは」
「トンドよ。 私の親族の息子である神官クラフの言葉も信用したいし、勿論勇者であるユカリも信用したい。 その結果勇者ユカリには、これを付け魔王と魔族を倒して我々に意を示してくれ」
「分かりました。 私付けます」
「分かってくれるか。 城下町ランドベルクの人々や我が軍の兵士が、アンデッドに変わってしまった。 そしてこの街に逃れアンデッドに囲まれ突破する力を私にくれ。 勇者ユカリの力を」

 ランドベルク王は、片膝着いてユカリの首に隷従の首輪を付ける。
 ガチャっと音を立てユカリの首に隷従の首輪が、付けられると、ホッとしたのか若干フラフラと席に戻るランドベルク王は、倒れるように席に座る。

「勇者ユカリよ。 これで……」

 王の言葉を遮るように神官クラフが、ランドベルク王とユカリの間に立ち、ランドベルク王に向かって見下す。

「クックックッ王よ。 これで勇者の行動は封じた」
「何を言っている。 クラフ?」
「お前と聖女、貴様の命さえ奪えば我が主の野望に近づく」

 不敵な笑みを浮かべランドベルク王の聖女を睨む神官クラフは、大きな声を上げる。

「入ってこい!!」

 クラフが入ってきた扉が、勢いよく開くとそこに見えたのが見覚えのある三人の姿だった。
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