冥王さま、異世界に憧れる。~現地の神からいきなり貰った勇者スキルが全く使えない冥王とその妻は破壊神!?~

なまけものなのな

文字の大きさ
104 / 173
第二の魔王と氷雪の魔女

冥王、妻の執念は恐ろしい。

しおりを挟む
 崩れ消え去るドラゴンゾンビを背に俺は、小さな黄色い魔石を握りしめている。
 ユカリ達を見るとそこには傷ついていたフェルトが、合流し魔王ノライフと戦ってるペルセポネの光景を観て話し合っている。
 魔王ノライフは、髪を靡かせながら魔法を止まることなく放っている。
 しかし、その魔法もペルセポネが振るう二本の剣で時々破裂音が轟くが、切り落とされ相殺している。
 ユカリ達が、ゆっくりと魔王ノライフに気づかれないようにコベソ達のいる馬車へと向かい出す。
 フェルトと話し合っていた内容が、『一度コベソ達の所に戻り回復した方が良いわ。それにポーションも数多く使うかもしれない。彼らから頂いて魔王ノライフと交えた方が良いわ』三人とも納得し直ぐに行動に移している。

――――ブラウンドラゴン、いやドラゴンゾンビの魔石を手に入れた事でユカリ達の準備が整ったらペルセポネも直ぐに交代するだろう。

 剣を振るう腕が、いくつもの残像を生み出し魔王ノライフの放つ魔法を処理しているペルセポネも俺が、ドラゴンゾンビを倒した事を知ってか少しずつ間合いを広げている。
 そして、魔王ノライフも気付いていた。

「白服の女ァァッ。 どけぇぇぇっ。 我が可愛いドラゴンを、勇者達よ。 よくもォォォッ」
「ドラゴン倒したってぇっ」

 笑顔で叫ぶペルセポネは、剣を構え魔王ノライフの放った炎の球を跳ね返す。
 炎の玉の跳ね返りが速く魔王ノライフは、目を見開きギリギリで交わし、歯を噛み締めペルセポネを睨む。
 俺は、ペルセポネの元にゆっくりと歩いていくと、ペルセポネは笑顔で、俺が来るのを待っている。

「魔石取ってくれましたの?」
「あぁ、これだ」

 手を広げ受け取ろうとするペルセポネの手のひらに、俺は魔石を持っている手を差し出すが、その行動にペルセポネの顔が、少し曇る。

「片手……?」
「これが、ドラゴンゾンビの魔石だ」

 笑顔が可愛いペルセポネは、俺から魔石を受け取る。ペルセポネは、手のひらに転がる魔石に目を見開き、何度か瞬きをし再び魔石に驚愕し少しの間呆然としだす。
 黒いオーラを滾らせる魔王ノライフは、眉間に力を入れ険しい顔をし睨みながら、一歩一歩俺たちの所へ歩いてくる。

「お前らァァァッ」

 低く振動する声をだす魔王ノライフ。
 そこに、回復したユカリ達が、駆け寄ってくる。

「ハーデスさん、ペルセポネさん」
「私達が来たから安心」
「良いみんな。 気を引き締めてさっきの事を」
「むーっ、分かったぁっ」

 サムズアップするリフィーナに、皆に指示を出すフェルト、そして頷くユカリとミミン。
 黒いオーラを滾らせ怒りで顔が、紅潮している魔王ノライフを目の前にユカリ達は、身構える。
 俺とペルセポネは、ゆっくりと魔王ノライフとユカリ達から離れる。ペルセポネは、手のひらに転がる魔石から目を離さない。
 受け取ってからずっと固まったまま。

――――いや少しだけ痙攣?武者震い?しているな。
すると、ペルセポネの魔石を持つ手が、小刻みに震え魔石を握り締める。

「ちょっとぉっ!!」

 いきなりの怒号を飛ばすペルセポネは、物凄い剣幕で俺に詰めより、唾を飛沫させ顔を近付けながら、怒りをぶつけてくる。

「なんなのぉっ。 この魔石はっ」
「魔石は、魔石だろ」
「ま~せぇっきっ、違うわ。 ドラゴンの魔石大きかったものっ。 体光るほど大きかったのにぃ、なんでこんなに小さいのっ」
「ドラゴンゾンビだからじゃないのか……」
「関係ないっ。 関係ないっ、関係ないぃぃぃっ!!」

 一瞬、ペルセポネと目が合う。すると再び止まるペルセポネの首が、ゆっくりと魔王ノライフへ傾く。

「アイツだ……。 アイツが、あのドラゴンをゾンビにしたから、こんなに小さくなった。全ての元凶はアイツ。 元々の原因――――」

 鬼の形相で魔王ノライフを睨みつけるペルセポネは、歯を食いしばり怒りを抑えている。

「――――あの顔、あの女っ。 私をあんな汚い地下牢に入れたのを思い出した。 聖女だがなんだか知らないけど、許さないっ」

 怒りがフツフツを湧き鼻を鳴らすペルセポネ。

――――そういえば、俺もアイツのせいで牢に入れられたんだ。

 魔王ノライフにユカリ達の戦いは、既に始まっている。観ると武器や魔法が、多数繰り出され激戦となっている。
 ペルセポネの魔石を握り締めた手から割れる音がすると、手を広げ握り潰した魔石の破片を払い捨てる。

「そうだ、アイツの魔石を奪おう。 魔王だから魔石ある……はず……」

 ボソッと小声で放つペルセポネは、二本の剣を鞘から抜き、切っ先を地面付け摩りながら魔王ノライフを睨みあゆみ進める。
 俺は、ペルセポネを止めようと思うが躊躇う。
 ペルセポネが、魔王を倒してしまいあの人族の神エウラロノースが、見ていたらどうなるか。
 魔王ノライフの姿は、今、カツオフィレの聖女体である。聖女の体を倒し肉体から引き離しをしたら体を持たない魔王ノライフは、どう出るのか?

 ミミンと魔王ノライフの乱発する魔法の応戦。フェルトの大盾スキルによって魔王ノライフの注意を逸らし魔法を止むとユカリとリフィーナは、斬りつける。傷を負い体力を損なうユカリ達の顔色が伺えるが、魔王ノライフも身体は傷つき少し息切れし始める。

「クッソォォッ。 あの白服の女ァァッ。 全く回復が追いつかん。 それに何故このクソッ弱い勇者共に手こずらなければならないッ」

 唾を撒き散らし怒鳴り散らす魔王ノライフは、眉間に皺を寄せ紅潮している。
 魔王ノライフと戦っていたペルセポネの攻撃は、魔王ノライフの力を大部分削いでいたみたいだ。
 ユカリ達は、魔王ノライフの動きを見て身構えている。
 地面に線を引くペルセポネは、ブツブツと聞き取れない程の声量でユカリ達の横を通ると、魔王ノライフの顔を睨みつける。

「どうでもいい。 どうでもいい……どうでも。 私の魔石の方が大事だぁぁっ」

 ペルセポネは、二本の剣が交互に振るい地面を削りながら放たれる斬撃。
 二つの斬撃を交わし、ニヤリとする魔王ノライフだが、その後目を見開くと苦痛の叫びを二度吐き出し体が、変な動きをする。

「ウギャァァァッ。 アッ、ギャァァッ!!」
「振るったら、返すものなのよ」

 ペルセポネの無表情で放つ言葉を、聞き取ることが出来なさそうな魔王ノライフの身体は、両腕の付け根から血飛沫を大量に噴き出している。
 魔王ノライフの元は聖女の白い腕が、地面に転がり次第に血で赤く染まる。
 だが、魔王ノライフは回復魔法すら使わずに痛みに耐えようともがいて、しまいには地面に片膝をつかせていた。

「その顔、いい表情だわぁっ。 本人では無いのだけれども、実に良いわ。 私のあんな冷たく暗い所に入れた私の苦痛を知って、その報い受けろっ」

 ペルセポネが、魔王ノライフに迫る。
 苦痛にもがいている魔王ノライフの目が、大きく開き体全体固まり、目の前に現れたペルセポネに驚いている。
 目の前にいるペルセポネの笑顔。
 そして、腕が無数に動く。
 再び笑顔と共に魔王ノライフから離れるペルセポネ。
 魔王ノライフが取り憑いていたカツオフィレの聖女の身体のあちこちから血飛沫を上げる。更に脚がもげ、体が崩れると同時に聖女の驚きの顔が、宙を舞い地面に転がっている。
 赤い血で埋め尽くされてる大地の上に転がるカツオフィレの聖女の死体。
 鬱憤を晴らしたペルセポネの顔が、晴れやかになる。

「ふぅ、倒したわ」
「一瞬で、斬りつけるなんて」
「やはり見えなかったわ」
「むーっ。 おねぇさまぁっ」

 リフィーナとフェルトは、驚きを隠せないのか動きが止まっている中、ミミンはペルセポネに抱きつこうと駆け寄る。

「ダメっ。 ペルセポネさん、みんなまだ魔王ノライフは……生きているっ!!」

 ユカリは、ペルセポネに駆け寄るミミンの襟首を掴み引き戻す。
 リフィーナとフェルトは、ユカリの声で我に返り武器を構えだし、ペルセポネも険しい顔になる。

「クックククッ、流石勇者だ。 単なる依代を失っただけに過ぎん」

 負の感情を突き立てる低い声が、この場を響かせると聖女の死体上空に小さな黒いオーラが、現れ急激に膨れ上がる。

「白いのォォォッ。 お前ガァァ倒したのはぁっ、そこの転がっている聖女なのだ。 残念だったなァっ、この私には、傷一つ付けてないのだァッ」

 膨れ上がった黒いオーラから、ギョロっと赤い目が、俺たちを見下ろすと人の形になり俺たちに向け手をかざす。

「来るわっ」

 ユカリの言葉と同時に、魔王ノライフの手から数多くの大きな石の棘が、俺たちに向け降り注いだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

『召喚ニートの異世界草原記』

KAORUwithAI
ファンタジー
ゲーム三昧の毎日を送る元ニート、佐々木二郎。  ある夜、三度目のゲームオーバーで眠りに落ちた彼が目を覚ますと、そこは見たこともない広大な草原だった。  剣と魔法が当たり前に存在する世界。だが二郎には、そのどちらの才能もない。  ――代わりに与えられていたのは、**「自分が見た・聞いた・触れたことのあるものなら“召喚”できる」**という不思議な能力だった。  面倒なことはしたくない、楽をして生きたい。  そんな彼が、偶然出会ったのは――痩せた辺境・アセトン村でひとり生きる少女、レン。  「逃げて!」と叫ぶ彼女を前に、逃げようとした二郎の足は動かなかった。  昔の記憶が疼く。いじめられていたあの日、助けを求める自分を誰も救ってくれなかったあの光景。  ……だから、今度は俺が――。  現代の知恵と召喚の力を武器に、ただの元ニートが異世界を駆け抜ける。  少女との出会いが、二郎を“召喚者”へと変えていく。  引きこもりの俺が、異世界で誰かを救う物語が始まる。 ※こんな物も召喚して欲しいなって 言うのがあればリクエストして下さい。 出せるか分かりませんがやってみます。

外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!

武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。 しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。 『ハズレスキルだ!』 同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。 そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』

処理中です...