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1章
ここに住むの?
しおりを挟むここが畑だ。
そう案内されたのは城の一室だった。
室内だ。
吹き抜けになってるとかじゃなくて、完全に屋内だ。
かなりの広さの部屋に、土がびっしりと敷き詰められている。
城の中はかなり暗いのだけれど、この部屋は太陽が差しているかのように明るい。
天井付近にライトが無数に付いていた。
あのライトは魔道具というやつで、植物の育成を促進する効果があるのだそうだ。
「この部屋には結界が張ってあるから、瘴気が入って来ない。土も瘴気を取り除いたものを運び入れてある」
「瘴気って何……?」
「瘴気はマイナスのエネルギーだ。我々モンスターや、呪われた土地などが発することで知られている。それが集まることで新たなモンスターが誕生することになる。ダンジョンは瘴気の多い場所に出来ることが多い」
地下墓地がダンジョンになっているので、この地も瘴気が充満しているらしい。
日常的に接しているとやばい?
え? 私大丈夫なの?
テイムのスキルを持ってると瘴気耐性があるの?
モンスターに触れるスキルだからだろうか。
他にも闇魔法や死霊魔法なんかがあると瘴気に耐性が出来るの?
瘴気耐性ってまんまのスキルもあるんだ?
瘴気がある場所だと作物が育ちにくい?
だから瘴気を除去したんだ?
そう言えばこの場所、なんだか清々しい空気が感じられる。
地下の牢獄の中もこんな感じだったから、確かに、瘴気は身体に悪そうな気がする。
っていうか瘴気の入らない結界とか、アンデッドであるクリスが作れるの?
ダンジョンのセーフエリアの結界を解析して作った?
え? それって凄いことじゃないの?
やろうと思えばどこにでもセーフエリアが作れるってことでしょ?
大したことない?
基準が分からないから本当なのか謙遜なのかも分かんないや。
ここ、何が植えてあるの?
いろいろ?
リストがあるから見せてくれるの?
お米に麦、トマトにキュウリ。
イチゴもある。フルーツも植えてくれたんだ?
季節に統一感がないけれど……。
あのライトで気温の調整もしてるの?
ただの光じゃないんだ。
胡椒に唐辛子……。
香辛料は村じゃ手に入らない?
だから育ててるの?
うん、辛いの食べたいからそれは嬉しいかもしれない。
っていうか私ここに住むの?
「住まぬのか?」
「いや、まあ、うん」
なんか墓地に住むとかちょっと抵抗がある。
けど、寝床も食べ物もあるし、生活する上で不便はないのか。
旅をしなければとなんか漠然と思っていたけれど、異世界だからって旅をする必要もないし。
冒険者になって旅をするのが異世界の醍醐味だと思ってたんだけど、私がまともに戦闘出来るかも分からないし。
そういう意味で言えば、ダンジョンでLV上げをして、強くなってから旅立つのもありか。
私はバトルジャンキーじゃないし、あくまでも安全第一だ。
「次は主の部屋を案内しよう」
そう言ってクリスは私を案内してくれた。
城にある豪華な部屋だ。
てっきり地下牢獄に住むのかと思っていたが、昨日の内に整えてくれたそうだ。
私が眠っている間も、クリスとスケルトンは大忙しだったわけだ。
アンデッドは眠らないし疲労のしないらしいが。
私が寝た後、夜通しで工事を行ったらしい。
でっかいキングサイズのベッドがドーンと置いてある。
畑と同じように、ここにも瘴気が入らないように結界が張られているらしい。
ライトの魔道具もあった。
ライトの魔道具は蛍光灯よりも自然な光で、スイッチ一つで昼と夜を切り替えられるかのようだ。
高級ホテルのスイート並みに広く、風呂とトイレも完備。
これ以上の設備はおそらくこの世界にないだろうと、クリスが自信を持って言っていた。
この世界の一般的なホテルだと、風呂もシャワーも付いてないそうだ。
今、スケルトンたちを総動員して私の服を作っているという。
…………うん。
いや、まあ、うん……。
こんな快適な環境を用意されて、旅とかちょっとばからしいかもしれない。
そういうのは余裕が出て、暇になってからでいいや。
あれ? 他にも異世界に来たらやりたいことがあった気がするんだけど……。
まあいいか。
想像以上の待遇に、私は冒険者と旅を諦めた。
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