テイマーは死霊術師じゃありませんっ!

さんごさん

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1章

人間は喋る

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「どのような用件でしょう?」


 ふわあぁあぁあ!


 人間が喋った!
 人間が喋ったよっ!

 いや、人間が喋るのは当り前なんだけどさ、人間が喋ってるとこを三か月も見て来なかったから、当り前のことが不思議に感じられるよね。

 喋ったのは門番……的な人。

 村の入り口のところに切り株があって、そこで座って休んでいたおじさんが、ふらりと話掛けてきたような感じだ。

 おじさんは四十代後半くらいだろうか。
 小太りで、ちょっと汚らしい。

 門番としての役割でこの場所にいたのか、たまたまここに座っていて余所者が来たから誰何しているのか、判断が付かない。

 妙に丁寧な言葉づかいはどうしてだろう?

 神様がこの世界の言葉を分かるようにしてくれたから、彼が丁寧な言葉を使っているのが分かる。

 久々に人と会ったから、会話をしてみたいという欲求があるけれど、下手なことを言って警戒されても困るから、ここはクリスに任せておこう。

 私、この世界のこと何も知らないからね。

 クリスからちょこちょこと情報を聞いてはいるけれど、情報と実際のところは別だからね。

 大きな町にはモンスター避けの結界があるっていうのも、ついさっき知ったばっかだし。


「この先のベスタに行く途中で立ち寄った。訳あって馬で旅をしているのだが、一夜の宿を借りたい」

「では、村長の家に案内いたします」


 へこへこと頭を下げるようにして、おじさんは私たちを案内する。

 私はクリスと並んでそのあとを歩きながら、こっそりとクリスと話す。


「なんか、すっごい見られてない?」


 村の中を歩いていると、遠巻きにこちらを見ている人たちがたくさんいる。

 なんだか有名人にでもなったみたいだ。


「珍しいのだろう」

「余所者が?」

「貴族の令嬢というものが、であろう」

「貴族の令嬢?」


 誰が?
 私?
 私、貴族の令嬢じゃないよ。

 転生は転生でも、悪役令嬢とかじゃなくて、テイムのチートを持ってるだけの異世界転生だよ?

 前世は庶民だよ?

 日本には貴族がいなかったから平民もいなかったけれど、ごく普通の一般人だよ?

 傍から見たら貴族令嬢に見える?
 私が?
 どうして?

 そんなにお行儀も良くないし、なんかすっごいカリスマ性をばしばし放ってるわけでもないよ?

 もしかして私、気づかない内にオーラを発散出来るようになってたとか!?

 え?
 服?
 この服がどうかしたの?
 ごく普通の服だよ?

 スケルトンたちがシルクでドレスとか作ってくれたけど、ああいうのはあんまり着ないよ?

 シルクが高いのは知ってるし、折り目とか汚れとか気になって、普段使い出来ないんだよね。
 肌触りが良いから、寝間着にはしてるけどさ。

 この服って綿素材でしょ?
 綿ってそんなに高くないよね?

 綺麗だから?
 私のこと?
 服が?

 うん、分かってるけどさ、そこは嘘でも『君は綺麗だ』くらい言ってくれてもいいんじゃないの?

 そうしたらときめいたかもしれないのに。

 いや、今から言っても遅いから。

 この世界の平民は、新品の服を着てるのが珍しい?

 そうなの?
 新品を着てもすぐに汚れる?

 旅の最中に綺麗な服を着てれば、貴族じゃなくても裕福な家の人ってことになるの?

 ついでに馬に乗っていて、従者を連れていれば貴族に見える?

 従者ってクリスのこと?

 それは確かにそう見えるかもね。

 ずっとエスコートしてもらってるし、実際にテイムしてるんだから、私の配下って立場だろうし。

 馬に乗ってるのも珍しいの?
 高級車みたいな感じ?

 本当だったら貴族の令嬢は馬には直接乗らないで馬車に乗る?

 うん、そんなイメージがあるよ。

 だからよほどの事情があって従者兼護衛のクリスと急ぎの旅をしてるように見えてるんだね。

 じゃあ、そういう風に振舞った方が良い?

 おほほほほ!
 ざますよ! ざます!
 おほほほほ!

 どう? 似合う?

 うん、それは似合うって言われてもあんまりときめかないかな。

 むしろ似合わないって言ってくれた方が嬉しかったかも。

 あんまり喋るとボロが出そうだから、私は無口なキャラで行くね。

 本当は人間と喋りたいけども、うん、今日は我慢しておくよ。


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