王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!

こさか りね

文字の大きさ
33 / 70

メルティア視点

しおりを挟む
今日はアグネスのお家へ遊びに行く日です。

エルとは一緒の馬車で行く事にしたわ。
一人より、エルと一緒の方が楽しいでしょう?
エルとは昔からの友達で、誰よりも信用しているのよ。

けれど、そんなエルにも言えない事があるの。
・・・たいした事ではないのよ。

ただ、エルの兄、アディエル様が好きな事を、エルに伝える事が出来ずにいるの。
この間、好きな人の話の時には焦ってしまったわ。

そう、思い出すとあれは、私が8歳の時。

エルとはお茶会で以前から知り合いだったのだけれど、アディエル様はそうではなかったの。

その日は、クリーヴランド家に母と招待されて来てみたら、庭にすごく綺麗な男の子が剣の素振りをしていたの。

思わず、ジッと見てしまったわ。

こんなに綺麗な人がいるのかしらって。
はしたなくも、案内をして頂いた執事に聞いてしまったの。
そうしたら、エルのお兄様だって言うのよ。

その時は好きとかではなく、綺麗な物が好きな私には、見ていたいと思う人だった。
それからは、クリーヴランド家に招待された時には無意識で探してしまったわ。

そうして過ごすうちに、機会がありアディエル様と挨拶をさせてもらう事ができたの。

実際に話してみたら、想像とは少し違っていて、繊細な見た目とは違い、自分の意思を貫いている方だったわ。
そして、とても、優しかった。

本当の意味で恋に落ちた瞬間だったわ。
でも、この気持ちをエルに話していいのかが分からないの。

嫌がられたらどうしよう・・・。

・・・ダメね。そんな事を考える事自体、エルに失礼だわ。
やはり、ちゃんと話をしましょう。
嫌がられたらショックだけれど、受け止めなくてはいけないわ。

そうこう考えていたら、クリーヴランド家に着いた。
馬車のドアが開き、エルかと思ったらアディエル様だったのよ。

「おはよう、メルティア譲。ごめんね。エルが少し遅れているから、もう少し待っていてくれるかい?
その間、僕と話でもしよう」
「あっ、おはようございます。よろしくお願いいたします」

なんでアディエル様が!?
心の準備が出来ていないわ!エル~早く来て!

「メルティア譲はこの休み、何をしていたんだい?」
わたくしは、帰省しておりました。いつも日帰りだったので、久々にゆっくりと過ごせましたの。
・・・エルは何をしていたのですか?」

他に話題が思いつかない私は、フェアリエルの事しか聞けなかった。

「ん?エルかい?何をしていたんだろうね。でも、最近は良く本を読んでいる事が多いかな。
後で詳しく聞いてみるといい。
それとメルティア譲、僕達も結構長い付き合いだと思うんだ。
もっとくだけた話し方でいいよ」

「そう言われましても。急には難しいです」

「それもそうか。では、徐々に慣れてくれると嬉しい。
今、エルが見えたから、そろそろ来るよ。待たせてしまって本当にごめんね。
道中、気を付けて行っておいで」

・・・嬉しい。
緊張して、なかなか上手く話せないけれど、もう少し気を抜いて話せる様になりたい。
私は『ありがとうございます』と微笑みを浮かべて返したのだ。
と、その時。

「メルー!待たせてごめんなさい。
お兄様もありがとう」

フェアリエルが小走りで馬車に近づいて来る。その後ろを大量の荷物を持った従僕がついて来た。

「大丈夫だ。とても楽しい時間だったよ。エル、忘れ物はないかい?」
「はい。今からメルの馬車に積んでもらいます」

「そうか。では二人とも、気を付けてね。アグネス譲にもよろしく伝えてくれ。
いっぱい楽しんでくるんだよ」

「行って参ります」

大量の荷を積み馬車が走り出す。

「メル待たせてごめんね」
「大丈夫よ。それより、何かあったの?」

私が聞くと、言い辛そうに口を開いた。

「あ、うん。アグネスの家に持って行く手土産の数が、なんかすごくて。
こんなに入らないって言ったんだけど、両親が持って行けって言うから、詰めていたら遅くなっちゃったの」

「・・・そうだったのね。でも、何故アディエル様が来たの?」

「間に合わないって言っていたら、お兄様がメルの所に行くって言ったのよ」
「そう、なのね」

「メル、どうかしたの?何かあった?」

私はアディエル様の事を話すのなら今だと思い、意を決して口を開く。
緊張で口がカラカラだ。

「いいえ、ただ、ずっと言えなかった事があって。
エルに言いたいのに、怖くて言えなくて。
・・・ふぅ。気持ちがたかぶっているわ。ごめんなさい。
実はね、私、アディエル様の事が好きなの。
・・・そんな、私の事を、どう思う?」

私は怖くて手を握り締めた。

「・・・あの、ごめんね。実は薄々気付いてはいたの。
メルがお兄様を好きな事に。そんな風に思い悩んでいるとは思っていなかったわ。
・・・気付いてあげられなくて、ごめんね。
もちろん、メルなら大賛成よ!そうなってくれたら嬉しいと、ずっと思っていたわ」

・・・ああ、いやだ。

安心したら手が震えてしまう。私は再度しっかり手を握り締めた。

「・・・ありがとうエル。気が緩んだら涙が出てきてしまったわ。
でもね、私、エルに協力して、と頼む事はしないわ。
自分の力で頑張ってみる。だから、見守っていてくれる?」

「もちろんよ!余計な事は一切しないわ。
メル、頑張ってね!」
「ふふっ、話してよかったわ」

本当に優しい兄妹だ。
私はそんな二人に出会えた事が一生の宝物だろう。
友情も、恋も、大切にしなくてはね。

そうして、気持ちを新たに馬車は進むのであった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

『身代わりに差し出された令嬢ですが、呪われた公爵に溺愛されて本当の幸せを掴みました』

鷹 綾
恋愛
孤児院で「九番」と呼ばれ、価値のない存在として育った少女ノイン。 伯爵家に引き取られても待っていたのは救いではなく、実の娘エミリアの身代わりとして、“呪われた化け物公爵”フェルディナンドの婚約者に差し出される運命だった。 恐怖と嘲笑の中で送り出された先で出会ったのは―― 噂とは裏腹に、誰よりも誠実で、誰よりも孤独な公爵。 角と鱗に覆われたその姿は、血筋ではなく、長年にわたる呪いと心の傷によるものだった。 そしてノインは気づく。 幼い頃から自分が持っていた、人の痛みを和らげる不思議な力が、彼の呪いに届いていることに。 「身代わり」だったはずの婚約は、やがて 呪いと過去に向き合う“ふたりだけの戦い”へと変わっていく。 孤独を知る公爵と、居場所を求めてきた少女。 互いを想い、手を取り合ったとき―― 止まっていた運命が、静かに動き出す。 そして迎える、公の場での真実の発表。 かつてノインを蔑み、捨てた者たちに訪れるのは、痛快で静かな“ざまぁ”。 これは、 身代わりの少女が本当の愛と居場所を手に入れるまでの物語。 呪いが解けた先に待っていたのは、溺愛と、何気ない幸せな日常だった。

捨てられた地味な王宮修復師(実は有能)、強面辺境伯の栄養管理で溺愛され、辺境を改革する ~王都の貴重な物が失われても知りませんよ?~

水上
恋愛
「カビ臭い地味女」と王太子に婚約破棄された王宮修復師のリディア。 彼女の芸術に関する知識と修復師としての技術は、誰からも必要性を理解されていなかった。 失意の中、嫁がされたのは皆から恐れられる強面辺境伯ジェラルドだった! しかし恐ろしい噂とは裏腹に、彼はリディアの不健康を見逃せない超・過保護で!? 絶品手料理と徹底的な体調管理で、リディアは心身ともに美しく再生していく。 一方、彼女を追放した王都では、貴重な物が失われたり、贋作騒動が起きたりとパニックになり始めて……。

働かないつもりでしたのに、気づけば全部うまくいっていました ――自由に生きる貴族夫人と溺愛旦那様』

鷹 綾
恋愛
前世では、仕事に追われるだけの人生を送り、恋も自由も知らないまま終わった私。 だからこそ転生後に誓った―― 「今度こそ、働かずに優雅に生きる!」 と。 気づけば貴族夫人、しかも結婚相手は冷静沈着な名門貴族リチャード様。 「君は何もしなくていい。自由に過ごしてくれ」 ――理想的すぎる条件に、これは勝ち確人生だと思ったのに。 なぜか気づけば、 ・屋敷の管理を改善して使用人の待遇が激変 ・夫の仕事を手伝ったら経理改革が大成功 ・興味本位で教えた簿記と珠算が商業界に革命を起こす ・商人ギルドの顧問にまで祭り上げられる始末 「あれ? 私、働かない予定でしたよね???」 自分から出世街道を爆走するつもりはなかったはずなのに、 “やりたいことをやっていただけ”で、世界のほうが勝手に変わっていく。 一方、そんな彼女を静かに見守り続けていた夫・リチャードは、 実は昔から彼女を想い続けていた溺愛系旦那様で――。 「君が選ぶなら、私はずっとそばにいる」 働かないつもりだった貴族夫人が、 自由・仕事・愛情のすべてを“自分で選ぶ”人生に辿り着く物語。 これは、 何もしないはずだったのに、幸せだけは全部手に入れてしまった女性の物語。

『婚約なんて予定にないんですが!? 転生モブの私に公爵様が迫ってくる』

ヤオサカ
恋愛
この物語は完結しました。 現代で過労死した原田あかりは、愛読していた恋愛小説の世界に転生し、主人公の美しい姉を引き立てる“妹モブ”ティナ・ミルフォードとして生まれ変わる。今度こそ静かに暮らそうと決めた彼女だったが、絵の才能が公爵家嫡男ジークハルトの目に留まり、婚約を申し込まれてしまう。のんびり人生を望むティナと、穏やかに心を寄せるジーク――絵と愛が織りなす、やがて幸せな結婚へとつながる転生ラブストーリー。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

煤かぶり姫は光の貴公子の溺愛が罰ゲームだと知っている。

朝霧心惺
恋愛
「ベルティア・ローレル。僕の恋人になってくれないかい?」  煌めく猫っ毛の金髪に太陽の瞳、光の貴公子の名を欲しいがままにするエドワード・ルードバーグ公爵令息の告白。  普通の令嬢ならば、嬉しさのあまり失神してしまうかもしれない状況に、告白された令嬢、ベルティア・ローレルは無表情のままぴくりとも頬を動かさない。  何故なら———、 (罰ゲームで告白なんて、最低の極みね)  黄金の髪こそが美しいという貴族の価値観の中で、煤を被ったような漆黒の髪を持つベルティアには、『煤かぶり姫』という蔑称がある。  そして、それは罰ゲーム結果の恋人に選ばれるほどに、貴族にとっては酷い見た目であるらしい。  3年間にも及ぶ学園生活も終盤に迫ったこの日告白されたベルティア、実家は伯爵家といえども辺境であり、長年の凶作続きにより没落寸前。  もちろん、実家は公爵家に反抗できるほどの力など持ち合わせていない。  目立つ事が大嫌いでありながらも渋々受け入れた恋人生活、けれど、彼の罰ゲームはただ付き合うだけでは終わらず、加速していく溺愛、溺愛、溺愛………!!  甘すぎる苦しみが、ベルティアを苦しめる。 「どうして僕の愛を疑うんだっ!!」 (疑うも何も、そもそもこの恋人ごっこはあなたへの罰ゲームでしょ!?)

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

神様、恋をすれば世界は救われるのですか? 〜余命二年の侯爵令嬢が、選ばれなかった未来の先で最愛を見つける物語〜

お月見ましろ
恋愛
余命は、十八歳の卒業式まで。 彼女の死は、そのまま世界の終わりを意味していた。 世界を救う条件は――「恋をすること」。 入学式の朝、神様は笑って言った。 「生きたいなら、全力で恋をしなさい」 けれど誰かを選べば、誰かの未来が壊れる。 魔法学園で出会った三人の少年は、それぞれの形でアイリスを必要としていた。 守ることに人生を捧げ、やがて“忠誠”を失っていく従者。 正しさを失わないため、恋を選択として差し出す王族。 未来を視る力ゆえに、関わることを拒み続けた天才魔術師。 「恋は、選択なのか」 「世界より、大切なものはあるのか」 これは、「正解のない選択」を何度も突きつけられながら、最後に“自分の意志”で未来を選び取る少女の物語。 ――世界よりも、運命よりも、 ひとりにしないと決めた、その選択の先へ。 【毎日更新・完結保証作品(全62話)🪄】 ※運命選択×恋愛、セカイ系ファンタジー ※シリアス寄り・溺愛控えめ・執着・葛藤・感情重視 ※ハッピーエンド

処理中です...