【本編完結】王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!

こさか りね

文字の大きさ
71 / 102

49

【時は少しさかのぼる】

やはりウィルフォードは、ベティニアを好きな様だ。

でも前に、私を好きだと伝えた手前、自分から言い出せないのだろう。

だから私は婚約を解消しようと決めたのだ。
好きな人には、本当に好きな人と一緒になってもらいたい。

なんでもっと早くに、ウィルフォードを好きだと認められなかったのか。
認めていたら、今とは違う未来になっていたのか。

そんな事を未練がましく考える自分にも、うんざりする。
だから、早々に解消する方が、お互いの為だと思ったのだ。

そして、そうと決めた私の行動は早かった。
学園から帰宅し、父の執務室へと向かう。

「お父様。今よろしいですか?」

部屋から返事があったので入室すると、父が笑顔で迎えてくれた。

「珍しいな。どうしたんだ?」
「・・・実は、ウィルフォード様との婚約を解消して欲しいのです」

それを聞いた父は、苦虫を嚙み潰したような顔をしている。

「昨日、部屋から出て来なかったのは、そう言う事か。
だが、最近は上手くいっていたのではないか?」

昔の事を父が知っているとは思わず、驚いてしまった。
それが顔に出ていたのだろう。父が再度口を開いたのだ。

「そんな顔をしなくても大丈夫だ。
エルが殿下から酷い態度を取られていたのは知っていたんだよ。
・・・私も、そろそろ潮時かと思っていたんだがな。
でも最近は、以前とはまるで違い仲睦なかむつまじかったろう?
今になって、一体何があったんだ?」

優しい父の声に、涙が溢れる。

昨日、あれだけ泣いたのに、まだ涙が出て来るなんて・・・。

それから父は、私が泣き止むまで『大丈夫だ』と優しく語りかけてくれたのだった。

そうして、落ち着いてからは、ウィルフォードとの事を全て話す事にしたのだ。

私と居るより、ベティニアと居る時の方が楽しそうな事。
ひざまずき、ベティニアの手を握っていて、とても親密な関係に見えた事。
ベティニアに近づこうとすると怒る事。

そして、きっとウィルフォードはベティニアを好きな事・・・。

話している時も感情が昂り、また泣いてしまった。
けれど、父は真剣に最後まで聞いてくれたのだ。

「だからね、お父様。
・・・私、婚約を解消しようと思うの。
・・・期待に沿えず、ごめんなさい」

そんな私の手を握り、父は安心させる様に微笑んで答えてくれた。

「婚約解消はいつでも出来るから安心しなさい。
だが、フェアリエルの気持ちはどうだ?
殿下の事をどう思っているのか、教えてくれないか?」

私は一瞬言葉に詰まってしまった。
でも、この気持ちを本人には伝えられないのだから、せめて、誰かに知って欲しいと思い、父に打ち明けたのである。

「・・・・・・前々から気付いていたのに認められなかったの。
・・・私、ウィルが好きなのよ」

「そうか。話してくれてありがとう。
婚約解消の件だが、もう少し待ってみないか?」

すると、思ってもみなかった返事に、なんて答えたら良いのかが分からず、呆然としてしまう。

だが、父には考えがあってと言っている事は分かるので、父の意見に同意したのだ。

その後、父はする事があると言って執事に何かを頼み、私は部屋で休む様にと言われたのであった。

暫く部屋で過ごしていたら執事がやって来て、応接室にウィルフォードが来ていると言うではないか。

父から、私とウィルフォードで話す様にとの伝言を持って来てくれたのだ。

今更、何を話せば良いのか分からない。
だが、父の指示の為、応接室へと向かったのだ。

入り口に立ち、深呼吸をしてからノックをする。
執事が扉を開け、一緒に入室しようとした時『フェアリエルと2人きりにしてほしい』とウィルフォードが言ったのだ。

私は執事に目で合図を送ると、少し扉を開けて執事は退出して行った。

2人だけの空間は図書室以来だ。
久しぶり過ぎて緊張する。

私が入り口付近に立っていると、ウィルフォードが椅子から立ち上がり、こちらへやって来たのだ。
思わずビクッとしてしまった。

目の前に立ち、そんな私の様子を見たウィルフォードは沈痛な面持ちでこちらを見ている。

「フェアリエル、婚約を解消したいと公爵から聞いたんだ。
・・・俺は、何かしてしまったんだろうか?」

私には、どうしてそんな顔をしているのかが分からない。

辛いのはこっちなのに・・・。

「・・・・。
ウィルはベティを好いているのでしょう?」

声が震えそうになるのを必死で抑える。
こんな事を本人の前で言わされるなんて、どんな拷問ごうもんだ。

心の中に怒りが沸々と沸いて来る。
そして、私はうつむき、下唇を噛んだのだった。

「ベティニアとは、そう言う関係じゃない。友達だ」

あの距離が友達?
・・・何を言っているの?

ここまで来て、シラを切り通す事に、私の怒りの糸がプツンと切れた。

「じゃあ、昨日中庭で2人がしていた事はなに?
私、見てしまったのよ。
貴方がベティの手を握ってひざまずいている所を。
・・・友達?
っそんなウソ付かないで!
余計にみじめになるじゃない。
私の事が邪魔なら、邪魔だって言ってくれた方がマシだわ!」

私の怒りに気圧けおされたウィルフォードが、小さく『違う、そうじゃない』と言っているが、そんなの、もうどうでも良い。

これ以上、コケにされてたまるか!

それからも、私の猛攻は続く。
この際、全てを吐き出して綺麗さっぱり忘れたい。

私は思い付く限りの、嫌だった事を全てウィルフォードへとぶつけた。

可愛さ余って憎さ100倍よ!!

「————だからね、もう婚約を解消をしましょうって言っているの。
私にこだわる必要はもうないでしょ?
・・・・って、聞いてるの!?」

そう言ってウィルフォードの顔に目を遣ると、瞳からポロポロと涙が溢れいた。

予想外の出来事に度肝を抜かれた私は、ウィルフォードの顔を凝視しながら唖然とする。

どうして良いか分からず、していたら、ウィルフォードが私の両腕を掴み、自分
の額を私の肩に乗せて来たのだ。

・・・・え?

今までにない近さにビックリしていると、ウィルフォードが静かに口を開いたのである。

「ずっと、君だけが、好きなんだ。
出会った頃から、君以外、欲しくないんだよ。
・・・・信じてくれ」

そう言って、と泣くウィルフォードを見ると、嘘を言っているとは思えなかった。
ウィルフォードの言葉に、先程まで感じていた怒りが凪いで行くのが分かる。

私は、泣き止まないウィルフォードの頭を優しく撫でたのだ。
すると、そのまま強く抱きしめられ『ありがとう』とウィルフォードが呟いた。

しばらくして、離れていくウィルフォードに、名残惜しさを感じながらも撫でる手を止めたのだった。

そして、お互い落ち着いたので、ソファに横並びで座り、これまでの事、これからの事を話した。

ウィルフォードはベティニアを友人としか見ていない事。
異性として見ていないので、気安く接していた事。
ベティニアに近づくなと言ったのは、理由わけがある事。
そして、傷付けているとは思いもしなかった事を謝られたのだ。

「ウィルが言う理由とはなに?」
「・・・・。
それは、俺の口からは言えない。
ベティニアの許可がなければダメなんだ」

私は余程の事だと思い、何も言わずにただ、頷いた。
そして、ウィルフォードが言いづらそうにソワソワし始め、躊躇ためらいがちに口を開いたのだ。

「・・・・・。
それと、俺も聞きたいんだが、フェアリエルはいつから俺の事を好きになってくれたんだ?」

!?・・・え?
何故、知っている!?

と脳内がパニックになったのだが、先程、怒りに任せて言った様な気がする・・・。

決まりが悪い告白に眩暈めまいがするが、この際、ちゃんと気持ちを伝える事にしたのだ。

「結構前からよ。 
・・・・認めるのに時間が掛ってしまったけれど。
私は、ウィルが好きよ」

ウィルフォードは私の手を握ると『思いを返してもらえる事が、こんなに嬉しいなんてな』と感極まっている。
そして、ウィルフォードの手が少し震えていた。

その後の話は、ベティニアに事情を話しても大丈夫かを確認すると言うウィルフォード。
それと今度、二人が初めて出会ったローズガーデンへ行く事を決めたのだった。

それから、ウィルフォードは余程嬉しいのか、終始私の手を握り、片時も離れようとはしない。

帰宅時間になっても帰ろうとしないので、もう一度抱きしめて『また、明日ね』と囁くと、名残惜しそうにして馬へ跨り帰って行ったのだった。

「エル?殿下は帰ったのか?」

すると、タイミング良く父が母をともなって庭からやって来たのだ。
2人の仲の良い姿に、子供ながらに嬉しくなる。

けれど、いつからそこに居たのかしら?

抱擁している所を見られていたら、流石に恥ずかしい。

「ええ。
あの、お父様達はいつからそこにいらっしゃるのですか?」

「うん?ああ。ちょうど今だよ。
その顔は、殿下と上手く行ったんだな」

そう言って私を見た後に、母を愛おしそうに見つめている。

「良かったわね、エル」
母もとても嬉しそうだ。

2人の様子を見ていた私は、やはり、さっきの事を見られていたのだと悟ったのである。

【穴があったら入りたい】
前世のことわざが頭に浮かんだのであった。

あなたにおすすめの小説

【完結】セクハラ護衛騎士と婚約者の観察日記

buchi
恋愛
ハンナは実は大富豪でもある伯爵家の娘。地味でおとなしいので、公爵家の一人娘の婿の座を狙う婚約者から邪魔者扱いされて、婚約破棄を宣言されてしまう。成績は優秀なので王女殿下のご学友に選ばれるが、いつも同席する双子の王子殿下に見染められてしまった。ただし王子殿下は、なぜか変装中で……変装王子と紡ぐ「真実の愛」物語。王道のザマアのはず(ちょっと違う気もするけど、いつものことさっ) 完結しました。

家族から邪魔者扱いされた私が契約婚した宰相閣下、実は完璧すぎるスパダリでした。仕事も家事も甘やかしも全部こなしてきます

さら
恋愛
家族から「邪魔者」扱いされ、行き場を失った伯爵令嬢レイナ。 望まぬ結婚から逃げ出したはずの彼女が出会ったのは――冷徹無比と恐れられる宰相閣下アルベルト。 「契約でいい。君を妻として迎える」 そう告げられ始まった仮初めの結婚生活。 けれど、彼は噂とはまるで違っていた。 政務を完璧にこなし、家事も器用に手伝い、そして――妻をとことん甘やかす完璧なスパダリだったのだ。 「君はもう“邪魔者”ではない。私の誇りだ」 契約から始まった関係は、やがて真実の絆へ。 陰謀や噂に立ち向かいながら、互いを支え合う二人は、次第に心から惹かれ合っていく。 これは、冷徹宰相×追放令嬢の“契約婚”からはじまる、甘々すぎる愛の物語。 指輪に誓う未来は――永遠の「夫婦」。

【完結】転生したぐうたら令嬢は王太子妃になんかになりたくない

金峯蓮華
恋愛
子供の頃から休みなく忙しくしていた貴子は公認会計士として独立するために会社を辞めた日に事故に遭い、死の間際に生まれ変わったらぐうたらしたい!と願った。気がついたら中世ヨーロッパのような世界の子供、ヴィヴィアンヌになっていた。何もしないお姫様のようなぐうたらライフを満喫していたが、突然、王太子に求婚された。王太子妃になんかなったらぐうたらできないじゃない!!ヴィヴィアンヌピンチ! 小説家になろうにも書いてます。

転生先は推しの婚約者のご令嬢でした

真咲
恋愛
馬に蹴られた私エイミー・シュタットフェルトは前世の記憶を取り戻し、大好きな乙女ゲームの最推し第二王子のリチャード様の婚約者に転生したことに気が付いた。 ライバルキャラではあるけれど悪役令嬢ではない。 ざまぁもないし、行きつく先は円満な婚約解消。 推しが尊い。だからこそ幸せになってほしい。 ヒロインと恋をして幸せになるならその時は身を引く覚悟はできている。 けれども婚約解消のその時までは、推しの隣にいる事をどうか許してほしいのです。 ※「小説家になろう」にも掲載中です

「白い結婚最高!」と喜んでいたのに、花の香りを纏った美形旦那様がなぜか私を溺愛してくる【完結】

清澄 セイ
恋愛
フィリア・マグシフォンは子爵令嬢らしからぬのんびりやの自由人。自然の中でぐうたらすることと、美味しいものを食べることが大好きな恋を知らないお子様。 そんな彼女も18歳となり、強烈な母親に婚約相手を選べと毎日のようにせっつかれるが、選び方など分からない。 「どちらにしようかな、天の神様の言う通り。はい、決めた!」 こんな具合に決めた相手が、なんと偶然にもフィリアより先に結婚の申し込みをしてきたのだ。相手は王都から遠く離れた場所に膨大な領地を有する辺境伯の一人息子で、顔を合わせる前からフィリアに「これは白い結婚だ」と失礼な手紙を送りつけてくる癖者。 けれど、彼女にとってはこの上ない条件の相手だった。 「白い結婚?王都から離れた田舎?全部全部、最高だわ!」 夫となるオズベルトにはある秘密があり、それゆえ女性不信で態度も酷い。しかも彼は「結婚相手はサイコロで適当に決めただけ」と、面と向かってフィリアに言い放つが。 「まぁ、偶然!私も、そんな感じで選びました!」 彼女には、まったく通用しなかった。 「なぁ、フィリア。僕は君をもっと知りたいと……」 「好きなお肉の種類ですか?やっぱり牛でしょうか!」 「い、いや。そうではなく……」 呆気なくフィリアに初恋(?)をしてしまった拗らせ男は、鈍感な妻に不器用ながらも愛を伝えるが、彼女はそんなことは夢にも思わず。 ──旦那様が真実の愛を見つけたらさくっと離婚すればいい。それまでは田舎ライフをエンジョイするのよ! と、呑気に蟻の巣をつついて暮らしているのだった。 ※他サイトにも掲載中。

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~

湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。 「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」 夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。 公爵である夫とから啖呵を切られたが。 翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。 地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。 「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。 一度、言った言葉を撤回するのは難しい。 そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。 徐々に距離を詰めていきましょう。 全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。 第二章から口説きまくり。 第四章で完結です。 第五章に番外編を追加しました。

【完結】モブ令嬢としてひっそり生きたいのに、腹黒公爵に気に入られました

22時完結
恋愛
貴族の家に生まれたものの、特別な才能もなく、家の中でも空気のような存在だったセシリア。 華やかな社交界には興味もないし、政略結婚の道具にされるのも嫌。だからこそ、目立たず、慎ましく生きるのが一番——。 そう思っていたのに、なぜか冷酷無比と名高いディートハルト公爵に目をつけられてしまった!? 「……なぜ私なんですか?」 「君は実に興味深い。そんなふうにおとなしくしていると、余計に手を伸ばしたくなる」 ーーそんなこと言われても困ります! 目立たずモブとして生きたいのに、公爵様はなぜか私を執拗に追いかけてくる。 しかも、いつの間にか甘やかされ、独占欲丸出しで迫られる日々……!? 「君は俺のものだ。他の誰にも渡すつもりはない」 逃げても逃げても追いかけてくる腹黒公爵様から、私は無事にモブ人生を送れるのでしょうか……!?