20 / 80
第三章:裏の日記
お口はチャックしましょう、ね?
しおりを挟む
馬車で五日かけて、ようやく港町に到着すると。
私は船着き場に向かい、チケットを購入した。
お父様が既に話をつけていたので、チケット購入から搭乗までスムーズに話が進んだのだが──船に乗り込む、直前。
スロープを登っていると、背後から大きな声が聞こえてきた。
「待ってください……!待って、待っ、ああ!」
聞き覚えのある声と、同時にベシャッという音が響く。
まさか、と嫌な予感がして振り向くと。
そこには、ひとりの少女が手をばんざいする形で派手に転倒していた。
あまりに見事なコケっぷりに、周囲のひとたちの視線が集中する。
その中の数人が、彼女に手を貸すために近づいた。
「うわぁ、派手に転んだわね。大丈夫?」
「痛そうな転び方だったわねぇ」
彼女は彼らの手を借りて、よろよろと立ち上がった。
──私の嫌な予感は、当たった。
彼女はパッと顔を上げ。
なにかを探すように視線をさ迷わせた後──ぴたり、と私を見つめた。
そして、満面の笑みを浮かべて。
「お義姉様!!」
周りによく響く大きな声で、私を呼んだのである。
いや、私はあなたの義姉ではないしなる予定もないって前に言ったはずなんだけれど!?
思わず言い返しそうになったが、既でグッと堪えた。
周囲のひとたちは私を見、彼女──ルアンナを見た。
そして、どこか訳知り顔で頷いた。
「きみ、お姉さんを追いかけてきたのかい」
「ほら、早く行きなさい」
老夫婦に道を譲られ、ルアンナはあっという間に私たちの前まで走ってきた。
派手にコケたためか、走ったためか、彼女の前髪は乱れて額が露わになっている。
額に汗をうかべ、顔を赤く染めながらも──ルアンナはにっこりと笑って言った。
「良かったぁ!間に合ったのですね。お義姉様、どこに行かれるのですか?私も連れていってください!」
そして、衝撃発言を投下した。
唖然として黙り込むと、事情を知らない周囲のひとたちが楽しそうに言った。
「なんだい、お姉さん恋しさに追いかけてきちゃったのかい」
「可愛らしいわねぇ。チケットの購入はあっちでできるわよ」
「ああ、そこのひと!一名分、チケットを追加してあげておくれ!」
そして、断りもなくチケットの手配をしてしまう始末。
私が止める間もなく、チケットの販売員が私たちのところまでやってきた。
「一名様追加でよろしいですか?」
よ、良くないーー!!
そう言おうとしたが、先にルアンナが叫んだ。
「はい!」
「いや、待ってください。彼女は勝手に家を抜け出してきたんです。私たちの一存で船に乗せることは出来ない」
ルアンナの暴走に待ったをかけたのは、驚いたことにリュカだった。
ルアンナは、そこでリュカがいることに初めて気がついたのだろう。目を真ん丸にして、大声で言った。
「やだぁ!!お義姉様、浮気!?」
…………いい加減、黙っていてくれないかしらねぇ!!
私は、本気でぶちギレそうだった。
私は船着き場に向かい、チケットを購入した。
お父様が既に話をつけていたので、チケット購入から搭乗までスムーズに話が進んだのだが──船に乗り込む、直前。
スロープを登っていると、背後から大きな声が聞こえてきた。
「待ってください……!待って、待っ、ああ!」
聞き覚えのある声と、同時にベシャッという音が響く。
まさか、と嫌な予感がして振り向くと。
そこには、ひとりの少女が手をばんざいする形で派手に転倒していた。
あまりに見事なコケっぷりに、周囲のひとたちの視線が集中する。
その中の数人が、彼女に手を貸すために近づいた。
「うわぁ、派手に転んだわね。大丈夫?」
「痛そうな転び方だったわねぇ」
彼女は彼らの手を借りて、よろよろと立ち上がった。
──私の嫌な予感は、当たった。
彼女はパッと顔を上げ。
なにかを探すように視線をさ迷わせた後──ぴたり、と私を見つめた。
そして、満面の笑みを浮かべて。
「お義姉様!!」
周りによく響く大きな声で、私を呼んだのである。
いや、私はあなたの義姉ではないしなる予定もないって前に言ったはずなんだけれど!?
思わず言い返しそうになったが、既でグッと堪えた。
周囲のひとたちは私を見、彼女──ルアンナを見た。
そして、どこか訳知り顔で頷いた。
「きみ、お姉さんを追いかけてきたのかい」
「ほら、早く行きなさい」
老夫婦に道を譲られ、ルアンナはあっという間に私たちの前まで走ってきた。
派手にコケたためか、走ったためか、彼女の前髪は乱れて額が露わになっている。
額に汗をうかべ、顔を赤く染めながらも──ルアンナはにっこりと笑って言った。
「良かったぁ!間に合ったのですね。お義姉様、どこに行かれるのですか?私も連れていってください!」
そして、衝撃発言を投下した。
唖然として黙り込むと、事情を知らない周囲のひとたちが楽しそうに言った。
「なんだい、お姉さん恋しさに追いかけてきちゃったのかい」
「可愛らしいわねぇ。チケットの購入はあっちでできるわよ」
「ああ、そこのひと!一名分、チケットを追加してあげておくれ!」
そして、断りもなくチケットの手配をしてしまう始末。
私が止める間もなく、チケットの販売員が私たちのところまでやってきた。
「一名様追加でよろしいですか?」
よ、良くないーー!!
そう言おうとしたが、先にルアンナが叫んだ。
「はい!」
「いや、待ってください。彼女は勝手に家を抜け出してきたんです。私たちの一存で船に乗せることは出来ない」
ルアンナの暴走に待ったをかけたのは、驚いたことにリュカだった。
ルアンナは、そこでリュカがいることに初めて気がついたのだろう。目を真ん丸にして、大声で言った。
「やだぁ!!お義姉様、浮気!?」
…………いい加減、黙っていてくれないかしらねぇ!!
私は、本気でぶちギレそうだった。
2,460
あなたにおすすめの小説
婚約破棄のあと、あなたのことだけ思い出せない
柴田はつみ
恋愛
伯爵令嬢セシリアは、王宮の舞踏会で王太子レイヴンから公開の場で婚約破棄を言い渡され、その場で倒れた。
目覚めた彼女は、礼儀も常識も覚えているのに――ただ一つ、レイヴンだけを思い出せない。
「あなたは、どなたですか?」
その一言に、彼の瞳は壊れた。
けれどレイヴンは何も語らず、セシリアを遠ざける。彼女を守るために、あの日婚約を捨てたのだと告げられないまま。
セシリアは過去を断ち切り、王宮の侍女として新しい生活を始める。
優しく手を差し伸べる護衛騎士アデルと心を通わせていくほど、レイヴンの胸は嫉妬と後悔で焼けていった。
――守るために捨てたはずなのに。忘れられたまま、他の男に笑う彼女を見ていられない。
一方、王宮では“偽聖女”の陰謀と、セシリアの血に眠る秘密が動き出す。
記憶を取り戻せば、彼女は狙われる。取り戻さなければ、二人は永遠に届かない。
これは、忘れてしまった令嬢と、忘れられてなお愛を捨てられない王太子が、もう一度“選び直す”恋の物語。
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
邪魔者は消えますので、どうぞお幸せに 婚約者は私の死をお望みです
ごろごろみかん。
恋愛
旧題:ゼラニウムの花束をあなたに
リリネリア・ブライシフィックは八歳のあの日に死んだ。死んだこととされたのだ。リリネリアであった彼女はあの絶望を忘れはしない。
じわじわと壊れていったリリネリアはある日、自身の元婚約者だった王太子レジナルド・リームヴと再会した。
レジナルドは少し前に隣国の王女を娶ったと聞く。だけどもうリリネリアには何も関係の無い話だ。何もかもがどうでもいい。リリネリアは何も期待していない。誰にも、何にも。
二人は知らない。
国王夫妻と公爵夫妻が、良かれと思ってしたことがリリネリアを追い詰めたことに。レジナルドを絶望させたことを、彼らは知らない。
彼らが偶然再会したのは運命のいたずらなのか、ただ単純に偶然なのか。だけどリリネリアは何一つ望んでいなかったし、レジナルドは何一つ知らなかった。ただそれだけなのである。
※タイトル変更しました
八年間の恋を捨てて結婚します
abang
恋愛
八年間愛した婚約者との婚約解消の書類を紛れ込ませた。
無関心な彼はサインしたことにも気づかなかった。
そして、アルベルトはずっと婚約者だった筈のルージュの婚約パーティーの記事で気付く。
彼女がアルベルトの元を去ったことをーー。
八年もの間ずっと自分だけを盲目的に愛していたはずのルージュ。
なのに彼女はもうすぐ別の男と婚約する。
正式な結婚の日取りまで記された記事にアルベルトは憤る。
「今度はそうやって気を引くつもりか!?」
〈完結〉【書籍化&コミカライズ】伯爵令嬢の責務
ごろごろみかん。
恋愛
見てしまった。聞いてしまった。
婚約者が、王女に愛を囁くところを。
だけど、彼は私との婚約を解消するつもりは無いみたい。
貴族の責務だから政略結婚に甘んじるのですって。
それなら、私は私で貴族令嬢としての責務を果たすまで。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi(がっち)
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
旦那様、離婚してくださいませ!
ましろ
恋愛
ローズが結婚して3年目の結婚記念日、旦那様が事故に遭い5年間の記憶を失ってしまったらしい。
まぁ、大変ですわね。でも利き手が無事でよかったわ!こちらにサインを。
離婚届?なぜ?!大慌てする旦那様。
今更何をいっているのかしら。そうね、記憶がないんだったわ。
夫婦関係は冷めきっていた。3歳年上のキリアンは婚約時代から無口で冷たかったが、結婚したら変わるはずと期待した。しかし、初夜に言われたのは「お前を抱くのは無理だ」の一言。理由を聞いても黙って部屋を出ていってしまった。
それでもいつかは打ち解けられると期待し、様々な努力をし続けたがまったく実を結ばなかった。
お義母様には跡継ぎはまだか、石女かと嫌味を言われ、社交会でも旦那様に冷たくされる可哀想な妻と面白可笑しく噂され蔑まれる日々。なぜ私はこんな扱いを受けなくてはいけないの?耐えに耐えて3年。やっと白い結婚が成立して離婚できる!と喜んでいたのに……
なんでもいいから旦那様、離婚してくださいませ!
身代わりの恋だと思っていました〜記憶を失った私に、元婚約者が泣いて縋る理由〜
恋せよ恋
恋愛
「君を愛している。一目惚れだったんだ」
18歳の伯爵令嬢エリカは、9歳年上のリヒャルト伯爵から
情熱的な求婚を受け、幸せの絶頂にいた。
しかし、親族顔合わせの席で運命が狂い出す。
彼の視線の先にいたのは、エリカの伯母であり、
彼の学生時代の恋人で「初めての女性」だった……ミレイユ。
「あの子は私の身代わりでしょう」「私はあなただけなの」
伯母ミレイユの甘い誘惑と、裏切りの密会。
衝撃の事実を目撃したエリカは、階段から転落し、
彼と過ごした愛しくも残酷な二年間の記憶だけを失ってしまう。
「……あの、どちら様でしょうか?」
無垢な瞳で問いかけるエリカに、絶望し泣き崩れるリヒャルト。
裏切った男と、略奪を企てた伯母。
二人に待ち受けるのは、甘い報復と取り返しのつかない後悔だった。
🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。
🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。
🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。
🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。
🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる