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兎の反撃 *
しおりを挟むそれからは怒涛の時間が続いた。
結婚式が終わればすぐに昼食会の準備に取り掛かる。
ティナもお色直しのためドレスを変える。
昼食会の時に着用するのは、雪のように真っ白な布地に銀色のレースやフリルを使用したドレスで、裾にいくにつれ、木漏れ日のような緑のラインが流れるように色を指している。
どこからどう見ても、ロベートをイメージして作られたドレスだった。
彼をイメージしたドレスのデザインを仕立てるとなると、どうしたって冷たい印象を帯びるシンプルなAラインドレスを想像してしまいがちだが、大人びたデザインは残念なことにティナには似合わなかった。
そのため、彼は彼自身の色を使用しながらもティナに似合うようチュールやシフォン生地を重ね、壁を寄せたつくりにした。
髪もふたたび解かれ、ティナは熱い濡れ布で髪を挟まれ編み髪の癖を取ると、すぐに櫛をとおされる。
昼食会がおわれば、すぐに披露宴だ。
披露宴もまたドレスを変え、髪型を変え、化粧も変えたティナは既にヘトヘトだった。
それでも失態は見せないよう表面上は笑顔をずっと貼り付け、ほんの少しの自由時間が得られるとメイドにお願いし、彼女がまとめた書類を持ってきてもらう。
彼女はほんの僅かな時間をも利用して、なんとか必要知識を再度確認し直していた。
その甲斐あってか、昼食会でも披露宴でも失敗と言えるミスは犯さずに済んだようだ。
その代わり、会うひと会うひとに睨まれたり、嫌味なのか褒め言葉なのか判別がつかない言葉を贈られたり、はてさて明らかな蔑みを受けたりと、社交界は彼女にとって針のむしろも同然だった。
ロベートがその度に相手に牽制してくれるが、第二王子の妻という、権力者にとっていちばん美味しいポジションをどこの馬の骨とも知れない町娘に奪われてはたまらないというもの。
苦々しい顔をしながら踵を返す貴族たちを前に、ティナは休まる時がまったくなかった。
ロレリーナには合格点をもらったはずなのだが、生まれつき高貴な身分の女性には付け焼き刃がわかってしまうのか、あからさまに鼻で笑われるようなこともあった。
なにがあっても笑顔を忘れずに!というロレリーナの言葉を頼りに笑みを貼り付けているが、いい加減表情筋が吊りそうだ。
夜も深け、深夜に近い時間帯になってようやくティナは会場を抜けることに成功した。
まだロベートは、知り合いの大臣に話しかけられていて、部屋には戻れなさそうだ。
先に支度を整えて待っていよう。
とんでもなく疲れた一日だったが、これからが本番なのだ。
部屋に戻ったティナはメイドの手を借りて入浴を終えると、絹のネグリジェを身にまとった。
薄桃の、透けるほどに薄いネグリジェはなんだか落ち着かない。
彼女は室内を何周もしていたが、やがてベッドに座り、彼を待った。
どきどきと、心臓はとてつもなく大きく鳴っている。この日をずっと待っていたのに、いざその時間が近づくとなると、緊張でどうにかなってしまいそうだ。
ティナは緊張がを和らげるために一度ベッドに横になった。
(大丈夫、大丈夫……。ロレリーナに教えてもらったんだから……)
意図的に深呼吸をずっと繰り返していた彼女は──本人が思っているよりも、疲弊していたのだろう。
朝早くから準備に追われ、慣れない社交界で終始気を張っていたために、ベッドに横になるとものの数秒で眠りに落ちてしまった。
本人も、気が付かないうちに。
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