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1部・第1章

色々気づいてしまいました。2

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 そんな状況に陰キャオタクだった私が対応できるわけもなく。
このような態度をとってしまったのだ。

「だからね! シルフさえ良ければ逆にこっちからお願いしたいと言いますか……!」
「そ…そっか。ボクはボクで取り乱しすぎたかもしれない……それじゃあ、その、これからボク達は友達、という事で!」
「そ、そうね! 私たちこれから友達よ!」

 ぎこちない幼女と絶世の美青年の会話。
互いに友達の作り方を知らないからこうなっているんだろう。
精霊のシルフはいいとして私はいったい……。

「ねぇ、ボクは君のことをなんて呼べば良いのかな? 友達の名前を呼んだことなかったから…」
「普通にアミレスでいいと思うわよ。というか、あなたの好きな呼び方をしていいんだよ?」
「じゃあ、アミィ…って呼んでもいい? せっかくだから、ボクしかしなさそうな呼び方がいいな、って思って」

 シルフはきっと照れているのだろう。口元を手で覆うようにしている。
そんな事しなくても私の目線からではほとんど何も見えないのに。
それにしても。アミィ…なるほど愛称ニックネームできたか。
 こんなとんでもイケメンなのに奥手で友達にあだ名つけちゃう系とか最高では…??
オタク趣味関係無しにそういうのに女は弱いのよっ。

「じゃあそれで! これから私のことはアミィって呼んでね、シルフ」
「うん。そう呼ばせてもらうね、アミィ」

 私は天に手を伸ばし、シルフは地に手を伸ばす。
握手をしたとき、シルフのしなやかで大きい手が私の手を包み込む。
──今ここに、きっと。きっと長い付き合いになるであろう、アミレス私の今世初の友達ができたのだった。





 熱い友情の握手を交わしてから少しの時間が経った。

「──ねえシルフ。私ちょっと思ったんだけどさ」

 シルフの頭をちょんちょんつついてみる。
普通なら私がシルフの頭をつつくなど(身長的な問題で)まず不可能なのだが、今はそれが叶ってしまっている。

「どうかしたの? もしかして肩車嫌だった?」
「別に肩車は普通に嬉しいしありがたいよ。それとは別の話なの」

 そう。なんと今私はシルフに肩車をしてもらっている。
さっきまでは普通に2人でのんびり城内を散策していたのだけれど、あまりにも私達に体格差がありすぎて私が全く足並みを揃えられなかったため、シルフが『ボクが運んであげようか?』と提案してくれて結果肩車をしてもらっているのだ。
 精霊さんに肩車させるなんて恐れ多いんだけども…。
シルフは気にしないでいいって言ってたけど、やっぱり恐れ多いことには恐れ多い。

「いくらお祭りでも流石に人いなさ過ぎじゃない? どれだけ歩いても誰とも出会わないんだけど」
「そうだね。確かに不自然なくらい人がいないけど……ボクとしては不用意に姿を見られる訳にはいかないから、これくらい人がいない方がいいかな」

 あぁ確かに。と小さく相槌をうつ。
でもこれ、急に人が現れたらどうするんだろう。

「あ、でもね」

歩みを止めることなくシルフが話す。

「一応、何人かはこの城の中に人間もいるみたいだよ」
「ほんとに人間いるの?」
「うん。ちょうど下の階のこの辺りに1人いるけど………会いに行ってみる?」

 私の好きにさせてくれるらしい。
なんて良い奴なんだ、シルフ。

「たしかに情報収集って大事だからね。色々聞きに行ってみよう! えいえいおー!」
「お、おー?」

 握りこぶしを斜め上に伸ばす私を見て、何も知らないであろうシルフも真似をして少しだけポーズをとってくれた。
美青年で優しくてノリもいいなんて…恐ろしい子!

「それじゃあボクは一旦この辺りで姿を消すね。消すっていっても一応傍にはいるようにするから!」

 脇腹を捕まれてこれでもかと言うほど丁寧に肩から降ろされる。
急に姿を消すと私が落ちたりしてしまうのか、消す前にわざわざ降ろしてくれた。

「うんわかった。私の情報収集能力をとくとご覧あれ…!」

 小さな体を反らせ胸を張り手を当てて自信満々に意気込む。
ふっふっふっ………私のRPGとかで培ってきた情報収集能力をここで発揮してみせよう!






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