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第一章 “最弱”のギルド 編

13 最弱ギルドの挑戦状

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あれから二日。ユンクレアに帰って来た俺たちは、出掛ける前より様変わりした風景を見て、唖然としていた。驚くと共に、俺はかつてのユンクレアが見えるようで、とても嬉しかった。それに、懸念していたことも解決した。オアシス・ユーグ…………いや、ユーグ村に、人々が戻ってきたのである。そこには、俺の顔見知りもいた。久しぶりに会った彼らは、見違えるようで……。俺が受付ヒラだった時、俺の二分の一位の背丈せたけだったガキんちょは、いつの間にか俺と同じくらいの背の高さになっていて……。ミヨやスバルが来たときにはもう既に居なかったのだろうから、ここに人が住んでいたことに逆に驚いていたようだ。村人達も、急に砂漠が消えて自然が戻ったから、非常に驚いて……それで、ユーグ村の様子を見に来たらしい。事情を話すと、村人達は大いに喜んだ。長年苦しめられた魔物がいなくなり、ネックになっていた“熱砂”も消えたから、余計にだ。
俺たちは、唯一屋根がしっかりと残っているギルドの建物で、祝賀会も兼ねて、一緒に飲み交わすことになった。あいつらミヨとスバルも、村人に混じって楽しんでいるようだ。良かった良かった。俺は、かつて勤めていた頃にお世話になった、当時の補佐役――今の村長と、相席させてもらうことにした。

「あれは、旦那フーガが居なくなったすぐ後の事でした……。」

色々な話を聞かせてもらった。急に緑が失われ、岩と砂だけの土地になったこと。原因を探りに行った、若衆が魔物に襲われ、ズタボロになって帰ってきたこと。ユーグ村を捨て、別の地に安住を求めに旅をしたこと。そして、水の湧き出る奇跡の地―――オアシスを見つけたこと。

「旦那……あんたがこの問題を解決してくれなきゃ、俺たちはずっと狭い仮住まいオアシスの中でした。本当にありがとうございました。」

村長にも頭を下げられる。俺一人、自己満足で終わるだろうと思っていたこの作戦が、ここまで沢山の人から感謝されることになるとは思わなかった。………俺が冒険者として、色々なことをやってたときを思い出す。だが、あの時の比ではないくらい、俺は嬉しかった。
………俺は、この仕事に就いて、本当に良かった……。そう、思えた。



宴会が終わり、辺りは静まり返った。村人達の寝泊まりできるスペースがあまり無いだろうから、かつて大家族が寝ていたのであろう二階のスペースに泊めてあげることにした。村とはいえ、そこまで規模が大きくないから、ここ一つだけで事足りて良かった。寝静まった頃、俺とミヨとスバルは、あの相談スペース(仮)に集まった。ちなみに、ロインはいつの間にか何処かへ消えてしまった。オアシス・レッセに戻ったのだろうか。………後であいつにも、手紙を書いてやろう。本当に助かった。ミヨとスバルは、俺の方を見る。こいつらの目も変わった。希望に満ち溢れている目だ。俺は深呼吸し、二人をねぎらう。

「……お前達、本当によくやってくれた。今回の依頼達成で、『Aランク以上の依頼を一つでも達成する』という予算アップの条件を満たすことができた。本部からも、このように手紙が来ている。」

紙を二人に渡す。覗くと、そこには…

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
冒険者ギルド アスタル王国 ユンクレア支部
月額予算 50000マニー → 100000マニー
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

ミヨがキラキラさせた目で、俺を見る。

「……に、二倍も増額……!! 本当なんですか!?」

俺もそれに笑顔でこたえる。

「ああ。今回成し遂げたことは、それだけ凄いことなんだぞ? それにな、討伐報酬だってあるんだ。」

ほえー、とスバルは目をぱちくりさせる。やはり、実感が湧かないみたいだ。

「でもこれで、Aランクの依頼を、絶対に月一で出せるようになりましたね。」
「ああ。規模が縮小したとは言え、魔法迷宮ダンジョン“熱死の砂漠”はまだ健在だ。それに、まだ本部の調査もちゃんと行われていない。だから、近くの支部……つまり、ユンクレアに回ってくる可能性は十分高い。Aランクに頼むことだってできるようになったのは、デカいアドバンテージだ。しかも、効果はそれだけじゃない。」
「え………?」
「どういうことですか?」

二人とも、目をぱちくりさせる。……やれやれ、やはり二人ともまだまだだなぁ。

「いいか? 魔法迷宮ダンジョンってのは、冒険者の稼ぎ処だ。しかも、この“熱砂”は最近発見されたばかりの新しい魔法迷宮ダンジョン。全国各地から、血気盛んな沢山の冒険者が来るだろう。そしたら、換金、依頼、休憩に食事……。彼らが使うのは何処だ?」
「あ…………冒険者ギルドですね。」
「確かに、アスタル王国でも有名な魔法迷宮ダンジョン“未開の森”の近くには、大きな支部がありますね……。」
「ああ。それに例え冒険者で無くとも、この商売の機会ビッグチャンスに訪れる商人や、お宝エサに釣られた貴族が来ることもある。それだけ魔法迷宮ダンジョンの存在はデカいんだ。」

俺はゴホン、と咳払いをする。二人とも、姿勢を正す。

「だから、これからが本番だ。………お前達の仕事はなんだっ!?」

席を立ち、手を後ろに組み、大声で答える。

「「冒険者を助け、手伝い、そして導く、常に良きパートナーとして支えることであるっ!!」」
「ここからが、俺たちの本当の仕事だ! 俺たちの存在する主目的を忘れず、他の支部を見返すため、ユンクレアを巨大な支部にするぞ!!」
「「応っ!!」」

ここは、冒険者ギルド。アスタル王国、ユンクレア支部。
俺たちは今日、世界に挑戦状を叩きつけた。
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