【R-18】【完結】皇帝と犬

雲走もそそ

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06.最後の手段-4 *

「……」

 かすかな息遣いが聞こえてシュルークが顔を上げると、ファルハードは自身の寝間着の下を寛げ、男根を扱いていた。まだ水平より下を向いていた男の逸物が、硬く勃ち上がる。
 準備を終えた獣は、縮こまっていたシュルークの足首を掴んで引き寄せた。彼に腱を断たれた傷痕が、広い手に包まれて隠れる。

「いや……」

 無駄だとわかっていても、拒絶が口から出てくる。
 それを無視して、ファルハードは男根をシュルークの秘所へ宛がった。

「うっ……!」

 押し当てられた熱の塊がめり込んでくる。
 シュルークの全身は緊張し硬直した。だがファルハードは構わない。

「うぅ、う、……あああッ!」

 表面と浅い場所だけおざなりに濡らされた場所を、肉の槍が強引に引き裂いた。
 やはり処女ではなく、幸い出血もなかったが、あまりに性急な挿入はシュルークに激しい痛みをもたらした。薄い腹がひくひくと痙攣している。

 そんな惨状に配慮することもなく、ファルハードはシュルークの膝裏を押さえつけて、律動を始めた。

「あ゛っ、いっ、いた、あっ……!」

 鍛え上げた肉体の男に力任せに腰を打ちつけられ、肌がぶつかると重い音が立った。

 苦痛の中、シュルークは必死に息を吸った。痛みと律動の衝撃で息を吐くばかりになって、気を失ってしまいそうになるからだ。
 甘い香が肺から体へ巡っていく。この寝室へ入った時から吸い続けていた煙が、恐怖で息が浅くなったために、しばらく室内にいて事前に摂取していたファルハードよりも、早急にシュルークの脳へ染み渡った。
 実はこの香には、性的興奮を促す効果があった。

「うぅ、はぁ、は、あ、あ……」

 情感と、分泌されてきた体液が、痛みを少し和らげていってくれる。
 おかげで恐怖の奔流の渦中にいたシュルークは、徐々に思考を取り戻してきた。

「ぅぐ……」

 やがて、ファルハードは低い呻き声と共に、シュルークの中へ子種を放った。
 彼もあまり良くはなかったのだろう。女陰を味わうというよりは、きつすぎる穴で自分のものを扱いてどうにか射精したような、険しい表情をずっと浮かべていた。それに気づけるほど、シュルークには落ち着きが戻っている。

「……陛下は、何を待っておられるのですか」

 ずるりと胎内から肉杭が出ていく。体に穴が空いたような感触を覚えながら、シュルークは身づくろいをするファルハードに声をかけた。

「その怒りを抑え、苛めど殺すことはなく……、そこまでして私が何を思い出すのをお待ちなのですか」

 シュルークは、ファルハードが自分を生かしている理由がわからなかった。復讐のために飼い殺しにするにしては、責めが手ぬるかったからだ。
 しかし今夜のファルハードの言葉で、それが理由の全てかはわからないが、シュルークの記憶が戻るのを待っているのだろうと悟った。

 立ち上がっていたファルハードは、床へ倒れたままのシュルークを振り返って見下ろす。

「お前の犯した、罪だ。自身の罪も知らぬ者を処刑して、何の意味がある」

 たしかに、そうなのかもしれない。
 今のシュルークなら、怯えはしても悔恨は欠片もなく死んでいくだろう。
 ファルハードは正しく断罪するために、シュルークを生かしている。

 しかしそれにしては、見下ろすファルハードの眼差しは揺れていた。好意の類は感じられないが、とても、憎い相手の処刑を待ち望んでいる顔にも見えない。

 ファルハードの目的が、少しわかったのかもしれない。だが結局、全てはわからなかった。
 疲労と香がもたらした酩酊に身を任せ、シュルークは瞼を閉じた。意識が傾き、暗闇に沈んでいく。
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