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11.露見-3
「大好き……」
何が起きたのか、理解する前に口づけは終わり、シュルークは仰向けのファルハードに覆いかぶさるように、体の上で胸に頭をつけてまた寝息を立て始めた。
(この女……!)
ファルハードは二重に衝撃を受けていた。
触れるだけの軽いもので、彼女は愛犬を幻視しているだけとはいえ、こんな女に口づけられて生理的な嫌悪を感じなかった。
それだけではない。体に乗られて彼女の肢体に密着し、その柔らかさと最早嗅ぎ慣れた香りを意識した途端、熱を覚えたのだ。
ファルハードは帝国にいた頃、稀に見るほど美しい女奴隷を幾人も侍らせ、好きに抱いていた。自ら選び、磨き抜かれた最上の女たちだ。
それでも、彼女らが各々の魅力を駆使し誘惑してくることでその気になったというのに、こんな頭のおかしい、ファルハードの女奴隷に比べれば容姿も劣る女に、劣情を催した。
監禁されて長い間女を抱いていない。それが原因であっても屈辱的だ。
屈辱を感じているのに、ファルハードは自分の腕が、上にのしかかるシュルークの背に回されるのを止められなかった。
もし犯しても、それは露見しないかもしれない。
ここには誰もこない。シュルークはファルハードが犬らしくない行動を取ることを始め、彼女に都合の悪いことが起きれば何も見なくなり、記憶も飛ぶ。
それに、帝国がこの都を落とせば、ファルハードが処刑する予定の女だ。
(そうだ、この女は、最大限甚振ってから殺す……)
女奴隷たちは、帝国の皇子で、次期皇帝と目されるファルハードに抱かれることを、栄誉と捉えていた。それを、こんな女に与えてやるものか。凌辱が彼女への罰になるとしても、ファルハードが直接手にかける必要はない。
また、処女は殺してはならないという伝承があるため、幼子を除く未婚の女を処刑する場合は、事前に看守が犯すことになっている。ファルハードがやらなくても、いずれ彼女は誰かの手で恥辱を受けるだろう。
体の飢えは生理反応。こんな女を抱くなど飢えていてもあってはならない。
ファルハードはそう自分に言い聞かせて、中心へ集まる熱を耐え、やり過ごすのであった。
◆
その日もファルハードは、首輪の紐をシュルークに引かれ、四つん這いで屋敷の表の庭を歩かされていた。
まだ将軍が帰るまで日はあるそうだし、使用人たちはシュルークが掌握している。だからシュルークとファルハードは、慣れもあって油断していたのだ。このような一歩間違えれば死ぬはずの状況で。
庭に面した、屋根のある回廊の傍を通った時だった。
廊下の曲がり角から、男が二人現れた。
「あ……!」
シュルークが短く声を漏らして硬直する。ファルハードにも緊張が走った。
このうちの一人に、ファルハードは覚えがあった。彼は使用人や私兵ではない。
鍛え上げた体に、黒い髪と青い瞳の壮年の男。
屋敷の主人、シュルークの父親、ファルハードを捕らえた将軍だった。
何が起きたのか、理解する前に口づけは終わり、シュルークは仰向けのファルハードに覆いかぶさるように、体の上で胸に頭をつけてまた寝息を立て始めた。
(この女……!)
ファルハードは二重に衝撃を受けていた。
触れるだけの軽いもので、彼女は愛犬を幻視しているだけとはいえ、こんな女に口づけられて生理的な嫌悪を感じなかった。
それだけではない。体に乗られて彼女の肢体に密着し、その柔らかさと最早嗅ぎ慣れた香りを意識した途端、熱を覚えたのだ。
ファルハードは帝国にいた頃、稀に見るほど美しい女奴隷を幾人も侍らせ、好きに抱いていた。自ら選び、磨き抜かれた最上の女たちだ。
それでも、彼女らが各々の魅力を駆使し誘惑してくることでその気になったというのに、こんな頭のおかしい、ファルハードの女奴隷に比べれば容姿も劣る女に、劣情を催した。
監禁されて長い間女を抱いていない。それが原因であっても屈辱的だ。
屈辱を感じているのに、ファルハードは自分の腕が、上にのしかかるシュルークの背に回されるのを止められなかった。
もし犯しても、それは露見しないかもしれない。
ここには誰もこない。シュルークはファルハードが犬らしくない行動を取ることを始め、彼女に都合の悪いことが起きれば何も見なくなり、記憶も飛ぶ。
それに、帝国がこの都を落とせば、ファルハードが処刑する予定の女だ。
(そうだ、この女は、最大限甚振ってから殺す……)
女奴隷たちは、帝国の皇子で、次期皇帝と目されるファルハードに抱かれることを、栄誉と捉えていた。それを、こんな女に与えてやるものか。凌辱が彼女への罰になるとしても、ファルハードが直接手にかける必要はない。
また、処女は殺してはならないという伝承があるため、幼子を除く未婚の女を処刑する場合は、事前に看守が犯すことになっている。ファルハードがやらなくても、いずれ彼女は誰かの手で恥辱を受けるだろう。
体の飢えは生理反応。こんな女を抱くなど飢えていてもあってはならない。
ファルハードはそう自分に言い聞かせて、中心へ集まる熱を耐え、やり過ごすのであった。
◆
その日もファルハードは、首輪の紐をシュルークに引かれ、四つん這いで屋敷の表の庭を歩かされていた。
まだ将軍が帰るまで日はあるそうだし、使用人たちはシュルークが掌握している。だからシュルークとファルハードは、慣れもあって油断していたのだ。このような一歩間違えれば死ぬはずの状況で。
庭に面した、屋根のある回廊の傍を通った時だった。
廊下の曲がり角から、男が二人現れた。
「あ……!」
シュルークが短く声を漏らして硬直する。ファルハードにも緊張が走った。
このうちの一人に、ファルハードは覚えがあった。彼は使用人や私兵ではない。
鍛え上げた体に、黒い髪と青い瞳の壮年の男。
屋敷の主人、シュルークの父親、ファルハードを捕らえた将軍だった。
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