【R-18】【完結】壊された二人の許しと治療

雲走もそそ

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前編

9.証拠-3

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 イリスはポケットから、手の中に隠せるほどの大きさの瓶を取り出して、グンナルの机へ置いた。
 栓をしたガラス瓶の中には、小さな黒いトカゲが一匹閉じ込められており、時折赤い舌を覗かせている。ただのトカゲではなく魔法動物の黒トカゲだ。

「ご確認いただければお分かりになるでしょうが、彼の使い魔です」

 グンナルは杖を取り出して、瓶を軽く突いた。するとトカゲから、金色の光が煙のようにうっすらとにじみ出て、ガラスを通り抜け周囲へ霧散した。
 その光はこの魔法動物から漏れ出た魔力である。使い魔の場合、体には主人の魔力が満たされているはずだ。その魔力を探れば、誰に使役されているか判別できる。

「確かにそのようだ」

 使い魔の魔力の質を確かめて、グンナルは頷いた。

「この黒トカゲは私の研究室で捕獲しました。彼の魔術で厳重に隠匿されていましたが」

 アルヴィドは学生時代、空間制御魔術を最も得意としており、そのほとんどの術に適性があったと聞く。この系統の魔術の中には、昨日の男の鞄のように限られた場所を拡張したり、物を視認はおろか、それが出す音やにおいなどの情報も他者へ届かないようにできる術が含まれる。
 この使い魔も、そうして隠されていた。彼の超高精度の術のせいで、見つけ出すのに非常に時間がかかってしまった。いる、という確信を持って捜索していなければ、イリスは今でも見つけられていなかっただろう。

「課されていた役割は、視覚と聴覚の中継です」

 使い魔は様々な役割を果たす。見聞きする情報を共有させて、主人の目と耳の代わりにも使える。この使い魔もその用途だったことは確認済みだ。
 アルヴィドは密かにイリスへ使い魔を付け、見張っていた。だから昨日、イリスの研究室での出来事を、グンナルへ説明できるほど詳しく知っていたのだ。
 ちなみに現在はその共有を遮断しており、アルヴィドには何の情報も届いていない。

「おそらく、この使い魔は彼が勤務を始めてからの早い段階で、私に付けられていました」

 これまで、校内でアルヴィドを見かけたのは、職員会議などの不可避の機会と、イリスが呼び出した時だけだった。他の職員曰く普通に出歩いているというのに、イリスだけ接触しなかったのはこれが理由だろう。使い魔でイリスの位置を把握し、顔を合わせないよう避けていたに違いない。
 研究室、あるいは私室の中まで行動を見張られていたと理解して、使い魔を捕獲したイリスは怖気立ち、次に憤慨した。だが同時に、良い材料を手に入れたとも考えた。

「同僚を使い魔で監視するなど、倫理的に問題のある行為です。解雇理由としては十分でしょう」

 これでアルヴィドを追い出し、平穏な生活を取り戻せる。イリスはそう確信していた。
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