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後編
35.一年後-7
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「ああ、駄目だ……」
観念するような声音で呟きながら、アルヴィドはイリスの手を掴んだまま、押し倒した。
覆いかぶさって唇を懸命に合わせてくる。
イリスの手は押さえつけられているが、アルヴィドは拘束するためではなく、どちらかというとその手を離すと自分がこれ以上のことをしてしまうから、他の姿勢にならないようにそうしている様子だった。
彼は、体がもう我慢ならない段階まで来ていても、心が追いつけていないから、必死に情動を抑えようとしているのだ。
だが二人にとってこの行為は、もう一方的なものでも、許されないものでもないはずだ。
「不安なの……?」
腿にあたる固い感触に欲望を煽られつつ、イリスはアルヴィドを見上げた。
言い当てられたアルヴィドは、悲痛に顔を歪めた。その下睫毛の端は僅かに濡れている。
「……ああ。君を傷つけないか、僕がおかしくならないか、不安で仕方ない。それを自覚しながら、体の抑えがきかないこの状況が、怖い」
「手を……」
アルヴィドに掴む手を放させて、イリスは自由になった腕で彼の頭を胸に抱え込んだ。
まだひりつくような疼きに体を蝕まれているため、そんな肌の触れ合いでも胎の奥がずしりと重くなる。
「この状況は、危険な状況?」
「わからない」
「危険ではないわ……。闇雲に怖がってはだめ」
理解できないから、昔と似た状況が危険に感じて怖い。
だがよく理解すれば、似ているが違う、危険ではない状況だと分かるはずだ。
「体がこんなになってしまってるのは薬の所為。だけど、先に進みたいのは、自分の意思だわ……。あなたを、愛しているから」
「僕も、君を愛している」
ずくずくと、疼きが強くなってくる。
先ほど絶頂を迎えて少し落ち着いた体が、またどうしようもなく昂りつつある。
イリスは覆いかぶさるアルヴィドの体に、我慢できなくなって足を絡めた。吐息が熱くなっている。
「はぁっ……。それなら、お互いを傷つけることなんて、ない。おかしいことなんて、ない。昔とは、違う。不安でも、これは危険な状況じゃない。そうでしょう?」
「ああ……」
胸元で返事をするアルヴィドの息遣いすら、体を高めていく。どくどくと聞こえる拍動が、イリス自身のものか彼のものか、もう分からない。
「これは、不安になるが、危険ではない状況だ……。なら、危険はないと理解して、その状況に身を置き続ければ、不安はなくなる」
ようやく思い出した治療の理論を反芻して、アルヴィドは握りしめて耐えていたシーツから指を離し、イリスの背に腕をまわした。
壊さないかと怯える手つきに、徐々に力がこもって、やがて強く抱きしめられる。
「すまない、イリス……」
「ん、ふ……、んぅ」
唇を重ねて、深く舌を交わらせる。
そして顔を離したアルヴィドの表情からは、しっかりした意思が見て取れた。
「これから、最後まで、して構わないか」
確かな決意と情欲の乗った眼差しに、イリスの背筋は期待にぞくりと震える。
「ええ。あなたと、したい……っ」
観念するような声音で呟きながら、アルヴィドはイリスの手を掴んだまま、押し倒した。
覆いかぶさって唇を懸命に合わせてくる。
イリスの手は押さえつけられているが、アルヴィドは拘束するためではなく、どちらかというとその手を離すと自分がこれ以上のことをしてしまうから、他の姿勢にならないようにそうしている様子だった。
彼は、体がもう我慢ならない段階まで来ていても、心が追いつけていないから、必死に情動を抑えようとしているのだ。
だが二人にとってこの行為は、もう一方的なものでも、許されないものでもないはずだ。
「不安なの……?」
腿にあたる固い感触に欲望を煽られつつ、イリスはアルヴィドを見上げた。
言い当てられたアルヴィドは、悲痛に顔を歪めた。その下睫毛の端は僅かに濡れている。
「……ああ。君を傷つけないか、僕がおかしくならないか、不安で仕方ない。それを自覚しながら、体の抑えがきかないこの状況が、怖い」
「手を……」
アルヴィドに掴む手を放させて、イリスは自由になった腕で彼の頭を胸に抱え込んだ。
まだひりつくような疼きに体を蝕まれているため、そんな肌の触れ合いでも胎の奥がずしりと重くなる。
「この状況は、危険な状況?」
「わからない」
「危険ではないわ……。闇雲に怖がってはだめ」
理解できないから、昔と似た状況が危険に感じて怖い。
だがよく理解すれば、似ているが違う、危険ではない状況だと分かるはずだ。
「体がこんなになってしまってるのは薬の所為。だけど、先に進みたいのは、自分の意思だわ……。あなたを、愛しているから」
「僕も、君を愛している」
ずくずくと、疼きが強くなってくる。
先ほど絶頂を迎えて少し落ち着いた体が、またどうしようもなく昂りつつある。
イリスは覆いかぶさるアルヴィドの体に、我慢できなくなって足を絡めた。吐息が熱くなっている。
「はぁっ……。それなら、お互いを傷つけることなんて、ない。おかしいことなんて、ない。昔とは、違う。不安でも、これは危険な状況じゃない。そうでしょう?」
「ああ……」
胸元で返事をするアルヴィドの息遣いすら、体を高めていく。どくどくと聞こえる拍動が、イリス自身のものか彼のものか、もう分からない。
「これは、不安になるが、危険ではない状況だ……。なら、危険はないと理解して、その状況に身を置き続ければ、不安はなくなる」
ようやく思い出した治療の理論を反芻して、アルヴィドは握りしめて耐えていたシーツから指を離し、イリスの背に腕をまわした。
壊さないかと怯える手つきに、徐々に力がこもって、やがて強く抱きしめられる。
「すまない、イリス……」
「ん、ふ……、んぅ」
唇を重ねて、深く舌を交わらせる。
そして顔を離したアルヴィドの表情からは、しっかりした意思が見て取れた。
「これから、最後まで、して構わないか」
確かな決意と情欲の乗った眼差しに、イリスの背筋は期待にぞくりと震える。
「ええ。あなたと、したい……っ」
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