魔王召喚 〜 召喚されし歴代最強 〜

四乃森 コオ

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天国と地獄(前編)

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「ご協力ありがとうございます」

「ご苦労様です。それでは、あとの事は宜しくお願いします」


魔人を討ち倒し、今回の事件の首謀者であるメイニエルを拘束したスズネたちは、聖騎士団に連絡を取り、その身を引き渡したのだった。
無事に事件は解決し一件落着したものの、何とも言い難い後味の悪さを残す結末となり、聖騎士たちから送られる賞賛の言葉の数々も今のスズネたちには何の意味も成さなかった。
そして、全ての引き継ぎを終えたスズネたちは、朝日が昇る頃になってやっとホームへと辿り着いたのであった。


「みんな、お疲れ様」

「はぁ~、ホントに疲れたわね」

「わっちもヘトヘトなのじゃ・・・」

「セスリー、傷はもう大丈夫なんすか?」

「は…はい。スズネの回復魔法のおかげで傷は塞がりましたし、あとはゆっくりと休めば問題ありません」


朝からクエストをこなし、その足でロザリーの誕生祝いに赴き、その帰り道で魔人に遭遇し戦闘というハードな一日を終えたスズネたちは、ホームに戻り一言二言だけ会話をした後、全員そのままリビングで気を失ったように眠りについたのだった。


─────────────────────────


スズネたちが眠りについてから数時間が経ち、正午を過ぎた頃 ───── 。


ドンドンドン。

・・・。

ドンドンドン。

・・・。


疲れ果てて深い眠りについていたスズネたちの眠りを妨げるように玄関を叩く音がホームに響き渡る。


「すみませ~ん。どなたかいらっしゃいませんか~」


──────── ガチャッ 。


「ふぁ~い」


ホームに戻り眠りについてからまだ数時間しか経っておらず、まだ眠気眼の状態のスズネが玄関を開けるとそこに三人の聖騎士が立っていた。


「すみません。こちらは冒険者パーティ“宿り木”のホームで間違いないでしょうか?」


突然目の前に現れた聖騎士に驚き、一気に目が覚めたスズネ。


「えっ!?あっ…はい、そうです」

「良かった。すみませんが、今リーダーのスズネさんはいらっしゃいますか?」

「私がスズネですけど・・・。何かご用ですか?」

「あっ!?あなたがスズネさんでしたか。これは失礼しました。実は、昨日魔人事件を解決されたということで、国王様より冒険者パーティ“宿り木”に召喚命令が出されております」

「えっ!?えっ!?召喚命令ですか?国王様から?」

「はい、そうです。そういう理由で唐突で申し訳ないのですが、これから王城までご同行頂いてもよろしいでしょうか」


突然の召喚命令に戸惑いを見せるスズネ。
そして、そんな慌ただしい様子に気づいたミリアが玄関までやってきた。


「ちょっと何よ、こっちは疲れて寝てるってのに ───── 」

「大変なのよミリア。私たちに国王様から召喚命令が出されたみたいで、これからお城に来てほしいって」

「はぁ?また召喚命令?アタシたちが一体何したっていうのよ」


疲労困憊の状態の中やっと得た睡眠時間を邪魔されたミリアは、かなり機嫌が悪い様子で国王からの召喚命令にも関わらず愚痴をこぼす。


「お疲れのところ大変申し訳ないのですが、魔人討伐を果たした“宿り木”に褒賞を授与するとのことでして ───── 」

「褒賞!?褒賞が貰えるんですか!!」


“褒賞”という言葉に反応し、興奮のあまり大声を上げるミリア。
そして、その声によって他のメンバーたちが一斉に目を覚ました。


「どうしたんすか?急に大声なんか出して」

「本当ですよ。何事ですか」

「アンタたち呑気に寝てる場合じゃないわ!!国王様がアタシたちをお呼びよ。さっさと起きて支度しなさい」


何が何だか理由も分からぬままミリアによって強制的に身支度をさせられたメンバーたちは、まだ半分寝ぼけた状態で用意された馬車へ乗り込んだのだった。
そして、王都メルサまでの道中に大興奮中のミリアから事の詳細を説明された。


「国王様からの“褒賞”よ。とんでもない物に違いないわ」

「昨日の今日でよくそんなすぐに切り替えられるっすね」

「本当じゃ、あのわっばの事を思うと何とも言えんのじゃ」

「ちょっと、まるでアタシが心の無い鬼みたいな言い方やめてよね。ザザの事は残念だったけど、いつまでもクヨクヨしてるわけにもいかないでしょ」

「まぁまぁ、みんな落ち着いて。一先ず国王様に会って話を聞こうよ」

「でも、国王様が直々に召喚命令を出してまで褒賞の授与を行うなんて只事ではありませんよ」

「はぁ~・・・わ…私は王都に行くのも国王様に会うのも初めてなので緊張します・・・」


何だかんだと言って道中の車内は大賑わいとなっており、これから王城へ行き、国王に謁見する一行とは思えないものであった。
そして、そうこうしているうちに王都メルサへと到着したスズネたちは、その足で王宮内にある謁見の間にて国王と対面したのであった。


─────────────────────────


「おお~よく来たなお前たち、久しく見ぬうちに随分と人数が増えたな」

「こ…国王様、こ…この度は ───── 」

「よいよい、そのような堅苦しい物言いなどしなくて大丈夫だ。正式な場でもないしな」

「陛下はほどほどにしてくださいね」

「クハハハハ、うちの聖騎士長様は厳しいな~」


国王を前にし緊張で上手く話せないスズネの様子から察し、言葉遣いなど気にしなくていいという国王レオンハルト。
それに対し大臣の男は不服そうな表情を見せ、国王の横で警護をする聖騎士長アーサーは国王こそ羽目を外し過ぎないようにと釘を刺したのだった。


「そんなことはどうでもいいからさっさと話を進めろ。こっちは魔人との戦闘で疲れてるところを無理矢理連れて来られたんだからな」

「この…無礼者が、国王様に対して何たる物言いを ───── 」

「よいよい」


疲れているスズネたちを気遣ったのか、ただただ本当に面倒に思ったのか、その真意は定かではないが、クロノが国王に対して話を進めるようにと要求する。
そして、その進言に関する物言いに大臣がケチをつけようとしたが、国王がそれを制止したのだった。


「クッハッハッ、これは失礼した。魔人討伐で疲れているところすまんかったな」

「いえ、とんでもございません」


いつものように豪快に笑いながら謝罪をする国王に対し、恐縮した面持ちで頭を下げるスズネ。
そして、国王に対するクロノの物言いに関してミリアとマクスウェルが叱責を始め、初めての謁見であるシャムロムとセスリーは不敬にあたると慌てふためき、ラーニャは興味なさそうにしながら今にも眠りそうである。
そんな様子を見て国王レオンハルトは優しい笑みを浮かべた。


「まぁ~何はともあれ、この度の魔人討伐及び魔人事件の解決、大儀であった。ガルディア王国に住む全ての民を代表して礼を言う」

「いえ…今回も私たちは何も・・・」

「そう謙遜するな。魔人に立ち向かっただけでも賞賛に値する。そしてクロノ殿、今回は我が国を救ってもらい感謝する」

「別にお前らのためにやったわけじゃねぇ~よ。この俺に歯向かってきたやつを躾けてやっただけだ」

「そうかそうか。しかし、我が国が救われたことも事実。よって、此度の褒賞として冒険者パーティ“宿り木”に金貨百枚を与えるものとする」


「「「「「「 金貨百枚!? 」」」」」」


これまでのクエスト報酬が全て銅貨や銀貨だったスズネたちにとって、金貨とは夢のまた夢のようなものである。
しかも、百枚 ───── 。

そのあまりの衝撃に言葉を失うスズネたち。
その表情を待っていたと言わんばかりに嬉しそうな顔を見せる国王。
大臣は少し不満そうではあったが、それ程までに魔人の存在がこの国にとって脅威であったと理解しており、口には出さないようにグッと感情を押し殺すのであった。


「本来であれば“爵位”や“領地”といったものを与えてやりたいところではあったんだがな。非公式な上、何かと問題もあってな、金品で悪いが我慢してくれ」

「いえいえ、頂けるだけで有り難いです。ありがとうございます」


そう言うと、スズネたちは国王に向けて深々と頭を下げた。
こうして魔人討伐における褒賞の授与も完了し、これにてお開きかと思われた瞬間、一人の人物がお付きの男性を引き連れて謁見の間に入ってきた。


「お父様、褒賞の授与は終わりまして?」

「お待ち下さい姫様!謁見中ですぞ、お控え下さい」


突如現れたその少女は、綺麗な金色の髪を靡かせながらツカツカと足早に国王の元へとやってきたのだった。


「どうしたんだい?ルナ」

「どうもこうもありませんわ。お父様、“宿り木”の方々がいらっしゃると分かっていながら、私に黙っているなんて酷いですわ」

「いや、別に隠していたわけではないんだ」


颯爽と現れたその少女は、他とは一線を画すほどに煌びやかであり、同じ女性であるスズネやミリアたちでさえもドキッとさせられる美しさであった。
そして、突然のことで呆気に取られた表情を並べているスズネたちに気づいた少女が自己紹介を始める。


「これは失礼致しました。“宿り木”の皆様、私は国王レオンハルトの娘ルナと申します。どうぞお見知りおきを ───── 」


冒険者であるスズネたちに対しても礼儀正しく頭を下げるルナ姫を前に、その美しさに目を奪われ一瞬言葉を失ったスズネたちが慌てて頭を下げる。


「!?あっ、こちらこそ宜しくお願いします」


テンパりながら頭を下げるスズネの姿にクスリと笑みを浮かべるルナなのであった。


「姫様、急にお越しになり如何されたのですか?」

「あら、マクスウェルではないですか、久しいですわね。元気にしていましたか?」

「はい、お陰様で何とかやっております」

「ねぇ、アンタって姫様と知り合いなわけ?」

「はい、幼少の頃より姫様の遊び相手をさせてもらっていました」

「あらまぁ~マクスウェル、私たちはお友達でしょ」

「めっ…滅相もありません。友達など恐れ多いです」


国王レオンハルトの一人娘であり、近くに同年代と呼べる者がマクスウェルしかおらず、幼少期にはよく二人で遊んでいたのだ。
そんなマクスウェルのことを“友”と呼ぶルナに対し、国王たちの前ということもあり恐縮しっぱなしのマクスウェルなのであった。


「それで…そちらにいらっしゃるのが、クロノ様ですか?」


突然瞳をキラキラと輝かせながらクロノに視線を向けるルナ。


「あ?そうだが、俺に何の用だ?」

「やはりそうでしたか。以前城にお越しになられた際にお見かけし、ずっと心に決めておりました」

「はぁ?何を言ってんだ?お前」


一体ルナが何を言っているのかさっぱり分からないクロノが不思議そうな顔をしていると、意を決したようにルナが口を開いた。


「クロノ様!貴方様を一目見た時から好いておりました。私と結婚して下さいませ」


!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?


「「「「「 え~~~~~~~ 」」」」」


突如飛び出したルナ姫からクロノへの求婚に、その場にいた全ての者が衝撃の声を上げたのであった。



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