52 / 200
天国と地獄(前編)
しおりを挟む
「ご協力ありがとうございます」
「ご苦労様です。それでは、あとの事は宜しくお願いします」
魔人を討ち倒し、今回の事件の首謀者であるメイニエルを拘束したスズネたちは、聖騎士団に連絡を取り、その身を引き渡したのだった。
無事に事件は解決し一件落着したものの、何とも言い難い後味の悪さを残す結末となり、聖騎士たちから送られる賞賛の言葉の数々も今のスズネたちには何の意味も成さなかった。
そして、全ての引き継ぎを終えたスズネたちは、朝日が昇る頃になってやっとホームへと辿り着いたのであった。
「みんな、お疲れ様」
「はぁ~、ホントに疲れたわね」
「わっちもヘトヘトなのじゃ・・・」
「セスリー、傷はもう大丈夫なんすか?」
「は…はい。スズネの回復魔法のおかげで傷は塞がりましたし、あとはゆっくりと休めば問題ありません」
朝からクエストをこなし、その足でロザリーの誕生祝いに赴き、その帰り道で魔人に遭遇し戦闘というハードな一日を終えたスズネたちは、ホームに戻り一言二言だけ会話をした後、全員そのままリビングで気を失ったように眠りについたのだった。
─────────────────────────
スズネたちが眠りについてから数時間が経ち、正午を過ぎた頃 ───── 。
ドンドンドン。
・・・。
ドンドンドン。
・・・。
疲れ果てて深い眠りについていたスズネたちの眠りを妨げるように玄関を叩く音がホームに響き渡る。
「すみませ~ん。どなたかいらっしゃいませんか~」
──────── ガチャッ 。
「ふぁ~い」
ホームに戻り眠りについてからまだ数時間しか経っておらず、まだ眠気眼の状態のスズネが玄関を開けるとそこに三人の聖騎士が立っていた。
「すみません。こちらは冒険者パーティ“宿り木”のホームで間違いないでしょうか?」
突然目の前に現れた聖騎士に驚き、一気に目が覚めたスズネ。
「えっ!?あっ…はい、そうです」
「良かった。すみませんが、今リーダーのスズネさんはいらっしゃいますか?」
「私がスズネですけど・・・。何かご用ですか?」
「あっ!?あなたがスズネさんでしたか。これは失礼しました。実は、昨日魔人事件を解決されたということで、国王様より冒険者パーティ“宿り木”に召喚命令が出されております」
「えっ!?えっ!?召喚命令ですか?国王様から?」
「はい、そうです。そういう理由で唐突で申し訳ないのですが、これから王城までご同行頂いてもよろしいでしょうか」
突然の召喚命令に戸惑いを見せるスズネ。
そして、そんな慌ただしい様子に気づいたミリアが玄関までやってきた。
「ちょっと何よ、こっちは疲れて寝てるってのに ───── 」
「大変なのよミリア。私たちに国王様から召喚命令が出されたみたいで、これからお城に来てほしいって」
「はぁ?また召喚命令?アタシたちが一体何したっていうのよ」
疲労困憊の状態の中やっと得た睡眠時間を邪魔されたミリアは、かなり機嫌が悪い様子で国王からの召喚命令にも関わらず愚痴をこぼす。
「お疲れのところ大変申し訳ないのですが、魔人討伐を果たした“宿り木”に褒賞を授与するとのことでして ───── 」
「褒賞!?褒賞が貰えるんですか!!」
“褒賞”という言葉に反応し、興奮のあまり大声を上げるミリア。
そして、その声によって他のメンバーたちが一斉に目を覚ました。
「どうしたんすか?急に大声なんか出して」
「本当ですよ。何事ですか」
「アンタたち呑気に寝てる場合じゃないわ!!国王様がアタシたちをお呼びよ。さっさと起きて支度しなさい」
何が何だか理由も分からぬままミリアによって強制的に身支度をさせられたメンバーたちは、まだ半分寝ぼけた状態で用意された馬車へ乗り込んだのだった。
そして、王都メルサまでの道中に大興奮中のミリアから事の詳細を説明された。
「国王様からの“褒賞”よ。とんでもない物に違いないわ」
「昨日の今日でよくそんなすぐに切り替えられるっすね」
「本当じゃ、あのわっばの事を思うと何とも言えんのじゃ」
「ちょっと、まるでアタシが心の無い鬼みたいな言い方やめてよね。ザザの事は残念だったけど、いつまでもクヨクヨしてるわけにもいかないでしょ」
「まぁまぁ、みんな落ち着いて。一先ず国王様に会って話を聞こうよ」
「でも、国王様が直々に召喚命令を出してまで褒賞の授与を行うなんて只事ではありませんよ」
「はぁ~・・・わ…私は王都に行くのも国王様に会うのも初めてなので緊張します・・・」
何だかんだと言って道中の車内は大賑わいとなっており、これから王城へ行き、国王に謁見する一行とは思えないものであった。
そして、そうこうしているうちに王都メルサへと到着したスズネたちは、その足で王宮内にある謁見の間にて国王と対面したのであった。
─────────────────────────
「おお~よく来たなお前たち、久しく見ぬうちに随分と人数が増えたな」
「こ…国王様、こ…この度は ───── 」
「よいよい、そのような堅苦しい物言いなどしなくて大丈夫だ。正式な場でもないしな」
「陛下はほどほどにしてくださいね」
「クハハハハ、うちの聖騎士長様は厳しいな~」
国王を前にし緊張で上手く話せないスズネの様子から察し、言葉遣いなど気にしなくていいという国王レオンハルト。
それに対し大臣の男は不服そうな表情を見せ、国王の横で警護をする聖騎士長アーサーは国王こそ羽目を外し過ぎないようにと釘を刺したのだった。
「そんなことはどうでもいいからさっさと話を進めろ。こっちは魔人との戦闘で疲れてるところを無理矢理連れて来られたんだからな」
「この…無礼者が、国王様に対して何たる物言いを ───── 」
「よいよい」
疲れているスズネたちを気遣ったのか、ただただ本当に面倒に思ったのか、その真意は定かではないが、クロノが国王に対して話を進めるようにと要求する。
そして、その進言に関する物言いに大臣がケチをつけようとしたが、国王がそれを制止したのだった。
「クッハッハッ、これは失礼した。魔人討伐で疲れているところすまんかったな」
「いえ、とんでもございません」
いつものように豪快に笑いながら謝罪をする国王に対し、恐縮した面持ちで頭を下げるスズネ。
そして、国王に対するクロノの物言いに関してミリアとマクスウェルが叱責を始め、初めての謁見であるシャムロムとセスリーは不敬にあたると慌てふためき、ラーニャは興味なさそうにしながら今にも眠りそうである。
そんな様子を見て国王レオンハルトは優しい笑みを浮かべた。
「まぁ~何はともあれ、この度の魔人討伐及び魔人事件の解決、大儀であった。ガルディア王国に住む全ての民を代表して礼を言う」
「いえ…今回も私たちは何も・・・」
「そう謙遜するな。魔人に立ち向かっただけでも賞賛に値する。そしてクロノ殿、今回は我が国を救ってもらい感謝する」
「別にお前らのためにやったわけじゃねぇ~よ。この俺に歯向かってきたやつを躾けてやっただけだ」
「そうかそうか。しかし、我が国が救われたことも事実。よって、此度の褒賞として冒険者パーティ“宿り木”に金貨百枚を与えるものとする」
「「「「「「 金貨百枚!? 」」」」」」
これまでのクエスト報酬が全て銅貨や銀貨だったスズネたちにとって、金貨とは夢のまた夢のようなものである。
しかも、百枚 ───── 。
そのあまりの衝撃に言葉を失うスズネたち。
その表情を待っていたと言わんばかりに嬉しそうな顔を見せる国王。
大臣は少し不満そうではあったが、それ程までに魔人の存在がこの国にとって脅威であったと理解しており、口には出さないようにグッと感情を押し殺すのであった。
「本来であれば“爵位”や“領地”といったものを与えてやりたいところではあったんだがな。非公式な上、何かと問題もあってな、金品で悪いが我慢してくれ」
「いえいえ、頂けるだけで有り難いです。ありがとうございます」
そう言うと、スズネたちは国王に向けて深々と頭を下げた。
こうして魔人討伐における褒賞の授与も完了し、これにてお開きかと思われた瞬間、一人の人物がお付きの男性を引き連れて謁見の間に入ってきた。
「お父様、褒賞の授与は終わりまして?」
「お待ち下さい姫様!謁見中ですぞ、お控え下さい」
突如現れたその少女は、綺麗な金色の髪を靡かせながらツカツカと足早に国王の元へとやってきたのだった。
「どうしたんだい?ルナ」
「どうもこうもありませんわ。お父様、“宿り木”の方々がいらっしゃると分かっていながら、私に黙っているなんて酷いですわ」
「いや、別に隠していたわけではないんだ」
颯爽と現れたその少女は、他とは一線を画すほどに煌びやかであり、同じ女性であるスズネやミリアたちでさえもドキッとさせられる美しさであった。
そして、突然のことで呆気に取られた表情を並べているスズネたちに気づいた少女が自己紹介を始める。
「これは失礼致しました。“宿り木”の皆様、私は国王レオンハルトの娘ルナと申します。どうぞお見知りおきを ───── 」
冒険者であるスズネたちに対しても礼儀正しく頭を下げるルナ姫を前に、その美しさに目を奪われ一瞬言葉を失ったスズネたちが慌てて頭を下げる。
「!?あっ、こちらこそ宜しくお願いします」
テンパりながら頭を下げるスズネの姿にクスリと笑みを浮かべるルナなのであった。
「姫様、急にお越しになり如何されたのですか?」
「あら、マクスウェルではないですか、久しいですわね。元気にしていましたか?」
「はい、お陰様で何とかやっております」
「ねぇ、アンタって姫様と知り合いなわけ?」
「はい、幼少の頃より姫様の遊び相手をさせてもらっていました」
「あらまぁ~マクスウェル、私たちはお友達でしょ」
「めっ…滅相もありません。友達など恐れ多いです」
国王レオンハルトの一人娘であり、近くに同年代と呼べる者がマクスウェルしかおらず、幼少期にはよく二人で遊んでいたのだ。
そんなマクスウェルのことを“友”と呼ぶルナに対し、国王たちの前ということもあり恐縮しっぱなしのマクスウェルなのであった。
「それで…そちらにいらっしゃるのが、クロノ様ですか?」
突然瞳をキラキラと輝かせながらクロノに視線を向けるルナ。
「あ?そうだが、俺に何の用だ?」
「やはりそうでしたか。以前城にお越しになられた際にお見かけし、ずっと心に決めておりました」
「はぁ?何を言ってんだ?お前」
一体ルナが何を言っているのかさっぱり分からないクロノが不思議そうな顔をしていると、意を決したようにルナが口を開いた。
「クロノ様!貴方様を一目見た時から好いておりました。私と結婚して下さいませ」
!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?
「「「「「 え~~~~~~~ 」」」」」
突如飛び出したルナ姫からクロノへの求婚に、その場にいた全ての者が衝撃の声を上げたのであった。
「ご苦労様です。それでは、あとの事は宜しくお願いします」
魔人を討ち倒し、今回の事件の首謀者であるメイニエルを拘束したスズネたちは、聖騎士団に連絡を取り、その身を引き渡したのだった。
無事に事件は解決し一件落着したものの、何とも言い難い後味の悪さを残す結末となり、聖騎士たちから送られる賞賛の言葉の数々も今のスズネたちには何の意味も成さなかった。
そして、全ての引き継ぎを終えたスズネたちは、朝日が昇る頃になってやっとホームへと辿り着いたのであった。
「みんな、お疲れ様」
「はぁ~、ホントに疲れたわね」
「わっちもヘトヘトなのじゃ・・・」
「セスリー、傷はもう大丈夫なんすか?」
「は…はい。スズネの回復魔法のおかげで傷は塞がりましたし、あとはゆっくりと休めば問題ありません」
朝からクエストをこなし、その足でロザリーの誕生祝いに赴き、その帰り道で魔人に遭遇し戦闘というハードな一日を終えたスズネたちは、ホームに戻り一言二言だけ会話をした後、全員そのままリビングで気を失ったように眠りについたのだった。
─────────────────────────
スズネたちが眠りについてから数時間が経ち、正午を過ぎた頃 ───── 。
ドンドンドン。
・・・。
ドンドンドン。
・・・。
疲れ果てて深い眠りについていたスズネたちの眠りを妨げるように玄関を叩く音がホームに響き渡る。
「すみませ~ん。どなたかいらっしゃいませんか~」
──────── ガチャッ 。
「ふぁ~い」
ホームに戻り眠りについてからまだ数時間しか経っておらず、まだ眠気眼の状態のスズネが玄関を開けるとそこに三人の聖騎士が立っていた。
「すみません。こちらは冒険者パーティ“宿り木”のホームで間違いないでしょうか?」
突然目の前に現れた聖騎士に驚き、一気に目が覚めたスズネ。
「えっ!?あっ…はい、そうです」
「良かった。すみませんが、今リーダーのスズネさんはいらっしゃいますか?」
「私がスズネですけど・・・。何かご用ですか?」
「あっ!?あなたがスズネさんでしたか。これは失礼しました。実は、昨日魔人事件を解決されたということで、国王様より冒険者パーティ“宿り木”に召喚命令が出されております」
「えっ!?えっ!?召喚命令ですか?国王様から?」
「はい、そうです。そういう理由で唐突で申し訳ないのですが、これから王城までご同行頂いてもよろしいでしょうか」
突然の召喚命令に戸惑いを見せるスズネ。
そして、そんな慌ただしい様子に気づいたミリアが玄関までやってきた。
「ちょっと何よ、こっちは疲れて寝てるってのに ───── 」
「大変なのよミリア。私たちに国王様から召喚命令が出されたみたいで、これからお城に来てほしいって」
「はぁ?また召喚命令?アタシたちが一体何したっていうのよ」
疲労困憊の状態の中やっと得た睡眠時間を邪魔されたミリアは、かなり機嫌が悪い様子で国王からの召喚命令にも関わらず愚痴をこぼす。
「お疲れのところ大変申し訳ないのですが、魔人討伐を果たした“宿り木”に褒賞を授与するとのことでして ───── 」
「褒賞!?褒賞が貰えるんですか!!」
“褒賞”という言葉に反応し、興奮のあまり大声を上げるミリア。
そして、その声によって他のメンバーたちが一斉に目を覚ました。
「どうしたんすか?急に大声なんか出して」
「本当ですよ。何事ですか」
「アンタたち呑気に寝てる場合じゃないわ!!国王様がアタシたちをお呼びよ。さっさと起きて支度しなさい」
何が何だか理由も分からぬままミリアによって強制的に身支度をさせられたメンバーたちは、まだ半分寝ぼけた状態で用意された馬車へ乗り込んだのだった。
そして、王都メルサまでの道中に大興奮中のミリアから事の詳細を説明された。
「国王様からの“褒賞”よ。とんでもない物に違いないわ」
「昨日の今日でよくそんなすぐに切り替えられるっすね」
「本当じゃ、あのわっばの事を思うと何とも言えんのじゃ」
「ちょっと、まるでアタシが心の無い鬼みたいな言い方やめてよね。ザザの事は残念だったけど、いつまでもクヨクヨしてるわけにもいかないでしょ」
「まぁまぁ、みんな落ち着いて。一先ず国王様に会って話を聞こうよ」
「でも、国王様が直々に召喚命令を出してまで褒賞の授与を行うなんて只事ではありませんよ」
「はぁ~・・・わ…私は王都に行くのも国王様に会うのも初めてなので緊張します・・・」
何だかんだと言って道中の車内は大賑わいとなっており、これから王城へ行き、国王に謁見する一行とは思えないものであった。
そして、そうこうしているうちに王都メルサへと到着したスズネたちは、その足で王宮内にある謁見の間にて国王と対面したのであった。
─────────────────────────
「おお~よく来たなお前たち、久しく見ぬうちに随分と人数が増えたな」
「こ…国王様、こ…この度は ───── 」
「よいよい、そのような堅苦しい物言いなどしなくて大丈夫だ。正式な場でもないしな」
「陛下はほどほどにしてくださいね」
「クハハハハ、うちの聖騎士長様は厳しいな~」
国王を前にし緊張で上手く話せないスズネの様子から察し、言葉遣いなど気にしなくていいという国王レオンハルト。
それに対し大臣の男は不服そうな表情を見せ、国王の横で警護をする聖騎士長アーサーは国王こそ羽目を外し過ぎないようにと釘を刺したのだった。
「そんなことはどうでもいいからさっさと話を進めろ。こっちは魔人との戦闘で疲れてるところを無理矢理連れて来られたんだからな」
「この…無礼者が、国王様に対して何たる物言いを ───── 」
「よいよい」
疲れているスズネたちを気遣ったのか、ただただ本当に面倒に思ったのか、その真意は定かではないが、クロノが国王に対して話を進めるようにと要求する。
そして、その進言に関する物言いに大臣がケチをつけようとしたが、国王がそれを制止したのだった。
「クッハッハッ、これは失礼した。魔人討伐で疲れているところすまんかったな」
「いえ、とんでもございません」
いつものように豪快に笑いながら謝罪をする国王に対し、恐縮した面持ちで頭を下げるスズネ。
そして、国王に対するクロノの物言いに関してミリアとマクスウェルが叱責を始め、初めての謁見であるシャムロムとセスリーは不敬にあたると慌てふためき、ラーニャは興味なさそうにしながら今にも眠りそうである。
そんな様子を見て国王レオンハルトは優しい笑みを浮かべた。
「まぁ~何はともあれ、この度の魔人討伐及び魔人事件の解決、大儀であった。ガルディア王国に住む全ての民を代表して礼を言う」
「いえ…今回も私たちは何も・・・」
「そう謙遜するな。魔人に立ち向かっただけでも賞賛に値する。そしてクロノ殿、今回は我が国を救ってもらい感謝する」
「別にお前らのためにやったわけじゃねぇ~よ。この俺に歯向かってきたやつを躾けてやっただけだ」
「そうかそうか。しかし、我が国が救われたことも事実。よって、此度の褒賞として冒険者パーティ“宿り木”に金貨百枚を与えるものとする」
「「「「「「 金貨百枚!? 」」」」」」
これまでのクエスト報酬が全て銅貨や銀貨だったスズネたちにとって、金貨とは夢のまた夢のようなものである。
しかも、百枚 ───── 。
そのあまりの衝撃に言葉を失うスズネたち。
その表情を待っていたと言わんばかりに嬉しそうな顔を見せる国王。
大臣は少し不満そうではあったが、それ程までに魔人の存在がこの国にとって脅威であったと理解しており、口には出さないようにグッと感情を押し殺すのであった。
「本来であれば“爵位”や“領地”といったものを与えてやりたいところではあったんだがな。非公式な上、何かと問題もあってな、金品で悪いが我慢してくれ」
「いえいえ、頂けるだけで有り難いです。ありがとうございます」
そう言うと、スズネたちは国王に向けて深々と頭を下げた。
こうして魔人討伐における褒賞の授与も完了し、これにてお開きかと思われた瞬間、一人の人物がお付きの男性を引き連れて謁見の間に入ってきた。
「お父様、褒賞の授与は終わりまして?」
「お待ち下さい姫様!謁見中ですぞ、お控え下さい」
突如現れたその少女は、綺麗な金色の髪を靡かせながらツカツカと足早に国王の元へとやってきたのだった。
「どうしたんだい?ルナ」
「どうもこうもありませんわ。お父様、“宿り木”の方々がいらっしゃると分かっていながら、私に黙っているなんて酷いですわ」
「いや、別に隠していたわけではないんだ」
颯爽と現れたその少女は、他とは一線を画すほどに煌びやかであり、同じ女性であるスズネやミリアたちでさえもドキッとさせられる美しさであった。
そして、突然のことで呆気に取られた表情を並べているスズネたちに気づいた少女が自己紹介を始める。
「これは失礼致しました。“宿り木”の皆様、私は国王レオンハルトの娘ルナと申します。どうぞお見知りおきを ───── 」
冒険者であるスズネたちに対しても礼儀正しく頭を下げるルナ姫を前に、その美しさに目を奪われ一瞬言葉を失ったスズネたちが慌てて頭を下げる。
「!?あっ、こちらこそ宜しくお願いします」
テンパりながら頭を下げるスズネの姿にクスリと笑みを浮かべるルナなのであった。
「姫様、急にお越しになり如何されたのですか?」
「あら、マクスウェルではないですか、久しいですわね。元気にしていましたか?」
「はい、お陰様で何とかやっております」
「ねぇ、アンタって姫様と知り合いなわけ?」
「はい、幼少の頃より姫様の遊び相手をさせてもらっていました」
「あらまぁ~マクスウェル、私たちはお友達でしょ」
「めっ…滅相もありません。友達など恐れ多いです」
国王レオンハルトの一人娘であり、近くに同年代と呼べる者がマクスウェルしかおらず、幼少期にはよく二人で遊んでいたのだ。
そんなマクスウェルのことを“友”と呼ぶルナに対し、国王たちの前ということもあり恐縮しっぱなしのマクスウェルなのであった。
「それで…そちらにいらっしゃるのが、クロノ様ですか?」
突然瞳をキラキラと輝かせながらクロノに視線を向けるルナ。
「あ?そうだが、俺に何の用だ?」
「やはりそうでしたか。以前城にお越しになられた際にお見かけし、ずっと心に決めておりました」
「はぁ?何を言ってんだ?お前」
一体ルナが何を言っているのかさっぱり分からないクロノが不思議そうな顔をしていると、意を決したようにルナが口を開いた。
「クロノ様!貴方様を一目見た時から好いておりました。私と結婚して下さいませ」
!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?
「「「「「 え~~~~~~~ 」」」」」
突如飛び出したルナ姫からクロノへの求婚に、その場にいた全ての者が衝撃の声を上げたのであった。
0
あなたにおすすめの小説
ウォーキング・オブ・ザ・ヒーロー!ウォークゲーマーの僕は今日もゲーム(スキル)の為に異世界を歩く
まったりー
ファンタジー
主人公はウォークゲームを楽しむ高校生、ある時学校の教室で異世界召喚され、クラス全員が異世界に行ってしまいます。
国王様が魔王を倒してくれと頼んできてステータスを確認しますが、主人公はウォーク人という良く分からない職業で、スキルもウォークスキルと記され国王は分からず、いらないと判定します、何が出来るのかと聞かれた主人公は、ポイントで交換できるアイテムを出そうとしますが、交換しようとしたのがパンだった為、またまた要らないと言われてしまい、今度は城からも追い出されます。
主人公は気にせず、ウォークスキルをゲームと同列だと考え異世界で旅をします。
異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~
於田縫紀
ファンタジー
図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。
その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
現世に侵略してきた異世界人を撃退して、世界を救ったら、世界と異世界から命を狙われるようになりました。
佐久間 譲司
ファンタジー
突如として人類世界に侵略を始めた異世界人達。圧倒的な戦闘能力を誇り、人類を圧倒していく。
人類の命運が尽きようとしていた時、異世界側は、ある一つの提案を行う。それは、お互いの世界から代表五名を選出しての、決闘だった。彼らには、鉄の掟があり、雌雄を決するものは、決闘で決めるのだという。もしも、人類側が勝てば、降伏すると約束を行った。
すでに追い詰められていた人類は、否応がなしに決闘を受け入れた。そして、決闘が始まり、人類は一方的に虐殺されていった。
『瀉血』の能力を持つ篠崎直斗は、変装を行い、その決闘場に乱入する。『瀉血』の力を使い、それまでとは逆に、異世界側を圧倒し、勝利をする。
勝利後、直斗は、正体が発覚することなく、その場を離れることに成功した。
異世界側は、公約通り、人類の軍門に下った。
やがて、人類を勝利に導いた直斗は、人類側、異世界側両方からその身を狙われるようになる。人類側からは、異世界の脅威に対する対抗策として、異世界側からは、復讐と力の秘密のために。
パワハラで会社を辞めた俺、スキル【万能造船】で自由な船旅に出る~現代知識とチート船で水上交易してたら、いつの間にか国家予算レベルの大金を稼い
☆ほしい
ファンタジー
過労とパワハラで心身ともに限界だった俺、佐伯湊(さえきみなと)は、ある日異世界に転移してしまった。神様から与えられたのは【万能造船】というユニークスキル。それは、設計図さえあれば、どんな船でも素材を消費して作り出せるという能力だった。
「もう誰にも縛られない、自由な生活を送るんだ」
そう決意した俺は、手始めに小さな川舟を作り、水上での生活をスタートさせる。前世の知識を活かして、この世界にはない調味料や保存食、便利な日用品を自作して港町で売ってみると、これがまさかの大当たり。
スキルで船をどんどん豪華客船並みに拡張し、快適な船上生活を送りながら、行く先々の港町で特産品を仕入れては別の町で売る。そんな気ままな水上交易を続けているうちに、俺の資産はいつの間にか小国の国家予算を軽く超えていた。
これは、社畜だった俺が、チートな船でのんびりスローライフを送りながら、世界一の商人になるまでの物語。
異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】
きたーの(旧名:せんせい)
ファンタジー
自身のクラスが勇者召喚として呼ばれたのに乗り遅れてお亡くなりになってしまった主人公。
その瞬間を偶然にも神が見ていたことでほぼ不老不死に近い能力を貰い異世界へ!
約2万年の時を、ぼっちで過ごしていたある日、いつも通り森を闊歩していると2人の子供(幼女)に遭遇し、そこから主人公の物語が始まって行く……。
―――
当作品は過去作品の改稿版です。情景描写等を厚くしております。
なお、投稿規約に基づき既存作品に関しては非公開としておりますためご理解のほどよろしくお願いいたします。
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる