【完結】ガン=カタ皇子、夜に踊る

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Final Chapter

エルフとの対立

 『えっ』と無音通信の機械の向こうでゲイブンも声を無くした。『ハルハさんが……死んじゃった……?』
「どうもエルフ族の掟に違反したため、内々で処刑されたらしい。つい先刻に帝国城に使者が来て、その事を告げていったんだ」
とは言え、オレ達も半信半疑である。そもそも帝国の領土で皇帝の許可も無く勝手に人を処刑するなんて、それだけで不愉快だ。
……あの胡散臭いハイエルフが、まさか処刑される程の違反を行っていたなんて俄には信じられないが、もしかしたら聖地と帝国の対立の板挟みになっていたのかも知れない。
『そんな……どうしてですぜ?!』
「ゲイブン、実は――」
クノハルが先日あった事を説明した。

 最高大神官の一人サルサが帝国城に来たかと思ったら、帝国の統治権の一切合切をエルフ族に明け渡せと、更にそれが神々の警句であるとまで言った事を。

 ああ、だから、ハルハはオレ達のお目付役が出来る程に暇をしていたのか。
 幾ら帝国十三神将でも、万が一にエルフ族と内通している場合を考えて、一時的に機密情報から遠ざけられていたのだろうな。

 『……そんな……聖地を案内するって……言ってくれたのに……』
ショックを受けているゲイブンを慰めようとオレ達も思った時、
『ゲイブン、済まない。少し代わってくれ』
どうしたんだろう?ロウがゲイブンを押しのけていきなり話し始めた。
『逆雷の爺さんは本当にとんでもないな。勘だけで俺にパーシーバーがいる事を見抜きつつある』
「は?」とオユアーヴがトンチンカンな事を言った。「精霊獣は皇統の血を強く濃く引く者同士だけが認識できるんじゃ無かったのか?ああ、『逆雷のバズム』も精霊獣を従えているのか。どんな精霊獣だ?」
……何だろう、ここまでトンチンカンだとかえって癒やされる。
ロウも軽く笑ってくれてから、
『違うんだオユアーヴ。爺さんはパーシーバーの事を何も見えていないし分かっていない。――なのにだ、俺に対して精霊獣を従える者が絶対に言えない言葉を、声に出すように強要してきたんだぞ』
『本当に……怖かったわ……』
少しパーシーバーの声が震えている。
「絶対に言えない言葉?結婚してくれとかか?」
うん、癒やしだ。
殺伐とした世界の癒やしキャラだ。
オユアーヴは何時もこんな感じだけれど、元々の性質が邪悪では無いし、言葉に悪意も入っていないので聞いていて疲れない。
「違うわ、オユアーヴ。己の従える精霊獣に対して、その存在を否定したり拒絶したりする言葉を、私達は絶対に声にして言ってはならないのよ。……例え嘘でも言葉にして言ってしまうと、一時的に魂の結びつきが切れてしまうの……」
そう言ってから青い顔をするロサリータ姫に、マスコットが寄り添う。
『わたしのロサリータ……』
「大丈夫、あの時の孤独感と絶望感を思い出して怖くなっただけだから……」
「そうだったの……」
とユルルアちゃんはロサリータ姫の頭を優しく撫でた。

 ねえユルルアちゃん。この前は包丁持ってぶち殺そうとしていたのに、その心境の変化は一体どうしたの?
 全く分からん。僕は誰よりもユルルアを愛して理解していると思っていたが、もう自信が無くなってきた……。

 「それでロウ、『逆雷』は代わりに何をしろと?」
『俺を、爺さんが引退した後の帝国十三神将の後釜に据えたいらしい』
「兄さんが!?」驚いたクノハルだったが、「でも兄さん、そうすればゼーザ家をもう一度……」
没落してしまったロウの一族ゼーザ家を復興できるかも知れない。
『……唯一の大問題がある。「逆雷」の爺さんに全面的に従うとなると、俺の親父がアウルガじゃないと公にも認めなきゃいけなくなる』
「あ……」クノハルは青い顔をして、「ごめん、兄さん!」
『俺はそれだけは嫌なんだ。アウルガ・ゼーザの息子のロウ・ゼーザ……そう信じている事が最後に残された俺と親父のよすがだからな』
『ロウとクノハルを産んだ女は、とんでもない浮気性の最低女だったのよ……。自分さえ良ければそれで良いって考えていた、最悪に嫌な女だったわ……っ』
パーシーバーがロサリータ姫達のために補足してくれた。
「私の血縁上の父親そっくりね……実の妹を襲った結果生まれたのが私なのだし」
さらっととんでもない秘密を暴露したロサリータ姫は、労るようにロウに言う。
「それでも親の邪悪に子が巻き込まれる必要なんて一切無いわ。……ねえ、こっそりと『逆雷』に見つからないように引っ越せないかしら?」
『いや、ロサリータ姫さんの思っている以上に爺さんは抜け目無いぞ。このよろず屋アウルガの人の出入りが、もう見張られているんだからな。引っ越しなんて気配を見せたら、それこそお貴族様の権限を使って何をされるか……』
「どうにかして交渉出来ないかしら」ユルルアちゃんが考えつつ言う。「『逆雷』はロウさんを後釜に据えたいのよね?最優先事項はそれなのよね?だったら、まだ交渉の余地はあると思うのだけれど」
「と言っても……精霊獣の事を秘匿させる代わりに、ロウも最低限の要求は呑むしか無いだろうな」
とオレ達も呟いた。
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