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エピローグ

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天使は今でも彼を思っている。
しかしその他の人間には、何の感情も持たないようにしている。
そんな彼女を人間や死神は「冷徹」と言うだろう。
しかし違うのだ。
彼女は決して冷たい訳ではない。
そうでもしなければ、また心に痛みを抱えてしまう。
天使の仕事は辛い仕事だ。
死神の仕事に羨ましさを感じた事もある。
死者の魂をあの世に送ることができたなら、どんなにいいだろうか。
そうすれば、彼はあの世で幸せに暮らせていたかもしれない。
もしかしたらまたどこかで会えたかもしれない。
あるはずのないもしも話が、次々と浮かぶ。
もう一度彼の視線と出会いたい。
もう一度彼の温かい手で、頭を撫でてもらいたい。
もう一度愛しい人と呼んでもらいたい。
もう一度…、もう一度…。
「もう一度会いたいよぉ…。」
涙が頬を濡らす。
天使の届かない願いは、今日も何処かへと消えていく。


この物語は天使の物語。
とある一人の天使が、儚い恋をした小さな物語である。
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