爆弾

ボブえもん工房

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第5章 夏霞

夏霞

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私は一度家に帰り、何事も無かったかのように家族と時間を過ごした。
父親の遺体は廃墟のベッドへ寝かせ、放置している。
この間にも誰かが遺体を見つけているのではないかと、生きた心地がしなかった。

親が寝静まった深夜。
私は家をこっそりと抜け出して廃墟に戻る。
遺体はベッドの上に転がっていた。
それを見て安心したが、次に何をしたらいいのか分からず、しばらく考えた。
……!
遺体は埋めて隠そう。
誰にも分からない場所、誰も来ない場所。
血山の何処かに埋めてしまおう。
そうなると1人の大男を子どもが担いで、あの坂を登るのは難しい。
そういえばノコギリがあったはず。
それで体をバラバラにして、少しずつ運ぼう。
誰にも見られない時間帯、深夜しかない。
毎日少しずつ深夜に遺体を埋めに行こう。
常人とは思えない思考が次々と湧き出てくる。
私は意外とサイコパスなのかもしれない。

それから私は遺体をノコギリでバラバラにした。
運びやすいように、出来るだけ細かくした。
気持ちが悪くて嘔吐をしながらも必死に刻んだ。
そしてゴミ袋を何枚か持ってきて、その中に遺体を分けて入れた。
この日から私は、地道に遺体を血山へと運んだ。
毎日深夜に家を抜け出し、たくさんの力を使っている為体も壊した。
母親には夏風邪だと言ってある。
睡眠を摂ることは出来ず、目の下にくまができた。
こんな毎日を繰り返している為、中々体調は良くならない。
正直心も病んでいく。
私のした事は間違いだったのではないかと自分を追い詰める。
父親を殺した事が正しいとは思わない。
でも、1回だけ樹がお見舞いに来た時に、顔色が良くなり幸せそうに話をしている姿を見て、殺して良かったと思えた。
彼女の笑顔に救われたのだ。
私は人殺しだが、それで喜ぶ誰かがいる。
私の大好きな人が喜んでいる。
それを見ただけでまだ自分は頑張れると思った。
だから毎日心折れる事無く、遺体を運び続けた。

遺体は台風の影響で真っ二つになった、大きな木の下に埋めた。
もしも何かあった時にすぐ掘り起こせるよう、目印になる場所に埋める必要があった。
私はたまに1人になりたい時があり、血山に登る事がある。
だから台風で木が傷ついている事も知っている。
あそこなら神様も喜ぶはず。
血山の神様は、生贄を渡せば元気になるという話を知っていたから、父親を生贄としてそこに埋めた。

全ての遺体を埋め終わるまで1ヶ月かかった。
「終わった…。」
私はその場に倒れ込みしばらく空を眺めた。
「今頃皆寝てるんだよね。」
小さく呟いた後、早く家に戻らなければと思い体を起こす。
「帰らなきゃ…。」
ふらふらとした足で私は山を下りる。
その時、足元に霧が出ていた。
まるで私を迷わすように。
お前は普通の暮らしは出来ないと言われるように。

明日、お祭り行けるかな…。
止まってしまった思考で明日のお祭りの事を考える。
その間にも、私の爆発してしまった爆弾は、また新しいモノを作っていた。
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