しゅうきゅうみっか!-女子サッカー部の高校生監督 片桐修人の苦難-

橋暮 梵人

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NNTC合宿編

第七十九話 CB女子トーク

昼ご飯を食べ終わった後、桜ヶ峰の選手たちは各々自主トレーニングに励んでいた。

その中でもディフェンスの要である二人、矢切 茜やぎり あかね仙崎 花恋せんざき かれんは、最新の設備が揃っているトレーニングルームで筋力トレーニングに励んでいた。

「フッ、フッ、フッ、フンッ!」

矢切は掛け声と共に、両手に持ったダンベルを交互に持ち上げる。

ピピピピッ、ピピピピッ

セットしていたタイマーが終了の合図を告げると、矢切はダンベルを床に置き、自身の上腕二頭筋を優しく撫で回すのであった。

「ふぃーー……。お疲れ様、私の上腕二頭筋!今日もサイコーだったぜ!」

矢切はどこか嬉しそうな表情で、自分の筋肉に語りかける。
その様子を、花恋は少し離れた所から羨ましそうにじっと見ていた。

「はぁ…、いいなぁ……。」

元々身体を鍛えることが趣味の矢切は、全身の筋肉が程よく引き締まっており、客観的に見ても抜群のプロポーションを誇っていた。

「それに比べて私と来たら……。」

花恋は自分の身体をペタペタと触る。

花恋自身も筋トレは継続して行なってはいるものの、体質的に筋肉がつきにくく、全体的に線が細い。

花恋はそのことをコンプレックスに感じていた。
そしてそれが、サッカーの試合において不利になるということも。

フィジカル勝負では当たり負けしてしまうので、頭を使って組織的にボールを奪う。花恋はそうやって今の地位を築いてきた。

しかしながら、それは問題の解決にはなっていない。
だからこそ今もこうして試行錯誤しながら鍛えているのだが、なかなか結果がついてこない。
そのことに対して、花恋はずっとモヤモヤとした感情を抱いているのであった。

「どーした花恋?なんか浮かない顔してるけど?」

そんな花恋を見て、矢切は心配そうに声をかける。

「ん……姉御の身体、キレイだなーって思ってさ。」

「んあっ!?と、突然何言ってんだよっ!」

花恋の不意打ちに矢切の顔がみるみるうちに赤くなる。

「だってさー、ウエストはキュッと引き締まってるし、出てる所はボボンッて出てるし……羨ましいよー、そのスタイル。」

「そうかぁ?あんまり気にしたことないけどなあ……花恋だってスタイルいいじゃないか。」

「そんなことないよ。筋トレしてもなかなか筋肉つかないし。フィジカルの勝負になると、どうしても力負けしちゃうのよねぇ。」

「うーん……。」

矢切は少し考えた後、自分の考えを口にする。

「それって、なにも力で勝負しなくてもいいんじゃねぇかな?」

「え、どーゆーこと?」

花恋は首を傾げる。

「うちの実家さ、柔道の道場やってんだけど、私も自分より一回りでかい男と試合したりしてたんだよね。」

「うんうん。」

「でも、そんな相手にも勝てちゃうんだなこれが。」

「なるほど。柔よく剛を制す、って訳ね。」

「そーゆーこと!要は相手の力を利用する身体の使い方が大事って訳よ!」

「相手の力を利用する身体の使い方…かあ。」

「私も最初は力負けしないようにガチガチに鍛えてたんだけど、でもやっぱり体格差を埋めることができなくてさ。
そんで壁にぶち当たってた時、師範やってる親父に言われたんだよ。勝ちたくばを徹底的に鍛えろってな。」

「体幹トレーニングかあ……それは私もやってるんだけどなあ。」

「確かにそうだな。でも、親父のやつはとびきりキツい地獄みたいな特訓でなぁ。うぅ……思い出しただけでも冷や汗が出る……。」

矢切は過去を思い返して身震いをする。
しかし花恋は怯むことなく、ある決意を口にするのであった。

「私、その地獄特訓受けてみたい!姉御の道場に弟子入りしてもいい?」

それを聞いた矢切は大きく目を見開いた。

「なっ!?正気か!?マジでめちゃくちゃ厳しい特訓なんだぞ!」

「望む所よ!」

花恋の目に迷いは一切ない。

「その目はどうやらマジみたいだな……。今でもディフェンダーとして十分やれてると思うけど、どうしてそこまでして……。」

「そんなの、強くなって修兄ちゃんに振り向いてもらう為に決まってるよ。」

花恋は自信満々にニヤッと笑う。
それに釣られて矢切も思わず、ニヤッと笑う。

「ハハッ。その負けん気は兄貴そっくりだな!
よっしゃ分かった!合宿が終わったら、親父に話を通しておくよ!気合いの入った弟子が入門してくるってな!」

「よろしくね!姉御!」

二人はがっちりと固い握手を交わす。


花恋の迷いはすでに吹っ切れ、メラメラと野心に燃えていた。

選手として、さらに成長したいという野心。

そしてもう一つはとある人物に。

『ぜーーーったい!キャプテンには負けないんだからーーー!』


恋敵と認定した鞍月 光華くらつき みつかに向けられているのであった。





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