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第64話 昔語り(カレン)
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露天風呂から場所を移した俺たちは、檜の香りが心地よいサウナ室の、階段状になった木のベンチに腰を下ろしていた。
じりじりと肌を焼く熱気が、身体の芯から汗を絞り出してくる。
(ハアハア……ハアハアハアハア……。やばい。サウナ、やばいぜ……!)
整うとか、そういう高尚な話じゃねえ。目の前の光景が、だ。
リイナも、アンナも、レイラも、カレンも、汗で濡れた白いタオルを胸に巻いただけの姿で、うっすらと肌を上気させている。
くそっ! なんでタオル巻いてんだよ! もっとこう、手ぬぐい一本で大事なところだけ隠すとか、そういうサービス精神はないのかよ!
だが、これはこれでいい。タオルの隙間から時折ちらりと覗く、柔らかな膨らみの谷間や、濡れて肌に張り付いた布が描き出す身体のラインが、逆に俺の想像力を無限に掻き立てやがる!
俺は人生で初めてのサウナで整いながら、内心で血の涙を流しつつ、カレンの話に耳を傾けていった。
ちなみにちょくちょく水風呂に移動して、またサウナ室に入るを繰り返している。
「……あたしが産まれた時、曽祖父パーカッションが赤子のあたしを高々と掲げて、こう言ったそうだ。『儂の後継者はこの子に決定じゃ。儂の魔法技術をすべて相続させるぞ』ってな」
カレンは熱さに耐えるように、ふぅ、と息を吐きながら語り始めた。
(あのじいさん、そんなこと言いやがったのか。産まれたての赤子相手に後継者指名だあ? 下手すりゃドロッドロの遺産相続争いに発展する、禁断のフラグじゃねえか!)
一般家庭でも骨肉の争いが激しいのに、英雄爺さんの一族って名門だ。結果は目に見えている。
「物心ついた頃には、もう魔法の特訓で1日が費やされる毎日だった。家庭教師は数時間で交代するのに、生徒はずっとあたし1人。そんな状況が何年も続いたな」
(何それ怖い! よく性根が歪まなかったな。そんなスパルタ教育、俺なら3日で発狂して「俺は空を飛べるんだあああ」とか叫びながら屋上からダイブしちまうわ!)
「どいつもこいつも『偉大なる大魔導士パーカッション様のようになるのです』ってうるさくてな。あたしは会った記憶もないし、なんで後継者に指名されたのかもよく分からんかったから、『変な曽祖父がいるんだな。1人前になってまだ生きてたら、魔法勝負を挑んで焼き尽くしてやる』ぐらいにしか思ってなかった」
(いや、それもう完全に殺意だよね? 『曽祖父の首級』を欲しがる深層心理、原因はこの壮絶な幼少期の恨みか! じいさん、やりすぎだろ! 一生に一度しかない幼少期の遊びの思い出を奪った罪は重いぞ!)
「両親はどうなのだ? 厳しいだけではなく、愛情を注いだりはしてくれなかったのか?」
リイナの問いに、カレンは汗を拭いながら、乾いた笑みで首を横に振った。
「そんなことより魔法、魔法、魔法だったな。兄や弟には誕生日パーティとかしてたが、あたしの誕生日は特別魔法授業さ。両親もあたしを家庭教師に任せきりで、あまり顔を見せなかったな」
寂しそうな表情を浮かべるカレンに、アンナもレイラも神妙な顔つきになる。
(酷い話だぜ……。俺が親父なら、娘が偉大な先祖から後継者指名されたら嬉し泣きして、ずっと側を離れねえぞ。だって、身に危険が及ぶかもしれねえからな!)
そこでふと、俺も思ったことを質問してみた。
「あの……ご親族から、嫉妬されたりとかは……しなかったんですか?」
「あったなあ」
カレンはしれっと、とんでもない爆弾発言を投下した。
「本気で獄炎を放ってくる家庭教師を氷漬けにしたら、背後に叔父さんの影があったって聞かされたり、使用人があたしの皿に毒を盛ったりもした。そんなに曽祖父さんの後継者になって、魔法の知識を受け継ぎたいのかねえ、と呆れたもんさ。そんなことするなら勉強でもすればいいのに」
(嫉妬どころじゃねえ! 殺人未遂じゃねえか! 名門のドロドロ怖えええええ!)
「……そういうのは私もよくわかるぞ」
リイナが重々しく頷き、とんでもない相槌を打つ。
「父の第3夫人のお茶会で、なぜか私1人だけが残されて魔物に襲われたことがあるのだが、私がドレスの下に隠していた剣で一閃させて城へ戻ると、第3夫人と彼女の息子である私の義弟が、『きゃあああ、お化けええええ!』と悲鳴をあげたものだ」
(リイナちゃんの話も重すぎるよ! カレンもどこからツッコんでいいか困った顔してるぞ!)
「リイナ様も21人の姉弟がいますからね。そういうのは日常茶飯事だったのでしょう」
レイラちゃんが淡々というけど、王族も名門もおっそろしいなあ。
俺がそんな家に産まれていたらどうなっていただろうか?
速攻で美少女侍女をねだって童貞卒業して、毎日引きこもってヤりまくってただろうなあ。
羨ましい。
「ま、まあ、なんだかんだでロンブローゾ魔法学校に入学して、卒業したら曽祖父さんの正式な後継者として発表されるはずだったんだが……ちょっとトラブって、手加減をミスって男子生徒を何人か再起不能にしちまってな。退学ってオチさ」
(そのトラブル、サーシャから詳しく聞いてるぜ! そこを省くのかよ! 好感度爆上がりの鉄板ネタなのに、自分で自慢しねえのかよ! これがカレン風モテ手法なのか? 自分で自慢話をしない……か。なるほど、見習わねばなるまい!)
「一族はみんなカンカン、両親からは勘当宣言さ。まあ、当然だな。一族で退学になったのは、あたしが初めてだからな」
自嘲気味に笑うカレン。おお……もう、その影のある表情、絶対女の子がキュンとなるやつじゃん。俺もキュンキュンしっぱなしだぞ。股間があればビンビンになっていたはずだ。
「それで、ご実家に戻らないでブリューレに来たんですか?」
アンナの問いに、カレンはコクリと頷いた。
「もう曽祖父さんの後継者の話も流れただろうし、気ままに旅でもしようかと思って数日ここで過ごしたんだが……旅立とうとして、気づいたんだ。ブリューレ領から、一歩も出られないってな」
ゴクリ、と俺とリイナたちが唾を飲む。一種の呪いか、それとも魔王軍の仕業か。
「こんな芸当ができるのは1人しかいない。そう思ってたら、脳内に直接、曽祖父さんの声が響いてきたのさ。『ヒョッヒョッヒョ、最終試験じゃ。儂の結界を破れたら、後継者として認めてやる』ってな」
カレンはギリ、と拳を握りしめた。
「最終試験……何かヒントはあるのか?」
リイナの質問に、カレンは頷く。
「ああ、『未来を切り拓く魔法を見つけよ』……なんて抽象的なことを言ってやがったな」
「未来を切り拓く……ですか。そういえば、おじいちゃん、私たちにも言ってましたよね? どんな魔法なんでしょう?」
「結界を最大出力で破るという意味でしょうか?」
「もうやってみたが駄目だった。まだあたしの力が足りないのか、根本的に別次元の魔法なのか……今はその両方を探ってる最中さ」
アンナもレイラちゃんもカレンの回答に、う~んと唸るが、そんなに難しく考えることか?
あの爺さんの性格だ。なら、回りくどい言い方でカレンを試しているに違いない。
「その答えは簡単だな」
俺の発言に、みんなが振り向いてくる。
「分かるのか、セイコ?」
「なんだ! セイコ、教えてくれ!」
驚くリイナたちと、興奮気味のカレンに向かって俺は言葉を続ける。
「それは比喩さ。未来を切り拓く……つまりは魔王軍との戦いに身を投じ、打ち勝つための魔法……それは信頼できる仲間を得ることさ。勇者一行と同時に領外に出てみな? きっとあんたは出れるはずさ」
「さすがにそれは楽観的過ぎなのではないか?」
リイナの疑問の声に、俺は余裕の笑みで回答する。
「単純な話さ。そもそもどうして、パーカッションのじいさんが、勇者一行にカレンを仲間にするよう言ったかも考慮しないとな。未来を切り拓く魔法って同じフレーズまで使っている。あのじいさんのことだ。魔法学校退学になったとはいえ、カレンは自分の後継者と任命した曾孫なんだ。勇者一行の名誉を与えて汚名返上の機会を与えたいと考えるのが自然だろう。まあ、一番はイチャモンつける親族に『ざまあみろ、儂が正しかったんじゃ』をやりたいだけかもだが」
おお~、っと俺以外から声が漏れる。
「明日、試してみるか。セイコも一緒に立ち会ってくれないか?」
カレンの申し出に、俺は快諾の即答をする。
「なるほどな……それが事実なら、あの曽祖父さん、マジで一発ぶん殴らないと気が済まない。手の込んだ嫌がらせをしやがって。単純に勇者一行に加われって言えばいいものを!」
まあ、それだとカレンは反発しそうだよな。勇者一行のせいでブリューレ領から出られないと考え、俺たちの実力を試すべく問答無用で魔法をぶっ放してきそうだ。
あっ、俺はされたんだっけか。
「なるほどなあ『パーカッションの首級』を欲しがるってのもそういうことか。じいさんを殺せば結界も解けるもんな!」
俺は全てを理解し、納得して深く頷いた。だが、その行動が命取りだった。
「ああ、ま、現実的じゃないけどな。まったく、あのセイヤって男、どうしてそんな曽祖父の首級なんて欲しがるって言ってきたのやら。……ん?」
リイナも、アンナも、レイラも、そしてカレンまでもが、「ん?」として俺を見る。
「セイコ? なんで、セイヤが言ったことを知っているんだ?」
「パーカッションおじいちゃんの話も、まるでその場にいたかのように詳しいです!」
「口調が男の子ですね。どこかで聞いたことあるような言い回しです」
しまったああああああ! つい、セイコが知っているはずがない情報を、素で得意げに口走ってしまったああああああああ!
じりじりと肌を焼く熱気が、身体の芯から汗を絞り出してくる。
(ハアハア……ハアハアハアハア……。やばい。サウナ、やばいぜ……!)
整うとか、そういう高尚な話じゃねえ。目の前の光景が、だ。
リイナも、アンナも、レイラも、カレンも、汗で濡れた白いタオルを胸に巻いただけの姿で、うっすらと肌を上気させている。
くそっ! なんでタオル巻いてんだよ! もっとこう、手ぬぐい一本で大事なところだけ隠すとか、そういうサービス精神はないのかよ!
だが、これはこれでいい。タオルの隙間から時折ちらりと覗く、柔らかな膨らみの谷間や、濡れて肌に張り付いた布が描き出す身体のラインが、逆に俺の想像力を無限に掻き立てやがる!
俺は人生で初めてのサウナで整いながら、内心で血の涙を流しつつ、カレンの話に耳を傾けていった。
ちなみにちょくちょく水風呂に移動して、またサウナ室に入るを繰り返している。
「……あたしが産まれた時、曽祖父パーカッションが赤子のあたしを高々と掲げて、こう言ったそうだ。『儂の後継者はこの子に決定じゃ。儂の魔法技術をすべて相続させるぞ』ってな」
カレンは熱さに耐えるように、ふぅ、と息を吐きながら語り始めた。
(あのじいさん、そんなこと言いやがったのか。産まれたての赤子相手に後継者指名だあ? 下手すりゃドロッドロの遺産相続争いに発展する、禁断のフラグじゃねえか!)
一般家庭でも骨肉の争いが激しいのに、英雄爺さんの一族って名門だ。結果は目に見えている。
「物心ついた頃には、もう魔法の特訓で1日が費やされる毎日だった。家庭教師は数時間で交代するのに、生徒はずっとあたし1人。そんな状況が何年も続いたな」
(何それ怖い! よく性根が歪まなかったな。そんなスパルタ教育、俺なら3日で発狂して「俺は空を飛べるんだあああ」とか叫びながら屋上からダイブしちまうわ!)
「どいつもこいつも『偉大なる大魔導士パーカッション様のようになるのです』ってうるさくてな。あたしは会った記憶もないし、なんで後継者に指名されたのかもよく分からんかったから、『変な曽祖父がいるんだな。1人前になってまだ生きてたら、魔法勝負を挑んで焼き尽くしてやる』ぐらいにしか思ってなかった」
(いや、それもう完全に殺意だよね? 『曽祖父の首級』を欲しがる深層心理、原因はこの壮絶な幼少期の恨みか! じいさん、やりすぎだろ! 一生に一度しかない幼少期の遊びの思い出を奪った罪は重いぞ!)
「両親はどうなのだ? 厳しいだけではなく、愛情を注いだりはしてくれなかったのか?」
リイナの問いに、カレンは汗を拭いながら、乾いた笑みで首を横に振った。
「そんなことより魔法、魔法、魔法だったな。兄や弟には誕生日パーティとかしてたが、あたしの誕生日は特別魔法授業さ。両親もあたしを家庭教師に任せきりで、あまり顔を見せなかったな」
寂しそうな表情を浮かべるカレンに、アンナもレイラも神妙な顔つきになる。
(酷い話だぜ……。俺が親父なら、娘が偉大な先祖から後継者指名されたら嬉し泣きして、ずっと側を離れねえぞ。だって、身に危険が及ぶかもしれねえからな!)
そこでふと、俺も思ったことを質問してみた。
「あの……ご親族から、嫉妬されたりとかは……しなかったんですか?」
「あったなあ」
カレンはしれっと、とんでもない爆弾発言を投下した。
「本気で獄炎を放ってくる家庭教師を氷漬けにしたら、背後に叔父さんの影があったって聞かされたり、使用人があたしの皿に毒を盛ったりもした。そんなに曽祖父さんの後継者になって、魔法の知識を受け継ぎたいのかねえ、と呆れたもんさ。そんなことするなら勉強でもすればいいのに」
(嫉妬どころじゃねえ! 殺人未遂じゃねえか! 名門のドロドロ怖えええええ!)
「……そういうのは私もよくわかるぞ」
リイナが重々しく頷き、とんでもない相槌を打つ。
「父の第3夫人のお茶会で、なぜか私1人だけが残されて魔物に襲われたことがあるのだが、私がドレスの下に隠していた剣で一閃させて城へ戻ると、第3夫人と彼女の息子である私の義弟が、『きゃあああ、お化けええええ!』と悲鳴をあげたものだ」
(リイナちゃんの話も重すぎるよ! カレンもどこからツッコんでいいか困った顔してるぞ!)
「リイナ様も21人の姉弟がいますからね。そういうのは日常茶飯事だったのでしょう」
レイラちゃんが淡々というけど、王族も名門もおっそろしいなあ。
俺がそんな家に産まれていたらどうなっていただろうか?
速攻で美少女侍女をねだって童貞卒業して、毎日引きこもってヤりまくってただろうなあ。
羨ましい。
「ま、まあ、なんだかんだでロンブローゾ魔法学校に入学して、卒業したら曽祖父さんの正式な後継者として発表されるはずだったんだが……ちょっとトラブって、手加減をミスって男子生徒を何人か再起不能にしちまってな。退学ってオチさ」
(そのトラブル、サーシャから詳しく聞いてるぜ! そこを省くのかよ! 好感度爆上がりの鉄板ネタなのに、自分で自慢しねえのかよ! これがカレン風モテ手法なのか? 自分で自慢話をしない……か。なるほど、見習わねばなるまい!)
「一族はみんなカンカン、両親からは勘当宣言さ。まあ、当然だな。一族で退学になったのは、あたしが初めてだからな」
自嘲気味に笑うカレン。おお……もう、その影のある表情、絶対女の子がキュンとなるやつじゃん。俺もキュンキュンしっぱなしだぞ。股間があればビンビンになっていたはずだ。
「それで、ご実家に戻らないでブリューレに来たんですか?」
アンナの問いに、カレンはコクリと頷いた。
「もう曽祖父さんの後継者の話も流れただろうし、気ままに旅でもしようかと思って数日ここで過ごしたんだが……旅立とうとして、気づいたんだ。ブリューレ領から、一歩も出られないってな」
ゴクリ、と俺とリイナたちが唾を飲む。一種の呪いか、それとも魔王軍の仕業か。
「こんな芸当ができるのは1人しかいない。そう思ってたら、脳内に直接、曽祖父さんの声が響いてきたのさ。『ヒョッヒョッヒョ、最終試験じゃ。儂の結界を破れたら、後継者として認めてやる』ってな」
カレンはギリ、と拳を握りしめた。
「最終試験……何かヒントはあるのか?」
リイナの質問に、カレンは頷く。
「ああ、『未来を切り拓く魔法を見つけよ』……なんて抽象的なことを言ってやがったな」
「未来を切り拓く……ですか。そういえば、おじいちゃん、私たちにも言ってましたよね? どんな魔法なんでしょう?」
「結界を最大出力で破るという意味でしょうか?」
「もうやってみたが駄目だった。まだあたしの力が足りないのか、根本的に別次元の魔法なのか……今はその両方を探ってる最中さ」
アンナもレイラちゃんもカレンの回答に、う~んと唸るが、そんなに難しく考えることか?
あの爺さんの性格だ。なら、回りくどい言い方でカレンを試しているに違いない。
「その答えは簡単だな」
俺の発言に、みんなが振り向いてくる。
「分かるのか、セイコ?」
「なんだ! セイコ、教えてくれ!」
驚くリイナたちと、興奮気味のカレンに向かって俺は言葉を続ける。
「それは比喩さ。未来を切り拓く……つまりは魔王軍との戦いに身を投じ、打ち勝つための魔法……それは信頼できる仲間を得ることさ。勇者一行と同時に領外に出てみな? きっとあんたは出れるはずさ」
「さすがにそれは楽観的過ぎなのではないか?」
リイナの疑問の声に、俺は余裕の笑みで回答する。
「単純な話さ。そもそもどうして、パーカッションのじいさんが、勇者一行にカレンを仲間にするよう言ったかも考慮しないとな。未来を切り拓く魔法って同じフレーズまで使っている。あのじいさんのことだ。魔法学校退学になったとはいえ、カレンは自分の後継者と任命した曾孫なんだ。勇者一行の名誉を与えて汚名返上の機会を与えたいと考えるのが自然だろう。まあ、一番はイチャモンつける親族に『ざまあみろ、儂が正しかったんじゃ』をやりたいだけかもだが」
おお~、っと俺以外から声が漏れる。
「明日、試してみるか。セイコも一緒に立ち会ってくれないか?」
カレンの申し出に、俺は快諾の即答をする。
「なるほどな……それが事実なら、あの曽祖父さん、マジで一発ぶん殴らないと気が済まない。手の込んだ嫌がらせをしやがって。単純に勇者一行に加われって言えばいいものを!」
まあ、それだとカレンは反発しそうだよな。勇者一行のせいでブリューレ領から出られないと考え、俺たちの実力を試すべく問答無用で魔法をぶっ放してきそうだ。
あっ、俺はされたんだっけか。
「なるほどなあ『パーカッションの首級』を欲しがるってのもそういうことか。じいさんを殺せば結界も解けるもんな!」
俺は全てを理解し、納得して深く頷いた。だが、その行動が命取りだった。
「ああ、ま、現実的じゃないけどな。まったく、あのセイヤって男、どうしてそんな曽祖父の首級なんて欲しがるって言ってきたのやら。……ん?」
リイナも、アンナも、レイラも、そしてカレンまでもが、「ん?」として俺を見る。
「セイコ? なんで、セイヤが言ったことを知っているんだ?」
「パーカッションおじいちゃんの話も、まるでその場にいたかのように詳しいです!」
「口調が男の子ですね。どこかで聞いたことあるような言い回しです」
しまったああああああ! つい、セイコが知っているはずがない情報を、素で得意げに口走ってしまったああああああああ!
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