【リア充絶対殺すマン】~異世界を救う勇者として転生した俺は、限定チート能力でリア充相手に無双する。なお、非モテに絡まれたら即死する弱さです~

ハムえっぐ

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第91話 あなたと合体したい

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 くっ! フェリックスのおっさんが張り続ける結界を圧縮だと⁉ それは非常にマズい。性行為経験一切なしのおっさんが張った結界は、俺の能力対象外なのだ!

 ズズズ……と、黒い壁が不気味な音を立てて狭まってくる。秒速1センチ。いや、今はそれよりも速いか。確実に、俺たちの生存領域を蝕んでいやがる。

「させるか!」

 カレンが叫ぶと同時に、彼女の両手から渦巻くような獄炎が放たれ、結界の内壁を舐めるように広がった。
 だが、その炎は壁に触れた瞬間、闇に吸い込まれるように虚しく消える。

「カレン様だけにカッコつけさせないし!」

 サーシャも負けじと雷撃を放つが、結果は同じ。

「カーラ! 我が一族の力を示す時です!」
 
「ええ、お母様!」

 カミラ学長とカーラ生徒会長も、親子ならではの息の合った連携で魔力の盾を展開するが、圧縮の力の前では気休め程度にしかならない。

「私の結界も……完全に吸収されています!」

 レイラちゃんが聖なる光を全身から放ち、俺たち全員を包み込むように防御結界を張るが、その光も黒い壁に触れた瞬間、勢いを殺されていく。
 アンナもリイナも、両の手のひらや剣で物理的に壁を押し返そうと、額に汗を浮かべて必死に踏ん張っていた。

「「「「うおおおおおおお!」」」」
 
 無駄な足掻きなんかじゃない。みんなが力を合わせているおかげで、狭まるスピードは徐々に遅くなっている。

 サンキューみんな。頼りになるぜ。
 ちょっと魔女組が、カーラがカレンに対抗心メラメラで、「私の炎の方が高貴ですわ!」とか叫び、カミラ学長が「そうですカーラ! 我が一族最高の魔法の使い手であることを見せつけなさい!」って支援し、サーシャも負けじと「カレン様が一番だし!」なんて言ってカレン支援しつつ火花散らしてるのは見なかったことにしよう。
 お~い、命のやり取りしてるのをお忘れなくな!

 当のカレンは溜息しつつも、俺をチラリと見た。
 ……ああ、分かってる。俺に任せろ。
 カレンだけじゃねえ。アンナも、レイラちゃんも、リイナも、無言で俺を見つめてくれている。
 期待されているのをビンビンに感じるぜ。この信頼、応えなければ男じゃねえ。
 つーか、失敗したら天国で無視されそうだしな!

『セイヤさんは地獄ですよ?』

 レイラちゃん、脳内に直接ズッコけそうになること言わないで! 分かってるさ、現世で1人の女の子も幸せにできなかった俺が天国に相応しくないってのはな!

「勇者パーティプラス、ロンブローゾ魔法学校の生徒と学長の運命の共闘作業が始まった! ズズズと迫ってきた結界だが、彼女たちの力で明らかに速度が遅まっている! けれど勇者セイヤは微動だにしない! 女の子だけに結界対処を任せて、一体何を考えているのか! 私の命もかかってるんですから、はよ動け、勇者セイヤあああああ!」

 うるさいよ、へっぽこ年齢詐称バニーガールちゃん! 今は考えることに集中させて!

「無駄な足掻きがお好きなことね。確かに、実力は認めてあげる。本来なら秒速1センチで狭まるのを、秒速1ミリに抑えているのですから! でもそれだけ! 死ぬのが少しだけ遅くなるだけ! 絶望を味わいなさい! 抗えない力に蹂躙される気分を思う存分に噛み締めて!」

 嬉しそうだねえ、マーサ王女さんよお。

「ええ、当然ですわ。大っきらいな人が目の前で死ぬのですから」

「……そうかい。そいつはハッピーだろうよ。俺も人を殺したことがあるから分かるぜ。スッとするもんなあ。特にムカつく奴が肉塊に変わるのは最高だ。俺に殺される瞬間の恐怖で引き攣った顔なんざ、今でも夢に見て絶頂もんだ。ああ、生きててよかったって思うぜ」

 俺が初めてこの世界に来て、幼い公爵令嬢姉妹を凌辱した盗賊どもを殺した日のことを思い出す。

「それはとてもいい思い出をお持ちですわ。あの世で思う存分に自慢してくださいな」

「……クックック、ハッハッハ。今ので分かったぜ。マーサ王女さんよお、そっちのアルディスさんもだ。人を直接殺したこと、ねえだろ?」

「は? だから何?」

「姫様!」

 アルディスが慌てるがもう遅い。マーサ王女も俺の土俵に上がった。
 俺はゆっくりと、彼女たちに向かって右手人差し指を向ける。

「死体にした奴らは、もう二度と動かねえんだよ。蹴っても引き裂いても、思うがままだ。こんなつまらねえことがあるかよ」

「……つまらない?」

「そうさ! 確かにこの世には、ここで殺さなければ大勢の人間の命を脅かすどうしようもねえのが存在する! けどな、この世の大部分は、根っこは自分の身が可愛いだけなのさ。欲望に従って他人を傷つけてるだけなのさ」

「……」

「マーサ王女、アルディス、俺は最初に殺しをしたあと、殺しはしてねえ。切羽詰まってねえっていう幸運や、頼れる仲間がいたから殲滅して後腐れなしにする必要があったってのもデカいがな」

「……」

「だが、1番でけえ感情はこう思ったからだ。ああ、俺に倒された連中、俺に舌打ちしてやがる。ちくしょうと思ってやがる。二度と関わりたくねえと思ってやがる。逆に何度倒されても飽きねえ奴がいる。これらひっくるめて、バーカ、俺に勝てるかよって思うのが、殺してハイそれまでにするより何千倍もアドレナリンが分泌すっからなあ!」

 俺の本音の叫びに、マーサ王女とアルディスがたじろいだ。
 今だ! 俺は結界の外で、無表情に手をかざし続ける男に叫んだ。

「聞こえてるか、おっさん! 悔しくないのか! 今までの人生も、今のこの瞬間も他人に利用されてよ! 天パでも死んだ魚の目でも、服のセンスがなくても、41年間彼女いたことがなくても、キスすらしたことがなくったって、それはおっさんそのものだ! 誰かに笑われたってこう言い返せ! バーカ、俺の結界魔法で閉じ込めて、トイレにも行かせねえわ、ギャハハってなあ。実際にお漏らしさせる姿を想像してみな。涙を流して絶望で頬をピククピクしながら、おっさんを上目遣いで見る女の子の顔をよお」

 俺の演説が終わると、結界魔法にピシリ、と亀裂が走った。
 フッ……決まったな。洗脳系ってのは、より魂を揺さぶる言葉で上書きできるもんなのさ。
 R15作品ファンの洗脳を解くには、R18作品漬けにするって理屈だ!

「おのれ……! この私としたことが、下賤の者の言葉に惑わされるとは……! フェリックス! 聞いてはなりません! もっと深く、昏い眠りを与えてあげますわ!」

 マーサが叫び、アルディスと共にさらに強力な魔力をフェリックスに注ぎ込もうとした瞬間だ。
 俺とフェリックス、2人の身体から、眩いばかりの黄金の光が迸った。

「「きゃあああああああああっ!」」

 その神々しい光に、マーサとアルディスはなすすべもなく吹き飛ばされていく。
 光がホール全体を包み込み、俺の意識もまた、その温かい奔流に飲み込まれていった。

 ……次に目を開けた時、俺は真っ裸の状態で、神々しい黄金の光に満ちた空間に立っていた。
 目の前には、同じく真っ裸のフェリックスのおっさんが向かい合っている。

「こ、これは⁉」
 
「シンクロしたのか⁉ まさか、これは⁉」

 互いの思考が、魂が、直接流れ込んでくる。41年間の孤独、報われなかった純情、そして俺の歪んだ欲望と絶望の全てが混じり合い、溶け合って……なぜか、とてつもない高揚感と快感が脳天を貫いた。

「「気持ちいいいいいい!」」

 一万年と二千年前から♪……は! JASRACに金を払ってたまるかあああああ! おっさんと創生合体してたまるかああああ!

「てめえと合体してたまるかああああ!」
 
「ようわからんが、俺の童貞をこんな謎空間で失ってたまるかああああ!」

 俺とおっさんの魂が、完全に一致した。そうだ、俺たちが本当に求めているものは、ただ一つ!

「「女と合体したい!」」

 黄金の空間で、全裸の俺とフェリックスのおっさんが互いの拳に全身全霊を乗せて、互いの左頬に激突する!

 フッ、さすが謎空間。リア充絶対殺すマンが発動していない、ステータスオール1の俺でもおっさんをKOできたぜ。魂が混じり合った影響か?
 いや、素のおっさんが単に打たれ弱いのもある。
 もう隠さなくったっていいぜ。おっさんが魔法以外駄目人間なのも、俺は理解しちまったんだ。
 まあ偉そうな口舌垂れてる俺も、おっさんの一撃貰ってKOされたんだけどな!
 
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