なんで私⁉ 野球知識皆無のJKが戦国時代で野球を広め、信長の恋女房になってしまう件

ハムえっぐ

文字の大きさ
14 / 54
【旅せよ乙女、お市ちゃん結婚編】

第14話 長谷川真昼、不倫旅行疑惑の夜を過ごす

しおりを挟む
 尾張の街道は賑やかだ。
 商人たちが行き交い、活気に溢れている。
 信長様の経済政策が上手く行っている証拠だよね。 
 よくわかんないけど景気がいいのは良いことだ。

「ねえ、光秀さん。これから行く浅井家ってどんなとこなんですか?」

 馬上の私から隣を並走する長身イケメン、明智十兵衛光秀さんに質問を投げる。
 この人、インテリっぽいし解説役にはぴったりだよ。

「そうですね。浅井家は北近江を治める大名ですが、少々事情が複雑でして」

 光秀さんは涼しい顔で説明を始める。

「元々、浅井家は南近江の六角家に臣従していたのです。しかし最近の戦で六角家を破り、独立を果たしました」

「へえ、下克上ってやつですか」

「ええ。ですが、ただ勝っただけではありません。六角家寄りの姿勢を崩さなかった当主・久政殿を家臣団が強引に隠居させ、嫡男の賢政殿を新当主に据えたのです。さらに六角家の娘との婚約も破棄したとか」

 うわあ、ドロドロしてる。
 お父さんを無理やり隠居させて、婚約破棄までしちゃうなんて。

「だからこそ浅井家も味方が欲しいのです。何せ美濃の斎藤家とも仲が悪いですからね。孤立無援になりかねないのです」

「ほへえ。家臣たちが無理やり殿様を隠居って、織田家じゃ考えられないですね。信長様絶対主義だし」

「あら? 信長お兄様だって、昔は逆らう人たちが多かったんですよ? 今も多いですけど」

 私の背中にしがみついているお市ちゃんが、口を挟んでくる。

「それをちぎっては投げ、ちぎっては投げて、今の権力があるんです。ねえ、帰蝶お姉様?」

 ちぎっては投げてって、相撲取りかよ。

「……十兵衛様。その浅井家の六角家離反、まさかとは思いますが……工作しましたね?」

 反対側を走る藤吉郎さんが、光秀さんに鋭い視線を向ける。

「フフフ、賢政は婚約成就したあかつきには信長様の一字を貰い受け、長政と名乗りたいとまで申してますね」

 光秀さんは否定も肯定もせず、ただ爽やかに笑ったのだった。
 こわっ! この笑顔の裏で今まで何やってたの、この人! 名前変えるのも絶対この人が提案したんでしょ!

「承禎や義治が定頼並みの器量だったら騙されるかよ。しょせん、その程度ってことよ」

 ん? 聞き覚えのある声が後ろから聞こえたぞ?

「ほえ⁉ なんで信長様もいるんですか⁉」

 私は素っ頓狂な声を上げていた。
 振り向くと、平然と私たちについてくる信長様の姿があったからだ。

「当たり前だ。織田家の命運を賭けた妹の見合いぞ? 兄である俺が立ち会わずしてどうする」

 さも当然のように言う信長様。
 いやいや、トップが城を空けてどうすんのさ。
 お市ちゃん? 小声で「ちっ。私と真昼が駆け落ちするのを読んだわね、お兄様」って呟いてるけど、そんなこと考えてたの⁉

「って! 光秀さんに工作させたのは信長様かい!」

「フッフッフ。さあ、なんのことだか? 私にはわかりません」

「クックック。俺も知らんぞ」

 私の渾身のツッコみに、光秀さんと信長様は邪悪な笑みで笑うのでした。
 絶対性格の悪さで意気投合してるでしょ、この2人。

「信長様、国内の守りは……」

 藤吉郎さんが心配そうに尋ねる。

「案ずるな。権六や秀貞に任せてある。竹千代や信清の対処ぐらいできるだろ」

「左様ですか……ならばこれ以上は申しませぬ」

 納得して微笑む藤吉郎さんを見て、私の脳内フィルターがピーンと反応した。
 はは~ん、分かったぞ。
 これ、妹の見合いにかこつけた旅行デートだ! 
 権六さんたちに留守番させて面倒な政務を全部押し付けて、開放的な旅先で藤吉郎さん(帰蝶様)とイチャイチャする気満々の不倫旅行じゃん!

 私は心の中で、清洲城にいる吉乃さんに土下座した。
 
(ごめん吉乃さん! 私の力じゃこの暴走魔王は止められないよ! 見ちゃいけないものを見ないように耳栓とアイマスクして寝なきゃ!)

 ***

 しばらく街道を進むと、道端に見覚えのある影があった。
 槍を担いだ大柄な男と小さな女の子だ。

「藤吉郎様~!」

「おっと、ねね」

 ねねちゃんが藤吉郎さんに飛びつき、抱っこされる。
 横でニヤリと笑うのは前田又左衛門利家……通称、犬千代さんだ。

「又左さん、もしかして?」

「おう! 旅の警護がてら武功を立てて、帰参の許しを得るのに丁度いい機会だからな!」

 悪びれず親指をピシッと立てる又左さん。

「ウキー?」

「な~に言ってんの、小一郎。他国に行ける機会なんて滅多にないでしょ? 犬千代を尾行して信長様たちの動きを掴んだのよ」

 ねねちゃん? さらりと言ってるけど、とんでもないこと口走ってね?
 つーか、ねねちゃん、小一郎と喋れるんかい。

「護衛が増えるのはいいですね。私の役割を押し付け……分担できます」

 光秀さん? 今本音漏れただろ。

「天下の公道、誰がどう歩いていようが俺の知らぬことよ」

 そんな信長様の言葉に、又左さんとねねちゃんは笑顔でついてくるのだった。 

 うんうん、賑やかになるのは良いことだよ。

 あっ! でも又左さんも男じゃん。私を襲おうとか思ってたらどうしよう。
 てか、この人、藤吉郎さんが帰蝶様って知ってるのかな? ねねちゃんと随分仲がいいし、藤吉郎さんにタメ口だよね。
 そんなことを私が思ってる横で、光秀さんが又左さんに口を開く。

「子供が産まれたそうですね。おめでとうございます」

「ああ、ありがとうよ。だから早く帰参しておまつとお幸のとこに戻らねえと。ああ、俺の最愛の妹にして妻のおまつ! 待っててくれ! 光秀さん、頼むから口添えしてくれよ!」

 おお! 又左さんが光秀さんに泣きついている。
 奥さんと子供がいるんだ。
 ちょっとよくわからない単語が出てきたけど、愛妻家みたいだから問題ないか。

 そう、安堵してたらまた一難。

「……あなた、お姉様にベタベタ触りすぎ」

 藤吉郎さんに抱きつくねねちゃんを見て、お市ちゃんの眉が吊り上がる。
 こっちはロリっ娘対決勃発かい?

「はあ? 藤吉郎様は私の婚約者だもん! もうお市様のお姉様じゃありませーん。はあ~、クンカクンカ」

「なっ! 負けません! はあ~、クンカクンカ」

「えっ! お市ちゃん⁉」

 なんで私の匂い嗅ぐの⁉

「……フッ、やるわね。お市様」

「あなたこそ、ねね」

 シュバッ!

 2人は無言で、ビシッと右腕をクロスさせたのだった。
 なんで⁉ どゆこと⁉ 友情成立したの⁉

 藤吉郎さんの肩に乗っている小一郎が、「ウキー」と鳴いて楽しんでいる。
 この猿、絶対分かってて楽しんでるだろ。

 ***

 日が暮れて、私たちは宿場に到着した。
 さて、問題の部屋割りタイムだ。

「俺と藤吉郎は奥の間だ」

 信長様が即決する。

「十兵衛と犬千代は手前の部屋。真昼と市、ねねは隣の部屋を使え」

 やっぱそうなるよねー! 夫婦水入らずだよねー!
 てか、なんで私もロリっ娘部屋なの? 保護者枠?

「ウキー?」

「小一郎殿は前田殿の布団と一緒ですね」

「おいこら光秀さん! なんで俺なんだよ。いいけどよ」

 いいのかい。又左さん。

 女子部屋で布団を並べる私、お市ちゃん、ねねちゃん。
 お市ちゃんとねねちゃんは太腿か尻かで議論してるけど、私の耳に入らない。
 だって壁一枚向こうに信長様と帰蝶様がいるんだぞ。

「……聞こえないよね?」

「何が?」

「いや、その……大人の会話とか……」

 私の言葉に、お市ちゃんとねねちゃんもハッとした顔をする。
 私たちは無言で壁に張り付き、聞き耳を立てた。

(ドキドキ……もし「ああん」とか聞こえてきたらどうしよう! 子供たちの教育に悪いよ!)

 シーン……。
 静かだ。時折、衣擦れの音がするような、しないような。
 それが余計に想像を掻き立てる。
 ああもう! 緊張で全く眠れないよ!

 ***

 いつの間にかうたた寝していた私は、強引に揺り起こされた。

「起きろ真昼。出発だ」

 目を開けると薄暗い行灯の光に照らされた信長様の顔。

「ほえ⁉ まさか、夜這い⁉」

 私は反射的に布団をガードする。

「信長様! 帰蝶様だけじゃ飽き足らず、妹の前で私とねねちゃんまで毒牙にかける気ですか! 鬼畜! ハーレム野郎!」

「んなわけあるか、うつけが!」

 信長様にデコピンされた。痛っ。

「国境を越えるんだ。夜陰に乗じるこの時間が好機よ」

 信長様はニヤリと不敵に笑う。

「準備はできている。行くぞ」

「は、はい……」

 なんだ、誤解だったか。
 私は安堵して立ち上がる。
 でも、お市ちゃんとねねちゃん起こしながら、信長様の後ろに控えている藤吉郎さんの顔を見て思考が停止した。

 ほんのり頬が赤く、艶っぽい表情をしてる?
 目元も潤んでいて、なんというか……色気がダダ漏れしている。

(……あ、これ絶対事後じゃん!)

 私は確信したけど、見なかったことにしようと決めた。
 私はそっと視線を逸らし、何も気づいていないフリをして部屋を出る準備を始めたのだった。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

存在しないことにされていた管理ギフトの少女、王宮で真の家族に出会う 〜冷遇された日々は、王宮での溺愛で上書きします〜

小豆缶
恋愛
「願った結果を、ほんの少しだけ変えてしまう力」 私に与えられたギフトは、才能というにはあまりにも残酷な自分も人の運命も狂わせるギフトだった。 そのあまりの危うさと国からの管理を逃れるために、リリアーナは、生まれたことそのものが秘匿され、軟禁され、育てられる。 しかし、純粋な心が願うギフトは、ある出来事をきっかけに発動され、運命が動き出す。 二度とそのギフトを使わないと決めて生きてきたのよ だが、自分にせまる命の危機ーー 逃げていた力と再び向き合わなければならない状況は、ある日、突然訪れる。 残酷なギフトは、リリアーナを取り巻く人たちの、過去、未来に影響し、更には王宮の過去の闇も暴いていく。 私の愛する人がどうか幸せになりますように... そう、リリアーナが願ったギフトは、どう愛する人に届くのか? 孤独だったリリアーナのギフトが今、王宮で本当の幸せを見つけるために動き始める

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

神様!スローライフには準備が多すぎる!

わか
ファンタジー
超超超ご都合主義 人に興味が無い社会人の唯一の趣味が な〇う系やアルファポリスでファンタジー物語を、ピッ〇マやLIN〇漫画で異世界漫画を読み漁る事。 寝る前にはあるはずないのに 「もし異世界に転生するならこのスキルは絶対いるしこれもこれも大事だよね」 とシュミレーションして一日が終わる。 そんなどこでもいる厨二病社会人の ご都合主義異世界ファンタジー! 異世界ファンタジー系物語読みまくってる私はスローライフがどれだけ危険で大変か知ってます。

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

処理中です...