なんで私⁉ 野球知識皆無のJKが戦国時代で野球を広め、信長の恋女房になってしまう件

ハムえっぐ

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【旅せよ乙女、お市ちゃん結婚編】

第22話 長谷川真昼、カップル誕生に拍手喝采する

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「逃がすな! 追え!」

 光秀さんと藤吉郎さん、小一郎が即座に追跡に向かう。
 私は肩で息をしながら、縁側へ駆け寄った。

「無事か……お市殿」

 賢政さんが苦痛に顔を歪めながらも、腕の中のお市ちゃんを気遣っている。
 背中の着物は裂け、血が滲んでいる。
 火縄銃の弾が掠めた傷だ。

「は、はい。賢政様……貴方、お怪我が……」

 お市ちゃんが震える手で賢政さんの頬に触れる。
 賢政さんは力なく微笑んだ。

「貴女が無事なら……この程度の傷……」

 言いかけた賢政さんが、ガクッと力を失って気絶した。

「賢政様ぁぁぁぁぁ!」

 お市ちゃんの絶叫が響く。
 カッコいいよ、賢政さん!
 自分の勝負を捨ててまで、愛する人を守るなんて!
 お市ちゃんも惚れた目をしているよおおおおおお!

「感動した! これぞ男の中の男だよ!」

 私は涙を拭いながら叫んだ。
 駆け寄ってきた信長様と又左さん、そして城内から飛び出してきた久政さんと海赤雨の3人も集まる。

「賢政! 無事か!」

「「「お館様ああああああ!」」」

「てめえら! 朝倉と手を組んで、お市様と信長様を暗殺しようとしたな!」

 又左さんが久政さんの胸ぐらを掴み上げ、久政さんは顔面蒼白でガクガク震えている。

「ち、違う! わ、儂はただ、様子を見ていただけじゃ……! まさか吉家殿が狙撃など……!」

「あん? てめえ、無理やり隠居させられたんだろ? この戦国の世だ。息子を亡き者にもしてえんじゃねえか⁉」

「なわけあるか! たしかに不満がある! じゃが、賢政は儂の大事な息子じゃ! この場で信長とお市が暗殺されたら、すぐ側にいる息子が危険になる。そのくらいわからん儂ではないわ!」

「前田殿、ご容赦を。久政様が賢政様を大事に思っているのは事実」
「我ら浅井の者共、織田に敵意なし」
「憎きは六角。久政様を隠居させなければ、浅井家家中に本気で六角と戦う気かと、疑念に思う者もいたがゆえのこと」

 海赤雨の3人が跪いて止めに入り、信長様は又左さんに首をクイッとさせて久政から離れるように指示した。
 そしてへたり込む久政さんを見下ろして告げる。

「朝倉の使者とこそこそ会ってたようだな。俺はそれが気に入らねえ」

「む、むう」

「もっと堂々とやれ。俺は二重外交を禁止なんざしねえよ。いいじゃねえか、織田と仲良くしつつ朝倉とも仲良くしても」

「なっ……」

「味方の敵は敵? んなことねえさ。小勢力なんだ。周りを騙して利用してのし上がる。最高じゃねえか」

 信長様はニヤリと笑った。

「……じゃが、これで織田との関係は……」

「つーわけだ。市の義父として、長政の親父として、この若夫婦を支えてくれよ」

 そう言って信長様は賢政さんの肩を叩いた。
 ちょうど目を覚ました賢政さんが、痛みに顔をしかめつつも信長様の言葉を聞き逃さなかった。

「……長政……長政と名乗ってよろしいのですね! 信長殿!」

「おう。今日からお前は浅井長政。俺の義弟よ」

 長政さんが歓喜の声を上げる。
 そして、心配そうに覗き込むお市ちゃんの手を取った。

「ですが、肝心のお市殿! 私と夫婦になってくださいますか?」

 お市ちゃんは少し驚いた顔をした後、力強く長政さんの手を握り返した。

「……ええ。謹んでお受けいたしますわ。長政様」

 おお! 両想いキター!
 おめでとう! お市ちゃん! 長政さん!
 私は感動して号泣しながら拍手喝采を送った――んだけど?

「何言ってるの真昼。お市様の顔をよく見なさい」

 隣にいたねねちゃんが、冷めた声で私の耳元に囁いてくる。

「え?」

「あれ、都合のいい駒が手に入ったって顔よ」

 私はハッとしてお市ちゃんの顔を凝視した。
 長政さんの胸に顔を埋めるお市ちゃんの口元は……。
 
 ニヤリ。

 うわあ……。
 魔王の妹に相応しい、最高の計算通りって笑みを浮かべてるよ。
 脛毛処理も、守ってくれた漢気も、全部ひっくるめて利用できるって判断したってこと⁉
 怖い! 戦国女子怖い!

「犬千代! 至急尾張に行き、吉兵衛に市の輿入れ一式、及び祝言の費用全て織田が持つことを伝えよ! 休みなしで、速攻近江まで運べともな!」

「合点、承知! 当然、今やってる仕事も全部やれ! っすね!」

 信長様の鶴の一声で、又左さんが浅井家から馬を借りて走り出す。
 ……うん。私の脳裏に、村井吉兵衛貞勝さんの血反吐を吐く姿が映し出されたよ。
 頑張れ……吉兵衛さん。

『勝負は負けじゃけえ。が、漢気は儂の勝ちよ。満足じゃ』

 コウジボールが穏やかに呟く。

『何を抜かす。狙撃前に打てなんだ指導した結果よ。儂の完勝じゃ』

『ほざけセンイチ』
『じゃかあしいわコウジ』

 後ろで英霊ボールたちが喧嘩してるけど、センイチ?
 指導結果って、私も長政さんのコーチしてたの忘れてるでしょ?

「……おーい、センイチ? 私を働かせて、あんたは酒浴びてばっかだったよねえ?」

 私は指をパキポキさせながら、ゆっくりと後ろを振り返るのだった。
 とりあえず、このボールどもをどう料理してくれようか。

 ***

「ハアハア……ハア。おのれ信長、悪運だけは強い男よ」

 敦賀山中まで逃げ延びた山崎吉家。
 呼吸を整え、思考を整理する。

「野球? ぼおる? なんだあれは! それに信長の寵姫、長谷川真昼。俺へ正確に、ぼおるなるものを投げつけた」

 理解しがたい。
 けれど、理解しなければならぬ。
 師の教えを思い出せ。

『武士は犬とも言え、畜生とも言え、勝つことが本にて候』

 俺以外に誰が朝倉を守れる?
 当主義景は越前に満足し、変化を怖れている。
 
「今は戦国乱世ぞ! 変化せぬ者から滅びる!」

 吉家が心の底から発せられた叫びに木々が揺れ、鳥が羽ばたき、白い球体が彼の足元に転がる。

「……俺の火縄銃を破壊したのと瓜二つ」

 唾を飲み込む吉家に、白い球体は興味を示した。

『変化したいのか?』

 吉家は力強く返答する。

「ああ。朝倉を護るために!」

『なら儂を使え。タイガース初代キャプテンにして、戦後の変革を担った儂を』

「……俺の名は山崎新左衛門尉吉家。貴殿の名は?」

『儂はマツキ。貴様は、儂がフミオやミノル、ヨシオを探すのを手伝うがいい』

 ――【旅せよ乙女、お市ちゃん結婚編】完

 【美濃も三河も強敵だらけ、元康救出編】に続く
 
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