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プロローグ
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王立学校の入学式。
いかにもザ・平民代表でございます、的な顔をして、ここ大広間にて教師が登る壇上に存在している私。
うう、教師たちも新入生の貴族たちもザワザワしてるよ~。
なんだ? あの黒髪は、って。
私の名前はリーシャ・リンベル。16歳。
黒色の髪に黒の瞳、小柄な体型の平凡な少女……のはずが、なぜか王立学校に入学することになってしまった。
そして前世の記憶を持つという、とんでもない秘密も抱えているのだ。
「え~と、リーシャ・リンベルと申します。平民です! 以上! よろしくお願いします!」
は、拍手を誰かしてくれ!
愛想笑いと後頭部を掻きながら、壇上を降りていく私。
あ~、貴族ばかりの中で平民の私はしんどいって。
ていうか貴族ども、こんな可愛くてか弱い見た目の私を睨むな。
いくら王侯貴族のみが通う学校に、私のような家柄皆無なのが混じったからって心が狭いぞ。
まあ……私のことを恋する目で見てこないだけマシか。
裏手に下がって、ため息を大きく吐いた。
「自己紹介、あれだけで終わりかい?」
孤立無援みたいな状況下の私だけど、たった1人の友人にして、この状況を作りやがった張本人が話しかけてきた。
「あれ以上、何を言えって言うのさ。……はあ、絶対、なんで平民が王立学校にいやがるんだって思われてるよ」
嘆息する私に、その人物は優雅に微笑む。
「そんなのはどうでもいいさ。リーシャ、安心してくれ。僕が必ず護るから」
優雅にそう言って、壇上へと向かっていく、そいつ。
(あんたが今のところ、私を殺した最重要容疑者なんだけどね)
そいつの後ろ姿へ、私はため息混じりで囁いたのだった。
イワンとは私が魔獣の森って場所で、ガイドのアルバイトをしていた縁で知り合った。
いわゆるお得意さんだったんだけど、まさか王子だったとはね。
単なる凄腕冒険者だと思ってたんだよなあ。
「新入生諸君! 入学おめでとう! 君たちは我がレフレリア王国の未来を背負う、輝かしい未来に溢れている人材だ。互いに切磋琢磨し、知識を身につけ、武勇を磨き、この僕が王となった時に、その能力をいかんなく発揮し、民のために国を豊かにしてくれ!」
そいつの挨拶に、教師たちも新入生たちも歓声をあげる。
「キャー、イワン王子様ぁ」
「任せてください! 生涯の忠誠をイワン王子に捧げます!」
女子生徒の黄色い悲鳴に、男子生徒の熱い想いが充満していった。
おお! これがカリスマってやつか。
サラサラな金髪で長身で痩せ型、その上に超が付くイケメン。
そんでもって、剣を持てばレフレリア王国内で屈指の腕前。
知識を語らせれば、学者を論破して感銘させる明晰な頭脳。
民想いで、自分の利益よりも、多くの困った人たちのために動く、まさに完璧超人な存在。
そりゃあ、人気者になるのは当たり前だよなあ。
「今日はもう一つ、皆へ大切な報せがある。是非、拝聴してもらいたい!」
ん? イワンめ、何を言う気だ?
裏手にいる私のところまでも、はっきりと生徒たちや教師たちの動揺のザワザワ声が聞こえてくるぞ。
「先程、皆に挨拶した女性、リーシャ・リンベル。彼女を僕のフィアンセとする!」
…………は?
倒れていく女子生徒たち。
理解が追いつかない男子生徒たち。
「ちょっ、ちょ、殿下⁉ 何を言い出すんですか⁉」
かろうじて新入生の1人、背の低い真面目そうな銀髪の男子が、イワンにツッコミを入れた。
あのバカめ! ふざけんな!
私は平民だぞ! いきなり何をトチ狂ってやがる!
あらゆる事前情報をぶん投げているから、そんな身分違いの結婚、誰が認めるんだっつーの!
……いや、そこまでして私を手に入れたいとも考えられる。
ならば、やはりイワンで確定か?
私の前世と前前世を殺したのは。
「リーシャ! 来てくれ! 改めて紹介したい!」
壇上からイワンが叫んでくるけど、誰が行くか。
絶対、私めがけて剣が飛んでくるぞ。
「照れ屋さんめ」
おいおい、優雅に迎えに来るなって。
「リーシャ、さあ」
右手を差し出してくるイワン。
うん、心までイケメンて反則だな、こいつ。
手を繋がれて、再び壇上に上がった私。
当然、憎悪と敵意の視線が私に降りかかってくる。
「皆の者! リーシャと仲良くしてくれたまえ! 僕からのお願いだ!」
そう言って私の腰に手を伸ばして手繰り寄せ、顔を近づけてくるイワン。
って! まさかキスするつもりか!
騒然となる入学式。
女子生徒たちは嫉妬と怒りの眼差しで私を睨みつけているぞ。
男子生徒たちは呆然とした表情を浮かべているし。
王子のイワンの判断を疑問に思っている常識人はいないんかい!
ええい! とにかくこんなところでやられてたまるか!
私は右手で拳を作ると、コークスクリューパンチをイワンの顎へと浴びせるのだった。
吹っ飛ぶイワン。
ドシンと音を出して、そのまま沈黙した。
数秒間、シーンと静まり返る入学式会場。
「あはは、じゃあ私はこの辺で失礼します。先に教室に行ってま~す」
テクテク歩いて、壇上から降りて裏手に移動する私だったけど……
「うわあああああ、殿下ああああああああ」
「きゃあああああ、なんなのあの野蛮な平民はあああああ」
「と、取り押さえろおおおおお、逃がすなああああ」
あ、やべ、やりすぎた。
腕に自信があったり、忠誠心があったり、出世の機会と張り切ったり、純粋に暴力許さんぞ、みたいな男子生徒たちが私を捕まえようと襲ってくる。
「おのれ、ちょこまかと! 逃げるな!」
「王家の、しかも第一王子にして世継ぎであるイワン殿下になんたる仕打ち! 賊め! 一族郎党皆殺しだあああ」
いや、郎党なんていないから。
くっ! 出入り口を塞がれたか!
さてと、どうするかなあ。
「もう逃げられないぜ、観念しろや」
赤髪のいかにも脳筋って感じの男が、指をパキポキさせて呟いてくる。
「殿下に対する不敬。それすなわち国家への反逆。万死に値します」
青髪のいかにもインテリって感じの男が、メガネをクイッてさせながら呟いてくる。
「ヘヘっ! 平民の女がなんで王立学校にいるのか知らねえが、テメエを捕まえて俺の評価をあげてやるぜ!」
緑髪のいかにも出世しか考えてないって感じの男が、天運キターって思ってそうに呟いてくる。
「殿下に暴力を振るった時点で、貴女は取り返しがつかないことをしたのです。おとなしく投降して牢に入ってください」
銀髪のいかにも真面目って感じの、背は低いけど一応同年齢? っぽい男が、指をピシッと向けながら呟いてくる。
「あのお、ちょっと待ってください! 私、キスされそうになったんですよ? つまり、襲われたんです! なので咄嗟に手が出てしまったんです! 私のファーストキスが奪われるという、最悪な展開になるところだったんですよ! これが暴力でなくて一体なんだと言うのですか! それともなんですか? 平民の女の子のファーストキスなんて、どうでもいい。殿下に権力を振りかざされて、奪われたって文句言うなって仰りたいのですか? 酷くないですかそれ? 私のファーストキスは結婚式の会場と決めているんです。それを護ろうとした結果、殿下が気絶してしまわれただけなのです。グスン。……私、悪者なんですか? 貴族様のしきたりは存じませんが、平民だからって唇を奪われるのを黙って受け入れろと仰られるのですか……ヨヨヨ」
私は膝を曲げて、地面に付けて、両手で顔を覆ってシクシクと泣いていった。
「あ、え……おい、そりゃねえだろ」
「たしかに。このリーシャ・リンベルという女の言い分も当然ですね」
「は? こ、これはあれか? こいつを捕らえたら、俺は女の敵になるってことか?」
「……弁が立つ御方のようですね。演技も巧そうだ。言い繕っても殿下に暴力を振るったのは事実。一旦は拘束されてください」
ちっ! 赤髪と青髪と緑髪は騙せたが、銀髪が厄介そうだな。
「酷いです! ここに殿下に無理やり連れられた挙句、貴族様たちの面前で勝手にフィアンセと紹介されキスされそうになったのに、なおかつ牢に入れようって仰られるのですか? うわああああん」
「あ、えっと、手続き、手続きというやつでして。ていうか殿下に無理やり連れてこられたのですか⁉」
慌てる銀髪の驚いた表情に内心ほくそ笑む。
よし! 勝った!
「はい、ですので私は無罪なのです!」
目を潤ませて叫んだ私。
目の前の男子生徒4人に、他の生徒たちや先生たちも私に同情する空気が流れてきた。
「はい、ではこの辺で失礼しま~す」
そそくさと立ち去ろうとする私。
だが、がっちりと肩を掴まれてしまう。
「リーシャ。今のは効いたよ。この僕が、数分間も気絶してしまうとはね」
「あら? イワン殿下、おはようございます♪」
「ああ、おはようリーシャ。さて、この状況どういう状況かな?」
ちっ、目覚めたか。
銀髪に説明されるイワン。
「諸君! 僕がリーシャに無礼を働いたのが悪かった。不問に付すので、皆もどうか問題にしないでくれたまえ」
イワンの演説に、納得はしないけど殿下に免じて我慢するみたいな空気になっている。
「これから3年間、勉学と武芸を共に学ぶのだ! 皆もどうかリーシャと仲良くしてくれたまえ!」
うわあ……そう言って私の手を引っ張っていくイワンだけど、またすんごい微妙な雰囲気になっちゃってるんですけどお!
「結婚式でファーストキスか。それもまた面白かろう」
「ええ、私のファーストキスを奪いたければ、私に結婚を同意させてみてください」
「ふっ、頑張ろう」
何だかなあ。
笑みを浮かべるイワンは、害意がまったくないのがなあ。
イワンが犯人だとしたら、なぜ私をフィアンセにしようとするんだろう?
それとも、これは私を油断させるための罠?
でも、あの優しい笑顔を見ていると、そんなことをする人には見えない。
でも、騙されるな私。
このイワン・レフレリアが、私の前世を殺した最重要容疑者なのは間違いないのだから。
いかにもザ・平民代表でございます、的な顔をして、ここ大広間にて教師が登る壇上に存在している私。
うう、教師たちも新入生の貴族たちもザワザワしてるよ~。
なんだ? あの黒髪は、って。
私の名前はリーシャ・リンベル。16歳。
黒色の髪に黒の瞳、小柄な体型の平凡な少女……のはずが、なぜか王立学校に入学することになってしまった。
そして前世の記憶を持つという、とんでもない秘密も抱えているのだ。
「え~と、リーシャ・リンベルと申します。平民です! 以上! よろしくお願いします!」
は、拍手を誰かしてくれ!
愛想笑いと後頭部を掻きながら、壇上を降りていく私。
あ~、貴族ばかりの中で平民の私はしんどいって。
ていうか貴族ども、こんな可愛くてか弱い見た目の私を睨むな。
いくら王侯貴族のみが通う学校に、私のような家柄皆無なのが混じったからって心が狭いぞ。
まあ……私のことを恋する目で見てこないだけマシか。
裏手に下がって、ため息を大きく吐いた。
「自己紹介、あれだけで終わりかい?」
孤立無援みたいな状況下の私だけど、たった1人の友人にして、この状況を作りやがった張本人が話しかけてきた。
「あれ以上、何を言えって言うのさ。……はあ、絶対、なんで平民が王立学校にいやがるんだって思われてるよ」
嘆息する私に、その人物は優雅に微笑む。
「そんなのはどうでもいいさ。リーシャ、安心してくれ。僕が必ず護るから」
優雅にそう言って、壇上へと向かっていく、そいつ。
(あんたが今のところ、私を殺した最重要容疑者なんだけどね)
そいつの後ろ姿へ、私はため息混じりで囁いたのだった。
イワンとは私が魔獣の森って場所で、ガイドのアルバイトをしていた縁で知り合った。
いわゆるお得意さんだったんだけど、まさか王子だったとはね。
単なる凄腕冒険者だと思ってたんだよなあ。
「新入生諸君! 入学おめでとう! 君たちは我がレフレリア王国の未来を背負う、輝かしい未来に溢れている人材だ。互いに切磋琢磨し、知識を身につけ、武勇を磨き、この僕が王となった時に、その能力をいかんなく発揮し、民のために国を豊かにしてくれ!」
そいつの挨拶に、教師たちも新入生たちも歓声をあげる。
「キャー、イワン王子様ぁ」
「任せてください! 生涯の忠誠をイワン王子に捧げます!」
女子生徒の黄色い悲鳴に、男子生徒の熱い想いが充満していった。
おお! これがカリスマってやつか。
サラサラな金髪で長身で痩せ型、その上に超が付くイケメン。
そんでもって、剣を持てばレフレリア王国内で屈指の腕前。
知識を語らせれば、学者を論破して感銘させる明晰な頭脳。
民想いで、自分の利益よりも、多くの困った人たちのために動く、まさに完璧超人な存在。
そりゃあ、人気者になるのは当たり前だよなあ。
「今日はもう一つ、皆へ大切な報せがある。是非、拝聴してもらいたい!」
ん? イワンめ、何を言う気だ?
裏手にいる私のところまでも、はっきりと生徒たちや教師たちの動揺のザワザワ声が聞こえてくるぞ。
「先程、皆に挨拶した女性、リーシャ・リンベル。彼女を僕のフィアンセとする!」
…………は?
倒れていく女子生徒たち。
理解が追いつかない男子生徒たち。
「ちょっ、ちょ、殿下⁉ 何を言い出すんですか⁉」
かろうじて新入生の1人、背の低い真面目そうな銀髪の男子が、イワンにツッコミを入れた。
あのバカめ! ふざけんな!
私は平民だぞ! いきなり何をトチ狂ってやがる!
あらゆる事前情報をぶん投げているから、そんな身分違いの結婚、誰が認めるんだっつーの!
……いや、そこまでして私を手に入れたいとも考えられる。
ならば、やはりイワンで確定か?
私の前世と前前世を殺したのは。
「リーシャ! 来てくれ! 改めて紹介したい!」
壇上からイワンが叫んでくるけど、誰が行くか。
絶対、私めがけて剣が飛んでくるぞ。
「照れ屋さんめ」
おいおい、優雅に迎えに来るなって。
「リーシャ、さあ」
右手を差し出してくるイワン。
うん、心までイケメンて反則だな、こいつ。
手を繋がれて、再び壇上に上がった私。
当然、憎悪と敵意の視線が私に降りかかってくる。
「皆の者! リーシャと仲良くしてくれたまえ! 僕からのお願いだ!」
そう言って私の腰に手を伸ばして手繰り寄せ、顔を近づけてくるイワン。
って! まさかキスするつもりか!
騒然となる入学式。
女子生徒たちは嫉妬と怒りの眼差しで私を睨みつけているぞ。
男子生徒たちは呆然とした表情を浮かべているし。
王子のイワンの判断を疑問に思っている常識人はいないんかい!
ええい! とにかくこんなところでやられてたまるか!
私は右手で拳を作ると、コークスクリューパンチをイワンの顎へと浴びせるのだった。
吹っ飛ぶイワン。
ドシンと音を出して、そのまま沈黙した。
数秒間、シーンと静まり返る入学式会場。
「あはは、じゃあ私はこの辺で失礼します。先に教室に行ってま~す」
テクテク歩いて、壇上から降りて裏手に移動する私だったけど……
「うわあああああ、殿下ああああああああ」
「きゃあああああ、なんなのあの野蛮な平民はあああああ」
「と、取り押さえろおおおおお、逃がすなああああ」
あ、やべ、やりすぎた。
腕に自信があったり、忠誠心があったり、出世の機会と張り切ったり、純粋に暴力許さんぞ、みたいな男子生徒たちが私を捕まえようと襲ってくる。
「おのれ、ちょこまかと! 逃げるな!」
「王家の、しかも第一王子にして世継ぎであるイワン殿下になんたる仕打ち! 賊め! 一族郎党皆殺しだあああ」
いや、郎党なんていないから。
くっ! 出入り口を塞がれたか!
さてと、どうするかなあ。
「もう逃げられないぜ、観念しろや」
赤髪のいかにも脳筋って感じの男が、指をパキポキさせて呟いてくる。
「殿下に対する不敬。それすなわち国家への反逆。万死に値します」
青髪のいかにもインテリって感じの男が、メガネをクイッてさせながら呟いてくる。
「ヘヘっ! 平民の女がなんで王立学校にいるのか知らねえが、テメエを捕まえて俺の評価をあげてやるぜ!」
緑髪のいかにも出世しか考えてないって感じの男が、天運キターって思ってそうに呟いてくる。
「殿下に暴力を振るった時点で、貴女は取り返しがつかないことをしたのです。おとなしく投降して牢に入ってください」
銀髪のいかにも真面目って感じの、背は低いけど一応同年齢? っぽい男が、指をピシッと向けながら呟いてくる。
「あのお、ちょっと待ってください! 私、キスされそうになったんですよ? つまり、襲われたんです! なので咄嗟に手が出てしまったんです! 私のファーストキスが奪われるという、最悪な展開になるところだったんですよ! これが暴力でなくて一体なんだと言うのですか! それともなんですか? 平民の女の子のファーストキスなんて、どうでもいい。殿下に権力を振りかざされて、奪われたって文句言うなって仰りたいのですか? 酷くないですかそれ? 私のファーストキスは結婚式の会場と決めているんです。それを護ろうとした結果、殿下が気絶してしまわれただけなのです。グスン。……私、悪者なんですか? 貴族様のしきたりは存じませんが、平民だからって唇を奪われるのを黙って受け入れろと仰られるのですか……ヨヨヨ」
私は膝を曲げて、地面に付けて、両手で顔を覆ってシクシクと泣いていった。
「あ、え……おい、そりゃねえだろ」
「たしかに。このリーシャ・リンベルという女の言い分も当然ですね」
「は? こ、これはあれか? こいつを捕らえたら、俺は女の敵になるってことか?」
「……弁が立つ御方のようですね。演技も巧そうだ。言い繕っても殿下に暴力を振るったのは事実。一旦は拘束されてください」
ちっ! 赤髪と青髪と緑髪は騙せたが、銀髪が厄介そうだな。
「酷いです! ここに殿下に無理やり連れられた挙句、貴族様たちの面前で勝手にフィアンセと紹介されキスされそうになったのに、なおかつ牢に入れようって仰られるのですか? うわああああん」
「あ、えっと、手続き、手続きというやつでして。ていうか殿下に無理やり連れてこられたのですか⁉」
慌てる銀髪の驚いた表情に内心ほくそ笑む。
よし! 勝った!
「はい、ですので私は無罪なのです!」
目を潤ませて叫んだ私。
目の前の男子生徒4人に、他の生徒たちや先生たちも私に同情する空気が流れてきた。
「はい、ではこの辺で失礼しま~す」
そそくさと立ち去ろうとする私。
だが、がっちりと肩を掴まれてしまう。
「リーシャ。今のは効いたよ。この僕が、数分間も気絶してしまうとはね」
「あら? イワン殿下、おはようございます♪」
「ああ、おはようリーシャ。さて、この状況どういう状況かな?」
ちっ、目覚めたか。
銀髪に説明されるイワン。
「諸君! 僕がリーシャに無礼を働いたのが悪かった。不問に付すので、皆もどうか問題にしないでくれたまえ」
イワンの演説に、納得はしないけど殿下に免じて我慢するみたいな空気になっている。
「これから3年間、勉学と武芸を共に学ぶのだ! 皆もどうかリーシャと仲良くしてくれたまえ!」
うわあ……そう言って私の手を引っ張っていくイワンだけど、またすんごい微妙な雰囲気になっちゃってるんですけどお!
「結婚式でファーストキスか。それもまた面白かろう」
「ええ、私のファーストキスを奪いたければ、私に結婚を同意させてみてください」
「ふっ、頑張ろう」
何だかなあ。
笑みを浮かべるイワンは、害意がまったくないのがなあ。
イワンが犯人だとしたら、なぜ私をフィアンセにしようとするんだろう?
それとも、これは私を油断させるための罠?
でも、あの優しい笑顔を見ていると、そんなことをする人には見えない。
でも、騙されるな私。
このイワン・レフレリアが、私の前世を殺した最重要容疑者なのは間違いないのだから。
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