9 / 34
第8話 ユリウス・コートリル
しおりを挟む
「はあ~」
突然だけど、ため息が漏れちゃうよ。
「殿下! お肉はこう焼くのですわ! 生焼けでわたくしのリーシャさんに渡さないでくださいまし!」
「何を言うソフィア! 君こそ遠慮というものを知らないのか! 見よ! リーシャのお皿を! 特盛になってるではないか!」
今日は林間学校。
王都近辺にある魔獣の森の安全エリアにて、一泊二日の校外学習中なのだ。
夕食の時間、同じグループのイワンとソフィアが私を巡って口論を開始したのであった。
「リーシャはちっこいからな! どんどん食って大きくなりやがれってんだ!」
「ボリス、今のはセクハラですよ。私としては小さいリーシャさんが十分魅力的なのです。無理して食べる必要ありませんよ、リーシャさん」
「おいこらフェリクス、セクハラってなんだよ。俺はただ、健康でいるためにリーシャに栄養を与えてやってるんだよ!」
「フッ、人にはそれぞれ適量というものがあるのです。それを無視してしまえば、逆に健康を害するんですよ?」
うわあ、ボリスとフェリクスまで口論を開始しちゃったよ。
「モテモテだねえ、リーシャ。私にも幸せわけておくれよ~」
そんなことを言ってくる、カリーナのお口にお肉を一切れ入れていく。
「ん~。リーシャのお肉、美味しい」
「こらこら~。変な言い方すんな~」
私たちの班は私とカリーナ、イワンとソフィア、ボリスとフェリクス、それとユリウスとニコライの計8人グループだ。
ユリウスとニコライは私を巡る争奪戦には参加せず、黙々とお肉を頬張っていた。
野菜も食え、野菜も!
まあ、そんなこんなで、夕食の時間を終えて、あとは寝るだけになったんだけど……
(なんか、森の様子が変かな?)
すでにスヤスヤと寝ている、カリーナとソフィアを起こさないように起き上がり、テントから出て魔獣の森の上空を見上げていく。
魔獣の森は私にとっては庭みたいなもの。
リーシャ・リンベルの幼少期は、よくこの森に勝手に入って遊んでいたのである。
ギルドの事務員として忙しい両親は、私がこの森で遊びまくっていたとは気づいてなかった。
なんで森に入ってたかって?
う~ん、別に単に遊べる場所だっただけで理由はないんだよねえ。
城門の門番兵を欺いて、外に出るのがスリルだったってのもあるのかも。
そんな、この魔獣の森のスペシャリストの私なのだ。
うまく説明できないが、なんとなく今の魔獣の森がおかしいとだけはヒシヒシと肌に伝わってくる。
ま、ちょっと奥地に行って確認してきますか。
そう思って深淵の闇が広がる森を眺めていると……
あれは……ユリウス?
なんで1人で森の中を進んでるの⁉
「ちょっとちょっと! 危ないって! 何してんのユリウス!」
追いついて、ユリウスの袖を引っ張る私。
「ちっ! 気づかれたんか。つーか、よく正確に俺を見つけられたな?」
「ああ、えっと、私は夜目が効くんだ。それで? ユリウスはなんで夜中に魔獣の森に行こうとしてんの?」
「別に……腕試しだよ」
腕試しねえ。
この林間学校では、生徒が魔獣の森に入るのを禁じている。
あくまで安全地帯で、こういう場所があるんだと生徒に教えるのが目的なのだ。
「ついてくるんじゃねえよ!」
「別に? 私の前を勝手にあんたが歩いてるだけじゃない」
ユリウスも夜目が効くみたいね。
結構楽々と進んでるじゃない。
……私が向かおうとしている地点へ。
「ねえ、一応忠告するけど、引き返したほうがいいよ? 多分、進んだら死ぬと思う」
「ああ⁉ 上から目線で指図するんじゃねえ! 上等だ、やっぱり何かあるんだな。殿下に土産にできる最高の手柄がよ!」
「手柄ねえ……どうして手柄が欲しいの? 別に手柄がなくても、イワンはユリウスのことを不要な人材だって思わないと思うよ?」
ユリウスとはまだそんなに話していないけど、功名に焦っているのは何となく察している。
まだ若いのに、何を焦ってるんだか。
「は? おめえ、俺はコートリル大辺境伯の嫡男だぞ! それがどういうことかわかるだろ!」
「え? ごめん。全然わかんない」
私がそう口にすると、絶句するユリウス。
え? 何? 基礎知識なの?
「おめえさあ、平民だから知らねえってのは、なしだぞ。つーか大昔に、この世界を9割支配した魔王は知ってるだろ?」
「世界を9割支配した魔王? ……どっかで聞いたことがあるフレーズかも」
ん~。あ、思いだした。
私の前前世の魔王ってのがたしかそうだったと、懐かしのアンゼリカちゃんから聞いていた気がするぞ。
「……そんな認識なのかよ」
「だって大昔でしょ? 今は関係ないんじゃないの?」
「大アリだ! コートリル家はなあ、魔王に仕えていたんだよ! だから今でも、魔王が復活したら寝返るに決まってるって陰口叩かれてるんだよ! 俺はな、そんなのを一掃するべく動いてんのさ。魔王が復活しないようにするのも兼ねてな! 危険な兆候を見逃さねえように努力し、イワン殿下に忠誠の証として成果を届けてえんだよ!」
へえ? 祖先が魔王に仕えてたんだ~。
つまり、ユリウスの祖先は私の部下だってこと?
こんな無茶な突撃をする部下なんて、どうすりゃいいんだよって頭を抱えていたんじゃないかなあって思ってそう、前前世の私。
「ユリウスの事情はわかった。じゃあ、協力してあげる」
「ちっ! テメエが強いのは知ってる。でもな! 女が男の俺に口出しすんじゃねえ!」
うわ~。
こいつ、日本でそんな女性蔑視発言をしたら一生街を歩けなくなるぞ。
ん?
瘴気がより一層濃くなった。
ズシンズシンと音がする、拓けた場所に出ると巨体から光る目が2つ。
私とユリウスを直視していた。
「この強いオーラ! こいつが森の主だな!」
「ちょっ! ユリウス待って!」
そんな私の声を無視して、剣を構えて飛び出すユリウス。
「うおおおおおおおおおおお!」
ユリウスの攻撃に相手も激怒。
「にゃああああああああああ!」
鋭い爪がユリウスを襲う!
もう! 人の話を聞けっての!
私は両者の間に入りユリウスの剣を拳で粉砕すると、巨体の魔獣の爪を軽く蹴って向きを変えたのであった。
「な! コートリル家秘宝のミスリルソードが⁉」
え? 秘宝?
弁償しろって言われたらどうしよう!
「にゃにゃ? にゃあああああああん」
「あぶねえリーシャ!」
巨体の魔獣が叫び、私へと覆い被さろうとするのを見てユリウスが私を庇おうとする。
ん? 意外と男気あるのね、こいつ。
「あ、大丈夫だって」
ユリウスを手で制し、私は巨体の魔獣=知り合いの子猫と抱きつくのであった。
「元気にしてた?」
「にゃんにゃんにゃんにゃん!」
「……なるほど、そんな感じなのね。任せて! 私が解決するから」
「にゃううううううううん!」
「まさかそんなことが起きてるなんて。一体誰がそんな酷い真似を」
私も驚くよ。
まさか魔獣の森をそんなふうにするだなんて。
「おい……どういうこったよ! 説明しろやリーシャ!」
おっと、いかんいかん。
ユリウスがいたんだっけ。
怒鳴るユリウスに、子猫ちゃんがグルルと喉を鳴らすのをなだめて私は説明する。
「子猫ちゃんが言うには何者かが魔獣の森に賞金……いや賞食糧って言ったほうが正しいかな? しかも100年分。無差別に一切ルールなしで戦って、最後に生き残った魔獣にプレゼントって企画ね。……ふざけてる。多くが様子見してるけど一部では戦って、すでに被害者がいるみたいなんだ」
「……色々ツッコみたいが、まず、その目の前にいるのは子猫じゃねえ! どう見ても大猫だろうが!」
「はあ? 顔はどう見ても子猫じゃない! 何言ってんのユリウスは! ともかく、今はそんなアホな意見に付き合うつもりないの! ちょっと待ってて」
私は意識を集中させて、叫ぶ。
『森のみんな! 聞こえる! 100年分の食糧プレゼント、なんて言った奴を信用しちゃ駄目! わかった! いい! 信用したら私、怒るからね!』
叫び終えて、数秒待つ。
うん、よし。
森から変な気配が消えたよ。
「にゃああああああん!」
「ありがとうってそんな……それよりもふざけたプレゼント企画をした奴がどんな奴かわかる? ……そっか、思念で言われたのね」
一体誰だろう?
魔獣を暴れさせて得する者?
いや、魔獣同士で殺し合いさせて得する者、もしくは魔獣が嫌いな者の仕業っていうのが正しいかも。
……そんな人物、私の因縁のある勇者の可能性が限りなく高い気がしてきたぞ。
この子猫もそうだけど、私は万が一勇者が私のファーストキスを奪ってやるぞ作戦を破棄し実力で襲ってきたら、魔獣たちは私の味方になってくれるよう調教……もとい、心を通わせ済みなのである。
それを知った勇者が、私の味方になりそうな魔獣を消そうと考えていた⁉
「……リーシャ。おめえって、一体何者なんだ?」
「ん? どういう意味?」
「魔獣と会話できて、しかも従わせる……そんな能力、普通じゃねえぞ」
ユリウスは困惑しながらも、尊敬の眼差しを私に向ける。
「まるで……我がコートリル家が仕えていた魔王様のようだ……」
「え? そんな……私はただの……」
「いや、違う! おめえは特別だ! 俺は……惚れた! 俺はおめえのことをもっと知りてえ!」
はい?
って! ユリウス走り去ってっちゃったし!
「平民の少女がこれほどの能力を発揮するなんてよ! 常識を覆すぜ! さらに優しい! クソッ! 完璧じゃねえか!」
大声でなんか喋ってるけど、全部聞こえているぞ。
「はあ、惚れたって。これ以上、勇者かもしれない候補が増えても困るってのに」
まあ、ユリウスみたいなツンデレ? に惚れられるのも悪くないかなとも思っちゃったり……
「じゃあね、子猫ちゃん。また何かあったら教えてね♪」
「にゃああああああああん。ベロン」
わあ~。全身、子猫ちゃんの唾液でベチョベチョになったよ~。
「舐めちゃダメだってえええええええええ!」
私の叫びは魔獣の森に響き渡るのであった。
勇者の舌打ちが紛れつつ。
***
『岩下真帆殺害事件
第5容疑者
ユリウス・コートリル
年齢 16歳 王立学校1年生
容姿 緑髪 イケメン 三白眼
身分 レフレリア王国大辺境伯家の嫡子
能力 発揮する機会はないが馬術は得意
性格 オラオラ系 ツンデレ?
人生 リーシャに出会うまでは順調だった
目的 リーシャと結婚すること(本当かは不明)』
突然だけど、ため息が漏れちゃうよ。
「殿下! お肉はこう焼くのですわ! 生焼けでわたくしのリーシャさんに渡さないでくださいまし!」
「何を言うソフィア! 君こそ遠慮というものを知らないのか! 見よ! リーシャのお皿を! 特盛になってるではないか!」
今日は林間学校。
王都近辺にある魔獣の森の安全エリアにて、一泊二日の校外学習中なのだ。
夕食の時間、同じグループのイワンとソフィアが私を巡って口論を開始したのであった。
「リーシャはちっこいからな! どんどん食って大きくなりやがれってんだ!」
「ボリス、今のはセクハラですよ。私としては小さいリーシャさんが十分魅力的なのです。無理して食べる必要ありませんよ、リーシャさん」
「おいこらフェリクス、セクハラってなんだよ。俺はただ、健康でいるためにリーシャに栄養を与えてやってるんだよ!」
「フッ、人にはそれぞれ適量というものがあるのです。それを無視してしまえば、逆に健康を害するんですよ?」
うわあ、ボリスとフェリクスまで口論を開始しちゃったよ。
「モテモテだねえ、リーシャ。私にも幸せわけておくれよ~」
そんなことを言ってくる、カリーナのお口にお肉を一切れ入れていく。
「ん~。リーシャのお肉、美味しい」
「こらこら~。変な言い方すんな~」
私たちの班は私とカリーナ、イワンとソフィア、ボリスとフェリクス、それとユリウスとニコライの計8人グループだ。
ユリウスとニコライは私を巡る争奪戦には参加せず、黙々とお肉を頬張っていた。
野菜も食え、野菜も!
まあ、そんなこんなで、夕食の時間を終えて、あとは寝るだけになったんだけど……
(なんか、森の様子が変かな?)
すでにスヤスヤと寝ている、カリーナとソフィアを起こさないように起き上がり、テントから出て魔獣の森の上空を見上げていく。
魔獣の森は私にとっては庭みたいなもの。
リーシャ・リンベルの幼少期は、よくこの森に勝手に入って遊んでいたのである。
ギルドの事務員として忙しい両親は、私がこの森で遊びまくっていたとは気づいてなかった。
なんで森に入ってたかって?
う~ん、別に単に遊べる場所だっただけで理由はないんだよねえ。
城門の門番兵を欺いて、外に出るのがスリルだったってのもあるのかも。
そんな、この魔獣の森のスペシャリストの私なのだ。
うまく説明できないが、なんとなく今の魔獣の森がおかしいとだけはヒシヒシと肌に伝わってくる。
ま、ちょっと奥地に行って確認してきますか。
そう思って深淵の闇が広がる森を眺めていると……
あれは……ユリウス?
なんで1人で森の中を進んでるの⁉
「ちょっとちょっと! 危ないって! 何してんのユリウス!」
追いついて、ユリウスの袖を引っ張る私。
「ちっ! 気づかれたんか。つーか、よく正確に俺を見つけられたな?」
「ああ、えっと、私は夜目が効くんだ。それで? ユリウスはなんで夜中に魔獣の森に行こうとしてんの?」
「別に……腕試しだよ」
腕試しねえ。
この林間学校では、生徒が魔獣の森に入るのを禁じている。
あくまで安全地帯で、こういう場所があるんだと生徒に教えるのが目的なのだ。
「ついてくるんじゃねえよ!」
「別に? 私の前を勝手にあんたが歩いてるだけじゃない」
ユリウスも夜目が効くみたいね。
結構楽々と進んでるじゃない。
……私が向かおうとしている地点へ。
「ねえ、一応忠告するけど、引き返したほうがいいよ? 多分、進んだら死ぬと思う」
「ああ⁉ 上から目線で指図するんじゃねえ! 上等だ、やっぱり何かあるんだな。殿下に土産にできる最高の手柄がよ!」
「手柄ねえ……どうして手柄が欲しいの? 別に手柄がなくても、イワンはユリウスのことを不要な人材だって思わないと思うよ?」
ユリウスとはまだそんなに話していないけど、功名に焦っているのは何となく察している。
まだ若いのに、何を焦ってるんだか。
「は? おめえ、俺はコートリル大辺境伯の嫡男だぞ! それがどういうことかわかるだろ!」
「え? ごめん。全然わかんない」
私がそう口にすると、絶句するユリウス。
え? 何? 基礎知識なの?
「おめえさあ、平民だから知らねえってのは、なしだぞ。つーか大昔に、この世界を9割支配した魔王は知ってるだろ?」
「世界を9割支配した魔王? ……どっかで聞いたことがあるフレーズかも」
ん~。あ、思いだした。
私の前前世の魔王ってのがたしかそうだったと、懐かしのアンゼリカちゃんから聞いていた気がするぞ。
「……そんな認識なのかよ」
「だって大昔でしょ? 今は関係ないんじゃないの?」
「大アリだ! コートリル家はなあ、魔王に仕えていたんだよ! だから今でも、魔王が復活したら寝返るに決まってるって陰口叩かれてるんだよ! 俺はな、そんなのを一掃するべく動いてんのさ。魔王が復活しないようにするのも兼ねてな! 危険な兆候を見逃さねえように努力し、イワン殿下に忠誠の証として成果を届けてえんだよ!」
へえ? 祖先が魔王に仕えてたんだ~。
つまり、ユリウスの祖先は私の部下だってこと?
こんな無茶な突撃をする部下なんて、どうすりゃいいんだよって頭を抱えていたんじゃないかなあって思ってそう、前前世の私。
「ユリウスの事情はわかった。じゃあ、協力してあげる」
「ちっ! テメエが強いのは知ってる。でもな! 女が男の俺に口出しすんじゃねえ!」
うわ~。
こいつ、日本でそんな女性蔑視発言をしたら一生街を歩けなくなるぞ。
ん?
瘴気がより一層濃くなった。
ズシンズシンと音がする、拓けた場所に出ると巨体から光る目が2つ。
私とユリウスを直視していた。
「この強いオーラ! こいつが森の主だな!」
「ちょっ! ユリウス待って!」
そんな私の声を無視して、剣を構えて飛び出すユリウス。
「うおおおおおおおおおおお!」
ユリウスの攻撃に相手も激怒。
「にゃああああああああああ!」
鋭い爪がユリウスを襲う!
もう! 人の話を聞けっての!
私は両者の間に入りユリウスの剣を拳で粉砕すると、巨体の魔獣の爪を軽く蹴って向きを変えたのであった。
「な! コートリル家秘宝のミスリルソードが⁉」
え? 秘宝?
弁償しろって言われたらどうしよう!
「にゃにゃ? にゃあああああああん」
「あぶねえリーシャ!」
巨体の魔獣が叫び、私へと覆い被さろうとするのを見てユリウスが私を庇おうとする。
ん? 意外と男気あるのね、こいつ。
「あ、大丈夫だって」
ユリウスを手で制し、私は巨体の魔獣=知り合いの子猫と抱きつくのであった。
「元気にしてた?」
「にゃんにゃんにゃんにゃん!」
「……なるほど、そんな感じなのね。任せて! 私が解決するから」
「にゃううううううううん!」
「まさかそんなことが起きてるなんて。一体誰がそんな酷い真似を」
私も驚くよ。
まさか魔獣の森をそんなふうにするだなんて。
「おい……どういうこったよ! 説明しろやリーシャ!」
おっと、いかんいかん。
ユリウスがいたんだっけ。
怒鳴るユリウスに、子猫ちゃんがグルルと喉を鳴らすのをなだめて私は説明する。
「子猫ちゃんが言うには何者かが魔獣の森に賞金……いや賞食糧って言ったほうが正しいかな? しかも100年分。無差別に一切ルールなしで戦って、最後に生き残った魔獣にプレゼントって企画ね。……ふざけてる。多くが様子見してるけど一部では戦って、すでに被害者がいるみたいなんだ」
「……色々ツッコみたいが、まず、その目の前にいるのは子猫じゃねえ! どう見ても大猫だろうが!」
「はあ? 顔はどう見ても子猫じゃない! 何言ってんのユリウスは! ともかく、今はそんなアホな意見に付き合うつもりないの! ちょっと待ってて」
私は意識を集中させて、叫ぶ。
『森のみんな! 聞こえる! 100年分の食糧プレゼント、なんて言った奴を信用しちゃ駄目! わかった! いい! 信用したら私、怒るからね!』
叫び終えて、数秒待つ。
うん、よし。
森から変な気配が消えたよ。
「にゃああああああん!」
「ありがとうってそんな……それよりもふざけたプレゼント企画をした奴がどんな奴かわかる? ……そっか、思念で言われたのね」
一体誰だろう?
魔獣を暴れさせて得する者?
いや、魔獣同士で殺し合いさせて得する者、もしくは魔獣が嫌いな者の仕業っていうのが正しいかも。
……そんな人物、私の因縁のある勇者の可能性が限りなく高い気がしてきたぞ。
この子猫もそうだけど、私は万が一勇者が私のファーストキスを奪ってやるぞ作戦を破棄し実力で襲ってきたら、魔獣たちは私の味方になってくれるよう調教……もとい、心を通わせ済みなのである。
それを知った勇者が、私の味方になりそうな魔獣を消そうと考えていた⁉
「……リーシャ。おめえって、一体何者なんだ?」
「ん? どういう意味?」
「魔獣と会話できて、しかも従わせる……そんな能力、普通じゃねえぞ」
ユリウスは困惑しながらも、尊敬の眼差しを私に向ける。
「まるで……我がコートリル家が仕えていた魔王様のようだ……」
「え? そんな……私はただの……」
「いや、違う! おめえは特別だ! 俺は……惚れた! 俺はおめえのことをもっと知りてえ!」
はい?
って! ユリウス走り去ってっちゃったし!
「平民の少女がこれほどの能力を発揮するなんてよ! 常識を覆すぜ! さらに優しい! クソッ! 完璧じゃねえか!」
大声でなんか喋ってるけど、全部聞こえているぞ。
「はあ、惚れたって。これ以上、勇者かもしれない候補が増えても困るってのに」
まあ、ユリウスみたいなツンデレ? に惚れられるのも悪くないかなとも思っちゃったり……
「じゃあね、子猫ちゃん。また何かあったら教えてね♪」
「にゃああああああああん。ベロン」
わあ~。全身、子猫ちゃんの唾液でベチョベチョになったよ~。
「舐めちゃダメだってえええええええええ!」
私の叫びは魔獣の森に響き渡るのであった。
勇者の舌打ちが紛れつつ。
***
『岩下真帆殺害事件
第5容疑者
ユリウス・コートリル
年齢 16歳 王立学校1年生
容姿 緑髪 イケメン 三白眼
身分 レフレリア王国大辺境伯家の嫡子
能力 発揮する機会はないが馬術は得意
性格 オラオラ系 ツンデレ?
人生 リーシャに出会うまでは順調だった
目的 リーシャと結婚すること(本当かは不明)』
0
あなたにおすすめの小説
女性が少ない世界に転生した控えめ伯爵令嬢、なぜか五人の婚約候補に選ばれて少しずつ恋を知っていきます
ノッポ
恋愛
女性が極端に少ない異世界に転生した私は、気づけば伯爵令嬢になっていた。
前世は日本で普通に生きていたせいか、貴族令嬢らしい強気な振る舞いがどうしても苦手。
社交界デビューを迎えても、「どうして私が選ばれるの?」と戸惑うばかりだった。
けれど今年デビューする高位令嬢はわずか三人。
家同士の思惑も重なり、騎士団長家の息子、宰相子息、魔術師団長の息子、幼なじみの侯爵子息、そして英雄騎士――
五人の若きエリートとのお見合いが次々と始まってしまう。
遠慮がちで控えめな性格は、この世界では珍しく、気づけば少しずつ距離を縮めていく彼ら。
異世界での恋愛に戸惑う日々。けれど出会いを重ねるたびに、私は少しずつ変わっていく――。
女性希少世界で、自分の幸せを選べるようになるまでの逆ハーレム恋愛ファンタジー。
なりゆきで妻になった割に大事にされている……と思ったら溺愛されてた
たぬきち25番
恋愛
男爵家の三女イリスに転生した七海は、貴族の夜会で相手を見つけることができずに女官になった。
女官として認められ、夜会を仕切る部署に配属された。
そして今回、既婚者しか入れない夜会の責任者を任せられた。
夜会当日、伯爵家のリカルドがどうしても公爵に会う必要があるので夜会会場に入れてほしいと懇願された。
だが、会場に入るためには結婚をしている必要があり……?
※本当に申し訳ないです、感想の返信できないかもしれません……
※他サイト様にも掲載始めました!
転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?
山下小枝子
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、
飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、
気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、
まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、
推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、
思ってたらなぜか主人公を押し退け、
攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・
ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】
佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。
新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。
「せめて回復魔法とかが良かった……」
戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。
「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」
家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。
「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」
そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。
絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。
これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
乙女ゲームのモブに転生していると断罪イベント当日に自覚した者ですが、ようやく再会できた初恋の男の子が悪役令嬢に攻略され済みなんてあんまりだ
弥生 真由
恋愛
『貴女との婚約は今夜を持って破棄させて貰おう!』
学園卒業祝いの夜会の場に、凛と響いた王太子殿下の一声。
その瞬間、私は全てを思い出した。
私が前世ではただの手芸とゲームが好きなインドア派女子大生だったこと。そして、ゲーム世界に転生して尚も趣味は変わらず、ライバルキャラですらないモブになってしまっていたことを。
幼い頃に一度出会ったきりの初恋の彼と学園で再会出来たらなぁ、なんて淡い期待を抱いて通っていたのに、道理で卒業式までなんにも起きなかったわけだ。
ーーなんて、ひとり納得していたら。
何故だが私が悪役令嬢の断罪イベントの目撃者として名指しされ、一気に渦中の人物に!?
更に、王太子以外の男性陣は皆様悪役令嬢に骨抜き。なので自然と私には、彼女の潔白に繋がる証言が求められる。
しかしながら、私は肝心の事件の日の記憶が訳あって曖昧だったので、致し方なく記憶を呼び覚ます治療を受けさせられる羽目に。
タイムリミットは1年間。
その1年間の私への護衛につけられたのは、悪役令嬢に心奪われた初恋の彼でした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる