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第1章 復讐の魔女
第16話 美青年剣士
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その何かは人だった。
スラリとした長身に赤い髪、前髪で右目が隠れた状態が、ミステリアスな雰囲気を醸し出す、中性的なイケメン。
俗に言う、世の女性たちを魅了する美青年。
「どうやら衛兵が迷惑をかけたようだ。皆さん、大事ありませんか?」
声もまた素敵だ。
う~ん、こりゃたしかに世の女性は黄色い悲鳴をあげるわ。
もうすでに私とディアナさん以外のギルドの受付嬢のお姉さんたちや、野次馬の女性たち、そしてベレニスが目をハートマークにして見惚れている。
ただ、わかっている人は美青年を注視している。
着ている黒鎧に黒マントはベルガー王国軍の騎士の証。
この事態の行方がどうなっていくかを見定めているのだ。
「あ、あの! 助けてくれてありがとうございます」
「どういたしまして、エルフのお嬢ちゃん。お怪我はないかい?」
まるで姫をエスコートするかのように片膝をつき、ベレニスと目線の高さを合わせ微笑むイケメン。
顔を赤らめるベレニスは、キャーキャー言って私の横までやってきて一言。
「傭兵と違って、すんごいイケメンで優しくて紳士で、超素敵~」
とまあ惚気けてくる。はいはいそうですか。
いや、それせめてリョウの耳に入らないように言おうよ!
リョウも憮然としてないで、何か言えっての!
「ここのギルドマスターのバルドです。危ないところを助けていただき感謝の言葉もございません。……ですがよろしいので? 立場上は、貴方様はこちらの衛兵のお仲間ではございませぬかな?」
「なに、構わぬ。……おっと我が部下がようやく到着したようだ。遅いぞヴィム! この衛兵2人を丁重に城まで運んでやれ」
息せき切って現れたのは同じ黒鎧、金髪を刈り上げた屈強そうな20代半ばぐらいの兵士だ。
「オルタナ隊長、早すぎっすよ~。……ていうかビオレールの兵が倒れてますが、隊長がやったんですか?」
「クスッ。私以外が犯人なら極刑だろうな」
「勘弁してくださいよ。領主とトラブルなんて御免ですぜ」
「トラブルになっても私が勝つさ」
「そりゃ隊長に勝てる奴なんてビオレールにいないでしょう。けど、毒殺、謀殺、誅殺なんて言葉があるんですから、もう少し自重してくださいよ」
そう言いつつヴィムと呼ばれた兵士は、軽々と衛兵2人を抱えて走り去った。
「オルタナ? ああ、貴方が先日赴任してきたという御仁ですな。お噂はかねがね聞いております。王都士官学校首席という輝かしい御経歴。是非一度手合わせをお願いしたいですな」
バルドさんの言葉に、またまた女性陣がキャーキャーと黄色い声援を上げる。
バルドさんの差し出された右手を握っていく美青年。
「失礼、自己紹介が遅れてすまない。私はオルタナ・アーノルド。ここビオレールに駐屯する王国軍百人隊の隊長をしている者です。よろしく」
ん? アーノルド?
「ねえねえローゼ。あのオルタナって人の立場、危うくなる感じなの? だったら私たちで協力して守ってあげようよ」
「まあ、それは大丈夫だと思うけど……」
お金が絡まないことにやる気になっているベレニスとは珍しい。
まさかガチ恋……なのか?
「ハハ、そのお気持ちありがとうエルフのお嬢ちゃん。でも心配はいらないよ。我が国の軍事閥は少々複雑でね。私は陛下直轄の騎士なんだ。そんな騎士が十人ほど百名の部下を持ち、ビオレールに駐留している。他の国境や重要都市にもね」
優雅に説明する美青年騎士。
だがベレニスは頭に、はてなマークを浮かべている。
「ベルガー王国騎士団は国王の意思でのみ動く存在。中興の祖と呼ばれる先王カエサルが、政治の実権を握った人物が暴走し、国を乱さぬように構築されたのが今の王国騎士団。ただ、これは右も左もわからぬ幼子や危険人物が王となった時に、どうなるかわかったもんじゃないという不安もある。けど、現王であるサリウスお……陛下は上手く使って、政治の実権を握って暴政を振るっている宰相の牽制をしているってのが今の現状ね」
つい補足として口を挟んでしまった。
「おや、博識だね。見た目の可憐さと聡明さ……貴族階級の出かな?」
「あっ、いえ、ただの魔女ですので……あのう、一つだけ聞いていいですか?」
「何かな?」
「アーノルドって、もしやアデル・アーノルドの縁者だったりします?」
「ああ、私の父だね。さすが我が父だ。貴方のような美しい魔女にすら知られているなんて光栄だね」
うわぁ~やっぱりそうか! 赤髪と長身しか共通点ないんだけど!
あの熊みたいなアデルから、こんな爽やかイケメンが生まれるなんて!
「それでオルタナ様。ギルドに何か用がおありでしょうか? よろしければ衛兵からお救いいただいたお礼に、一杯奢りましょうか?」
バルドさんの言葉に、オルタナさんの表情が引き締まる。
「昨日、南の山岳地帯でロック鳥を倒した冒険者が、ロック鳥が棲み着いていた古い教会内部で、多量の人骨を発見したと小耳に挟みましてね。ギルドが調査するようですが、結果の共有をお願いしたいのです。必要とあれば協力もしましょう」
おお! 心もイケメンだぞこの人。
今の御時世の兵士なんて、冒険者任せで済む危険な仕事は丸投げのくせに、率先して解決しようとは!
「……それは王国軍の総意ですかな?」
「いえ、私個人の判断です」
「ならば情報が入ればお教えしましょう」
バルドさんはそう告げるや、一礼してギルドの奥へと去った。
オルタナさんは協力もしたかったみたいで残念そうな顔をする。
でも強く要請するつもりもないみたいで、バルドさんの背中へ一礼した。
うーん、その姿も様になっているなあ。
でもそのまま帰るのかと思ったけど……
「ああ、君たちだね。ロック鳥を倒して人骨を発見した冒険者というのは。どうかな? 少しお話を伺いたいのだが?」
なんと私たちの前にやってきた。
こうして私とベレニスとリョウは、衛兵に絡まれた騒動から一転し、美青年騎士オルタナさんと会話を交わすことになったのだった。
スラリとした長身に赤い髪、前髪で右目が隠れた状態が、ミステリアスな雰囲気を醸し出す、中性的なイケメン。
俗に言う、世の女性たちを魅了する美青年。
「どうやら衛兵が迷惑をかけたようだ。皆さん、大事ありませんか?」
声もまた素敵だ。
う~ん、こりゃたしかに世の女性は黄色い悲鳴をあげるわ。
もうすでに私とディアナさん以外のギルドの受付嬢のお姉さんたちや、野次馬の女性たち、そしてベレニスが目をハートマークにして見惚れている。
ただ、わかっている人は美青年を注視している。
着ている黒鎧に黒マントはベルガー王国軍の騎士の証。
この事態の行方がどうなっていくかを見定めているのだ。
「あ、あの! 助けてくれてありがとうございます」
「どういたしまして、エルフのお嬢ちゃん。お怪我はないかい?」
まるで姫をエスコートするかのように片膝をつき、ベレニスと目線の高さを合わせ微笑むイケメン。
顔を赤らめるベレニスは、キャーキャー言って私の横までやってきて一言。
「傭兵と違って、すんごいイケメンで優しくて紳士で、超素敵~」
とまあ惚気けてくる。はいはいそうですか。
いや、それせめてリョウの耳に入らないように言おうよ!
リョウも憮然としてないで、何か言えっての!
「ここのギルドマスターのバルドです。危ないところを助けていただき感謝の言葉もございません。……ですがよろしいので? 立場上は、貴方様はこちらの衛兵のお仲間ではございませぬかな?」
「なに、構わぬ。……おっと我が部下がようやく到着したようだ。遅いぞヴィム! この衛兵2人を丁重に城まで運んでやれ」
息せき切って現れたのは同じ黒鎧、金髪を刈り上げた屈強そうな20代半ばぐらいの兵士だ。
「オルタナ隊長、早すぎっすよ~。……ていうかビオレールの兵が倒れてますが、隊長がやったんですか?」
「クスッ。私以外が犯人なら極刑だろうな」
「勘弁してくださいよ。領主とトラブルなんて御免ですぜ」
「トラブルになっても私が勝つさ」
「そりゃ隊長に勝てる奴なんてビオレールにいないでしょう。けど、毒殺、謀殺、誅殺なんて言葉があるんですから、もう少し自重してくださいよ」
そう言いつつヴィムと呼ばれた兵士は、軽々と衛兵2人を抱えて走り去った。
「オルタナ? ああ、貴方が先日赴任してきたという御仁ですな。お噂はかねがね聞いております。王都士官学校首席という輝かしい御経歴。是非一度手合わせをお願いしたいですな」
バルドさんの言葉に、またまた女性陣がキャーキャーと黄色い声援を上げる。
バルドさんの差し出された右手を握っていく美青年。
「失礼、自己紹介が遅れてすまない。私はオルタナ・アーノルド。ここビオレールに駐屯する王国軍百人隊の隊長をしている者です。よろしく」
ん? アーノルド?
「ねえねえローゼ。あのオルタナって人の立場、危うくなる感じなの? だったら私たちで協力して守ってあげようよ」
「まあ、それは大丈夫だと思うけど……」
お金が絡まないことにやる気になっているベレニスとは珍しい。
まさかガチ恋……なのか?
「ハハ、そのお気持ちありがとうエルフのお嬢ちゃん。でも心配はいらないよ。我が国の軍事閥は少々複雑でね。私は陛下直轄の騎士なんだ。そんな騎士が十人ほど百名の部下を持ち、ビオレールに駐留している。他の国境や重要都市にもね」
優雅に説明する美青年騎士。
だがベレニスは頭に、はてなマークを浮かべている。
「ベルガー王国騎士団は国王の意思でのみ動く存在。中興の祖と呼ばれる先王カエサルが、政治の実権を握った人物が暴走し、国を乱さぬように構築されたのが今の王国騎士団。ただ、これは右も左もわからぬ幼子や危険人物が王となった時に、どうなるかわかったもんじゃないという不安もある。けど、現王であるサリウスお……陛下は上手く使って、政治の実権を握って暴政を振るっている宰相の牽制をしているってのが今の現状ね」
つい補足として口を挟んでしまった。
「おや、博識だね。見た目の可憐さと聡明さ……貴族階級の出かな?」
「あっ、いえ、ただの魔女ですので……あのう、一つだけ聞いていいですか?」
「何かな?」
「アーノルドって、もしやアデル・アーノルドの縁者だったりします?」
「ああ、私の父だね。さすが我が父だ。貴方のような美しい魔女にすら知られているなんて光栄だね」
うわぁ~やっぱりそうか! 赤髪と長身しか共通点ないんだけど!
あの熊みたいなアデルから、こんな爽やかイケメンが生まれるなんて!
「それでオルタナ様。ギルドに何か用がおありでしょうか? よろしければ衛兵からお救いいただいたお礼に、一杯奢りましょうか?」
バルドさんの言葉に、オルタナさんの表情が引き締まる。
「昨日、南の山岳地帯でロック鳥を倒した冒険者が、ロック鳥が棲み着いていた古い教会内部で、多量の人骨を発見したと小耳に挟みましてね。ギルドが調査するようですが、結果の共有をお願いしたいのです。必要とあれば協力もしましょう」
おお! 心もイケメンだぞこの人。
今の御時世の兵士なんて、冒険者任せで済む危険な仕事は丸投げのくせに、率先して解決しようとは!
「……それは王国軍の総意ですかな?」
「いえ、私個人の判断です」
「ならば情報が入ればお教えしましょう」
バルドさんはそう告げるや、一礼してギルドの奥へと去った。
オルタナさんは協力もしたかったみたいで残念そうな顔をする。
でも強く要請するつもりもないみたいで、バルドさんの背中へ一礼した。
うーん、その姿も様になっているなあ。
でもそのまま帰るのかと思ったけど……
「ああ、君たちだね。ロック鳥を倒して人骨を発見した冒険者というのは。どうかな? 少しお話を伺いたいのだが?」
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