【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ

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第1章 復讐の魔女

第32話 物語のように

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 リョウとオルタナの戦いも、決着の時を迎えようとしていた。

 剣を弾かれ、そこに繰り出された蹴りを寸での所で躱そうと身体を捻るも、間に合わず、頬に受けてしまうリョウ。
 衝撃で一瞬意識が飛ぶも、何とか踏みとどまる。

 そこへ衛兵が大勢駆けつけてくる。

「この騒ぎ、兵舎の爆発があったというのに遅い到着ですな」

 不敵なオルタナの笑み。

「何を抜かすか、轟音や剣の交わる音がしたのは今しがただ。その者が賊か?」

 その中にいた、領主代行のトール・カークスの問い。

 息を切らした衛兵も多く、その言葉通りに今しがた気づき慌ててやってきたのだろう。

「賊は虫の息のようだな。オルタナは休まれよ。後は他の者に任せたまえ」

 トールの指示の元、衛兵たちが動く。

 だが……

「待たれよ。獲物を横取りする気ですかな? 腹を空かせた猛獣が暴れたら被害甚大ですぞ?」

 オルタナは寄ってくる衛兵を眼光のみで怯ませる。

「トール様! あちらでディアナ殿が魔女と戦っておられるようです! あの耳長は……エルフが魔女の加勢に向かっている模様! ご指示を!」

「ハインツ伯爵を殺した連中か。ふむ、そちらの傭兵はオルタナに任せて、ディアナ殿の援護に向かうが良い」

 オルタナを残し、その場を去る衛兵たち。

「ほう? ジーニアという魔法剣士を撃退したか。だが服がボロボロで見るに耐えんな。アランの傭兵リョウ・アルバースよ。勝負は預けておこう。だが、次の勝負は決着がつくまで離してやらんから、そのつもりでな」

 不敵な笑みを浮かべつつトールの横に立ち、何かを告げ走り去るオルタナ。
 瞬時にベレニスの横に到着し、自身のマントを彼女の肩にかけた。

「女の子が肌を露出させてはいけないからね」

「オルタナって、ホント紳士ね。どっかの傭兵と大違い。んで? 私はこれ捕まったの?」

 その光景を見ながら、リョウはフラつきながらも未だに膠着状態のローゼの元へと向かう。

「リョウ・アルバース。デリム出身のアランの傭兵がいるとの噂は聞いていた。この街にいたとは奇遇だな」

「……奇遇じゃない。だが今は後回しだ」

「ふむ。話ぐらいは聞いてやる」

 トールの目に映る、庇護されたディアナという魔女の足元にある禍々しい魔法陣。
 それに抗っている金色の髪を持つ魔女の少女。
 そこに向かうエルフの少女と傭兵の少年。

「ハインツ伯爵を殺したのがあの3人? ふむ。なるほど、たわけた話だな」

 まるで、いにしえの物語の1ページを垣間見たかのように、トールはその光景を目に焼き付けた。

 ***

 ディアナの上空を漂う本から放たれた魔法は、私を捕らえようとやってきた衛兵たちにも容赦なく襲いかかる。
 魔法障壁を展開して何とか防ぐが、衛兵の数に比例して降り注ぐ魔法は増え、ついには限界が来る。
 ディアナが狂気に満ちた顔を浮かべると同時に、最大級の魔法攻撃が降り注ぐ。

 もうダメだ! そう思ったその瞬間。

「やっぱりローゼって私がいないとダメダメね♪ 『風の精霊よ、全てを護る突風を舞い上げよ!』 とりゃあああああああああ!」

 声と共に放たれた風魔法が、私と衛兵たちの間に立ちはだかり、その壁によって大魔法から護られる。

 声の主の方を振り向くと、そこには予想通りの人物がいた。

「ベレニス! それにリョウ!」

 マントで身体を覆われているベレニスと、全身血塗れのリョウがそこにはいた。

「リョウ! その怪我⁉」

「致命傷はない。俺も加勢しよう。ローゼがやりたいことを好きにやればいい。俺はそれを守る」

 そう言うとリョウは、魔法がもう飛んでこないと踏んで、任務遂行しようと襲いかかってくる衛兵たちを一蹴する。

 衛兵さんたちめ、頭でっかちだなあ。
 なんていうか、誰が護っているのかわかってほしいぞ。

「ビオレール兵及び王国騎士諸君よ! 戦場の状況をよく確認したまえ! あの魔法陣を諸君らはどう見る! 見よ! あの禍々しさを! 君たちが護るべきはディアナではない‼ あの魔法陣と戦っている魔女ローゼたちである‼」

 オルタナさんの声が響き渡った。

 それを聞いてビオレール兵たちは戸惑うが……

「オルタナ隊長! そんでもって何すりゃいいんですかい?」

「ヴィムよ目覚めたか、だがバルド殿の肩を借りているようではまだまだだな」

 軽口を叩きながらも、オルタナさんの顔は真剣そのものだ。

「ただ邪魔せず被害に遭わず目撃者となればいいのさ。だろ? オルタナ・アーノルドさんよお」

 バルドさんの軽口に、オルタナさんは苦笑いする。

 領主代行のトールが静かに告げる。

「全権指揮を王国騎士団百人隊隊長のオルタナ・アーノルドに一任する」

 トールの言葉により、場は一気に引き締まる。

 さて、出番だぞ私。

「……せっかくの渾身の改竄魔法だったのに、何故こうも上手くいかないのかしらね。この場にいる人間全てがローゼちゃんの味方で私の敵。ノエルに拾われる前にそっくり……」

 ……これは幼い頃のディアナさん?

 魔力持ちとして売られ、逃げ出し、王都ベルンで乞食として生き延びた惨めな自分。
 ノエルに拾われ、初めて優しい温もりを感じた日々が走馬灯のように頭をよぎる。
 どれだけ努力しても報われず、他者に利用され続ける人生だったと自嘲する。

 ディアナさんの想いが、無念が、記憶が、ぶつかった魔力がうねり、混じり、私の脳へと直接入り込んでいった。
 
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