【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ

文字の大きさ
142 / 315
第4章 竜は泉で静かに踊る

第19話 レオノール姫の素朴な疑問は終わらない

しおりを挟む
 転移魔法でエルフの里へ行けるかを試してみたが、やはり発動はかき消されてしまった。
 とこしえの森に入ったら二度と出られないという古来からの伝承は、こういう魔法の干渉もあったからなのだろう。

「にしても面倒よね~。クリスったら、自分1人で帰るなんて!」

 森に入り、再び道なき道を歩いているとベレニスがぼやいた。

「まあ、クリスからしたら、ラフィーネの街に降りて、警戒されながら人に囲まれるのを嫌がったってのはあるかも。面倒くさがりな性格だったから」

「ただでさえ竜は珍しいっすのに、千年以上歴史に登場しない赤竜っすからね。クリスさんが慎重になるのも無理ないっす」

「ですが、一言ぐらい告げてから去ってほしかったです。赤竜云々よりも、クリスさんは常識に欠けています」

「ふむふむ、皆さんの話からクリスさんはとってもいい人なのが伝わってきます! ますます早くお会いしたいです!」

 前回はベレニスの道案内で進んだが、今回はザイルーガが先頭で横にリョウ。後方に私たち女子5人。

 私たちも道を覚えているし、森に逃げた魔獣たちも姿を現さないので、1週間かかった前回よりもサクサク進めた。

 魔獣どもは北のほうまで逃げた可能性があるなとザイルーガは言ったが、もしそうなら生態系が変わって森の勢力図が崩れるかも。

 エルフの里やリザードマンの里に、迷惑がかかっていないといいけれど。

 森の枝葉の隙間から見える日の高さから、昼過ぎぐらいかな? と予想する森に入って2日目。
 私たち女子は沈黙を知らず喋り続けているが、リョウとザイルーガは相槌しか打っていない。

 リョウが喋ると地雷を踏む可能性があるから別にいいや。
 ザイルーガが、『女はなんで会話が途切れねえんだろうなあ』って辟易しているのはムカつくけど。

「ザイルーガ殿! 1つお聞きしたいのですが!」

 そんな中、ふとレオノールがザイルーガに話しかけた。

 ん? 真剣な顔だし種族間の事かな?
 でも、いくらレオノールはリザードマンに差別感情がなく、ザイルーガもレオノールに好感を抱いているけど、国と部族の運命を変えかねないぞ。
 私たちも何を聞きたいのか固唾を飲んで見守る。

「ザイルーガ殿は妻の尻に敷かれているそうですが、朝はどうなのでしょう! 我が母上も父上にしょっちゅう怒っていますが、朝は父上にデレデレで甘えていることが多いのです! ザイルーガ殿はどうなのです?」

 ……は?
 レオノール以外の全員の頭の上にクエスチョンマークが浮かんだ。

 朝にマーガレット妃の機嫌が良くて、夫のラインハルト王に甘えているって要するに、その前の夜に夫婦の夜の営みで仲直りしているってこと?

 どんな質問だよ!

「お、俺か? ま、まあそうだなあ~。朝は目覚めのキスをしてくれるなあ~」

 宙に視線を浮かせながら、ザイルーガは答えた。

 いや、リザードマン種族の生々しい夫婦生活なんて知りたくないからね?
 聞いている私たちも反応に困るから。

「コホン。レオノール。あまりそういった事情を詮索するのは失礼ですよ?」

「ですが、ヴィレッタさん! 昨日の夜を思い出してください! 今日の朝もです! 皆様、リョウ様に不機嫌だったじゃないですか! ですので、そうならない対策をですね! ザイルーガ殿からリョウ様に、姉様たちをご機嫌にする技を伝授してほしいのです!」

 伝授って……
 つまり性の技⁉ それをリョウがザイルーガから学ぶ?

 レオノール以外の女子が、リョウとザイルーガの絡みを連想したのは言うまでもない。

 ヴィレッタは汚物を見るような目でリョウを見て、ベレニスはアリねと呟き、フィーリアが紙とペンを用意した。

 ザイルーガとリョウは固まっている。
 理解できていないって感じだ。

「って! レオノール、余計なことを口走らないの! リョウは別に今のままでいいんだし!」

「ですが、姉様! 私も1日リョウ様と行動して思いました。リョウ様は女性にモテる行動を一切しません! 驚きです! 声に出して皆様を気遣いもしません! ですので、姉様たちが不機嫌になるのも当然だと思ったのです! このままでは今後の旅路に差し支えると考え、ザイルーガ殿に紳士な振る舞いをご教授いただければと思った次第であります! ……あれ? 皆さん、どうかされましたか?」

 あのさあ……紛らわしい質問をしないでよ。
 女子一同、大きなため息を吐いたのだった。

「あ~まあ~。俺が思ったのはリョウはモテたいとか、女子の前でカッコつけようって気がないんだよ。でも、お前さんたちのことは大事に思っていると感じるぜ?」

 しまった! ザイルーガに先にリョウをフォローされてしまった!
 その役目は私だぞ! 負けていられるかああああああ!

「そりゃそうでしょ。森の中を歩いている今だって、私たちが楽に歩けるように道を作りながら歩いてくれているからね。それで終始、四方八方に警戒を怠っていない。誰かが歩くスピードが遅れたら歩幅を合わせてくれてもいる。レオノール、リョウは街の中でもいつも、馬車が通るほうを歩いているんだよ? 街といえば、屋台で何か買う時とか何も言わなくても必ず私たちの分も買ってくれるのもあるかな。それから、お風呂も私たちを優先させてくれる。大事に思われているのは、私だけじゃなくて、みんなわかっているから」

 たまにはみんなの前で感謝の言葉を伝えないとね♪
 でないとリョウ、いつかストレスで倒れるかもだし。

 ん? あれ? なんでレオノールとリョウ以外はドン引きしているの?

「なんと! そうなのですか⁉ では、何故皆様リョウ様にいつも不機嫌になるのでしょう? 姉様! 何故なのでしょう?」

 それを聞くのか、レオノール!

「え~っと……ヴィレッタ! お願い!」

 思わず質問から逃げてしまう。
 いやだって、これは本人を目の前にして答えられないし。

「わたくしですか⁉ ……そうですね。リョウ様の戦いに関しては、期待していた以上で頼もしく思っております。ですが、戦い以外はいつも期待値を大きく下回っています」

 ちょっ⁉ ヴィレッタ⁉
 投げといてなんだが冷静に答えすぎ!
 ほら、リョウもなんかショックを受けた顔になっているし!

「次は私ね! 傭兵は言いたいことを言わないから駄目なのよね♪ あとムッツリでキモいし、イケメンじゃないのが駄目なのよ」

 ベレニス……身も蓋もなさすぎるぞ。

「自分っすか? う~ん、リョウ様はいい人っすけど、欲がないのはマイナス点っすね。あと、お金の遣い方が無頓着なのは駄目駄目っすかねえ」

 フィーリアは……無難な答えか?
 リョウはお金を遣う趣味もないから、食事代や宿代、床屋代や武具の修理費、手入れ道具で散財するぐらいだ。
 いつもリョウは言い値で買うのだが、本職が商人のフィーリアにすれば、信じられない金銭感覚なのだろう。

「ふむふむなるほど! では姉様! 締めにお願いします!」

 レオノールめ。逃がしてくれないか。

「私は……もう少しリョウとお喋りしたいかな? あとは教養をもっと身につけてくれたら嬉しい。例えば七英雄についてとか各国の歴史とかね」

 ふう、考える時間ができたお陰で無難な回答を引き出せたぞ。
 良かった良かった♪

 あれ? みんなが呆れた顔で私を見ているぞ?
 リョウは全員からの一言で落ち込んでいるし!
 ……なんでこんな空気になったんだ⁉

「なるほど! 皆様がリョウ様と一緒に旅をしている理由がわかりました! リョウ様に、皆様期待しているのですね! リョウ様! これからは是非、師匠と呼ばせてください!」

 レオノールの思考回路もどうなっているんだよ!
 リョウは、様で呼ばれるよりはマシだと了承した。
 でも、レオノールから師匠と呼ばれるたびに微妙な顔をしている。

「わっはっはっは、俺も期待しているぜ~。リザードマンの里にまで響く活躍をするんだぞ」

 ザイルーガはリョウの背中をポンと叩くと、別方向へ足を向けた。

「俺の里はこっちから行ったほうが早い。ここでお別れだな」

「クリスに文句があるんじゃないの?」

 私がそう言うと、ザイルーガは頬を掻いた。

「それは伝言を頼むわ。だが、俺は無断外泊して連れ合いがカンカンに怒っているだろうから、そっちのほうが怖えのよ」

 夫婦生活って、そういうものなのかな?

「なんと! お世話になりました! また会える日を心待ちにしております」

「ザイルーガ殿、俺も世話になった。貴殿の斧捌きは素晴らしかった。また手合わせをお願いしたい」

 レオノールが一礼し、リョウも別れの挨拶をする。
 私たちはザイルーガに手を振りながら先に進んだ。

 このリザードマンの戦士とは、これで二度と会わなくなるって気がしないなあ。
 私の勘は当たるんだ。
 それに中々面白い奴だったしね。

 ザイルーガと別れてから3日後、前回は1週間かかったエルフの里に到着した。

 ラフィーネでの戦闘が夢だったくらいに、何も変わっていないエルフの里の景色が懐かしく思える。

 ベレニスの再度の帰還に、クーリンディアさんやララノアさんが、ホッとした表情で出迎えてくれた。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~

月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』 恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。 戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。 だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】 導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。 「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」 「誰も本当の私なんて見てくれない」 「私の力は……人を傷つけるだけ」 「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」 傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。 しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。 ――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。 「君たちを、大陸最強にプロデュースする」 「「「「……はぁ!?」」」」 落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。 俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。 ◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

処理中です...