【キスの日記念】可愛い聖女様のキスで勇者になったオレが、世界を救うため冒険に旅立った件について

柚子猫

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【キスの日記念】可愛い聖女様のキスで勇者になったオレが、世界を救うため冒険に旅立った件について

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 ――――。

 えーと。
 なんだこの状況。

 目の前に、いきなり可愛らしい女の子の顔があるんだが?

 蜂蜜のような金色の髪。
 少し赤く染まった柔らかそうな頬。
 閉じられたまぶたと長いまつ毛。

 大好きなゲームのヒロインにそっくりな美少女の唇が、すこしずつ近づいてきた。

 お菓子のような甘い吐息がそっと触れる。
 オレはその顔を避けると、大きく跳び退いた。

「うわぁ、なんだこれ!」
「ち、いいところだったのに」
「……え?」

「うふ。初めまして、私たちはずっとアナタをお待ちしてました」

 少し首を傾けて、潤んだ瞳で見つめてくる。
 可愛いんだけど。
 あざといくらい、かわいいんだけどさ。

 ……「ち」とか言わなかったかな、この美少女。

「ちょっといいかな? この状況がわかってないんだけど」
「聞いてください! 勇者様!!」
「いや……あのさ……その前に状況を……」

 彼女はオレの腕を両手で包み込むと、再び顔をよせてくる。

「今、この世界は闇に包まれています。それを救うのはアナタとそして私なのです!」

 興奮しているのか、頬が少し赤く染まっている。
 金色の髪に似合う赤と白のリボンが揺れて……やっぱりかわいい。
 好みすぎる容姿と小鳥のような可愛らしい声で、脳みそがとろけてしまいそうだ。

 まるで転生もののワンシーンみたいなんだけどさ。
 
 ……いやその前に。
 ……話を聞いてくれないかな?

「さぁ、勇者様。一緒にこの世界の闇を打ち払いましょう!」
「いや、まずさ。どこから突っ込めば……。オレ勇者でもなんでもないんだけど?」
「またまたー。どこからどう見ても、勇者様ですよ?」

 きょとんとした顔で首をかしげている。
 あ、言葉通じてたんだ?
 少し心配しちゃってたんだけど、オレ?!

「まぁ……まだ正確には勇者候補だけど。同じようなものよね」
「候補?」
「んー。なんでもないです。こっちの話」

 唇に指をあてて、少し考える仕草をする。
 ホントにヤバい可愛さだな。

「それで、勇者様。お聞きになりたいことってなんですか?」
「いやさ。まずここ……どこかな?」

 顔を近づけてくる彼女から視線を逸らしながら、あらためて周囲を見渡してみる。

 白とピンクの家具が並んだ広い空間。
 フリルのついたクッションや桃色のカーテン。
 奥にあるベッドには花柄のシーツ。
 窓際に並べられたヌイグルミ。

 これぞ女の子の部屋っていう感じのふんわりとした雰囲気の部屋だ。
 なんだかバラの花のようないい香りがしてくる。

「もしかしてさ、ここ、キミの部屋だったりするのかな?」
「そうですよ? 男の人だと勇者様が初めての訪問かな?」

 ――え。

「うわぁ、ごめん。オレさ、学校に行こうと家をでたはずなんだよね。そしたらさ……」

 あわてて、両手をふって言い訳をする。
 自分の部屋にオレなんかがいたら、引くよな?

 いや。オレも初めての女の子部屋訪問なんだけど……。

「大丈夫ですよ、勇者様。私がここに召喚したんですから」
「召喚って、キミが?」
「もちろんです! 聖女ですから私!!」

 腰に手を当てて、嬉しそうにドヤ顔になる聖女様。

「まぁ、転生してもらうために、さくっと死んで……あ」

 ……。
 
 …………。

 今おかしなこと言わなかったか?

「さくっと? さくっとなにをしたんです?!」
「まぁ、そんな過去の話はちゃちゃっと忘れちゃって、私とキスしてもらってもいいですか?」
「ちゃちゃっとって……オレ死んだの? 殺されちゃってるよねそれ?!」
「んー。今そっちの話はよくないですか?」

 聖女様は目を閉じて、可愛らしい唇をつきだしてくる。
 柔らかそうなふくらみに、瞳が吸い込まれそうになる

「いやいや、ちょっと待って。なんで君とキスを……」
「もう。いいから。ほら!」

 大きく背伸びをした彼女の腕が、オレの首にまわされる。

「え」
「んー……」

 再び砂糖菓子のような甘い香りに包まれて……柔らかい感触が唇に伝わった。
 やさしくて穏やかで温かくて。
 そしてふわふわとした不思議な感覚。

「ふぅ……」
「あの……なんでオレと……」 

 しちゃった……初キス……こんなかわいい子と……。

『ピロピローン! 聖女プリンが勇者を誕生させました!』

 ……え。
 なんだこの天井から聞こえてきた、ゲームのシステムみたいな音。
 
「やったー! これで私も勇者持ちね! よろしくね、勇者くん!」

 聖女さまは、両手をあげてぴょんぴょんジャンプしている。

「あの……今のなんです?」
「あー、えーとね。その前に、勇者くんの名前なんだっけ?」
「あ、二宮かずやです……」
「かずや……勇者かーくん。うん。いい名前だね!」

 金色の髪がフワッと揺れる。
 うわぁぁぁ。
 その弾むような笑顔も声も反則だから。

 ホントに可愛すぎだよ。

「あ、ごめんね。説明するから。私たち聖女って、キスで勇者候補に能力を渡すんです。いえぃ!」
「能力?」
「そう。ほら、普通に戦っても魔王に勝てないでしょ? だから勇者にもチートが必要ってわけ」

 わかったような、わからなかったような?
 待てよ。ということはさ。

 さっきのキスはその為だったのか……。

「私といる限り、かーくん無敵だから。ああ、楽しみね。一緒に買い物したり、カフェ行ったり……」
「あれ、魔王を倒すって?」
「あ……つ、ついでよ、ついで。どうせ討伐の旅に行くんだから、それくらいいいじゃない?」

 上目遣いで顔を赤らめながら、腕をからめてくる。
 
「だからね。浮気したらダメだぞ?」 

 甘い声が耳にエコーのように響いて、また脳みそがとろけそうだ。

 
『プリーン。勇者みつかった? どうせ万年勇者無しのアンタじゃ無理だったでしょ?』

 なんだこれ。
 突然、部屋の壁にテレビのような画面が出現した。

「失礼ね。ちゃんと勇者ゲットしましたー。ほら、勇者かーくん。カッコいいでしょ?」

 オレの腕にぎゅっと抱きつきながら、画面の女性に話しかけている。
 彼女のあたたかさが伝わってきて……なにも頭にはいってこない。

『あんたが勇者つかまえるなんて。ふーん、合格ね。なかなかいいんじゃない?』

 銀髪ツインテの美少女が、興味深げにオレをみつめてくる。

『プリンに飽きたらうちにきていいわよ? 勇者コレクションに加えてあげるわ』
「ダメ! かーくんは私のなんだから!」

 彼女の後ろには、勇者っぽいカッコをしたイケメンが並んでいる。

『まぁ、どうせ世界を救うのは私たちだけどね。それじゃまたね!』
「世界を救うのは私たちなんですけど? ちょっと聞いてる、カレンちゃん!」

 ぷつっと映像が切れて、もとの白い壁に戻る。

「もしかして、聖女とか勇者ってたくさんいるの?」
「そうね、世界を救うためだからたくさんいるわよ?」

 なんだろう。
 オレの知ってる勇者とか聖女とかとは、かなり違う気がする。

『プリンに勇者出来たって? マジうけるんですけど!!』
『おー、プリンもついに勇者持ちですか。いやーおめでとう!!』
『ちょっとちょっと。変なやつだったら許さないからね!!』 

 うわぁぁぁぁ。
 今度は、部屋中の壁に画面がたくさん出現したぞ。

『あー、ホントにいるわ勇者。マジなんだけど、うける~!』 
『ふーん、結構いいじゃん。こいつさぁテンション変だけどよろしくしてやってよね』
『ちょ、ちょっとカワイイかしら。でもプリンに手を出したら殺すから!』

 どの子もみんな美少女なんだけど。
 これ、みんな聖女ってやつなのか?

「これで私も勇者持ち仲間なんだからね! 覚悟してなさいよ!」

『ねぇねぇ、勇者取り換えない? ウチの熱血すぎてマジうざいんだって』
『いやぁ、初々しくてウラヤマしいわ。お幸せに~!』
『いっとくけど、プリンと結ばれるのはこの私、リゼだから。勘違いしないでよね!』 
 
「取り替えないし! 冷やかし禁止だし! リゼと結ばれたりしないから!」

 彼女は大きな声をあげると、両手で画面をかき消した。
 騒がしかった部屋が、急に静かになる。

「ふぅ。さぁ、勇者くん。一緒に旅立ちましょう!」
「旅立つって、どこに?」
「んー、まずはさ、服とか装備かな? 大丈夫、私がコーディネートしてあげるから!」

 まぶしい笑顔で差し出された彼女の手には迷いがなくて。
 オレはゆっくりと握り返した。


**********

 こうして、オレの異世界生活は幕を開けた。
 もしあの時に戻れるなら……全力であのキスを……阻止したい。

「うわ、かーくん大丈夫? 今ヒールするから!」

 モンスターの攻撃を受けて動けなくなっていたオレの唇に、あたたかいものが触れる。

「……今の戦闘、ホントに死ぬところだったんだけど!」
「大丈夫! 聖女の魔法でバッチリ復活してるから。次も頑張れ、かーくん!」
「いやこれ、絶対無理ゲーだから。次とか絶対死ぬから!」
「死んでも復活できるから平気だよ?」

 さらっと怖いこといってるぞ、この聖女様。

「いいかげん仲間増やそうぜ、仲間!」
「えー。二人きりで旅するのがいいんじゃん」

 うるんだ瞳で見上げてくる聖女プリン。
 くぅぅぅ、なんてカワイイんだ。
 
 ――いや。今日こそはバシッと言ってやるぞ。

「早く魔王を倒すんだろ? このままじゃ他の勇者に追いつかれるから!!」
「大丈夫大丈夫。もう圧倒的にリードしてるから、私たち。それよりもう一回。んー」
「いやそのたびに死にかけて……」

 オレに口からでるはずだった次のセリフは唇で封じられた。
 
 ああ……魔王を倒すまで……持つのかな……オレの身体。
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