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⑪じゃじゃ馬姫
「カティ、ただいま! なんもなかったか?!」
息を切らしたリュカが戻って来ました。急いで風の結界を解除します。
「リュカ、そんなに慌てなくても大丈夫」
「そうだぞ。イザベラと一緒なら問題ないと言ったではないか。リュカは少し過保護だぞ。まぁ、挨拶はきちんとしていたし、ブエ公爵もリュカを気に入ったようだから構わないけどな。イザベラ、カトリーヌ王女との話はどうだった?」
「あ、あの、カトリーヌ王女はとてもお優しい方でしたわ」
「そうか! それは良かった。僕も早くカトリーヌ王女のような婚約者を見つけなければ」
この……鈍感男っ!!!
イザベラ様の目からみるみる湿っていきます。まずい! このままでは泣いてしまわれます。
「い、イザベラ様! わたくし少しお化粧直しをしたいのですが、場所が分かりませんの! どうかお助け頂けませんでしょうか?」
「承知しました。ご案内致しますわ」
なんとか涙を堪えるイザベラ様を連れて、またリュカと別れます。
「リュカ、クリストフ様とよーくお話ししておいて」
「分かった。クリストフって案外鈍いよなぁ」
「何の話だ?!」
オロオロしているクリストフ様を放置して、イザベラ様と女性用の休憩室に行きます。
イザベラ様の使用人を見つけ出し確認すると、イザベラ様は公爵令嬢だから専用の部屋が用意されてました。
「ここは、誰も来ないのね?」
「は、はい! あの、貴女は?」
「失礼しました。カトリーヌ・ド・ゼムと申しますわ」
「あ、あの……王女様?!」
「ええ。イザベラ様とはお友達になったんですの。出来れば、2人きりでお話ししたいのですが構いませんか?」
「はぁーい! 了解しました!」
なんだか軽い調子ですわね。大丈夫かしら。心配そうなわたくしを察したのかイザベラ様が口を開かれました。
「大丈夫です。アンは全てを知っていますから席を外させる必要はありません」
「そうですか。なら、ゆっくりお話しをしたいのですが……その前に泣きたいなら泣いてはいかががですか? わたくし席を外しましょうか?」
「いえ、お気遣いありがとうございます。大丈夫です」
「大丈夫ではないでしょう。わたくしも人の事は言えませんけど、クリストフ様は優秀な方ですが少々鈍感ではないかと」
「そうですよね!! お嬢様があれだけアプローチしてるのに、全く無反応なんですよ?!」
「アンと言ったわよね? イザベラ様と鈍感男はいつから親しいのかしら」
「ど、鈍感男って……あ、あははっ! 王女様ってもっととっつきにくいかと思ってました! さすが、じゃじゃ馬王女……」
「アンっ!!! 失礼しました! 申し訳ありませんっ!!!」
なるほど。カドゥール国ではわたくしはじゃじゃ馬王女と呼ばれているのですね。
アンは、真っ青な顔をしています。
「イザベラ様、アンはずいぶん若いけどいつから貴女に付いているの?」
「さ、最近です……。国王陛下のご紹介で……!」
なるほど。繋がるわねぇ。
「アンと言ったかしら。わたくし、とっても不愉快よ」
「も、申し訳ありません!!!」
「誰がわたくしをじゃじゃ馬王女と呼んでいるの?」
「……それは……その……!」
「言えないならわたくしから言ってあげる。国王陛下でしょう?」
アンの顔が真っ青になりカタカタ震えています。
正解のようですね。
「ねぇ、この事をわたくしが国王陛下やクリストフ様に訴えたら貴女はどうなると思う?」
「それはっ……! そのっ……!」
「イザベラ様、彼女は貴女の大切な使用人?」
「ええ、申し訳ありません。アンの無礼を心から謝罪します。アン、カトリーヌ王女は聡明な方よ。二度とそんな事言わないで。それから、誰が言っていたのか全員の名を言いなさい」
「別に気にしないから良いわ。それより、イザベラ様は彼女を解雇する気はないの?」
「ありません。確かに彼女は口が悪い所がありますが、わたくしに誠心誠意仕えてくれる大切な使用人です。彼女の教育が足りていなかったのはわたくしの罪ですわ。訴えるならどうぞわたくしを訴えて下さいまし」
イザベラ様はお優しいですわね。
わたくしは、こっそりとアンに耳打ちをしました。
「あ……イザベラ様……わたくし……なんて事を……」
「イザベラ様は慈悲深いわね。裏切り者を許すの?」
「彼女の教育が足りていなかったのはわたくしの責任です。アンの裏切りではありませんわ」
「アン、貴女は素敵な主人に仕えているわね」
「あ……ああ……イザベラ様……申し訳ありません……申し訳……ありません……!」
「カトリーヌ王女、どうかわたくしの使用人をお許し下さい」
「イザベラ様に免じて、ここだけの話にするわ。アン、この事をわたくしがクリストフ様に言えばどうなるか……分かってるわよね? 鈍感だと言っても彼は賢いわ。あなたの後ろにいる人に気がつくと思うわよ」
「お許し下さい……! どうか……!」
物凄い怯えぶりだ。わたくしへの暴言が判明する事を恐れているのではない。もっと大きな事に怯えている。
きっとこのままでは彼女の命はないだろう。
「イザベラ様、アンを数日だけお借りできませんか?」
「アンをどうするおつもりですか?!」
イザベラ様は純粋にアンを心配している。素直で優しく、アンを信じ切っているイザベラ様。
「アン、こんなに優しい主人に貴女は何をしようとしたの?」
「ああ……イザベラ様……申し……」
アンは泣き崩れてしまった。
過去ではきっと、イザベラ様の罪は作られたものだったんだろう。仕組んだのはきっとアンだ。
今回のように、彼女はアンを庇ったのかもしれない。アンに唆されたのかもしれない。
とにかく、黒幕は分かった。
あとは対処するだけだ。
息を切らしたリュカが戻って来ました。急いで風の結界を解除します。
「リュカ、そんなに慌てなくても大丈夫」
「そうだぞ。イザベラと一緒なら問題ないと言ったではないか。リュカは少し過保護だぞ。まぁ、挨拶はきちんとしていたし、ブエ公爵もリュカを気に入ったようだから構わないけどな。イザベラ、カトリーヌ王女との話はどうだった?」
「あ、あの、カトリーヌ王女はとてもお優しい方でしたわ」
「そうか! それは良かった。僕も早くカトリーヌ王女のような婚約者を見つけなければ」
この……鈍感男っ!!!
イザベラ様の目からみるみる湿っていきます。まずい! このままでは泣いてしまわれます。
「い、イザベラ様! わたくし少しお化粧直しをしたいのですが、場所が分かりませんの! どうかお助け頂けませんでしょうか?」
「承知しました。ご案内致しますわ」
なんとか涙を堪えるイザベラ様を連れて、またリュカと別れます。
「リュカ、クリストフ様とよーくお話ししておいて」
「分かった。クリストフって案外鈍いよなぁ」
「何の話だ?!」
オロオロしているクリストフ様を放置して、イザベラ様と女性用の休憩室に行きます。
イザベラ様の使用人を見つけ出し確認すると、イザベラ様は公爵令嬢だから専用の部屋が用意されてました。
「ここは、誰も来ないのね?」
「は、はい! あの、貴女は?」
「失礼しました。カトリーヌ・ド・ゼムと申しますわ」
「あ、あの……王女様?!」
「ええ。イザベラ様とはお友達になったんですの。出来れば、2人きりでお話ししたいのですが構いませんか?」
「はぁーい! 了解しました!」
なんだか軽い調子ですわね。大丈夫かしら。心配そうなわたくしを察したのかイザベラ様が口を開かれました。
「大丈夫です。アンは全てを知っていますから席を外させる必要はありません」
「そうですか。なら、ゆっくりお話しをしたいのですが……その前に泣きたいなら泣いてはいかががですか? わたくし席を外しましょうか?」
「いえ、お気遣いありがとうございます。大丈夫です」
「大丈夫ではないでしょう。わたくしも人の事は言えませんけど、クリストフ様は優秀な方ですが少々鈍感ではないかと」
「そうですよね!! お嬢様があれだけアプローチしてるのに、全く無反応なんですよ?!」
「アンと言ったわよね? イザベラ様と鈍感男はいつから親しいのかしら」
「ど、鈍感男って……あ、あははっ! 王女様ってもっととっつきにくいかと思ってました! さすが、じゃじゃ馬王女……」
「アンっ!!! 失礼しました! 申し訳ありませんっ!!!」
なるほど。カドゥール国ではわたくしはじゃじゃ馬王女と呼ばれているのですね。
アンは、真っ青な顔をしています。
「イザベラ様、アンはずいぶん若いけどいつから貴女に付いているの?」
「さ、最近です……。国王陛下のご紹介で……!」
なるほど。繋がるわねぇ。
「アンと言ったかしら。わたくし、とっても不愉快よ」
「も、申し訳ありません!!!」
「誰がわたくしをじゃじゃ馬王女と呼んでいるの?」
「……それは……その……!」
「言えないならわたくしから言ってあげる。国王陛下でしょう?」
アンの顔が真っ青になりカタカタ震えています。
正解のようですね。
「ねぇ、この事をわたくしが国王陛下やクリストフ様に訴えたら貴女はどうなると思う?」
「それはっ……! そのっ……!」
「イザベラ様、彼女は貴女の大切な使用人?」
「ええ、申し訳ありません。アンの無礼を心から謝罪します。アン、カトリーヌ王女は聡明な方よ。二度とそんな事言わないで。それから、誰が言っていたのか全員の名を言いなさい」
「別に気にしないから良いわ。それより、イザベラ様は彼女を解雇する気はないの?」
「ありません。確かに彼女は口が悪い所がありますが、わたくしに誠心誠意仕えてくれる大切な使用人です。彼女の教育が足りていなかったのはわたくしの罪ですわ。訴えるならどうぞわたくしを訴えて下さいまし」
イザベラ様はお優しいですわね。
わたくしは、こっそりとアンに耳打ちをしました。
「あ……イザベラ様……わたくし……なんて事を……」
「イザベラ様は慈悲深いわね。裏切り者を許すの?」
「彼女の教育が足りていなかったのはわたくしの責任です。アンの裏切りではありませんわ」
「アン、貴女は素敵な主人に仕えているわね」
「あ……ああ……イザベラ様……申し訳ありません……申し訳……ありません……!」
「カトリーヌ王女、どうかわたくしの使用人をお許し下さい」
「イザベラ様に免じて、ここだけの話にするわ。アン、この事をわたくしがクリストフ様に言えばどうなるか……分かってるわよね? 鈍感だと言っても彼は賢いわ。あなたの後ろにいる人に気がつくと思うわよ」
「お許し下さい……! どうか……!」
物凄い怯えぶりだ。わたくしへの暴言が判明する事を恐れているのではない。もっと大きな事に怯えている。
きっとこのままでは彼女の命はないだろう。
「イザベラ様、アンを数日だけお借りできませんか?」
「アンをどうするおつもりですか?!」
イザベラ様は純粋にアンを心配している。素直で優しく、アンを信じ切っているイザベラ様。
「アン、こんなに優しい主人に貴女は何をしようとしたの?」
「ああ……イザベラ様……申し……」
アンは泣き崩れてしまった。
過去ではきっと、イザベラ様の罪は作られたものだったんだろう。仕組んだのはきっとアンだ。
今回のように、彼女はアンを庇ったのかもしれない。アンに唆されたのかもしれない。
とにかく、黒幕は分かった。
あとは対処するだけだ。
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