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21.兄の執務室
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「お兄様、入ってもよろしいですか?」
「いいよ」
ジーナがフィリップの執務室に入ると、既に先客が居た。
「やあ、ジーナ嬢。邪魔してるよ」
「……ほんっと邪魔だよ。俺、そろそろ帰りたいんだけど」
「お、お兄様?!」
兄があり得ない口調で王太子に接している姿を見て、ジーナは目を見開いた。
「ああ、僕ら人目がないところではこんなもんだから。慣れて。誰にも言っちゃダメだよ?」
「は、はい……。承知しました」
「うーん、さすがジーナ嬢だね。ねぇ、ケネスの様子はどう?」
ビクターが聞いた途端、ジーナはケネスを褒め始めた。ケネスが処分しても良いと言ったメモを見たジーナは、ケネスの功績を正しく理解していた。
ビクターがやったと思っていた事が、ケネスの提案だった事を知ったフィリップは驚いた。
そして、ビクターは……。
『やっぱり、ケネスの結婚相手はジーナ嬢が良いなぁ。こんなに正しくケネスの事を理解している子、初めてだもの。どうにか、ケネスの事を意識して貰いたいな』
チラリとフィリップを見たが、彼は首を横に振っていた。
『やっぱりダメかー……。フィリップの協力があれば一発なのに。ライアンもまだジーナ嬢を疑ってるし、僕が余計な事をしちゃったせいで半年間は婚約者にする事も出来ない。けど、これだけ好かれてるんだから大丈夫だよね? 頑張って、ケネス』
「ところで……ケネス殿下に付いていたエレノア・オブ・ベケットという侍女ですが……どなたのご紹介でしょうか?」
ケネスに似た冷たい目をしたジーナが、慇懃無礼に言葉を紡ぐ。
「彼女は紹介じゃない。まとめて雇った侍女の中からケネスが選んだんだ」
「……さようでございますか。ならば仕方ありませんね」
「仕方ないってどういう事? もし、エレノアを紹介した人が居たらどうするつもりだったの?」
「あんな無礼な侍女をケネス殿下に付けたのですから、当然、王家に敵意があると思いますから王太子殿下にご報告するつもりでしたわ」
「メイドはしょっちゅう変えてたけど、侍女は問題ないってケネスが言ってたけど……」
「問題ありまくりですわ! ケネス殿下に仕える栄誉を賜っておきながらあの態度。許しません」
冷たく、淡々と、エレノアの言動を報告するジーナにビクターは圧倒されていた。
『こここ……怖いんだけどっ! あの目、ケネスにそっくり! 助けて! フィリップ!』
『はぁ……仕方ねぇなぁ。ジーナは完全にケネス殿下に傾倒してんだから、こんくらい当然だろ。俺だってビクターを侮辱されたら怒るぞ』
『こんなに怒る?!』
『ああ、怒るな。こんなもんじゃ済まない』
『そ……そうか……』
「落ち着け、ジーナ。エレノアとやらは、もうケネス殿下の侍女を解任された。今後はジーナがケネス殿下をお守りすれば良いだろう」
「そうですわね! さすがお兄様! あんな無礼な人、2度と近づけさせませんわ! そうだ! ニコラに聞いておいて下さいませんか? ベケット男爵家と関わりのある高位貴族がいると思いますの。だって、あんなにケネス殿下を馬鹿にするなんておかしいです。わたくし達伯爵家でも、王族の方と直接お会いする機会はほとんどありませんわ。事前にケネス殿下の話を聞いていないとあんなに馬鹿にするとは思えません。ああ……思い出しただけでも腹が立ちますわっ……!!!」
「はいはい、落ち着いて。ベケット男爵家は調べておくよ。ニコラと父上には連絡してあるから安心して。どうせ、食事もしてないでしょ。これ、持って行って。ちゃんと寝るんだよ。でないとケネス殿下にご迷惑をかけるよ」
「それはいけませんわね! 聞きたい事は聞きましたし、失礼致しますわ」
ジーナが部屋を出て行こうとすると、フィリップの部屋に新たな来客が現れた。
「いいよ」
ジーナがフィリップの執務室に入ると、既に先客が居た。
「やあ、ジーナ嬢。邪魔してるよ」
「……ほんっと邪魔だよ。俺、そろそろ帰りたいんだけど」
「お、お兄様?!」
兄があり得ない口調で王太子に接している姿を見て、ジーナは目を見開いた。
「ああ、僕ら人目がないところではこんなもんだから。慣れて。誰にも言っちゃダメだよ?」
「は、はい……。承知しました」
「うーん、さすがジーナ嬢だね。ねぇ、ケネスの様子はどう?」
ビクターが聞いた途端、ジーナはケネスを褒め始めた。ケネスが処分しても良いと言ったメモを見たジーナは、ケネスの功績を正しく理解していた。
ビクターがやったと思っていた事が、ケネスの提案だった事を知ったフィリップは驚いた。
そして、ビクターは……。
『やっぱり、ケネスの結婚相手はジーナ嬢が良いなぁ。こんなに正しくケネスの事を理解している子、初めてだもの。どうにか、ケネスの事を意識して貰いたいな』
チラリとフィリップを見たが、彼は首を横に振っていた。
『やっぱりダメかー……。フィリップの協力があれば一発なのに。ライアンもまだジーナ嬢を疑ってるし、僕が余計な事をしちゃったせいで半年間は婚約者にする事も出来ない。けど、これだけ好かれてるんだから大丈夫だよね? 頑張って、ケネス』
「ところで……ケネス殿下に付いていたエレノア・オブ・ベケットという侍女ですが……どなたのご紹介でしょうか?」
ケネスに似た冷たい目をしたジーナが、慇懃無礼に言葉を紡ぐ。
「彼女は紹介じゃない。まとめて雇った侍女の中からケネスが選んだんだ」
「……さようでございますか。ならば仕方ありませんね」
「仕方ないってどういう事? もし、エレノアを紹介した人が居たらどうするつもりだったの?」
「あんな無礼な侍女をケネス殿下に付けたのですから、当然、王家に敵意があると思いますから王太子殿下にご報告するつもりでしたわ」
「メイドはしょっちゅう変えてたけど、侍女は問題ないってケネスが言ってたけど……」
「問題ありまくりですわ! ケネス殿下に仕える栄誉を賜っておきながらあの態度。許しません」
冷たく、淡々と、エレノアの言動を報告するジーナにビクターは圧倒されていた。
『こここ……怖いんだけどっ! あの目、ケネスにそっくり! 助けて! フィリップ!』
『はぁ……仕方ねぇなぁ。ジーナは完全にケネス殿下に傾倒してんだから、こんくらい当然だろ。俺だってビクターを侮辱されたら怒るぞ』
『こんなに怒る?!』
『ああ、怒るな。こんなもんじゃ済まない』
『そ……そうか……』
「落ち着け、ジーナ。エレノアとやらは、もうケネス殿下の侍女を解任された。今後はジーナがケネス殿下をお守りすれば良いだろう」
「そうですわね! さすがお兄様! あんな無礼な人、2度と近づけさせませんわ! そうだ! ニコラに聞いておいて下さいませんか? ベケット男爵家と関わりのある高位貴族がいると思いますの。だって、あんなにケネス殿下を馬鹿にするなんておかしいです。わたくし達伯爵家でも、王族の方と直接お会いする機会はほとんどありませんわ。事前にケネス殿下の話を聞いていないとあんなに馬鹿にするとは思えません。ああ……思い出しただけでも腹が立ちますわっ……!!!」
「はいはい、落ち着いて。ベケット男爵家は調べておくよ。ニコラと父上には連絡してあるから安心して。どうせ、食事もしてないでしょ。これ、持って行って。ちゃんと寝るんだよ。でないとケネス殿下にご迷惑をかけるよ」
「それはいけませんわね! 聞きたい事は聞きましたし、失礼致しますわ」
ジーナが部屋を出て行こうとすると、フィリップの部屋に新たな来客が現れた。
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