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40.妖艶な美女
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「聖女様、ご無理はなさらないで下さいね。嫌ならすぐ下がれば良いですから」
「ありがと、ケネスは優しいねー」
何人もの王侯貴族と挨拶を交わしながら、飄々としている小百合を見て、無理をしているのではないかとケネスは心配していた。
だが、小百合は昨夜覚えた魔法で、形式的な挨拶を繰り返しているだけだったので身体的にも、心理的にも負担はなかった。魔法を駆使してマナーを無理矢理覚え、聖女を見定めようとする者達を逆に翻弄していた。名前や顔を記憶して、心の内を探る。
『魔法、ちょー便利。それにしても、やっぱり偉い人は裏があるなぁー……。あのナルシストだけは会いたくなかったんだけど、居ないみたいだし良かったよー。全部把握しきれないし、後で整理しよっと。カメラみたいに録画出来る魔法、便利だわ。しかも、時間や人を指定したらすぐ飛べる。スキップ機能や字幕機能が優秀過ぎる! 魔法最高!』
パーティーに出席したジーナは、改めて自分の世話係にケネスが選ばれた事に感謝していた。あんなに裏表のない人は居ない。小百合はケネスに対してだけはとても優しく、気さくだった。
目敏い貴族達はすぐに気が付き、ケネスを取り込もうと動き出した。
娘を薦める者や、自ら擦り寄る令嬢も現れたが、小百合の世話があるからとケネスは全て丁寧に断っていた。そんな中、新たな令嬢が挨拶に訪れた。
「こんばんわ。聖女様、ケネス殿下」
「こんばんわ。サユリです」
『妖艶な美女ねー。ちょっと露出が凄いけど、似合ってるわ。さ、この人は敵か、味方か……』
「ジェシカ・パット・ハントと申します。どうぞお見知り置き下さい」
「ジェシカね。よろしく」
『うわぁ……この人はドロドロしてる。ってか、ケネスを馬鹿にしすぎじゃない? え、それでこんな平気な顔で挨拶すんの? 貴族、こわっ! しかも私が呼び捨てにした事にキレてるー! 知らないわよ! ケネスが全員呼び捨てにしろって言ったんだから! 国王すら呼び捨てなのよ? けど、それで良いってみんな言うし……。大体、王子の方が偉いわよね? ケネスを呼び捨てにしてんのに、この人をさん付けなんかで呼ばないわよ。あーもう! イライラするよー! なんとか逃げられないかな。あれ? ジーナが居る。メイド服、可愛い! 相変わらずケネスを熱い目で見てるわ。はぁ、癒されるわぁ。この人も美人だけど、ジーナの方が綺麗だわ』
小百合が考え事をしてる間に、ジェシカはケネスに色仕掛けを開始していた。
「ねぇ、ケネス殿下、わたくし、殿下とあまりお話しした事がないんですの、ゆっくり2人でお話ししませんか」
妖艶に笑って、ジェシカはケネスの腕を取った。わざとらしく胸を押しつけるジェシカに、男達の目は釘付けになる。
が、ケネスは冷たくジェシカの腕を振り払った。
「失礼、僕は聖女様をお守りしなければいけませんので、腕を空けておかないといけないんです。僕に触れるのは、ご遠慮頂けますか? 聖女様の為ですから、ご理解頂けますよね?」
「……ええ、失礼致しました。そうそう、ケネス殿下のお気に入りの侍女はどちら?」
「彼女は裏で仕事をしています」
「お会いしてみたかったんだけど、残念だわ。そうそう、聖女様、我が領地……」
「ジェシカ・パット・ハント。聖女様への直接の依頼は禁じられている」
王族らしく、厳しい声でジェシカを批判するケネスに会場中の者が息を呑む。
「ありがと、ケネスは優しいねー」
何人もの王侯貴族と挨拶を交わしながら、飄々としている小百合を見て、無理をしているのではないかとケネスは心配していた。
だが、小百合は昨夜覚えた魔法で、形式的な挨拶を繰り返しているだけだったので身体的にも、心理的にも負担はなかった。魔法を駆使してマナーを無理矢理覚え、聖女を見定めようとする者達を逆に翻弄していた。名前や顔を記憶して、心の内を探る。
『魔法、ちょー便利。それにしても、やっぱり偉い人は裏があるなぁー……。あのナルシストだけは会いたくなかったんだけど、居ないみたいだし良かったよー。全部把握しきれないし、後で整理しよっと。カメラみたいに録画出来る魔法、便利だわ。しかも、時間や人を指定したらすぐ飛べる。スキップ機能や字幕機能が優秀過ぎる! 魔法最高!』
パーティーに出席したジーナは、改めて自分の世話係にケネスが選ばれた事に感謝していた。あんなに裏表のない人は居ない。小百合はケネスに対してだけはとても優しく、気さくだった。
目敏い貴族達はすぐに気が付き、ケネスを取り込もうと動き出した。
娘を薦める者や、自ら擦り寄る令嬢も現れたが、小百合の世話があるからとケネスは全て丁寧に断っていた。そんな中、新たな令嬢が挨拶に訪れた。
「こんばんわ。聖女様、ケネス殿下」
「こんばんわ。サユリです」
『妖艶な美女ねー。ちょっと露出が凄いけど、似合ってるわ。さ、この人は敵か、味方か……』
「ジェシカ・パット・ハントと申します。どうぞお見知り置き下さい」
「ジェシカね。よろしく」
『うわぁ……この人はドロドロしてる。ってか、ケネスを馬鹿にしすぎじゃない? え、それでこんな平気な顔で挨拶すんの? 貴族、こわっ! しかも私が呼び捨てにした事にキレてるー! 知らないわよ! ケネスが全員呼び捨てにしろって言ったんだから! 国王すら呼び捨てなのよ? けど、それで良いってみんな言うし……。大体、王子の方が偉いわよね? ケネスを呼び捨てにしてんのに、この人をさん付けなんかで呼ばないわよ。あーもう! イライラするよー! なんとか逃げられないかな。あれ? ジーナが居る。メイド服、可愛い! 相変わらずケネスを熱い目で見てるわ。はぁ、癒されるわぁ。この人も美人だけど、ジーナの方が綺麗だわ』
小百合が考え事をしてる間に、ジェシカはケネスに色仕掛けを開始していた。
「ねぇ、ケネス殿下、わたくし、殿下とあまりお話しした事がないんですの、ゆっくり2人でお話ししませんか」
妖艶に笑って、ジェシカはケネスの腕を取った。わざとらしく胸を押しつけるジェシカに、男達の目は釘付けになる。
が、ケネスは冷たくジェシカの腕を振り払った。
「失礼、僕は聖女様をお守りしなければいけませんので、腕を空けておかないといけないんです。僕に触れるのは、ご遠慮頂けますか? 聖女様の為ですから、ご理解頂けますよね?」
「……ええ、失礼致しました。そうそう、ケネス殿下のお気に入りの侍女はどちら?」
「彼女は裏で仕事をしています」
「お会いしてみたかったんだけど、残念だわ。そうそう、聖女様、我が領地……」
「ジェシカ・パット・ハント。聖女様への直接の依頼は禁じられている」
王族らしく、厳しい声でジェシカを批判するケネスに会場中の者が息を呑む。
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