王子様、お仕えさせて下さいませ

編端みどり

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42. ジーナを探せ

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「ジーナ!! 何処?!」

「ケネス殿下?! 今はパーティーの最中では?」

「ジーナが危ないって、サユリ様が教えてくれたんだ! ジーナを見てない?!」

「先程まで給仕をしておりましたが……アレ? そういや見ねぇな」

「誰か! ジーナを見てない?! 何処に居るの?! ジーナ!!!」

ケネスは、ジーナを探して城中を駆け回った。だが、どれだけ探しても見つからない。侵入者が数名倒れており、問い詰めたところジーナを襲おうとした事が判明した。しかし、記憶がないと言い、ジーナの行方は分からないままだ。

パーティーが終わり、小百合達と合流したケネスは憔悴しきっており、小百合はケネスに謝罪をした。

「ごめん……魔法でジーナを探してるんだけど、この魔法範囲が狭いみたいで見つからないの。もう城には居ないかも。でも、生きてるのは間違いなさそう。こんな事しか分からなくてごめん。パーティーなんか放っておいて、私も一緒に行けばよかった」

ケネスと合流した小百合は、泣きながら必死で魔法を使ったが、ジーナの居場所は分からなかった。

「サユリ様は悪くありません。はぁ……ジーナの見張りを止めなきゃ良かった」

溜息を吐くビクターに、小百合は問いかけた。

「ジーナに見張り? ケネスの恋人候補だから?」

「いや、そうじゃないんです。ちょっとややこしいんで、僕が説明します。兄様、ハント公爵を捕らえています。尋問してきて下さい。フィリップがキレそうなんで、デュークを付けてますけど、デュークじゃそんなに長く抑えられません」

「……分かった……ありがと、ライアン……」

目が据わっているケネスは、そのまま部屋を出て行った。

「兄上、サユリ様がジーナは生きてるって言うんですから大丈夫です。早く、助けてあげましょう。でないと、兄様がぶっ壊れますよ」

「だな。俺もすぐ行く。このままだと公爵を殺しかねん」

『この人達は、全員ジーナを助けたいと思ってる。ケネスだけじゃない、みんなジーナの事を心配してる。魔法って万能じゃないんだね。なんで生きてるって分かるのかすら分かんないなんて……せっかく、この世界で信用出来る人を見つけたのに。私を利用しようとしてない、ケネスの事をばっかり考えてる優しい人。お願い、ジーナ、無事でいて……! 私も何か……何か出来ない? そうだ、私は聖女って事になってるんだから……』

「ねぇ……私もハント公爵と話をさせて」

「聖女様に尋問を見せるのは……」

「尋問なんてしないわ。私は聖女で、私の前では嘘はつけないんでしょう? なら、私が聞くだけで良いはずよ」

『心を読めば、何か分かるかも!』

「そりゃ、兄様みたいな善人はそうですけど、悪党はそうもいかないでしょう」

「ふぅん……あなた達は、私に嘘をつくの?」

「「つきませんよ」」

「聖女様に嘘をつくなんて、そんなリスクの高い事、しませんよ」

「ですよねー。兄様みたいに隠し事をしないってのは……まぁ、上手くやろうかなって思っちゃいますけど、嘘はつきません」

「ライアンだっけ? あなた、正直ね」

「僕はいつでも誠実ですよ」

「ふぅん。嘘くさい笑顔が素敵よ。とにかく、私が聞いても駄目なら尋問でもなんでもそちらのルールでやれば良いじゃない。私ね、見守る会の会員になりたいの。ジーナが居ないと、困るのよ」

小百合の発言に、ビクターとライアンが吹きだした。

「聖女様、どんな情報収集したらたった1日でそこにたどり着くの?」

「魔法」

「魔法ですか。凄いですね。私は、今日そこの会長に直談判されたばかりですよ……」

「なんで直談判?」

「あー……サユリ様とケネスの仲を誤解しましてね……」

「あんなにラブラブな2人の仲に割り込むなんて絶対しないわ。馬に蹴られたくないし。そもそも、私は半年で帰るんだからこっちに恋人なんていらない。あんなに想いあってるのにすれ違ってるんだから、ちょっと可哀想だけど……見てて楽しいわ。おかげで、こっちに来てもあんまり不安はなかった。私の世話係が、ケネスで良かった。ジーナは可愛いし、ケネスは必死だし、愛でてれば半年なんてすぐよね。だからね、絶対ジーナを助けたいの」

「聖女様にこんなに信頼されるなんて、さすが兄様ですね」

「それ、ジーナも言ってた」

「そうですか。さぁ、聖女様の願いは叶えなくては。早くジーナを助けましょう」

小百合は、少し寂しそうに笑ったライアンの心を読む事をやめた。

『知らない方が良い事もありそうだしね。この魔法、オンオフ出来て良かったわ。でないと、キツすぎる。とりあえず、あのオッサンの心を読めばジーナの居場所が分かるわよね? でも、あの人の脳内エグかったのよね……。出来ればもう読みたくない。自白する魔法とかないのかしら。試しにやってみるか。ハント公爵、ぜーんぶ正直に、隠し事なんてせず、全て話して!』

小百合の手から小さな光が漏れ、ドアの外に消えていった。
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