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第二章 白雪姫の誕生日
1.ティーパーティの始まり
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「白雪、おめでとう!」
今日は、なんと!
白雪の誕生日なのよ!
「なぁ、さっきから顔が緩みっぱなしだぜ」
鏡に注意されてしまったわ。いけない。今から社交をするというのに。
「……反省してるわ。これでどうかしら?」
「良いんじゃね。美しい女王様になったぜ。ホラ、そろそろアンタを溺愛してる兄上も来るぜ。上手い事仲良し夫婦を演じねぇと、白雪姫と引き離されるぞ」
「それだけは絶対に嫌よ。フリッツ様、お嫌でしょうけど、今日だけは白雪の為に我慢して下さいませ」
「任せてくれ! なんならこれからもずっと……」
「お母様! 頂いたブローチをつけてみましたの! いかがですか?」
「可愛いわ! 美しいわ! 素敵よ白雪!」
「嬉しいです。素敵なプレゼントをありがとうございます」
鏡が大笑いしているわ。しかも、白雪と目配せしているじゃないの。フリッツ様も困ったように笑ってるし。
鏡が白雪と仲が良いのは嬉しいけど、なんだか心がムズムズするわ。
「ねぇ鏡。わたくしは美しい?」
「ああ、スッゲー可愛いし、美しいぜ」
「……ほんと?」
「俺は嘘は吐かねぇよ。アンタだって分かってんだろ。姿を消してついててやるから安心しな」
「ありがとう鏡。……よし、行くわよ白雪! フリッツ様、お嫌でしょうけど今だけは腕を組んでもよろしくて?」
「嫌ではない! 我々は夫婦なんだから、いつでも近くに……」
「お父様」
さっきから、白雪はフリッツ様の言葉を遮っているわね。なにか理由があるのかしら?
……ああそうか。
白雪は、まだフリッツ様を許せていないんだわ。白雪は、普段は人の言葉を遮るなんて失礼な事をしない。こんな態度を取るのは、白雪がまだ父親にわだかまりを抱えているからなんだわ。
「白雪。無理に自分を心を誤魔化す必要はないわ。けど、お父様にはお父様の気持ちや言葉があるの。聞きたくなければ聞かなくて構わないわ。でも、お父様の言葉を遮るのは失礼だから、おやめなさい」
「分かりました。お父様、ごめんなさい。わたくしはまだ、お父様を許せません」
「すまなかった……白雪……」
「鏡先生、ごめんなさい。せっかく教えて頂いたのに下品な態度をとってしまいました」
「ここはご家族しかいませんので、大丈夫ですよ。白雪姫様はまだ子どもです。これからも色々お教えしますので、次はもっと上手くやりましょうね」
「はい! あ、あの……お母様……ごめんなさい。嫌いにならないで……」
「白雪を嫌うなんてありえないわ!」
可愛い白雪を抱きしめると、震えていた。
そうか、白雪は寂しかったのね。
わたくしも、子どもの頃にお母様が亡くなってしまって……新しく来たお母様はあんなだったし、お父様は無関心だしで……寂しかったわ。
けどわたくしは、大事にしてくれるお兄様がいた。それに、鏡を作ってからは鏡もいた。けど白雪は……。
「……はぁ。甘いよなぁ。ホラ、もう時間だぜ。ちゃんとついててやるから。白雪姫様、姿は見えませんが私は近くにおりますので、困ったらお助けしますね」
「ありがとうございます鏡先生!」
「……鏡殿、姿を現していてはどうだ?」
「男が白雪姫様に付いてたら困るでしょう。白雪姫様の婚約者も探さないといけないんですから」
「女性の姿になれば良いではないか!」
「教師がベッタリ付いてる女性に魅力を感じる男性は少ないですぜ。今回のティーパーティは、白雪姫様の婚約者探しも兼ねてるんでしょう?」
「……しかしだな、姿を消すとカタリーナしか鏡殿を認識できないではないか」
「そりゃ、俺は女王様が作った鏡の精ですからね」
「わたくしは鏡先生が姿を消して、そばにいて下さる方が安心できますわ」
白雪の一言で、フリッツ様が黙った。
「だって今日は、お母様のご家族もいらっしゃるのでしょう? 失礼があってはいけませんわ。先生がいてくれた方が安心できますけど、先生に頼っている姿を見せたら……だからお願いですお父様! 鏡先生が姿を消して近くにいてくれる方が安心なんです。だって鏡先生は、わたくしを叩かない優しい先生なんですもの」
「……分かった。鏡殿、白雪を頼む」
「お任せ下さい。今の俺は白雪姫様の家庭教師です。さぁ白雪姫様。背筋を伸ばして、顔を上げて下さい。貴女は世界一美しい。ですから、堂々と歩きましょう」
「はい! 頑張ります!」
「……あ、先生の姿が……お父様、先生は見えますか?」
「いや、見えない。カタリーナ、鏡殿は何処に?」
「白雪のすぐそばにおりますわ。だから安心して下さいまし」
『俺は白雪姫に付いてれば良いのか?』
『それでお願い。わたくしは出来るだけ白雪から離れないようにするけど、わたくしが離れても白雪に付いていてちょうだい』
わたくしと鏡は、鏡が暴走しかけた日から声に出さずとも心で会話が出来るようになった。鏡との絆が深まった証らしいわ。
鏡は姿を消している事も多いから、とても楽に意思疎通が出来るようになった。その分、わたくしの心は鏡に筒抜けみたいだけどまぁ良いわ。鏡に隠し事なんて無駄だもの。
『分かった。もしかしたら、やべーのが来るかもしんねぇ』
『は?! 聞いてないわよ!』
『今向かい始めたんだから責められても困る。俺はヒトの心までは分からねぇんだから』
『そうだったわね。例の王子ね?』
『ああ。近くにはいたんだけど、白雪姫の誕生日祝いの話を今街中で聞いちまったらしい。急に馬を買ってどっかに向かおうとしてるぜ』
『それ、来るの確定じゃない! 一応王族なんだから来たら迎え入れるしかないし……どうしよう鏡!』
『出来るだけ白雪姫と会わせないように逐一動向を伝える。アンタも会わないようにしろよ』
『わたくしも?』
『ああ。アンタが気に入られる可能性だってあるんだからな。あっちの方が国力は上だし、国王様も無下にできねぇだろ』
『そうね。気を付けるわ』
『ティーパーティはニ時間程度だから、来ない事を祈ろうぜ。とりあえず兄上の目を誤魔化せよ』
『そうだったわ。わたくしが幸せだと訴えるだけじゃお兄様は納得しないもの。フリッツ様と仲の良いフリをするわ』
『フリ……ねえ。まぁ頑張れよ』
どうしたのかしら?
鏡がなんだか悲しそう。
『鏡……どうしたの?』
『ったく、相変わらず、お優しいんだから……俺は大丈夫だよ。そんな不安な顔してる暇はないぜ。もう時間だ。あとでゆっくり話そうぜ』
鏡はそう呟いてわたくしの頭を撫でると、美しく笑った。
今日は、なんと!
白雪の誕生日なのよ!
「なぁ、さっきから顔が緩みっぱなしだぜ」
鏡に注意されてしまったわ。いけない。今から社交をするというのに。
「……反省してるわ。これでどうかしら?」
「良いんじゃね。美しい女王様になったぜ。ホラ、そろそろアンタを溺愛してる兄上も来るぜ。上手い事仲良し夫婦を演じねぇと、白雪姫と引き離されるぞ」
「それだけは絶対に嫌よ。フリッツ様、お嫌でしょうけど、今日だけは白雪の為に我慢して下さいませ」
「任せてくれ! なんならこれからもずっと……」
「お母様! 頂いたブローチをつけてみましたの! いかがですか?」
「可愛いわ! 美しいわ! 素敵よ白雪!」
「嬉しいです。素敵なプレゼントをありがとうございます」
鏡が大笑いしているわ。しかも、白雪と目配せしているじゃないの。フリッツ様も困ったように笑ってるし。
鏡が白雪と仲が良いのは嬉しいけど、なんだか心がムズムズするわ。
「ねぇ鏡。わたくしは美しい?」
「ああ、スッゲー可愛いし、美しいぜ」
「……ほんと?」
「俺は嘘は吐かねぇよ。アンタだって分かってんだろ。姿を消してついててやるから安心しな」
「ありがとう鏡。……よし、行くわよ白雪! フリッツ様、お嫌でしょうけど今だけは腕を組んでもよろしくて?」
「嫌ではない! 我々は夫婦なんだから、いつでも近くに……」
「お父様」
さっきから、白雪はフリッツ様の言葉を遮っているわね。なにか理由があるのかしら?
……ああそうか。
白雪は、まだフリッツ様を許せていないんだわ。白雪は、普段は人の言葉を遮るなんて失礼な事をしない。こんな態度を取るのは、白雪がまだ父親にわだかまりを抱えているからなんだわ。
「白雪。無理に自分を心を誤魔化す必要はないわ。けど、お父様にはお父様の気持ちや言葉があるの。聞きたくなければ聞かなくて構わないわ。でも、お父様の言葉を遮るのは失礼だから、おやめなさい」
「分かりました。お父様、ごめんなさい。わたくしはまだ、お父様を許せません」
「すまなかった……白雪……」
「鏡先生、ごめんなさい。せっかく教えて頂いたのに下品な態度をとってしまいました」
「ここはご家族しかいませんので、大丈夫ですよ。白雪姫様はまだ子どもです。これからも色々お教えしますので、次はもっと上手くやりましょうね」
「はい! あ、あの……お母様……ごめんなさい。嫌いにならないで……」
「白雪を嫌うなんてありえないわ!」
可愛い白雪を抱きしめると、震えていた。
そうか、白雪は寂しかったのね。
わたくしも、子どもの頃にお母様が亡くなってしまって……新しく来たお母様はあんなだったし、お父様は無関心だしで……寂しかったわ。
けどわたくしは、大事にしてくれるお兄様がいた。それに、鏡を作ってからは鏡もいた。けど白雪は……。
「……はぁ。甘いよなぁ。ホラ、もう時間だぜ。ちゃんとついててやるから。白雪姫様、姿は見えませんが私は近くにおりますので、困ったらお助けしますね」
「ありがとうございます鏡先生!」
「……鏡殿、姿を現していてはどうだ?」
「男が白雪姫様に付いてたら困るでしょう。白雪姫様の婚約者も探さないといけないんですから」
「女性の姿になれば良いではないか!」
「教師がベッタリ付いてる女性に魅力を感じる男性は少ないですぜ。今回のティーパーティは、白雪姫様の婚約者探しも兼ねてるんでしょう?」
「……しかしだな、姿を消すとカタリーナしか鏡殿を認識できないではないか」
「そりゃ、俺は女王様が作った鏡の精ですからね」
「わたくしは鏡先生が姿を消して、そばにいて下さる方が安心できますわ」
白雪の一言で、フリッツ様が黙った。
「だって今日は、お母様のご家族もいらっしゃるのでしょう? 失礼があってはいけませんわ。先生がいてくれた方が安心できますけど、先生に頼っている姿を見せたら……だからお願いですお父様! 鏡先生が姿を消して近くにいてくれる方が安心なんです。だって鏡先生は、わたくしを叩かない優しい先生なんですもの」
「……分かった。鏡殿、白雪を頼む」
「お任せ下さい。今の俺は白雪姫様の家庭教師です。さぁ白雪姫様。背筋を伸ばして、顔を上げて下さい。貴女は世界一美しい。ですから、堂々と歩きましょう」
「はい! 頑張ります!」
「……あ、先生の姿が……お父様、先生は見えますか?」
「いや、見えない。カタリーナ、鏡殿は何処に?」
「白雪のすぐそばにおりますわ。だから安心して下さいまし」
『俺は白雪姫に付いてれば良いのか?』
『それでお願い。わたくしは出来るだけ白雪から離れないようにするけど、わたくしが離れても白雪に付いていてちょうだい』
わたくしと鏡は、鏡が暴走しかけた日から声に出さずとも心で会話が出来るようになった。鏡との絆が深まった証らしいわ。
鏡は姿を消している事も多いから、とても楽に意思疎通が出来るようになった。その分、わたくしの心は鏡に筒抜けみたいだけどまぁ良いわ。鏡に隠し事なんて無駄だもの。
『分かった。もしかしたら、やべーのが来るかもしんねぇ』
『は?! 聞いてないわよ!』
『今向かい始めたんだから責められても困る。俺はヒトの心までは分からねぇんだから』
『そうだったわね。例の王子ね?』
『ああ。近くにはいたんだけど、白雪姫の誕生日祝いの話を今街中で聞いちまったらしい。急に馬を買ってどっかに向かおうとしてるぜ』
『それ、来るの確定じゃない! 一応王族なんだから来たら迎え入れるしかないし……どうしよう鏡!』
『出来るだけ白雪姫と会わせないように逐一動向を伝える。アンタも会わないようにしろよ』
『わたくしも?』
『ああ。アンタが気に入られる可能性だってあるんだからな。あっちの方が国力は上だし、国王様も無下にできねぇだろ』
『そうね。気を付けるわ』
『ティーパーティはニ時間程度だから、来ない事を祈ろうぜ。とりあえず兄上の目を誤魔化せよ』
『そうだったわ。わたくしが幸せだと訴えるだけじゃお兄様は納得しないもの。フリッツ様と仲の良いフリをするわ』
『フリ……ねえ。まぁ頑張れよ』
どうしたのかしら?
鏡がなんだか悲しそう。
『鏡……どうしたの?』
『ったく、相変わらず、お優しいんだから……俺は大丈夫だよ。そんな不安な顔してる暇はないぜ。もう時間だ。あとでゆっくり話そうぜ』
鏡はそう呟いてわたくしの頭を撫でると、美しく笑った。
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