婚約破棄計画書を見つけた悪役令嬢は

編端みどり

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11.計画書の中身

 話し合いが進む中、突然トムが紙を取り出し婚約破棄計画書を眺めながらペンを走らせ始めた。

「トム、なにをしているの?」

「ミランダ様が写した婚約破棄計画書はミランダ様の字で書かれています。万が一見つかればミランダ様が裏で動いたと思われてしまいますので、王太子の筆跡で書き直しています。王太子の筆跡なら、拾ったと言い訳出来ますし、上手く使えば追い詰める小道具にもできます。貴族の皆様に見せてもいいように、知られてはまずい部分は全て抜きましょう」

 トムはものすごいスピードで計画書を書き直し、ミランダの書いた婚約破棄計画書を暖炉に放り込んだ。

 書類が燃え尽きるのを確認したトムが小声で呟く。

「王太子はミランダ様のなにが気に入らなかったのでしょう。成人しているのにこんな稚拙な計画を立てるなんて、彼は本当に王太子としての教育を受けたのでしょうか。婚約破棄計画書は、誰かが書いた偽物という可能性はありませんか?」

 トムの写した婚約破棄計画書を眺めながら、ミランダが返事をする。

「トムが写した物はアルフレッドの筆跡にそっくりだけど、一部のスペルの書き方が違う。アルフレッドの字は全て覚えているわ。偽物なら絶対分かるから、わたくしが見たのは本物よ。それに、アルフレッドの考えそうなことが書いてあるもの」

「そうですか。ちなみに、どの文字が違いますか?」

「ここと、ここ。二箇所だけ。アルフレッドの字なら内側に跳ねるの。あとはそっくりよ」

「すぐ訂正します」

「トムも凄いが、ミランダも凄いな。筆跡鑑定士になれるぞ」

「アルフレッドの筆跡なら完璧に真似できるの。いつも代筆させられてたから。うちを潰す理由にされるとは思わなかったけどね。事前にわかっていればアルフレッドに弱点を突かれる心配はないわ。わたくしが書いたものはアルフレッドの字と区別がつかない。わたくしが代筆を認めなければ、証拠はない」

「この計画書が見つかって良かった。王太子の思惑を知らなければ、ミランダも我々も潰されていたかもしれん」

 アルフレッドが書いた婚約破棄計画書には、ミランダをどうやって潰すか詳細に書かれていた。ミランダは、アルフレッドの字を真似て彼の執務を代行していた。婚約者は特例で認められていると騙され、アルフレッドの字を完璧に真似るよう練習させられた。最初は不審に思ったが、国王からどんな手も使っても良いからアルフレッドの仕事を進めろと命じられ、アルフレッドも許可があると言い張るのでいつもアルフレッドの筆跡を真似て書類を作成していた。

 王の許可は出ていないので、代筆がバレれば家は取り潰し。命じたアルフレッドもただでは済まない。それなのに、アルフレッドは代筆を理由にミランダと婚約破棄しようとしていた。自分の罪は知らん顔して、ミランダに全てなすりつけるつもりだったのだ。

 ミランダは、家族に今までの経緯を説明する。

「代行して良いなら、わたくしの字でも良いでしょうとお伝えしたら、俺に恥をかかせる気かと怒鳴られましたの。父上の許可を得ているから、俺の実績作りに協力しろと言われて……正直、アルフレッドが執務をしないのは皆も知っておりましたので、確かに実績は必要だと思ってしまいまして。アルフレッドが拗ねて執務をしなくなっても困るし、国王陛下の許可が出ているなら大丈夫だと考えてしまいました」

「いやー……その状況じゃ、王に言っても王妃に言っても、王太子の実績作りをやれって言われて終わりでしょ。むしろ下手にミランダが周りに確認しなかったおかげで、代筆を疑ってる人はいない。こちらが有利だ」

「そうですね。みんな、わたくしがアルフレッドを宥めて書類を書かせていると思っていますわ。わたくしが王太子妃になれば、倍のスピードで仕事を回せるとよく言われますもの」

「そんな未来は来ない。どいつもこいつもミランダを便利扱いしおって」

「全くだ。父上、王太子の企みを徹底的に潰しましょう」

 その後、今後の打ち合わせを行い、準備は整った。トムが写したアルフレッドの筆跡をそっくり真似た婚約破棄計画書はヒースが肌身離さず持つことになった。必要があれば貴族達の前で晒す。婚約破棄が成立したら、すぐさま焼き払う手はずだ。

 バーナード侯爵家の者たちはトムの部屋を出て、ミランダは隠し通路で部屋に戻った。ミランダは晩餐で話をして、部屋にこもり悩む演技を続けている。

 その頃トムは、焼き払ったはずの婚約破棄計画書を眺めていた。トムが書いたものだ。トムはミランダのような記憶力はない。婚約破棄計画書を全て覚えるのは無理だったので、焼いたと見せかけてとっておいたのだ。ある事に、使うために。
 
 トムの顔を見ていたら、ミランダはトムを引き留めただろう。しかし、ミランダはいない。トムは婚約破棄計画書を封筒に入れ、懐に仕舞い、家族の元へ走った。
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