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46.コインはこぼれ落ちた
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「決別の……証……だって……叔父上がミランダを貶したから……だから私は……」
アルフレッドお得意の、他責思考。裁定者は顔を歪め、アルフレッドを睨みつけた。
「誰がなんと言おうと、婚約者を守るのが王族なんじゃないの? ミランダに落ち度があるならともかく、あの子はなにも悪くなかったじゃない」
なにも答えないアルフレッドの目の前で、裁定者はコインを弄んだ。
「貴方の影、よほど貴方が嫌いだったのね。全員このコインを出してきたわ。国王の影も、王弟殿下の影もね。わたくしはコレを国王に届けるのが役目なの。でも、いつ渡すかは決められていない。だから、もう少し待つわ」
「……どう、して……」
「貴方の父上に渡したくないからよ。今頃、王は誰に変わっていると思う?」
「……お、叔父上に……」
「正解。このコインは、王に渡すものなの。本当は嫌なのよ。やりたくないわ。顔を隠すのが面倒なんだもの」
目の前で顔を隠した女性は、性別すら分からなくなっていた。次に彼女が発した言葉は、先程までの優美な声ではなくしゃがれた性別も分からない声。
裁定者は、声すら自在に操れないといけないのか。なぜ、こんな恐ろしい存在を形骸化しているから気にしなくて良いと思ったんだ。自分の身体が震えているのに、目の前の人から目を逸らせない。
獣に狙われた獲物であるアルフレッドは、ただ、じっとしているしかできない。
「なりたてでも、王は王。影は王位継承権のある王族の駒として生きる。その代わり、納税が免除されているわ。領地の利益は丸ごと家のものになる。知ってた?」
「……はい。王太子になった時、裁定者の件も含めて父に聞きました」
「貴方のお父上なら、影が貴方を見限ってもそのまま影として生きる事を認めたでしょうね。でも、無駄を嫌う貴方の叔父上はどうかしら? セルは今のまま影でいられるわ。でも、他の影達……特に貴方の影はどうなるかしら? このコインは、ちょうど良い理由になる。貴方の叔父上、主人を見限る影は要らないとか言いそうじゃない」
「……言い……ますね」
「影をクビにするのは王の権限よ。影でなくなれば、免除されていた税を払わないといけない。納税ができなければ、特別な理由がない限り取り潰し。頑張って働かないと取り潰されちゃうわ。セルの影達は優秀だから、やけになって秘密を漏らそうとしたら消されちゃうだろうし。まぁでも、ミランダを可哀想可哀想と言いながら優越感に浸っていた奴等なんて、影でいる必要ないものね。無駄にお喋りするし、弱いし、ご主人様にそっくりだわ」
右手から左手に、玩具のように弄ばれるコインは影達の未来を暗示しているかのように床にこぼれ落ちた。
カラン、カランとコインの音が響く。
「あはは、落としちゃったわ」
アルフレッドは、何も喋れなくなった。目の前にいる女性に助けを求めても無駄だと本能で理解してしまい、恐怖で動けない。
「アルフレッド! アルフレッド!」
その時、父の声がした。弟に全てを譲り渡した元国王は、僅かな望みをかけて息子を探していた。
裁定者の冷たい声が響く。
「あの人、本当に親バカなのね。良かったわね。死ななくてすみそうよ。それじゃ、さよなら」
裁定者はロープを残して、消えた。すぐに父が現れ、アルフレッドを助けてくれた。
「……ち、父上……」
「無事か?」
「足を痛めましたが、生きております」
「そうか……良かった……」
その後、アルフレッドは父に沢山叱られた。もう我々は王族ではない。母と共に幽閉されると告げられた。
以前のアルフレッドなら、激高していただろう。だが、アルフレッドは涙を流して喜んだ。裁定者が来ないなら、それで良いと泣く息子を慰めながら、元国王は自分の元に届いた便箋を思い出していた。
『アンタの息子、殺して良い?』
そう書かれた便箋は、今まで伝わっているどんな裁定者の警告よりも恐ろしかった。
恐怖に怯え、とにかく息子をよく見せようとした結果、更に裁定者の怒りを買った。
結局息子を取った自分は、王に相応しくなかったのだろう。自分と正反対の弟に全てを背負わせてしまった罪悪感はあるが、もうどうでもいい事だ。
弟は、自分で選び取ったのだから。
長年抱えていた重圧から解き放たれ、ただの父になった男は息子を連れてゆっくりと歩き出した。
アルフレッドお得意の、他責思考。裁定者は顔を歪め、アルフレッドを睨みつけた。
「誰がなんと言おうと、婚約者を守るのが王族なんじゃないの? ミランダに落ち度があるならともかく、あの子はなにも悪くなかったじゃない」
なにも答えないアルフレッドの目の前で、裁定者はコインを弄んだ。
「貴方の影、よほど貴方が嫌いだったのね。全員このコインを出してきたわ。国王の影も、王弟殿下の影もね。わたくしはコレを国王に届けるのが役目なの。でも、いつ渡すかは決められていない。だから、もう少し待つわ」
「……どう、して……」
「貴方の父上に渡したくないからよ。今頃、王は誰に変わっていると思う?」
「……お、叔父上に……」
「正解。このコインは、王に渡すものなの。本当は嫌なのよ。やりたくないわ。顔を隠すのが面倒なんだもの」
目の前で顔を隠した女性は、性別すら分からなくなっていた。次に彼女が発した言葉は、先程までの優美な声ではなくしゃがれた性別も分からない声。
裁定者は、声すら自在に操れないといけないのか。なぜ、こんな恐ろしい存在を形骸化しているから気にしなくて良いと思ったんだ。自分の身体が震えているのに、目の前の人から目を逸らせない。
獣に狙われた獲物であるアルフレッドは、ただ、じっとしているしかできない。
「なりたてでも、王は王。影は王位継承権のある王族の駒として生きる。その代わり、納税が免除されているわ。領地の利益は丸ごと家のものになる。知ってた?」
「……はい。王太子になった時、裁定者の件も含めて父に聞きました」
「貴方のお父上なら、影が貴方を見限ってもそのまま影として生きる事を認めたでしょうね。でも、無駄を嫌う貴方の叔父上はどうかしら? セルは今のまま影でいられるわ。でも、他の影達……特に貴方の影はどうなるかしら? このコインは、ちょうど良い理由になる。貴方の叔父上、主人を見限る影は要らないとか言いそうじゃない」
「……言い……ますね」
「影をクビにするのは王の権限よ。影でなくなれば、免除されていた税を払わないといけない。納税ができなければ、特別な理由がない限り取り潰し。頑張って働かないと取り潰されちゃうわ。セルの影達は優秀だから、やけになって秘密を漏らそうとしたら消されちゃうだろうし。まぁでも、ミランダを可哀想可哀想と言いながら優越感に浸っていた奴等なんて、影でいる必要ないものね。無駄にお喋りするし、弱いし、ご主人様にそっくりだわ」
右手から左手に、玩具のように弄ばれるコインは影達の未来を暗示しているかのように床にこぼれ落ちた。
カラン、カランとコインの音が響く。
「あはは、落としちゃったわ」
アルフレッドは、何も喋れなくなった。目の前にいる女性に助けを求めても無駄だと本能で理解してしまい、恐怖で動けない。
「アルフレッド! アルフレッド!」
その時、父の声がした。弟に全てを譲り渡した元国王は、僅かな望みをかけて息子を探していた。
裁定者の冷たい声が響く。
「あの人、本当に親バカなのね。良かったわね。死ななくてすみそうよ。それじゃ、さよなら」
裁定者はロープを残して、消えた。すぐに父が現れ、アルフレッドを助けてくれた。
「……ち、父上……」
「無事か?」
「足を痛めましたが、生きております」
「そうか……良かった……」
その後、アルフレッドは父に沢山叱られた。もう我々は王族ではない。母と共に幽閉されると告げられた。
以前のアルフレッドなら、激高していただろう。だが、アルフレッドは涙を流して喜んだ。裁定者が来ないなら、それで良いと泣く息子を慰めながら、元国王は自分の元に届いた便箋を思い出していた。
『アンタの息子、殺して良い?』
そう書かれた便箋は、今まで伝わっているどんな裁定者の警告よりも恐ろしかった。
恐怖に怯え、とにかく息子をよく見せようとした結果、更に裁定者の怒りを買った。
結局息子を取った自分は、王に相応しくなかったのだろう。自分と正反対の弟に全てを背負わせてしまった罪悪感はあるが、もうどうでもいい事だ。
弟は、自分で選び取ったのだから。
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