腐的な笑み

鑽孔さんこう

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腐段の数倍

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骨の太い手が申し訳程度についている胸筋を寄せ集めた。

ゆったりと揉まれる感触に、緊張した体を和ませる。

親指が乳輪を避けてくるくると刺激してくる。

「んう~?」

こそばゆいような、物足りないような感覚に混乱していると。

いつの間にか固くなった頂を指の腹で撫で擦られて、あられもない声が出た。

「んあぁぁっ!?あぅ、ひゃっ、もっとぁっ、つよくっ!」

擦られ、蕾が左右に揺られると、段々感度が落ちていく。

その割に硬くなる体積が大きくなっていくのだから不思議だ。

さらなる快感を欲してしまう。

「んぁひっ!ひあぁっ♡んにゃぁ~…♡」

大きくなった肉粒を親指と人差指でつままれ、引っ張られたり、つねられたりする度、体全体に甘さが広がる。

「こんなっ…きもひぃいの、なんでぇっ?」

「さぁ、何故だろうな。」

露成はニヤリと笑いを滲ませると、左胸の蕾を人差し指の短い爪で弾いた。

「んっ!んひいぃぃっ?!っああ“ぁっ!」

無遠慮な快感に背を反らして絶頂する。

肌着の上にパシャッと白濁液がかかった。

「イくほど気持ち良かったか?」

胸を撫でさすりながら、犯人が優しく伺ってくる。

俺は射精後の賢者タイムのせいで冷静に答えた。

「おぅ。いつも寝る前にしてるやつの何十倍も気持ちよかったぜ。イかされるとは思わなかったけどな。」

「あぁ、昔言ったことちゃんと続けてるんだな。偉い。」

露成は目を細めると、俺の頭をわしゃわしゃと撫でた。

露成の言葉を聞いて、長年続けてきた謎の習慣の理由を思い出した。

「お前が『毎日乳首を揉まないと若いうちから禿げる』って言うから小1の頃から揉んでるけど、最早寝る前に乳首揉まないと寝れなくなってさぁー。
修学旅行の時とか、露成が同じ布団に入ってきたから隠すの大変だったんだぜ?そーいや言ってきた張本人だったー。」

露成は屈託なく笑うと俺の右横に寝転がった。

「今まで忘れてたのか。布団の中で、反対向いてても背中がビクビクしてて可愛かったぞ。」

「なんか露成が隣に居ると思ったらくすぐったさが増したんだよなー?よく分かんねーけどさ。」

旅館でのあれこれは辛楽併せ持つ大切な思い出だ。

枕が変わると眠れない自分にとって、添い寝を申し出てくれた露成の存在はツンデレ的にもありがたかった。

承諾をするのが恥ずかしくて渋る振りをした悠に、珍しく強気に意見を通してくれたことを回想して、心がほぐれる。

「さてと、まだジュースに仕込んだ媚薬は抜けてない。まだ気持ちよくなりたいだろ?」

まだ純真な右側の胸を、人差し指が、つつつ…と辿った。

目が吸い寄せられてシャツの表面に小山ができる。

露成の指は下胸から小山へ直線的に動いてくる。

しかし、小山の直前でふいっと避けて鎖骨で止まった。

拘束のせいで手を掴んで触らせることもできず、体を左右に揺らして抗議する。

「んぅぅ~っ!じらすなっ!」

「赤ちゃんみたいに駄々こねて、可愛いな。」

「うぅっ…きらいになるかぅあんっ!」

俺が分かっていながら禁句を発そうとすると、性感部にデコピンを受けた。

「いけないことを言って…。焦らしすぎたみたいだな。」

最後の砦であるインナーシャツが捲られ、這い込む手が直に肌を熟れさせる。

再度覆い被さると、胸の左飾りに吸い付いた。

右はくりくりと虐められる。

「あ♡しゅきっ♡しゅきりゃからあ♡」

ジュッと吸われて肢体をびくりと跳ねさせた。

「あぁ…だよな?嫌い、なんて思うわけないよなぁ?」

怖い顔をした露成に歯を立てられて、頭の中はマーブル模様になってしまう。

「ひぃん!かむの、や…やだっ♡もっとあとつけて♡ろなり!っはふ♡しゅき♡」

「ドロドロに溶けろ。」

今度は右側に吸い付き、桃色の柔肌に刺すような痛みを散りばめる。

体の側面に一しきり歯を立てられ、肌の表面を茨が撫でていく。

「ふあ、ぁうっ!ひゅ、はぁ、んっ…っん!」

両側から行われる性感帯への攻撃に、その都度びくりと体を跳ねさせる。

跳ねた腰が落ちきる間もなく、『露成によって』刺激を施される時間が、この上なく嬉しい。

叶うならこれが永久に続いて欲しい。

自分達の年齢を鑑みると叶いそうも無い夢だが、大人になればきっと。

輪郭を一周して戻って来た黒髪を、胸元に抱き寄せて囀る。

「かんで、おれごとこわして…♡」

露成は短い息を二度零すと、心臓の上に思い切り噛みついた。


驚いて心臓が止まりそうになったが、乾いた笑いに意識を持っていかれる。

「中に詰まった意地やら外面やらを食い尽くして、オレの盲愛で溺れさせる。溢れたならその分呑み込ませる。可愛い悠が極まるわけだ。あ‘‘ぁっ、ははははっ!」

刹那狂人の様相を晒したが、表情を隠しなおすように唇へとしゃぶりつかれたため、本性を探り当てるまでには至らなかった。

「りょな、んあっ!ちゅうちゅうっん、や、あ、ぁきゅぅ…♡そ、んにゃ♡ふとももはぁ、えあっ!いたいのっ!ばかぁ♡」

「傷跡が擦れる度、恥ずかしいコトしちゃった、って思い出せるだろ?オレにも欲しいけど、悠は苦手そうだから止めとくか。…いずれ、な♡」

錯乱した露成の足元で、キスマークと歯型による大輪の薔薇が狂い咲いた。

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