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3・桐とタルト
桐とタルト・8
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「自己紹介がまだでしたよね。俺は御園生秀治といいます。じきにカフェの店長になる予定です。こちらは庭師をしている御園生有麻で、俺の伯父です」
「ま、まりあさんじゃ、ないんですね」
祥子は正面に座る有麻をちらっと見て、すぐに顔を伏せた。何となく小動物を思わせる仕草だ。
「まりあと呼ぶのは、莉々子だけですね。あ、俺の娘の莉々子です」
莉々子は立ち上がって祥子の横まで歩いていくと、またスカートをつまみ上げる淑女のあいさつをした。
「莉々子です。どうぞおみみりおきを」
「おみしりおきだろ」
秀治の突っこみを、やんわりと祥子は手で制した。
「大丈夫、わかりますから」
そして莉々子に目線を合わせ、ていねいに頭を下げた。
「荒川祥子です。どうぞよろしく」
莉々子に恥をかかせないようにし、莉々子を一人前の人として扱ってくれている。祥子の人柄が垣間見えた気がした。
「さあ、お茶をどうぞ。ハーブティーなんですが」
有麻がカップを手渡すと、また祥子の頬がバラ色に染まる。
「ありがとうございます。まりあ、じゃない有麻さん」
「まりあでもいいですよ」
有麻に笑いかけられて、祥子の顔はバラ色を通り越してゆでだこ状態だった。自分を落ち着かせるようにカップに口をつけ、ふーと息をつく。
「何だか、落ち着く感じがします」
「カモミールのブレンドなんです。カモミールは……」
「あ、大丈夫です。さっきの説明ドア越しに聞いてしまったので」
しゃべりかけた秀治を手で制して、祥子は肩をすくめる。
「マフィンもどうぞ。プレーンとチョコチップのどちらが?」
「ど、どっちも、いいですか?」
有麻が取り分けたマフィンの皿を受け取って、祥子はまずはチョコチップから口をつけた。ふんふんとうなずきながら食べきり、プレーンはまず何もつけずにかじりつく。その後イチゴジャムを塗り、一口食べて「おいしい」と声を上げた。
「このイチゴジャムおいしいですね。手作りですか?」
「そう、この近くのイチゴ農家さんが毎年規格外品を分けてくれるんだ」
「イチゴの品種は?」
「色々。ごちゃまぜにして、ジャムにしちゃってる」
「わあ、贅沢」
有麻と会話する祥子は、楽しげだ。やはりお菓子作りへの興味は、まだ祥子の中にあるようだ。
さあ、ここからどうする気なんだと、秀治は有麻に目線をやる。
その視線を受け、桐の切り株と祥子とに目線をやって、有麻は話し出した。
「桐の木の話をしてもいいですか?」
ビクリと、祥子の肩が跳ねた。
「克也さんも祥子さんも、あの桐の木が祥子さんが生まれた時の記念樹だと思われてますよね。そもそも、そこが間違いだったんです」
「間違いって、そんな」
「いや、御園生さん、そんなはずはないです。あの桐の木は、祥子が生まれた時にお袋が植えた木なんですから。記念樹じゃないとしたら、何のために植えたんですか」
祥子と克也が口々に言っても、有麻の顔色は変わることはない。
「他の木だったら、記念樹だったと思うんですよ。でも、桐の木となると、意味合いが違ってきます」
桐の切り株に目をやって、有麻はすうっと目線を上へ滑らせた。まるで、そこに存在した桐の木を仰ぐように。
「昔は、女の子が生まれると、家の敷地に桐の木を植えたそうなんです。どうしてか、わかりますか?」
「え、だから、記念樹では……」
そう言えば、ここのお隣の宮村さんも言っていた。『昔はよく女の子が生まれると桐の木を植えたものだけど、今は見なくなったわよねえ』と。
「昔はお嫁入りの時に、娘に訪問着や留袖を持たせるのが一般的でした。それらを入れる桐の箪笥も、嫁入り道具として必需品だったんです。桐の木は防湿、防虫効果があり、火にも強いと言いますから、着物をしまうのにはぴったりですからね」
その辺りの話は知っているようで、克也もうなずいている。
「しかし桐の箪笥というのは、なかなか高価な品物です。そこで親達は女の子が生まれたら、家の敷地に桐の木を植えたんです。桐の木は生長が早いですからね。女の子と一緒にスクスク育ち、やがてお嫁入りする年頃になるとちょうど箪笥が作れるくらいに育っているというわけです。その木を伐って乾燥させて、箪笥を作ってもらい、お嫁入りに備えたんですね」
「生まれた時から、お嫁に出す準備をしているんですか?」
克也が、どこか呆れたような声を上げた。
「ええ、昔は女の子はお嫁に行くのが当たり前でしたからね。それが幸せなことだと言われていました。祥子さんのおばあさまも、そういう価値観の持ち主だったんじゃないでしょうか」
克也と祥子は顔を見合わせ、どちらからともなくうなずいた。
「おばあちゃん、いつも私に言ってました。女の子はお嫁に行くのが幸せだって。私の花嫁姿を楽しみにしてるって」
「えっ、ということは、ここの桐の木も?」
克也が何かに気づいたように、桐の切り株を振り返る。有麻が「そうです」とうなずいた。
「おばあさまは、祥子さんに嫁入り道具として桐の箪笥を持たせようと、桐の木を植えたんですよ」
克也と祥子は口に手を当てて呆然としていた。同じような表情でポカンとしているのを見ると、やはり親子なんだなと秀治は思う。
「専門学校に行くって決めた時、おばあちゃんにはずいぶん反対されました。女の子はお嫁に行くものなのに、手に職をつけてどうするって。そもそもの価値観が、私とは違っていたんですね」
「おばあさまはおばあさまなりに、祥子さんの幸せを願っていたんだと思いますよ。でも現代の感覚とはずれてしまっていたんですね」
「じゃ、じゃあ、どうして妻は、あの木を伐ってしまったのでしょう」
すがるような声で克也が言った。祥子がその隣で、ギュッとスカートを握るのが見えた。
「桐の木は、嫁入り道具の材料として用意されたものでした。祥子さんのお母さんは、それを、もういらないものだからと言ったんでしたね」
祥子の体が縮こまっていく。衝撃から身を守ろうとするように。
有麻が明かそうとしている真実は、本当に祥子にとって優しいものだろうか。祥子を救ってくれるのだろうか。
秀治自身も、膝に置いた手を握りこまずにいられなかった。
「祥子さんに嫁入り道具はいらない、と、お母さんは言ったんです。結婚するなという意味では決してないですよ。おばあさまの考えるお嫁さんは、家の中のことをしっかりやって、旦那さんを支える奥さんという姿だったんじゃないでしょうか。お母さんが祥子さんに望んだのは、そういう未来ではなかった」
祥子の手が、スカートから離れる。しわしわになったスカートから、祥子の緊張が伝わってくる。
「結婚相手に頼らず、自分の力で自分の人生を生きていって欲しい。お母さんはそう願いをこめて、桐の木を伐ったのじゃないでしょうか?」
刹那的に、祥子の顔に晴れやかなものが浮かんだ気がした。だけどすぐに、雲が太陽を覆ってしまうように、祥子の表情は影に沈む。
「じゃあ、じゃあどうしてお母さんは、私にあんなものを遺したんでしょう。形見の品がただの石ころなんでしょうか」
「ただの石ころを、お母さんがあなたに遺すと思いますか?」
「え……?」
祥子が思わずというように、有麻の顔を真っ直ぐに見つめる。その潤んだ瞳が、期待と不安で揺れているのがわかる。
「ま、まりあさんじゃ、ないんですね」
祥子は正面に座る有麻をちらっと見て、すぐに顔を伏せた。何となく小動物を思わせる仕草だ。
「まりあと呼ぶのは、莉々子だけですね。あ、俺の娘の莉々子です」
莉々子は立ち上がって祥子の横まで歩いていくと、またスカートをつまみ上げる淑女のあいさつをした。
「莉々子です。どうぞおみみりおきを」
「おみしりおきだろ」
秀治の突っこみを、やんわりと祥子は手で制した。
「大丈夫、わかりますから」
そして莉々子に目線を合わせ、ていねいに頭を下げた。
「荒川祥子です。どうぞよろしく」
莉々子に恥をかかせないようにし、莉々子を一人前の人として扱ってくれている。祥子の人柄が垣間見えた気がした。
「さあ、お茶をどうぞ。ハーブティーなんですが」
有麻がカップを手渡すと、また祥子の頬がバラ色に染まる。
「ありがとうございます。まりあ、じゃない有麻さん」
「まりあでもいいですよ」
有麻に笑いかけられて、祥子の顔はバラ色を通り越してゆでだこ状態だった。自分を落ち着かせるようにカップに口をつけ、ふーと息をつく。
「何だか、落ち着く感じがします」
「カモミールのブレンドなんです。カモミールは……」
「あ、大丈夫です。さっきの説明ドア越しに聞いてしまったので」
しゃべりかけた秀治を手で制して、祥子は肩をすくめる。
「マフィンもどうぞ。プレーンとチョコチップのどちらが?」
「ど、どっちも、いいですか?」
有麻が取り分けたマフィンの皿を受け取って、祥子はまずはチョコチップから口をつけた。ふんふんとうなずきながら食べきり、プレーンはまず何もつけずにかじりつく。その後イチゴジャムを塗り、一口食べて「おいしい」と声を上げた。
「このイチゴジャムおいしいですね。手作りですか?」
「そう、この近くのイチゴ農家さんが毎年規格外品を分けてくれるんだ」
「イチゴの品種は?」
「色々。ごちゃまぜにして、ジャムにしちゃってる」
「わあ、贅沢」
有麻と会話する祥子は、楽しげだ。やはりお菓子作りへの興味は、まだ祥子の中にあるようだ。
さあ、ここからどうする気なんだと、秀治は有麻に目線をやる。
その視線を受け、桐の切り株と祥子とに目線をやって、有麻は話し出した。
「桐の木の話をしてもいいですか?」
ビクリと、祥子の肩が跳ねた。
「克也さんも祥子さんも、あの桐の木が祥子さんが生まれた時の記念樹だと思われてますよね。そもそも、そこが間違いだったんです」
「間違いって、そんな」
「いや、御園生さん、そんなはずはないです。あの桐の木は、祥子が生まれた時にお袋が植えた木なんですから。記念樹じゃないとしたら、何のために植えたんですか」
祥子と克也が口々に言っても、有麻の顔色は変わることはない。
「他の木だったら、記念樹だったと思うんですよ。でも、桐の木となると、意味合いが違ってきます」
桐の切り株に目をやって、有麻はすうっと目線を上へ滑らせた。まるで、そこに存在した桐の木を仰ぐように。
「昔は、女の子が生まれると、家の敷地に桐の木を植えたそうなんです。どうしてか、わかりますか?」
「え、だから、記念樹では……」
そう言えば、ここのお隣の宮村さんも言っていた。『昔はよく女の子が生まれると桐の木を植えたものだけど、今は見なくなったわよねえ』と。
「昔はお嫁入りの時に、娘に訪問着や留袖を持たせるのが一般的でした。それらを入れる桐の箪笥も、嫁入り道具として必需品だったんです。桐の木は防湿、防虫効果があり、火にも強いと言いますから、着物をしまうのにはぴったりですからね」
その辺りの話は知っているようで、克也もうなずいている。
「しかし桐の箪笥というのは、なかなか高価な品物です。そこで親達は女の子が生まれたら、家の敷地に桐の木を植えたんです。桐の木は生長が早いですからね。女の子と一緒にスクスク育ち、やがてお嫁入りする年頃になるとちょうど箪笥が作れるくらいに育っているというわけです。その木を伐って乾燥させて、箪笥を作ってもらい、お嫁入りに備えたんですね」
「生まれた時から、お嫁に出す準備をしているんですか?」
克也が、どこか呆れたような声を上げた。
「ええ、昔は女の子はお嫁に行くのが当たり前でしたからね。それが幸せなことだと言われていました。祥子さんのおばあさまも、そういう価値観の持ち主だったんじゃないでしょうか」
克也と祥子は顔を見合わせ、どちらからともなくうなずいた。
「おばあちゃん、いつも私に言ってました。女の子はお嫁に行くのが幸せだって。私の花嫁姿を楽しみにしてるって」
「えっ、ということは、ここの桐の木も?」
克也が何かに気づいたように、桐の切り株を振り返る。有麻が「そうです」とうなずいた。
「おばあさまは、祥子さんに嫁入り道具として桐の箪笥を持たせようと、桐の木を植えたんですよ」
克也と祥子は口に手を当てて呆然としていた。同じような表情でポカンとしているのを見ると、やはり親子なんだなと秀治は思う。
「専門学校に行くって決めた時、おばあちゃんにはずいぶん反対されました。女の子はお嫁に行くものなのに、手に職をつけてどうするって。そもそもの価値観が、私とは違っていたんですね」
「おばあさまはおばあさまなりに、祥子さんの幸せを願っていたんだと思いますよ。でも現代の感覚とはずれてしまっていたんですね」
「じゃ、じゃあ、どうして妻は、あの木を伐ってしまったのでしょう」
すがるような声で克也が言った。祥子がその隣で、ギュッとスカートを握るのが見えた。
「桐の木は、嫁入り道具の材料として用意されたものでした。祥子さんのお母さんは、それを、もういらないものだからと言ったんでしたね」
祥子の体が縮こまっていく。衝撃から身を守ろうとするように。
有麻が明かそうとしている真実は、本当に祥子にとって優しいものだろうか。祥子を救ってくれるのだろうか。
秀治自身も、膝に置いた手を握りこまずにいられなかった。
「祥子さんに嫁入り道具はいらない、と、お母さんは言ったんです。結婚するなという意味では決してないですよ。おばあさまの考えるお嫁さんは、家の中のことをしっかりやって、旦那さんを支える奥さんという姿だったんじゃないでしょうか。お母さんが祥子さんに望んだのは、そういう未来ではなかった」
祥子の手が、スカートから離れる。しわしわになったスカートから、祥子の緊張が伝わってくる。
「結婚相手に頼らず、自分の力で自分の人生を生きていって欲しい。お母さんはそう願いをこめて、桐の木を伐ったのじゃないでしょうか?」
刹那的に、祥子の顔に晴れやかなものが浮かんだ気がした。だけどすぐに、雲が太陽を覆ってしまうように、祥子の表情は影に沈む。
「じゃあ、じゃあどうしてお母さんは、私にあんなものを遺したんでしょう。形見の品がただの石ころなんでしょうか」
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