31 / 31
3・桐とタルト
桐とタルト・10
しおりを挟む
お茶会も終わり、引き上げようとしたところで秀治は、克也が桐の切り株のそばに佇んでいるのに気がついた。
有麻がそうしたように、克也もまた在りし日の桐の木の姿を追うように、空へ目を向けている。秀治の姿に気づくと、上を指さした。
「毎年五月になると、花をつけていたんですよ。この桐の木」
秀治はうなずく。
「家の屋根よりも高いところに花をつけてね、藤よりも少し濃い紫色で、きれいなものでした」
桐の花は秀治も知っている。ずいぶん高い位置で咲くので、近くよりも遠くからのほうが目につく花だ。
「人の気持ちって、わからないものですね。私は有麻さんに言われるまで知りませんでした。お袋が桐の木を植えた理由も、妻の本当の気持ちも」
「近くにいると、意外と見えないものですよ」
秀治も空に視線を向けて、見えない桐の花を見ようと試みる。
「桐の花って、近くより遠くからの方が気づきやすいじゃないですか。そういうものじゃないですかね」
「ああ……なるほど」
秀治はさりげなく、桐の切り株に手を触れる。腕時計ははずしている。
今日のできごとに満足したのか、桐の木は何の言葉も発しなかった。本来の形とは違っても、祥子の役に立てることには変わりないのだから。
祥子に与えられたのは、きっかけだけだ。
それを元に歩き出せるかどうかは、祥子しだいなのだ。
開店パーティまでの一週間。秀治はカフェ開店のための最終準備に追われていた。
レジの操作の確認、電子マネーやクレジット決済の処理方法。コーヒー豆の焙煎工房とも打ち合わせを重ね、店オリジナルのブレンドコーヒーが出来上がった。
庭にはお客さんが入れる場所を決め、景色の邪魔にならないように、小道の両脇にガラス製の星の飾りのついたポールを立てた。そこより先は立ち入り禁止の旨と、花や木には触れないように、芝生と小道以外には踏みこまないようにという注意書きを、店内に貼り出しておく。
そして土曜日。開店パーティの日がやって来た。
秀治は朝ごはんも食べずにカレーの仕こみと、スコーンを焼く作業をしながら、テーブルの上を整えていく。今日は立食パーティなので、テーブルは店の真ん中にまとめて、お客さんが好きに料理を取れる形にする。ウッドデッキへのガラス戸は開け放し、デッキに直接座れる形にしてあった。
開店時間が近づいて来ると、お世話になっている人達が庭へと入って来る。ハーブティーを卸してくれる柴田さん、コーヒー焙煎工房の店主、秀治の師匠とも言えるバイトをしていたカフェの元オーナー。
お客様を入り口で迎えるのは、莉々子の仕事だ。レモン色のワンピースでおしゃれして、今日は特別にツルバラの小花で冠を作り、頭に飾っている。お客様に口々に服と冠をほめられて、莉々子はご機嫌だ。
お客様を迎えてあいさつやら飲み物の準備をしながら、秀治は絶えず庭の入り口を気にしていた。
祥子はお菓子を持ってきてくれるだろうか。雪乃は来てくれるだろうか。
開店時間が過ぎ、近所の方々もチラシを手に訪れて来た。今日はスコーンだけで乗り切るしかないかと、心でため息をついた時だった。
どこかで車のドアの閉まる音がした。秀治と同様に庭の小道の先を気にしていた有麻が、何かに気づいたように駆け出す。
しばらくして、小道から現れたのは祥子だった。余程慌てているらしく、長い髪のあちこちに小道のそばに咲いているコデマリの花びらをつけている。
「す、すみません。久しぶりで、やっぱり手際が悪くて、遅れてしまいました」
秀治はまずは祥子の手にしたケーキ箱を受け取った。今にも箱を引っ繰り返しそうな慌てようだったからだ。
「大丈夫ですよ。まだ始まったばかりですから」
祥子に続いて克也、有麻とがそれぞれケーキ箱を手にして庭に入って来る。
入口から店内に足を踏み入れた祥子は、カフェの内装と、そこから見える庭の景色とに目を輝かせた。秀治も芝生の向こうに目をやる。
梅雨が始まる前のこの時期の庭が、一年で一番美しいと秀治は思っている。
カフェの開店に合わせたように、ツルバラは満開となっていた。生垣を覆うように小ぶりなモッコウバラがクリーム色の花をつけ、薄紅や薄紫色のツルバラが花壇の後ろで存在感を示している。カーブしながら表の門の方へ伸びていくレンガの小道沿いには、キャットミントが涼し気なブルーの花を揺らし、レースのようなオルラヤの花と柔らかな緑の葉が作る景色は、どこかの国のいなかの風景を切り取ったようだ。
「素敵なお店……。こんな景色を見ながらお茶が飲めるなんて、贅沢ですね」
祥子のもらした言葉に、ご近所のかたがたもうなずいてくれる。
「そうそう。生垣越しに素敵なお庭だなって眺めてたんだけど、堂々と中に入れる機会ができて、うれしいわ」
自分がほめられたわけでもないのに、うれしさで胸の中が温かな綿あめのようなもので見たされていく気がする。
秀治は受け取ったケーキ箱からタルトを取り出し、大皿に移すとテーブルに並べていった。
まずは輪切りのオレンジの載った、チーズクリームらしきタルト。それから、莉々子と約束していたアップルパイ。これは、生地で見事な網目模様がほどこされていて、祥子の器用さと技術の高さがわかる。そして最後は、カットされたイチゴが芸術的に配置された、タルトだ。
テーブルに皿を置くと、女性客から感嘆の声が上がった。祥子自身がナイフを手にして、小さく切り分けては配ってくれる。
「店長さんもどうぞ」
祥子に店長と呼ばれて、照れくさくなったが、これから自分はこの店で何度もそう呼ばれるのだろう。
秀治はオレンジのタルトを一切れもらった。一口食べると、クリームチーズとオレンジの酸味が合わさって、口の中に爽やかさが広がる。クリームは口どけよく、タルト生地はさくさくとして、その食感の違いもいい。もう一口食べると、クリームの中に仕込まれたオレンジソースが出てきた。オレンジ風味が強くなり、また違う味が楽しめる。
「おいしいです。やっぱり、俺の舌は正しかったですね」
自画自賛するような秀治にちょっと苦笑いして、祥子は「あの」と言った。
「このスコーンですけど」
「はい」
「チョコチップの方は甘い生地のアメリカンスタイルなので、これで構わないと思います。でも、プレーンはジャムを添えて提供するんですよね」
「は、はい」
「イングリッシュスタイルのスコーンでしたら、もっとザクザクとした食感にしたほうがいいです。それに、クロテッドクリームは必須です」
やはりお菓子のこととなると、祥子の熱の入り方は違うようだ。わずかにたじろぎながら、秀治は言った。
「あ、あの、それだったら、祥子さんにお願いしてもいいですか?」
「え?」
「このカフェで、一緒に働いてもらえませんか?」
思い切ってそう頼みこむと、祥子はさっきまでの圧の強さはどこへ行ったのか、また小動物のように身を縮こませた。
「わ、私、接客は苦手なんです。ケーキ作るしか取り柄がなくて」
そのまま後ずさりする祥子の背を押してくれたのは、ご近所の奥様方だった。
「あら、素晴らしい取り柄だわ」
「ねえ、このタルト、すごくおいしい。見た目もきれいだし、イチゴとクリームのバランスが最高」
「祥子ちゃんのタルトが食べられるんなら、私もこのお店の常連になるわよ」
お隣の宮村婦人にまでそう声をかけられて、祥子の背が伸びるのがわかった。
「お姉ちゃんのアップルパイ、すっぱくなくてサクサクでおいしい」
莉々子の声が最後の一押しになったようだった。祥子が覚悟を決めたように、秀治に向き合う。
「慣れるまで接客は、俺一人でやりますから、どうでしょう」
「こ、こんな私ですが、よろしくお願いします」
ガバッと頭を下げた祥子に、店中の人々がわっと拍手をした。輪の外から克也が安心したように微笑む姿が見えた。
庭へ目をやった秀治は、小道沿いのコニファーが揺れるのを見た。新しいお客さんが来たのかとウッドデッキに出てみると、木の陰から覗く雪乃と目が合った。
雪乃は反射的に背を向けて小道を駆け出していく。慌てて追いかけた秀治が呼び止めようとしたところに風が吹き、裏口付近に咲くコデマリの枝が大きく揺れ、雪乃の行く手をふさいだ。
(グッジョブ!)
心の中でコデマリにお礼を言い、秀治は雪乃の手をつかむ。
「せっかく来たんだから、入っていって」
「でも、莉々子に合わせる顔がなくて……。有麻さんにだって、申し訳なくて」
「莉々子に合わせる顔なら、ここにある」
秀治が両手で雪乃の頬を包むと、雪乃は一瞬キョトンとし、こらえきれなくなったように笑い出した。
「パパー、今ママの声しなかった?」
秀治の背後から莉々子が駆けて来る足音がする。秀治は小道の脇に避けて、その時を待った。
「ママ!」
雪乃を見つけた莉々子が全速力で駆けてきて、雪乃に向かって飛びついていく。
秀治は目の前に落ちたバラの冠を拾って、雪乃に抱きついて離れない莉々子の頭にかぶせてやった。
有麻がそうしたように、克也もまた在りし日の桐の木の姿を追うように、空へ目を向けている。秀治の姿に気づくと、上を指さした。
「毎年五月になると、花をつけていたんですよ。この桐の木」
秀治はうなずく。
「家の屋根よりも高いところに花をつけてね、藤よりも少し濃い紫色で、きれいなものでした」
桐の花は秀治も知っている。ずいぶん高い位置で咲くので、近くよりも遠くからのほうが目につく花だ。
「人の気持ちって、わからないものですね。私は有麻さんに言われるまで知りませんでした。お袋が桐の木を植えた理由も、妻の本当の気持ちも」
「近くにいると、意外と見えないものですよ」
秀治も空に視線を向けて、見えない桐の花を見ようと試みる。
「桐の花って、近くより遠くからの方が気づきやすいじゃないですか。そういうものじゃないですかね」
「ああ……なるほど」
秀治はさりげなく、桐の切り株に手を触れる。腕時計ははずしている。
今日のできごとに満足したのか、桐の木は何の言葉も発しなかった。本来の形とは違っても、祥子の役に立てることには変わりないのだから。
祥子に与えられたのは、きっかけだけだ。
それを元に歩き出せるかどうかは、祥子しだいなのだ。
開店パーティまでの一週間。秀治はカフェ開店のための最終準備に追われていた。
レジの操作の確認、電子マネーやクレジット決済の処理方法。コーヒー豆の焙煎工房とも打ち合わせを重ね、店オリジナルのブレンドコーヒーが出来上がった。
庭にはお客さんが入れる場所を決め、景色の邪魔にならないように、小道の両脇にガラス製の星の飾りのついたポールを立てた。そこより先は立ち入り禁止の旨と、花や木には触れないように、芝生と小道以外には踏みこまないようにという注意書きを、店内に貼り出しておく。
そして土曜日。開店パーティの日がやって来た。
秀治は朝ごはんも食べずにカレーの仕こみと、スコーンを焼く作業をしながら、テーブルの上を整えていく。今日は立食パーティなので、テーブルは店の真ん中にまとめて、お客さんが好きに料理を取れる形にする。ウッドデッキへのガラス戸は開け放し、デッキに直接座れる形にしてあった。
開店時間が近づいて来ると、お世話になっている人達が庭へと入って来る。ハーブティーを卸してくれる柴田さん、コーヒー焙煎工房の店主、秀治の師匠とも言えるバイトをしていたカフェの元オーナー。
お客様を入り口で迎えるのは、莉々子の仕事だ。レモン色のワンピースでおしゃれして、今日は特別にツルバラの小花で冠を作り、頭に飾っている。お客様に口々に服と冠をほめられて、莉々子はご機嫌だ。
お客様を迎えてあいさつやら飲み物の準備をしながら、秀治は絶えず庭の入り口を気にしていた。
祥子はお菓子を持ってきてくれるだろうか。雪乃は来てくれるだろうか。
開店時間が過ぎ、近所の方々もチラシを手に訪れて来た。今日はスコーンだけで乗り切るしかないかと、心でため息をついた時だった。
どこかで車のドアの閉まる音がした。秀治と同様に庭の小道の先を気にしていた有麻が、何かに気づいたように駆け出す。
しばらくして、小道から現れたのは祥子だった。余程慌てているらしく、長い髪のあちこちに小道のそばに咲いているコデマリの花びらをつけている。
「す、すみません。久しぶりで、やっぱり手際が悪くて、遅れてしまいました」
秀治はまずは祥子の手にしたケーキ箱を受け取った。今にも箱を引っ繰り返しそうな慌てようだったからだ。
「大丈夫ですよ。まだ始まったばかりですから」
祥子に続いて克也、有麻とがそれぞれケーキ箱を手にして庭に入って来る。
入口から店内に足を踏み入れた祥子は、カフェの内装と、そこから見える庭の景色とに目を輝かせた。秀治も芝生の向こうに目をやる。
梅雨が始まる前のこの時期の庭が、一年で一番美しいと秀治は思っている。
カフェの開店に合わせたように、ツルバラは満開となっていた。生垣を覆うように小ぶりなモッコウバラがクリーム色の花をつけ、薄紅や薄紫色のツルバラが花壇の後ろで存在感を示している。カーブしながら表の門の方へ伸びていくレンガの小道沿いには、キャットミントが涼し気なブルーの花を揺らし、レースのようなオルラヤの花と柔らかな緑の葉が作る景色は、どこかの国のいなかの風景を切り取ったようだ。
「素敵なお店……。こんな景色を見ながらお茶が飲めるなんて、贅沢ですね」
祥子のもらした言葉に、ご近所のかたがたもうなずいてくれる。
「そうそう。生垣越しに素敵なお庭だなって眺めてたんだけど、堂々と中に入れる機会ができて、うれしいわ」
自分がほめられたわけでもないのに、うれしさで胸の中が温かな綿あめのようなもので見たされていく気がする。
秀治は受け取ったケーキ箱からタルトを取り出し、大皿に移すとテーブルに並べていった。
まずは輪切りのオレンジの載った、チーズクリームらしきタルト。それから、莉々子と約束していたアップルパイ。これは、生地で見事な網目模様がほどこされていて、祥子の器用さと技術の高さがわかる。そして最後は、カットされたイチゴが芸術的に配置された、タルトだ。
テーブルに皿を置くと、女性客から感嘆の声が上がった。祥子自身がナイフを手にして、小さく切り分けては配ってくれる。
「店長さんもどうぞ」
祥子に店長と呼ばれて、照れくさくなったが、これから自分はこの店で何度もそう呼ばれるのだろう。
秀治はオレンジのタルトを一切れもらった。一口食べると、クリームチーズとオレンジの酸味が合わさって、口の中に爽やかさが広がる。クリームは口どけよく、タルト生地はさくさくとして、その食感の違いもいい。もう一口食べると、クリームの中に仕込まれたオレンジソースが出てきた。オレンジ風味が強くなり、また違う味が楽しめる。
「おいしいです。やっぱり、俺の舌は正しかったですね」
自画自賛するような秀治にちょっと苦笑いして、祥子は「あの」と言った。
「このスコーンですけど」
「はい」
「チョコチップの方は甘い生地のアメリカンスタイルなので、これで構わないと思います。でも、プレーンはジャムを添えて提供するんですよね」
「は、はい」
「イングリッシュスタイルのスコーンでしたら、もっとザクザクとした食感にしたほうがいいです。それに、クロテッドクリームは必須です」
やはりお菓子のこととなると、祥子の熱の入り方は違うようだ。わずかにたじろぎながら、秀治は言った。
「あ、あの、それだったら、祥子さんにお願いしてもいいですか?」
「え?」
「このカフェで、一緒に働いてもらえませんか?」
思い切ってそう頼みこむと、祥子はさっきまでの圧の強さはどこへ行ったのか、また小動物のように身を縮こませた。
「わ、私、接客は苦手なんです。ケーキ作るしか取り柄がなくて」
そのまま後ずさりする祥子の背を押してくれたのは、ご近所の奥様方だった。
「あら、素晴らしい取り柄だわ」
「ねえ、このタルト、すごくおいしい。見た目もきれいだし、イチゴとクリームのバランスが最高」
「祥子ちゃんのタルトが食べられるんなら、私もこのお店の常連になるわよ」
お隣の宮村婦人にまでそう声をかけられて、祥子の背が伸びるのがわかった。
「お姉ちゃんのアップルパイ、すっぱくなくてサクサクでおいしい」
莉々子の声が最後の一押しになったようだった。祥子が覚悟を決めたように、秀治に向き合う。
「慣れるまで接客は、俺一人でやりますから、どうでしょう」
「こ、こんな私ですが、よろしくお願いします」
ガバッと頭を下げた祥子に、店中の人々がわっと拍手をした。輪の外から克也が安心したように微笑む姿が見えた。
庭へ目をやった秀治は、小道沿いのコニファーが揺れるのを見た。新しいお客さんが来たのかとウッドデッキに出てみると、木の陰から覗く雪乃と目が合った。
雪乃は反射的に背を向けて小道を駆け出していく。慌てて追いかけた秀治が呼び止めようとしたところに風が吹き、裏口付近に咲くコデマリの枝が大きく揺れ、雪乃の行く手をふさいだ。
(グッジョブ!)
心の中でコデマリにお礼を言い、秀治は雪乃の手をつかむ。
「せっかく来たんだから、入っていって」
「でも、莉々子に合わせる顔がなくて……。有麻さんにだって、申し訳なくて」
「莉々子に合わせる顔なら、ここにある」
秀治が両手で雪乃の頬を包むと、雪乃は一瞬キョトンとし、こらえきれなくなったように笑い出した。
「パパー、今ママの声しなかった?」
秀治の背後から莉々子が駆けて来る足音がする。秀治は小道の脇に避けて、その時を待った。
「ママ!」
雪乃を見つけた莉々子が全速力で駆けてきて、雪乃に向かって飛びついていく。
秀治は目の前に落ちたバラの冠を拾って、雪乃に抱きついて離れない莉々子の頭にかぶせてやった。
1
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』
放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。
「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」
身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。
冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。
「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」
得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。
これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました
由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。
尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。
けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。
そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。
再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。
一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。
“尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。
静かに離婚しただけなのに、
なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。
織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。
父であるアーヴェント大公に疎まれている――
噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました
ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。
ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。
王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。
そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。
「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる