いない再会

耽創

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いない再会

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 ――久しぶり、元気だった? まぁ、貴女はいつでも元気よね。
――ホントのことじゃない、何よその顔。……ハア。ここはずっと変わらず田舎臭いのね。小学生のころからいつも思っていたわ。どう? こんな町にこれからも居続けるって辛いと思わない?
――いえ、これからもずっとここに縛られる人間に言う言葉ではなかったわね。ごめんなさい。私にとってはおいしい山の空気ってものも喉につっかえて辛かったから。だからずっと帰ってこなかったのよ。でも今は少し美味しく感じるの。都会の生活って辛いんだもの。私、都会生活合わないみたい。ここに戻ってくる気はさらさらないけれどね。
 ――あの事件? 何、あれの恨み言を言うために私を連れ戻したの。
――私が何をしていたか知りたいの? ……そうねえ。
あの日は、2時間目の授業の後、貴女熱を出したでしょう。頭が痛いって言って、保健室に行って、昼に帰った。朝に山へ行く約束をしてたけど、貴女があんなだったから私山へは行かなかったのよ。約束はまた今度だって勝手に思ったわ。誘ったのは私だったけれど、手負いの貴女を連れ回そうなんて考えてなかったんだから。
――この山に、狩猟で使われた火縄銃がほっぽられて、何処かに埋まってるって噂で聞いてて、すぐに見てみたいって思った。あのときも話したでしょう? あなたも興味があったから誘いにのってくれたんでしょう。違う? 付いて行こうとしただけ? でもそうだとは思えないわ。だって。
……まさか病気で帰った貴女が山に向かうなんて、思いもしなかったもの。それも1人でよ? 
 ……騒動だったのよ。夕方貴女のお母さんがうちに来たわ。とても慌てた様子だったのよ。――娘はそちらに伺ってませんか、いないのです、熱があるのに――ああ、○○ちゃん、娘と会ってない? ……そう、ごめんね急に――先程帰宅したのですが、家に娘がいないのです。家に娘一人置いて仕事場に戻ったのですが……――もう11歳になるので、1人で留守番できるようになりましたし、大丈夫と思ったのです……娘も大丈夫と言ってくれたので――どうかもし、娘がこちらに来たら連絡して頂けないでしょうか――捜してくださる……?――ありがとうございます……――ってね。
 それから町の皆で貴女を捜し回ったんだから。そのあと帰ってきたお父さんも出てってしまったから、とうっても寂しかったわよ。私はお母さんからもお父さんからも絶対に家から出るなって言われてたから、家で待ってたのよ。貴女が誘拐された危険性もあったからね。
でも私、外に出たのよ。山に向かったわ。きっと貴女はそこにいるはずだからって思ったのよ。7時ごろでまだ少し明るかったけど、月もうっすら見えたわね。覚えているわ。
 ……山道を1人で登ったことはなかったし、ましてやそんな人間が日が沈むころに外に出たことなんてあるはずないから、心細かったわ。だから登ってる最中貴女を見つけたとき少し安心したのよ。すぐに違和感に気付いちゃったんだけどね。
 この下、秘密基地を作ったでしょう。楽しかったね、あのころ。ねえ、子供がやっと降りれるくらいの道を伝ってよく来たじゃない。獣道みたいな小さくて細い道なんて踏み外しても無理ないわ。まして貴女は熱があったんだし。
ほらこの下。もうフェンスが作られて行けないけど、貴女あそこに寝そべってたのよ。あの小さな道から落ちたんでしょう。
 ……何度も名前を呼んだけど返事がないから急いで山を下りたわ。今思えば、なんだか貴女の頭の部分が赤くて、足の向きも変だった。目が潤んでよく見えなかったし坂道は急で下りにくかったけど、とにかく足を動かしたわ。ほら、だって、怖いじゃない。もう、汗とか涙とか何度も何度も拭いながらね、がむしゃらに走ったわよ。家に着くと皆帰っててこっぴどく叱られちゃった。喉はずっと空気だけの通り道になってたから乾いて痛かったし、めちゃくちゃに山道を下りてきたせいで、手や足やらに鉛筆でシュッてしたみたいな細い切り傷がたくさんついてたわ。痛かった。貴女が山にいたことを話すのも精一杯だったよ。
 ……私が貴女を誘ったのが、貴女が山へ行く原因になったなんて言えなかったわよ。皆から怒られると思って言えなかった。でもずっと居心地が悪くて、高校卒業したら町から出ちゃった。
 ねえなんで1人で行っちゃったの。
――先に見つけて自慢したかった?
……馬鹿だなあ。
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