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1年目の秋~冬の件
1つ目のダンジョン内ダンジョンを制覇する件
時間はまだお昼にもなってないが、お昼休憩を挟むか暫し家族で議論する。その結果、この勢いで5つ目の扉を探索しちゃおうとの意見が子供達から。
まだ疲れてないし、お昼の時間にも早いって事で。護人も同じ思いだったので、最後の扉に挑戦する事が決定。それを聞いて、紗良が魔法の鞄から鍵を取り出す。
4つ揃った鍵だが、見事にその形状は似通っていた。香多奈がそれを受け取って、どれがどの鍵穴かなぁと扉前で悩み始める。
どうでも良いが、この中央の扉に描かれた絵はどれよりも不気味。扉の法則によると、中にいるモンスターを教えてくれてると思うと尚更である。
その簡易な描写によると、次に遣り合うのは角を持つ人型のモンスターらしい。それは鬼のような、或いは魔人のような見た目を有するみたい。
全く気にしていない姫香と香多奈は、鍵のパズルに夢中になっている。紗良も口を出して、ようやく4つの鍵は所定の場所へ。
それらは普通と違って、魔法アイテムだったようで差し込む必要も無かった。正解の鍵とカギ穴が合わさると、吸い込まれて勝手に認証してくれた模様。
それを4回繰り返し、大きくて立派な5つ目の扉は音もなく開いて行った。
まるでこちらを歓迎するかのような、その開放演出はともかくとして。開いた先から、するりと何の緊張感も無く先行して入って行くハスキー軍団。
それに茶々丸が続いて、全部開き切ってからルルンバちゃんも動き始める。いつもの張り切りメンバーだが、今回は恐らくボスの間なので勝手は出来ない。
それを思い出し、チームの手綱を取り始める苦労性の護人である。ゲートを潜ったその中は、割と薄暗いが灯りはちゃんとある様子。
そこは先程と同じような感じの、遺跡タイプのフロアが拡がっていた。等間隔の柱と、彩り豊かな壁画が印象的だがどこか寒々しい。
フロアは前方にも左右にも拡がりがあるようで、パッと見相当に面積がありそう。そして肝心のモンスターの気配は、今の所は全く窺えず。
左右4つの扉とは、明らかにその点で確実に違っている。集団でのお出迎えが無くて、明らかに肩透かしを食らって戸惑う感じのハスキー達。
護人は灯りを増やして、一番怪しい前方向への進行を指示する。
「前の扉と違って、ここは敵が全くいないねぇ……ひょっとして、このエリアはボスしかいないのかな?」
「そうかも知れないね、取り敢えず茶々丸とコロ助は下げて、後衛の護衛をして貰おうか。敵の数が増えたら、後衛の判断でコロ助を開放してくれ」
「了解っ……あっ、何か見えて来たよ、叔父さんっ!」
場にそぐわぬ明るい香多奈の声で、一同がそちらを確認すると。祭壇のように篝火を四方に配置された、盛り上がった舞台が前方に見えて来た。
そこには3メートルを超す、ヤギの頭のモンスターが1体待ち構えていた。護人の予想通り、ここのボスは魔人だった様だ。
そのお供らしい、インプが4匹ほど周囲を飛び回っている。その大ボスの得物だが、毎度の真っ黒で巨大な大鎌の様子。
大振りなソレは、かなりの威力を叩き出しそう。それを見た護人が、ルルンバちゃんを従えてソイツの動きの封じ込めに動き出す。
姫香はレイジーとツグミと一緒に、まずは邪魔なインプの掃除から。ところがチームが舞台へと走り出した途端に、予期せぬ仕掛けが作動した。
どうも篝火の影に、下位魔人が待ち伏せしていた様子。
それが左右に2体、そしてそいつ等が手にしているのは巨大な金属製の網だった。ご丁寧に棘付きで、2体の下位魔人は飛び上がってそれで一行を捕獲に掛かる。
いや、あんなのを上から落とされたら大ダメージ間違いなし。後衛陣の2人からは、思わず悲鳴も上がっている。
護人も慌てつつ、それでも姫香に『圧縮』で被害軽減の指示を出す。自分はルルンバちゃんの側にいるので、身を寄せれば何とかなるだろう。
ツグミも影に潜めるし、レイジーも一緒にかくまって貰える筈。そう思っての姫香への掛け声だったけど、少女は信頼されたと勘違いした模様。
何と『圧縮』で足場を次々に作成して、下位魔人より上空を確保する。そして金属の網の端を愛用の鍬に引っ搔け、『身体強化』でそのまま反対側へと力任せに投網してしまった。
それに慌てたのは、それをモロに受けた大ボス魔人だった。インプの群れなどもっと悲惨で、最大の能力の浮遊を封じられる有り様である。
下位魔人も同じく慌てていたが、その片割れはミケの『雷槌』で呆気無く撃墜された。蝙蝠の翼を有するソイツ等は、今は上空の優位な場所なのに残念。
残った1体は、すかさず反応した護人の“四腕”からの『射撃』で、これまた呆気なく撃墜されて行った。その背後では、レイジーの『魔炎』が網の集団に直撃。
インプの何体かが、これで魔石へと変わって行った様子。逆に最大出力で『身体強化』と『圧縮』を使用した姫香は、MP枯渇で今は腰が抜けてる状態。
無理をするなと、護人の叱咤が戦場にこだまする。
「お姉ちゃん、はやく回復ポーション飲んでっ! ツグミ、姫香お姉ちゃんを守ってあげて!」
「後ろの篝火の影にも伏兵がいるよ、姫香ちゃんっ! 左右に1体ずつ!」
その通り、しかもそいつ等も金属網を周到に用意していた模様。確かに大ボスが天井まで飛んで逃げれば、残されたチーム員は為す術は無かったかも?
今は咄嗟の姫香の機転で、その金属製の網は敵に作用して悲惨な状況。再度のレイジーの炎のブレスで、早くもインプは完全に沈黙してしまった。
大ボスの魔人にも、当然少なくないダメージは入っている。しかし身動き出来ない魔人は、その得意の武器を振るう事も出来ず哀れ。
その代わり、魔人は味方の増強にと召喚呪文を唱え始めた。それを阻止しようとしたルルンバちゃんだが、残念ながら1歩及ばず。
何しろ、棘付き網が地面にばら撒かれたお陰で上手く進めない。結果、魔人の周囲に新たに4体のガーゴイルが出現してしまった。
一方の姫香だけど、ようやく腰のホルダーにあるMP回復ポーションの存在を思い出した。まぁそれも、香多奈の大声の指示のお陰である。
それから紗良の忠告も聞こえていて、奥にいた伏兵2体の小柄な魔人の姿も確認済み。それもツグミの素早いフォローで、不意を襲われる事は無く助かった。
それ所か、『土蜘蛛』の魔法で片方は瞬殺されてしまっていた。辛うじてもう片方の下位魔人は、ツグミに接近戦を挑み掛かるのに成功した。
そんな忠犬ツグミに守られながら、姫香は何とか回復作業。
一方の、舞台中央の護人達の大ボス包囲網戦である。こちらも新たに出現したガーゴイルと、ようやく金属の網から抜け出せた魔人の反撃が始まっていた。
とは言え、相変わらずルルンバちゃんのパワーは凄まじい上に容赦がない。しかも香多奈に放たれたコロ助が、白木のハンマー持参で硬い敵の殲滅に参加。
そんな派手な戦いの中央で、ようやく切り結ぶ護人と魔人の大将戦。大ボス魔人は満身創痍で、しかも“四腕”の猛攻を浴びてモノの数分も経たず劣勢に。
フォローに入るレイジーの、焔の魔剣の斬撃も的確に相手にヒットしている。追加ガーゴイル達も、ルルンバちゃんとコロ助によって全て破壊終了。
それから奥の姫香とツグミのコンビも、無事に下位魔人の討伐を終えた。残された大ボスの魔人も、強敵でそれなりの粘りは見せたモノの。
多勢に無勢は覆せず、結局はそのまま護人とレイジーに止めを刺されお亡くなりに。魔石(大)を残して、これでこの舞台周辺で動く敵影は無くなった。
舞台奥では、姫香がダンジョンコアと宝箱のセットを発見して盛り上がっている。それをみんなに報告して、このエリアも完全に踏破完了みたい。
その反対側には、丁寧に退出用の魔法陣まで用意されている。
「うわっ、これで終わりなの……? 4つも鍵を集めて大掛かりだなって思ってたけど、案外とアッサリ終わっちゃったかもね、叔父さん!」
「まぁ、魔人も“もみのき”の奴よりは弱かったかもな……でも、最初の網を喰らってたら、かなり危なかったし被害が出てたかも知れないぞ」
「姫香ちゃんのお手柄だったけど、あんなに危ない真似しなくてもね。ツグミちゃんが、咄嗟にフォローしてくれたから良かったけど。
見てるこっちは、心臓が止まりそうになったよ?」
紗良の言葉に、それに被せて叱るべきかと悩む護人だったけど。姫香もそれなりに反省している様子で、香多奈はさっさと宝箱へ向かってる有り様。
お供にコロ助とルルンバちゃんが付き添って、周囲の警戒はレイジーのみ。広いフロアなので、万一の打ち洩らしを心配するのは当然かも。
結局は宝箱の中身の回収と、コアの破壊が終わっても追加の敵は出て来ず。妖精ちゃんの話によると、このコアは特別製で再生に数ヶ月も掛からないそう。
その分、破壊で貰える経験値も少しだけ少ないとの説明を受けた。その分回数で頑張れと、妖精ちゃんは鍛錬の推奨をアピールしている。
ともあれ、これで無事に1つ目のダンジョンはクリアである。ちなみに宝箱からの回収品だが、鑑定の書(上級)が4枚に当たりのオーブ珠が1個、魔結晶(大)が5個に魔玉(闇)と魔玉(雷)が7個ずつ。
それから良さそうな弓とズボンが1つずつに、柄の長い大斧が1つ。更には虹色の果実が2個と、何やらどす黒い液体の入った容器が1つ出て来た。
1時間ちょっとの探索にしては、儲けはまずまずと姫香は嬉しそう。香多奈も調子に乗って、お昼を食べたら別のダンジョンに潜ろうと提案して来る。
他の面々もまだ元気なので、それもアリかなぁと護人が思案していたら。午後の探索を口にした本人が、微妙な顔でそれは無理かもと急に逆張り意見を述べる。
アンタ何言ってんのと、すかさず姫香が末妹に突っ込みを入れる。
「何か知らない人が訪れて、探索どころじゃなくなっちゃう気がするかなぁ? 何だかそんな予感がするよ、良く分かんないけど」
「アンタが言うと、本当になりそうだから怖いわね。取り敢えずは一旦外に出て、お昼休憩にしようよ、護人叔父さん」
「そうだな……」
護人も気になるが、対策出来ないのが香多奈のナンチャッテ予知である。それでもお昼は大事と、皆で母屋へと戻って休憩とお昼ご飯を挟んでの寛ぎ時間。
この点は、敷地内ダンジョンの有り難さとでも言おうか。仕切り直しと言うか、休憩が本拠地である来栖邸で簡単に取れると言う極楽仕様。
そうして英気を養って、1時間少し経ってからの再出発。香多奈の妙ちくりんな予言はしかし、当たる事も無く来栖家チームは“鼠ダンジョン”の中へ。
安心したような肩透かしを喰らったような感情のまま、一行は2層へ降りて行く。次は隣のダンジョンで良いかなと、2つ目の攻略先は呆気なく決まりそう。
その前の支道へと入ろうとした時、不意にレイジーが唸り声を発して立ち止まった。次いでツグミが、3層への階段の方向を警戒しながら同じく臨戦態勢に。
驚いた護人達は、モンスターでも湧いたかなと話し合って本道の奥を窺う。ヘッドライトの灯りに照らし出されたのは、しかしそれとは違ったモノだった。
そこにいたのは冒険者だった、しかもこちらの世界とは全く別の。
それが分かったのは、彼らの見慣れぬ装備や雰囲気も関係していた。ついでに、メンバーの中に猫耳娘やら絶世の美女エルフが紛れていた事も起因する。
リーダーらしき男の発するオーラは、この世の物とは思えない質量を備えていた。しかもメンバーの4人(機)目は、ルルンバちゃんと同じく機械である。
向こうもこちらを警戒している様だが、真っ先に話し掛けたのは末妹だった。全く物怖じせずにハーイとか何とか言いながら手を振り上げての歓迎の素振り。
向こうもお気楽そうな、ネコ耳娘がそれに応じた模様。
「ええと……話は通じるかな、異界の人達。こっちは家族で探索者をやっている、取り敢えず敵意は無い事は分かって欲しい。
この場所は、一応ウチの敷地内のダンジョンと言う認識だ。こっちはそんな所で、揉め事を起こしたくはない……オッケー?」
「言葉は通じる……驚いたな、どうやってこちらの世界の者達と情報を交換しようかと悩んでたんだが。こちらのリリアラも優秀な魔術師だが、さすがに翻訳魔法は持ってなくて。
こちらは『彷徨う戦士団』所属の“皇帝竜の爪の垢”と言う4人チームだ。俺たちも敵意も争うつもりも無いし、そちらのテリトリーならそちらの意志に従おう」
「何て話したの、護人叔父さんっ……この人たちは、どこの誰っ!?」
興奮している姫香と違って、香多奈はひたすら良く分からないゼスチャー込みで向こうのネコ娘と対話モドキを行なっていた。
護人は子供達に、異界の探索者と遭遇してしまったよと、この突然の出会いを説明に掛かる。向こうに敵意は無さそうだねと、今更ながらの一言も付け加える。
何しろ末妹は、既に相手に近付いてペタペタ向こうの戦闘マシンに触っている。コレ頂戴とか物騒な会話が聞こえて来た時は、護人も一瞬焦ったのだが。
向こうの猫娘は、これは仲間だからダメだと上手く断ってくれた模様で一安心。
護人としては、香多奈のナンチャッテ予知が当たった事にも驚いてるし、この不意な遭遇にも同じく腰が抜けそうになっていた。
その隣では、呑気に姫香がこの遭遇の感想を呟いている。最近は鬼に遭ったり異界の戦士に遭遇したり、本当に世も末だねと。
――本当にその通りだと、それに心から賛同する護人だった。
――― ――― ――― ――― ―――
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