ミックスブラッドオンライン・リメイク

マルルン

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始まりの森編

初日ログインとその感想

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 その後も琴音とゲームの感想を言い合いながら、俺たちはしばしログアウト後の時間を過ごす。琴音の部屋は8畳もあって、何と言うかお洒落しゃれ感の漂う女の子の空間そのもの。
 部屋のドアが開きっ放しなのはご愛嬌、年頃の男女が閉鎖空間にいるのはよろしくないとのママさんのご指摘なのだ。琴音もさすがに両親には逆らえない、渋々その指令に従っている。

 いや、別に下手に手を出すとか不味いのは分かってるから。こんなお節介な幼馴染との関係が描かれた小説、昔読んだ記録があるなぁ。
 外国の小説で、割と有名なSF作家の作品である。粗筋を大まかに説明すると、昔家族が拾って来た宇宙ペットが暴走する話である。

 面白さは微妙だが、この人の作品は当たり外れが多少ある。俺的にお勧めなのが2作品あって、どちらも秀逸で俺は何度か読み返した。
 有名な作品も存在するが、自分のお勧めの2冊は同い年の少年が主人公だ。その主人公と家族の遣り取りが、なんともたまらなく面白いのだ。

 内容も他のSF小説家と変わっていてユニーク、何故ならこの人は元数学者だか物理学者かだったらしい。その経歴に裏打ちされた内容は、正直かなり難解な部分が多々ある。
 いや、中身はとても素晴らしいんだけどね? SFなんて今は流行らないけど、昔はファンタジー小説なんてほとんど店頭に無かったらしい。

 ってか、異世界系でSFと一括ひとくくりされていた感もあったりして。日本で爆発的にファンタジーが確立されたのは、やはりファミコンゲームからRPGと言うジャンルが流行してからだろう。
 それから、某ファンタジー小説がヒットして映画化までされたりとか。源流を辿って行くと、まだまだ他にも候補の作品は上がるかも知れない。

 俺が知ってるのはそんな感じで、まさに“剣と魔法のファンタジー”の歴史が幕を開いたらしい。この『ミックスブラッドオンライン』も、まさにその流れをんでいるっぽい。
 そんな事を考えている間も、琴音の今日の感想は終わりを迎えていなかった。基本、この幼馴染はしゃべり始めるとととっても話が長い。

 その点では女性って皆同じなのかも、限度は超えてる気もするけど。そして相変わらず、彼女の中では俺達2人のタッグは最強認定らしい。
 全く根拠の無い話だが、琴音の機嫌がそれで良いなら別段訂正を入れる事も無いだろう。その辺は、長年の付き合いで自然と身についた処世術である。

「それでね、装備も良いのになったから明日のインで一気に探索範囲拡げちゃうから! 初期エリアって、ソロの強要なのに何だか色々と作り込んでるよねっ。
 恭ちゃんの方は、初日にレア種とかも出て来たんでしょ?」
「そうだな、今日は1匹も出遭えなかったけど……代わりに変な商人に出会って、何だか妙な商品を押し付けられたなぁ。
 俺のプレイが悪いのかな、変な横道にばかり入ってる気がする」
「だから最初は、レベル上げと装備強化するべきなんだってば! 恭ちゃんのプレイを批判するつもりは無いけど、もうちょっとちゃんとやって!」

 怒られた、自分なりに一応は真面目にプレイしているつもりなんだけど。だけどえてここは反論せず、まぁもうちょっと慣れるまで待ってと言い訳を返しておく。
 もちろん、もっと怒られそうな魔法が使えなくなったトラブルは厳重に伏せておく。その代わり、無事に(?)1つ目の果実をゲット出来た事実は多少誇らしげに報告しておいた。

 それを聞いて、テンションの高くなった幼馴染を上手になだめるのも俺の仕事である。そう言えば、琴音の部屋に何日も連続して訪れるなんてイベント、ここ最近は無かったなぁ。
 妹達の方は、割と頻繁に遊びに来ていたらしいんだけど。俺はバイトだ何だと忙しいのを理由に、最近は避けていたと言う事実がある。

 その辺も、琴音としては大いに不服だったのかも知れない。いやまぁ、もちろん変な照れとか年頃の心理とか働いていたのは否定しないけど。
 一人っ子の幼馴染は、昔から構ってちゃん気質ではあったりして。だからまぁ、彼女的にはこの限定イベントの到来と賞金のえさは願ったりだったのかも。




 次の日の朝、もう少しで週末なのを励みにいつもの時間に起床する。大半の人間が苦手な起き抜けの時間、俺はボーっとした頭で朝の支度を進めて行く。
 バタバタするのは好きではないが、早起きも苦手だと言う人は多いと思う。自分も実はそんな中の1人、とは言え妹達の為には苦手だ何だと言ってられない。

 朝食と学校に持って行くお弁当の準備は、毎朝の俺の役目だもんね。まぁ、朝食と言っても食パンを焼いてコーヒーを淹れる位のモノだけど。
 お弁当用にご飯も炊いてるけど、我が家は朝はパン派ばかり。卵が余っていれば目玉焼きを人数分、たまに贅沢にハムエッグ程度のモノ。

 つまりは冷蔵庫の中身に依存する訳だが、今日は卵が残っていた。お弁当用の玉子焼きとソーセージも、こんな時はついでに焼いてしまうのが時間短縮のコツ。
 そんなルーティーン通りの工程で、フライパンに火を掛けていると。長女の楓恋かれんが、朝の挨拶と共に支度を手伝い始めてくれた。

「お早う、お兄ちゃん」
「お早う、楓恋……杏月あんずはまだ起きて来ないのか?」
「さっき声掛けたし、起きてる筈……今日も放課後、琴音ちゃんの所に寄るの?」
「ああ、バイト無い日だしな……米はもう炊けてるぞ」
「分かった、それじゃあお弁当作ってくね?」

 手伝いと言うより、3人分のお弁当作りだけど。おかずの類いは昨日の時点でほとんど作ってあるので、今焼いてる玉子焼きやお米やおかずを詰めて行くだけ。
 その作業は大抵、楓恋かれんが毎朝になってくれて大助かり。我が妹ながら、家事能力も優秀で本当に良く出来た娘である。

 普段は無口で愛想も外に出さないが、勉強も俺以上に出来るしっかり者だ。何でもソツ無くこなす、秀才肌と言う言葉がピッタリ当てまる。
 顔立ちも立ち振る舞いも、亡き母親に似て整っているし歳不相応にしっかりしている。やや控えめな性格も、男から見たら短所には映らないと思うしね。

 俺もバッチリ好みだが、血が繋がっているのは百パー間違いない。そんな訳で、残念ながら諦めている次第……そんな冗談交じりの内心の葛藤が、琴音に知られるのも怖いので。
 つまりは可愛い妹って事だ、それは断じて間違っていない。

 もう1人の末妹の杏月あんずは、楓恋かれんとは逆に甘えん坊のちゃっかり者である。実に末妹気質なのは記述の通り、そして俺と楓恋もそれをとがめないと言う。
 杏月も可愛い妹であるには違いない、そして両親が他界した時に一番幼かったのも末妹だった。その結果、俺も楓恋も文字通り父親と母親のように接してた事もあって。

 何と言うか、可愛い甘えん坊が出来上がってしまった次第である。まぁ、杏月もウチの両親不在と言う、家の事情は充分に理解してくれている。
 そこまで経済的に無理って我がままも言わないし、本当に可愛いモノである。むしろ琴音が加わる事で、甘やかしが倍加する現状が。

 琴音の我が家での立場も、長年に渡る交流のお陰ですっかり姉的なモノに。楓恋はともかく、杏月は物凄く懐いていて、家にもしょっちゅうお邪魔しているみたいだ。
 お陰で、こちらの家の事情も俺の愚痴も、すべて向こうに筒抜けと言うね。それはまぁ別に良い、これで俺の家族構成の紹介は終わりである。

 良く出来た長女と甘えん坊の末妹、そして長男である俺の3人家族……それに天国から見守っている筈の、既にこの世を去った俺達の両親。
 大人がいないと色々と不味いので、後見人を琴音の両親が担ってくれている。距離的に遠い父方の祖父母とは、週に1回程度は近況報告を入れ合う感じだ。
 こうして未成年の俺達兄妹は、両親の死後も同じ住居で生活していられる訳だ。

「おはよう~、恭兄ちゃん、楓恋ちゃん……眠い~っ、お腹空いた」
「おはよう、杏月……ネクタイ曲がってるぞ、ほらこっち来て」

 甲斐甲斐しく末妹の世話をしてやり、その後俺は食事用のテーブルへと妹達を押し込む。そしてようやく皆での朝食だ、1日の活力と愛情を確認する大事なひと時。
 夕ご飯は、俺のバイトの都合で一緒に食べれない時があるからなぁ。妹達もそれは心得ていて、だからこの時間はとても大切に思っている筈だ。

 まぁ、杏月に限っては席に座ってもひたすら眠そうなんだけどね。そんな杏月は現在中学2年生で、楓恋は今年受験の中学3年生である。
 楓恋は大事な時期なんだけど、だからって特別扱い出来ないのがこの家の現状だったりする。まぁ、優等生の楓恋なら恐らく高校受験は余裕だろう。

 変に油断とかしなければ、俺と同じ学校に入学は堅い筈。内申もすこぶる良いのは聞き及んでるし、学内では模範生で通っているとの噂の楓恋である。
 そう言う意味では、問題なのは末妹の杏月の方だろうか。

 断わっておくが、可愛いもの好きでフワッとした性格の末妹は、別に問題児と言う訳では無い。家の仕事も洗い物とか手伝ってくれるし、学校の成績もそんなに悪くは無い。
 ただ、両親の突然の死に一番ダメージを受けていたのが杏月だったのだ。そんな訳で、俺も楓恋もこの末妹の心のケアには細心の注意を払っている次第。

 その甲斐もあったのか、今では随分と回復して一時の苦しさからは抜け出せた模様。そもそも朝に顔を合わせるのは、そう言う意味でもとっても大事な作業には違いない。
 お互いの心理面を含めた体調を確認したり、その日のスケジュールを確認したりが大きな理由である。そう言う意味では、今日も2人の妹達の体調は悪くない様子で何より。
 今日も遊びに勉強に、一生懸命頑張って貰いたい。




 ――それは俺も同じ事、今日も程々に頑張って行こうかな。






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